作品
問答
「なぜ私はかうして生きてゐるのか?」
わたくしは生まれたときから緩やかな死へと向かつてゐるのです。
花のやうに煌びやかな榮華も、母のぬくもりのやうな幸福も、死といふ現實の前では波際の砂の城。
美しい完結のために生きてゐるのです。
「私は死んでしまふのか?」
安寧を求める餘り、無關心になり、利己的になつて行つたわたくしは、
自分の奧深い命を心の中に閉ぢこめて
ただ、ただ、長い死への道のりを緩やかに待ち續づつけてゐるのです。
「なぜ神はこの世界を創造されたのか?」
滅びてゆくものははかなく美しいと神は考へたのでせう。
なにかしらに懺悔し、崇拜し、許しを乞うわたくしたちを、
神は鑑賞するため御創りになつた。
ガラス細工を愛でる樣に。
「終焉を止めることができないのか?」
始まりがあるといふことは終はりがあるといふこと。
永遠などどこにもないのです。
「この世は何のためにあるのか」
とても長い、長い時間を通して滅んでいくこの世界に氣がついた人々の絶望のために。
そして、神の想像を絶するほど長い暇つぶしのためにあるのでせう。
525 名前:「問答」[sage] 投稿日:2006/09/28(木) 18:22:12 ID:nBQ4AHFo
【コメント】
543 名前:イタチ ◆8rr1u/54T2 [sage] 投稿日:2006/10/02(月) 15:36:06 ID:h9qDcr5F
525:「問答」
どっかで読んだ気がするような問答だ。
しかしところどころ文字が絵文字になってるんだけど、
ブラウザのせいだろうか。それともわざと?
わざとだとしても狙いがわかりません。
殺人時代
1.夜
信仰のような夜がある、密航にふさわしい夜がある。
グランドピアノは発狂する。
凶器は鈍く反射する。
そして、女の指が卵の表層をなぞってゆく。
8階建てビルの5階の窓から突き出た
Yシャツをまくった一本の腕が、掌を閉じたり開いたりしている。
そんな夢を一晩中、ぼくはくり返し見つづけていた。
2.密航
船艙内には数千体のマネキンが整然と並べられている。
――不快な汗が背中をつたう。口のなかが渇いている。
ふいに性倒錯者の激しいめまいに襲われ、ぼくはうずくまる。
(ドゥンダダ、ドゥドゥ、ドゥンダダ、ドゥドゥ)
ぼくは確信している、この脱出劇が決して成功しないということを。
(懐中電灯の明かりが近づいてくる)
決定的なその瞬間、ぼくはズボンのジッパーに手をかける。
3.マネキン
鍵穴から室内を覗いている。
部屋はほの暗く、皺くちゃに乱れたベッドのうえに、
マネキンが二体、横たわっているのがかろうじて見える。
(辺りに漂う何か金属的な匂い)
死んだように、あるいは死んだふりをして二体のマネキンは横たわっている。
「嘘ではじまったものにかぎって、嘘で終わることができないものだ」
鍵穴から室内を覗いている。
突然、鍵穴の向こう側にこちらを覗きかえす目が現れる。
4.嘘で終わる
「レモンを投げる、するとレモンは放物線を描いて落ちた」
あのとき、あのひとは裸でぼくの目の前にいた。
あのひとは、ぼくの顔に唾を吐きかけることも、
ぼくの胸に倒れこんでくることもできたはずだ。
あのひとの目には軽蔑と憎悪が見事なまでに混ざりあっていた。
――死にたくない……
あのとき、ぼくは裸であのひとの目の前にいた。
――そう、あなたのようには……
「レモンを投げる、すると季節はきみのことを見失うだろう!」
そうして、ぼくらは確実な足取りで死へと向かっていったのだ。
5.きみ
寝室のクローゼットのなかにきみは監禁されている。
きみの顔はもう見分けがつかない。
きみは自分が死んでいることに気づかない。
ベッドのうえでは、一組の男女が互いの首を無邪気に絞めあっている。
(ドゥンダダ、ドゥドゥ、ドゥンダダ、ドゥドゥ)
ああ、あのひとは本気でぼくのことを殺そうとしている!
思わずぼくは射精してしまう。ぼくは掌を閉じたり開いたりしてみる。
それから、きみの名前を思い出そうともしてみる……
――最後の抵抗。
凶器は鈍く反射する。
寝室のクローゼットのなかにきみは監禁されている。
きみの顔はもう見分けがつかない。
きみは自分が神であることを疑わない。
6.朝
埠頭の朝に人影はなく、雨を孕んだ重たい空が海の頭上に垂れている。
無人の船が水平線に溶けてゆく……
灰色の波が真紅の花びらを飲み込んでゆく……
ぼくの頬に吹きつける風。ほてった頬に吹きつける風。
やがてぼくの姿は海のなかへと消えるだろう。
(しかし、きみはそれを信じない)
――少しずつこぼれ落ちる花束よ、血の花束よ、両手に抱えた花束よ。
すべてこのまま沈んでゆけ!
