作品
老人の追懐
陽だまりの中 佇んで
今は僕の時計の針が午前12時をさすのを待っているだけ
何もかも霞んでいった 白黒の思い出を落としていった
けれど今でも覚えている
あの海に続く丘をのぼりきった 先に
見えた
見えていた
黒く長い髪の揺れる君が
あの頃は目に 入る物が
新鮮でいつも追いかけて 捕まえられないとわかっていなかった
何もかもが大きすぎた 傷ついたってその傷を気にはしなかった
あの時僕は声もかけられなかった
振り向いた君の顔が逆光で見えなかった
見えた?
見えていた?
黒く長い髪は風に吹かれていた
捕まえられなかった
手に入れられなかった
触れることも怖がって
得られなかった
ただ 今は
陽だまりの中 佇んで
時間を眺めながら目蓋の裏で君の髪に触れることを
あぁ
何もかも霞んでいった ただあの黒く長い髪だけは霞む事は無い
14 名前:老人の追懐[sage] 投稿日:04/04/11 00:54 ID:XsnHnJay
髪
毛の一種。人間の頭からうじゃうじゃ生えてくる。伸びる。
人体が死んでも伸び続ける点で爪と似ている。血や神経も通
っていないので、鋭いハサミで切っても痛さを感じない人体
の一部。まれに腐乱した死体のも頭蓋骨に何本かの髪が残る
動物の身を包む毛とは異なり伸び続ける。どの部位から生え
た髪もほぼ平等に「成長」する。古来より女性の象徴。歌に
もよく詠われた。現代では美容室などそれを整えるためのサ
ービス業がある。毛髪産業は安定している。人によって色に
違いがある。生えかたや癖もある。毛穴は無数にあり、抜け
ても多くの場合は再びはえてくる。「にょきにょき」という
音はしない。日本の夜。耳を澄ますと1億人の毛が生えてく
る音がするかもしれない。不潔にしているとフケが異常にふ
きだしたり蝨がわいたりする。うなじを舌で舐められたりな
でらりたりするとワギナやペニスが紅潮し濡れることがある
髪を剃りおとすのは一般に恥辱的行為とされる。体の部位の
なかでもっとも植物的。生え伸び抜ける。異様に群生した芝
のよう。美しい髪は鑑賞される。鬘やウィッグという人工の
髪を飾りファッションをたのしむ。ミンクのように毛皮など
にはされない。頭皮を剥製にして居間に飾ることもない。絨
毯にもてきさない。抜けた髪はお守りなどにされる。和人形
に使われることがある。髪を無理矢理抜くと先端に濁った透
明の無着色の皮脂がつく。すこし湿っている。切り落とされ
た髪の塊は箒ではけられる。さわると蕁麻疹がでて痒くなる
髪は人間の鱗のなごりである。養分が必要で十分に与えられ
ないと枝毛になる。海草類を食べるとよく成長する。髪自体
は食べられない。燃やすと異臭がする。誰も自分に何本の髪
の毛が生えているのかを知らない。水に浸すとスポンジのよ
うに吸い込む。しらぬまに髪はよく伸びる。一人の人間の死
ぬまでに生えた髪の長さを累計すると東京・沖縄間の距離を
容易く越える。髪にガムをからめてしまうとなかなかとれな
い。吐謝物をひっかけられるひっかけると耐えられない。髪
は気持悪い。髪は美しい。髪はうごめく。髪は止る。
15 名前:髪[] 投稿日:04/04/11 01:47 ID:+cgdDRfx
【コメント】
26 名前:ななほし ◆lYiSp4aok. [] 投稿日:04/04/16 12:02 ID:IwxQ1Qjc
1点 >15 :髪 :04/04/11 01:47 ID:+cgdDRfx
辞典みたいな面白さ。ちょっと不気味でゾクゾク?
【得点】 1点
休日
蓋し彼らの目当てはもっぱら
柩に詰められた処女の髪の毛だ
柩に誰が入れられたかなんて
頓と知らないのだから
もっとも処女達は
黄昏前に出掛けてしまって
そいつも随分前の話で
今となっちゃ「当て」なんて
これっぽちも無いのだけれど
墓石はいつも鱗の色に輝いて
そいで彼らは満足そうに
いつまでも頷いている
烏が鳴いていた
彼らの髪の毛は風に吹かれてさらさら揺れた
うたた寝しながら僕ァそれ眺めてた
16 名前:「休日」[sage] 投稿日:04/04/11 17:43 ID:u7HUmCT/
【コメント】
26 名前:ななほし ◆lYiSp4aok. [] 投稿日:04/04/16 12:02 ID:IwxQ1Qjc
1点 >16 :「休日」 :04/04/11 17:43 ID:u7HUmCT/
詩の体裁はきっちりしているなぁ……で何がいいたいのか?
