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作品
天が見るは戦跡
126 名前:天が見るは戦跡(1/2) [sage] 投稿日:03/09/16(火) 22:58 ID:nmWLjsDJ New!!
透明な朝の空気が
そこにもそそぎこむ
彼はそこに
一人で
立っていた
人、と呼べるものは
彼一人だった
赤い血でひたされている大地に
とてもあざやかな
空の青が映っている
空が雲に覆われても
彼はまだそこに立っていた
さっきの赤い血が蒸発して
雲へと変わったのか
落ちてくる雨は
悲しみの音を含んでいる
さっきの赤い血が固まって
大地へと変わったのか
雨が打つ地面の音は
憎しみであふれている
127 名前:天が見るは戦跡(2/2) [sage] 投稿日:03/09/16(火) 22:58 ID:nmWLjsDJ New!!
二つの音が合わさって
心をふるわす
歌になる
いつか
悲しみも憎しみも
渇いた響きを残すだけ
歌が終わるころ
金の光が黒い雲を切り裂いて
なぐさめるように大地をいやす
反対の空には
白く輝く死者の魂が集まって
千の色の虹になる
ふと、彼は
空を見上げ
土となった
屍をまたいで
その虹へ向かい
歩き出した
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もっと摩ってよ!
128 名前:もっと摩ってよ! [] 投稿日:03/09/17(水) 00:06 ID:7pYfaan2 New!!
暗い部屋 私の布団 横で寝ている子供が言う
「摩ってよ!もっとゴシゴシ摩って!」
私は子の背中を摩る
オレンジ色して 爛れた背中
痒いのだろう 猛烈に痒く 疼くのだろう
サッサッサッサ 子の背中を摩る音だけが 暗い部屋に聞こえる
「もっと強く摩って!そうしないとぜんぜん気持くないよ!」
ザッザッザッザ さっきより強く 弱く貧弱な肌を傷つけないよう慎重に
私は 息子の背中を摩る
息子は今年で34才になる
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スケッチ
129 名前:スケッチ [sage] 投稿日:03/09/17(水) 00:42 ID:eO+1cRjJ New!!
大金をはたいて この世の孤独を買っている
理解されないことの向こう側には 非常に
非常に小さな木漏れ日が見える
回転木馬は速度を変えず 僕の平日なんて一瞬で吹き飛んで
老いていくことが
目をつぶって赤い砂に埋まって行くことが
悲鳴も無礼もなく 僕を骨抜きにしている
その不安定 となりに誰かがいないと
とある道程の自分を直視する
背後にはいつも幽霊がいる
幽霊のような平凡さにつまづいて ゆるやかに悲しみは癒され
だのに
この世の自然数はすべて無意味だというのかい?
この世の自然数がすべて無意味なら この僕に
優先装置を買って ねえ買って
(銃声)
動物の心理が怖いよ 知人の葬式の参列者が
かって気ままにうつむくのは怖いよ
なにひとつ たったひとつ得られないままに
スケッチブックのページがめくれ
虚時間の彼方へ消え去るのは怖いよ
あらそいごとの果てで この世の自然数を買っている
理解されないことの向こう側には 非常に
非常に小さな木漏れ日が見え(銃声)
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記者
131 名前:記者 [age] 投稿日:03/09/17(水) 03:09 ID:GcQCM9yD New!!
記者記者 しゅぽしゅぽ
守保守保 しゅぽぽ
僕らを乗せて
守保守保 しゅぽぽ
はやいぞはやいぞ蚊帳の外
赤目もとぶとぶ 見栄もとぶ
はしれ はしれ はしれ
戦争だ 戦争だ たのしいな
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戦争
132 名前:戦争 [] 投稿日:03/09/17(水) 10:29 ID:ozRawwYf New!!
限られた空と区切られた時間
果てない予感と朽ちた鉛にぐるぐるの空が襲いかかる
軽くなった水筒を捨て
弾切れの長銃を捨て
息の切れた仲間を捨てた
ひび割れた暫壕で
ぐるり明日を見渡せば
薄暗い国境の向こうに
雨に焼かれる故郷を聞いた。
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Terrorizer ~消えゆく少年たちへ~
133 名前:Terrorizer ~消えゆく少年たちへ~ [] 投稿日:03/09/17(水) 11:45 ID:PQePV0wm New!!
闘争と君臨によって作られた 鉄の軍団
彼は軍靴の響きと共に ベルリンを手にし
高笑いが響き 俺たちは何も考えず ただ走る
流れた血と同じ量の弾を撃ち込み ヨーロッパを灰と化せ
鉄条に囲まれた闇の工場 煙突から立ち上る生命の煙
廃墟の街にも光を・・・・・
そして血しぶきは凍った大地を赤く彩り
バルバロッサの旗の下 百万の生命を捧げる
冬将軍が吹き荒れ 飢えと寒さがモスクワを襲った
挟み討ちに遭うベルリン 最期の時がそこまで迫り
独裁者は自らの手で
銃でこめかみを打ち抜く
ここは何処なのか? 何も思い出せない
大空に散った友の顔 美しい祖国さえも
誰の為に戦ったのか 教えてこの俺に
群がるグラマン 最期が近づいてきた
薄れる記憶の中で 何かが俺に囁いている
誰の為に死ぬのか 教えてこの俺に
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あ・・・
134 名前:あ・・・ [sage] 投稿日:03/09/17(水) 19:15 ID:nYmrFqJJ New!!
なんで
空が赤いんだろう
なんで
地面が赤いんだろう
なんで
人が赤いんだろう
なんで
力がはいらないんだろう
なんで
なんで
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誕生日
135 名前:誕生日 1/2 [] 投稿日:03/09/17(水) 20:25 ID:x7Tf/CfQ New!!
大して甘いもの好きでもない姉に、
誕生日だからって調子にのってケーキなんぞを買って帰った父がそもそも悪かった。
お祝いだからって妙にはりきって必要以上に油っこい料理を振る舞った母も同罪だ。
おばあちゃんだけがずっとほほえんでいた。
思春期の弟には、暗くした部屋の、
ろうそくの火に浮かぶ家族の薄気味悪い笑顔がすでにえもいわれぬ苛立ちを生んでいて、
はっぴばーすでーとぅゆーを無言でやりすごす弟に、歌の為に消したテレビの沈黙に、
消えたろうそくよりも暗い雰囲気がそこにはあった。
姉の、苺だけをつまんで、残りは嫌そうにする仕種に、弟が切れた。
拳を叩き付ける前に、机を目視しなかったのが悪かった。彼のケーキは、
彼の肘近くをかすめ、どさ、といった。
沈黙、怒号、なだめ、金切り声。そして沈黙。
おばあちゃんだけが、微笑んでいた。
そのとき弟はただ拳を握りしめていた。部屋に帰るのは負けを認めることだったから。
「おばあちゃんが若いころはね、
それが彼の唯一明確に覚えている台詞。
僕はきっと、言うならば、何かを殺したいような衝動にかられていた。それは具体的な対象ではなく。
気付けば僕は泣いていた。
136 名前:誕生日 2/2 [] 投稿日:03/09/17(水) 20:28 ID:x7Tf/CfQ New!!
生と死が剥き出しになっていたその淡々とした世界に、
僕の「さつじんしゃ」たる慟哭は、その暗闇に佇んだ廃墟よりも空回りし、
傷痍弾ほども燃えあがらず、
立ち尽くす僕は無力で。
ただそこに、戦争に、その若さを殺された、
精気の失せたようなおばあちゃんに、僕は、泣いたんだろう。
保持すべき激情を、僕はそのとき知った。
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最終更新:2006年10月05日 23:49