ぼくの、ぼくらの花束よ。
526 名前:殺人時代[sage] 投稿日:2006/09/29(金) 16:20:53 ID:jvHZWoY5
527 名前:殺人時代[sage] 投稿日:2006/09/29(金) 16:23:18 ID:jvHZWoY5
528 名前:殺人時代[sage] 投稿日:2006/09/29(金) 16:25:05 ID:jvHZWoY5
【コメント】
543 名前:イタチ ◆8rr1u/54T2 [sage] 投稿日:2006/10/02(月) 15:36:06 ID:h9qDcr5F
528:殺人時代
意味は、全体を通じる意味という意味で、さっぱり意味がわからない。
同じ情景が姿を変えて繰り返されて行く。
これもトップの作品同様いろんな物が出て来すぎるが、
それがかえっていい小物の役割を果たし、不思議な雰囲気を引き立てている。
うまい。書き慣れている。読み慣れている。
545 名前:イタチ ◆8rr1u/54T2 [] 投稿日:2006/10/02(月) 16:43:55 ID:h9qDcr5F
2点
526-528:殺人時代
お題を壮大に描いた作品が多かった中で、この異色の切り口。
スリリングでクールでシュール。
お題に沿ってるかはわからないけど、沿ってる感じはした。
547 名前:ikaika ◆YffIGX9Bno [] 投稿日:2006/10/02(月) 17:24:02 ID:DB1Od8Xc
>>526-528 二点
いたしかた説明くささを感じてしまうが、ところどころいいフレーズが飛び出し楽しませてくれる。
内容はあまり読み取る気が出ないが、(すまん)もっとはっきりいうと、冒頭で、もうこれに二点
出そうと思った。
965 名前:リーフレイン[sage] 投稿日:2006/10/02(月) 15:17:55 ID:5AoFWZh4
>526 殺人時代
悪夢の羅列。 夢特有のどこか歪んだ真実を暴き出すような怖さが漂い、
アンハッピーエンドの予感とそれを裏打ちする 強烈な罪悪感。
彼は嘘をつき、そしてその嘘があばかれることに怯えているのだろうか?
死にたくない。しかし、この詩は生きていることそのもの対する原罪を問うような懐疑に満ちていた。
彼は潔癖な死へ歩みをすすめたいのかもしれない。タナトスという言葉が浮かんだ。
詩は 2つの構成要素をもっている。
一つは自らの精神を覗き見るようなメタフォーで、悪夢の中を逍遥する主体。
もう一つは、逍遥の中であらわれたマネキン、鍵穴から見つめるなにものか、クローゼットの中のきみでもある他者。
既に死んでいる彼女は死んでいることに気がつかず、ぼくを殺そうとしていて、神であるこを疑わないが
もちろん神にはとうてい及ばない。(死した神? ”希望”あるいは”ビジョン”の喪失)
主体と他者はさまざまな役割を夢特有の整合のない状態で交換し合いながら溶け合いつつ分離する。
他者はこの詩において圧倒的に非力だ。彼は他者によって殺されようとしているが、他者は既に死んだ存在でもある。
そして結局のところ彼は彼自身の足で海へ向かうのだ。
966 名前:リーフレイン[sage] 投稿日:2006/10/02(月) 15:19:14 ID:5AoFWZh4
第6連において、悪夢の逍遥は終焉を迎え朝が訪れるの。確実な足取りで死へと向かっていった主体は海のなかへ消える。
>きみはそれを信じない という一行がこの詩のストーリーのメタ化をなしとげ、
これが実体の死ではなく 彼の中の何ものかの終焉であることを示唆する。
その何ものとは何なのだろうか? ポエジーだろうか? それとも才能であろうか? 希望であろうか?