35 名前:Canopus ◆DYj1h.j3e. [] 投稿日:04/04/18 22:01 ID:WWMP0Ixr
>>16に1点。
コメントがむつかしいよね。というのも、柩や髪や彼らが何を指すのかボヤッ
としているためなんだけど。「牧歌的な死、死をみている彼ら、彼らをみてい
る自分」ていう二重構造がよかったかな。
【得点】 2点
- ななほし ◆lYiSp4aok.:1点
- Canopus ◆DYj1h.j3e.:1点
初恋
あの娘が髪を切ったんだ
なにかあったのかな
髪を結う仕草が好きだったのに
ちょっとがっかり
あ、でも
耳に掛ける仕草は変わらないんだ
もう掛ける髪は無いのに
そうしてむき出しになったあの娘の首が
こんなにも細く
白く
柔らかそうだなんて
知らなかった
17 名前:初恋[sage] 投稿日:04/04/11 23:56 ID:aGuPKRV5
【コメント】
26 名前:ななほし ◆lYiSp4aok. [] 投稿日:04/04/16 12:02 ID:IwxQ1Qjc
1点 >17 :初恋 :04/04/11 23:56 ID:aGuPKRV5
彼女の白いうなじのスナップショット?
28 名前:日雇いくん ◆HIyaTOiQcI [sage] 投稿日:04/04/16 19:43 ID:zX+yV/3N
>>17
上の方 上のレスにもある通り、スナップショットを心情に絡ませつつ素直に描いて
いて、すこし気持ちがいいと思った。
【得点】 2点
- ななほし ◆lYiSp4aok.:1点
- 日雇いくん ◆HIyaTOiQcI:1点
最高の売り物
金メダルを質に入れたら20万金がなけれは
流れていく
質屋のおやじも悪気じゃなくて買いたい人を
つないでくれた
桜がきれいな夜だった
金メダル飾って使えばウン千万売ってしまえば
はした金
桜がきれいな吹雪だった頭が悪いなァ
髪の毛総毛立つ
ここで笑えば
けっきょく手元にゃ百万円
一山霞んで遠山桜
もれた吐息
売っても桜眺めて桜
力が抜けて
桜見上げた夜
18 名前:最高の売り物[] 投稿日:04/04/13 23:34 ID:IWv/N4Y6
四月
ずるりと肌を這う
表皮の長くなったもの
油の芳香がかすかに淀み
わたしは狂って
自分の裸身を美しいもののように錯覚する
祈りの形のままに腰をまげる虫が
わたしの樹皮をかきわける
この
長くまつわるもの
わたしの白骨をかくせ
何もないようで
あらあらしい命に満ちた春のがさやぶのなか
19 名前:四月[] 投稿日:04/04/14 20:50 ID:OXytL0ed
【コメント】
26 名前:ななほし ◆lYiSp4aok. [] 投稿日:04/04/16 12:02 ID:IwxQ1Qjc
1点 >19 :四月 :04/04/14 20:50 ID:OXytL0ed
なんかよくわかる。本質を失った女性の象徴か?
【得点】 1点
香る雨
窓打つ暖かなしずくに
刹那の ゆらぎが煌めいて
流れ落ちる溜息
いつわりにおびえてる 問いかけ
追憶のしもべを惑わす
憂鬱なささやき 雨音
四季の風に吹かれて 目の眩む姿をさらした
緑の谷に絡んだ 去年の枯れ色
忘れぬ
22 名前:香る雨[sage] 投稿日:04/04/14 22:43 ID:vsWXe2dE
【コメント】
255 名前:散華楽 ◆DummymO2O6 [sage] 投稿日:04/04/28(水) 20:49 ID:ZIxHI+Xl
チャンプ・準チャンプの方々、おめでとうです!
審査・評価してくださった皆さん、ありがとうでした。
えっと、後書きが遅くなってすみません。
プロバ規制に巻き込まれてたりして、タイミングを失していました。
前回は「香る雨」、今回は「海辺の者たち」を書きました。
どちらも、言い過ぎてうっとおしくなるのがどうしても怖くて、
物足りない感じになってしまったようです。
テーマはとても好きだったのですが。
なんか毎度中途半端な自分…ヽ(´д`)ノなさけなや~
髪を切りに行こう。
ボーイッシュにはもう出来ないけれど。
時々男の子と間違えられた。
男勝りという言葉は私のためにあったようなものだ。
今の私からでは想像出来ないと思う。
「お高く留まったもので。」
明日、髪を切りに行こう。
23 名前:名前はいらない[sage] 投稿日:04/04/14 23:31 ID:m4bB3z88
【コメント】
28 名前:日雇いくん ◆HIyaTOiQcI [sage] 投稿日:04/04/16 19:43 ID:zX+yV/3N
>>23
下の方 いろんな妄想が膨らむと思うけど、失恋の詩だと思えば一番素直に解釈でき
る。もしくはかって男勝りだったはずの自身がいつしか女に変質していて、ふとした
きっかけでそれを自嘲してみるといった詩とも読める。これつながりで、いつのまに
かおしゃれをするようになった自分を笑っているのだとすればちょっと深いかも。
そんな感じですかね。
【得点】 1点
最終更新:2007年05月20日 01:25