生きることの意味だろうか? 彼が彼を成すところの根幹の部分が海へ消え、そして彼は花束を捧げる。
彼自身へ向かって。
百億の昼千億の夜 は生と死の物語でもあるから、作者は自らの生命を詩に問いかけてみたのだろうかと思った。
しかし、「殺人時代」という題に立ち戻って考えてみる必要があるのかもしれない。
つまり我々は、自らが自らを(あるいは互いに)殺しあっている時代に生きているらしい。
この詩は美しいが寂しい。 彼は彼自身の定義のために彼の夢を使用しているような気がする。
頑なに他者を廃する姿が美しさとも、プライドとも読み取れる。 だが、閉塞を予感させる手法でもある。
どうか夢を破壊して外に出てきて欲しいと切に願ってしまった。
967 名前:リーフレイン[sage] 投稿日:2006/10/02(月) 15:21:26 ID:5AoFWZh4
↑ミス訂正
朝が訪れるのー>朝が訪れる。
971 名前:んなこたーない[sage] 投稿日:2006/10/06(金) 23:00:36 ID:/hSTHRC0
殺人時代書きました。
なんだかんだでここまで書きあげるのに一時間半くらいかかりました。
こっからさらに推敲していけば中々の力作になるかなと思いつつ、
題をよく見てみたら「百億の昼と千億の夜」
僕はてっきり「朝と夜」だとばかり・・・
ガックリきて、そこで手放してしまいました
まあとにかく閉塞感ってのは時代の病理じゃないかと僕は思うわけですね
想像力は敗北しているわけですから
【得点】 5点
- 葉土 ◆Rain/1Ex.w:1点
- イタチ ◆8rr1u/54T2:2点
- ikaika ◆YffIGX9Bno:2点
2時間24分の昼と21時間36分の夜
地球は時計の針で動いている
時計仕掛けの心臓で僕は動いている
ドリルはダイナモの息吹で進んで行く
向こう側へのTunnelが積み重なる
一日三回の昼飯を食べる
その間だけ暗闇は昼となる
名も知らぬ大木に抱かれて緑茶を吸う
2時間24分の昼
そんな日々が
天寿を越えるほどに続くのなら
果てはあるのだろうか
弥勒に逢えるのだろうか
その弥勒菩薩は「はりぼて」だ!
時計仕掛けの心臓はいつか止む
Tunnelは永遠に開通することなく止まる
地響きを立ててのし歩く恐竜よ、来い!
お前の下で潰れて初め僕は生き返る!
529 名前:2時間24分の昼と21時間36分の夜[] 投稿日:2006/09/29(金) 21:56:43 ID:jH2678pZ
【コメント】
544 名前:イタチ ◆8rr1u/54T2 [sage] 投稿日:2006/10/02(月) 15:59:07 ID:h9qDcr5F
529:2時間24分の昼と21時間36分の夜
もうちょっと言葉を開いたほうがいいと思う。
短くまとめようとするあまり言葉足らずになっていないか。
また逆に最後のビックリマークは要らないだろ。
言葉足らずに進めて来たくせに最後で興奮されて強調されてもな。
お題を人間的現実的な時間に直したタイトルのアイディア、それだけの作品、とも。
968 名前:イタチくん ◆8rr1u/54T2 [sage] 投稿日:2006/10/03(火) 09:25:30 ID:KP3py3Pd
チャンプはななしさんかぁ。
俺は「2時間24分の昼と21時間36分の夜」を書きました。
次のお題は前回とうってかわって人集まりそうだね。
ぼくたちがふっとんでいたとき
ぼくたちがふっとんでいたとき
きみはほんとうに
地平線のかなたの蒙古高原に
腰をおろしながら
羊たちの群れが大きくうつった
満月のシルエットをながめていたのか
ぼくたちがふっとんでいたとき
ほんとうにサモトラケのニケは
あの大理石の殻をはがし
ルーブル美術館の回廊から
太陽への懐かしみを捨てきれず
エーゲ海に向けて飛び立ったのか
おとなたちとこどもたちほど
世界はひろいと必ず言うのだ
それならばこえをきかせてくれ
本当にききたいのかはぼくにもわからない
たとえば
焼けつく野火のまんなかで
喉がかわいたくるしさや
しぼみゆく目の干塩などを
舐めさせようとする
かのたくらみに
ことばが一枚噛んでいるなら
ぼくたちはききたくない
やさしくつつむこえでもなく
きびしくささるこえでもない
ひろびろとしたせかいを
わたりつづけようという鳥たちのこえのように
ひびきだけをきかせてくれ
ほんとうに ほんとうに
ぼくたちがふっとんでいるとき
きみはどこにいたのかを
530 名前:ぼくたちがふっとんでいたとき[sage] 投稿日:2006/09/29(金) 22:59:19 ID:NHrTajP/
531 名前:ぼくたちがふっとんでいたとき[sage] 投稿日:2006/09/29(金) 23:00:37 ID:NHrTajP/
【コメント】
544 名前:イタチ ◆8rr1u/54T2 [sage] 投稿日:2006/10/02(月) 15:59:07 ID:h9qDcr5F
531:ぼくたちがふっとんでいたとき
詩を書き&読み慣れている感じだ。田村隆一とか好きそう。
しかしだからといって真似事レベルに留まってはいない。
まずタイトルがうまい。引き付けられる。これだけで既に詩だ。
内容を読む。内容も詩だ。ぜんぶ詩だ。たぶん、作者も詩だ。
545 名前:イタチ ◆8rr1u/54T2 [] 投稿日:2006/10/02(月) 16:43:55 ID:h9qDcr5F
3点
530-531:ぼくたちがふっとんでいたとき
本当はこういう現代詩撰集に載ってそうな詩は選びたくないんだけど、これには参った。
お題に沿ってるかどうかはわからないけど、お題通りのスケールは感じた。
すべてが詩だ。もう、ほんとに感じた。
547 名前:ikaika ◆YffIGX9Bno [] 投稿日:2006/10/02(月) 17:24:02 ID:DB1Od8Xc
>>530-531 三点
胸が苦しくなる詩というのはあるもので、これまさにそうだ。
あえて、読解や解釈などせずに、私は純粋にこの胸の苦しみを感じていたい。
今回、三点を出すなら、これ以外には無いと思った。
967 名前:リーフレイン[sage] 投稿日:2006/10/02(月) 15:21:26 ID:5AoFWZh4
>530 :ぼくたちがふっとんでいたとき
いい詩というのはとても平易な単語を使っても、やはりいい詩なのだとしみじみ思います。
力強い繰り返しを読みながら、 どうしょうもなく懐かしく、どうしょうもなく
追い求めてしまう何かに、ほんの少し触れえたような気がした。
あたしが審査なんかしちゃあいけないような気がしてしまったのだけれども
精一杯の敬意をこめて3点をつけさせていただきます。ありがとうございました。
【得点】 9点
- 葉土 ◆Rain/1Ex.w:3点
- イタチ ◆8rr1u/54T2:3点
- ikaika ◆YffIGX9Bno:3点
願先
叶えられない現実の途中
自分勝手な夢と他人を嘲笑する現実の途中
見つめ続けたいものがひとつはある
逸らしたいものがひとつある
眼を開ければ光 眼を瞑れば闇
それは瞬きの間でも
ドコニイルノ ドコニイルノ
僕はここに
ミエナイ ミエナイ
君は向こうに
眼を開ければ光 眼を瞑れば闇
一瞬の瞬きでさえ あなたを見つめられない闇は訪れる
一生のうちで明らかに多いのは闇
眼を瞑るとすべてが遠ざかる闇
見えない世界の中で どこに届くと分からない声の広がりに期待して
叫び続けるその声が 炎上する世に紛れても届け届けと祈りを込める
たとえ100年生きて叶えられないとしても
次の100年に託し それでも叶えられないのなら、もう100年
難しい言葉がなければ叶えられないことですか
それともたった経緯1度の違いが支障に繋がるのなら
過ぎてしまった故国を捨ててもいい
それでもまだ叶えられない現実の途中
それでも尚 嘲笑(わら)われる現実の途中
532 名前:願先[] 投稿日:2006/09/29(金) 23:29:08 ID:R2z722gi
【コメント】
544 名前:イタチ ◆8rr1u/54T2 [sage] 投稿日:2006/10/02(月) 15:59:07 ID:h9qDcr5F
532:願先
よくある抽象的かつ説明的な詩かと思ったら意外とズンと来た。
「過ぎてしまった故国を捨ててもいい」に込められた重みはどうですか。
うまさは感じないけど、たぶん、この作者も詩だ。
545 名前:イタチ ◆8rr1u/54T2 [] 投稿日:2006/10/02(月) 16:43:55 ID:h9qDcr5F
2点
532:願先
まばたきの描写とか、全体的に説明的なんだけど、でも感じて読めた。
お題に対してはこじつけっぽくもあるけど沿ってなくもない。
何よりズンと来た。それだけ。
ズンと来た自分を信じてますから。
【得点】 2点
第十八の御誓願
浄土にて待ちまいらせそふらえば
必ず必ず二たびあいまみえんこと約しそふらう
533 名前:第十八の御誓願[sage] 投稿日:2006/09/29(金) 23:40:05 ID:0Apv4o2k
【コメント】
544 名前:イタチ ◆8rr1u/54T2 [sage] 投稿日:2006/10/02(月) 15:59:07 ID:h9qDcr5F
533:第十八の御誓願
ははぁ。。。
547 名前:ikaika ◆YffIGX9Bno [] 投稿日:2006/10/02(月) 17:24:02 ID:DB1Od8Xc
>>533 一点
なかなかニクいセンスだと思う。このお題でこれを出してくる書き手の老練さを感じるのは私だけだろうか。
子供ではできない大人の嗜好ってやつだろう。いつになるかわからないが、現世での願いを来世という浄土
での出会いに託すその思い。今から、まだ見ぬ未来への延長線として、とてもニクいという言葉がふさわしい詩だと思う。
【得点】 1点
最終更新:2006年10月11日 01:11