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作品
大人の私の
708 名前:大人の私の (1) [] 投稿日:03/08/21(木) 00:02 ID:zIehwz1b
カーテンを揺らして 若葉のにおいが入ってくる
広いベージュの食卓 大きな水槽
ブルーオーキッドの魚影 手元で泳ぐ
例えば、あなたは自分の魂を砕く
或いは魂の首を締める
母さんが帰ってくるのを 座って待っている
真っ白なノートに描く物がなくなったから
全ての本をツマラナク思うから
ベージュの食卓の向かいガワに 誰もいないから
なんて悲しいヒトなんだろ
誰の近くにもいなくて 誰も近くにいない
709 名前:大人の私の (2) [] 投稿日:03/08/21(木) 00:03 ID:zIehwz1b
熱帯魚の影が大きくなって 部屋中にひろがると夜になって
救急車のサイレンが 父さんを運んでいると思い込む
秒針の音がコチコチいって 林の風がザワザワ騒ぐ
ずっと先の素晴らしい救いなど
必要ないものなんです
こつこつ積み重ねた孤独が 故郷になったようです
大人の私の 心の童話
悲しみを教えて下さい。寂しさがあります。
言葉が通じません。感情はありません。思いは伝わりません。
【コメント】
【得点】 0点
探し物
710 名前:探し物(1/6) [sage] 投稿日:03/08/21(木) 00:44 ID:gXwjFA+6
ランプの伸びやかな明かりの中で
背を丸め 足を擦り合わせ
向こう一年間の予定をカレンダーに書き記していた
先生がいました
夏だというのに息が白むほど冷えた夜のことです
夜も深まり眠くなった先生が欠伸をしていると
机の右端に置いた壷に小さな虫が吸い込まれていきました
覗きこむと虫が墨汁に浮かんで足をわずかに動かしています
あっ
という驚きとも怯えともつかない
幼い声で先生が叫びました
壷を倒してしまったのでした
カレンダーは墨汁でいっぱいになりました
壷がいやしい犯罪者のように揺れています
黒い墨汁の池はランプを反射して動いていて
浮かんでいた虫は
足を一層絡ませて悶えています
いずれ死ぬでしょうねかわいそうに
711 名前:探し物(2/6) [sage] 投稿日:03/08/21(木) 00:44 ID:gXwjFA+6
しかし先生は「やれやれ、」と言いながら
墨汁の滴るカレンダーをごみかごに捨てると
そのまま布団にもぐりこんだのでした
その夜に見た先生の夢は奇怪怪奇なものでした
先生は草原に立っていて
なにかを探しているようでした
先生はドラ焼きが大好きでしたのでそれを探していたという説が有力ですが
本当のところは先生にもなにを探しているのか見当がつかないです
おかしいですね 探し物がわからないのに探しているなんて
こんなことがあるのでしょうか?
でも先生は一生懸命に探しているのです
草原は広いのに(学校のグラウンドの何倍もありました。)
先生は同じところをぐーるぐーる回っているだけでした
何度回った事でしょうか もう嫌になっちゃうぐらい回りましたよ
先生は疲れて座り込みました
するとどうでしょう 歩き回っているときには見えなかった
小さな井戸があるではありませんか!
先生は井戸に向かって走り出しました
すぐ近くに見えたのにいくら走っても井戸は見当たりませんでした
息ができなくなるぐらい走った先生は空を見上げてまだ走りつづけています
ひーひーひーひーもうだめひーひーひーひー
もうだめだあひーひーひーひー
もおだめーーーーーー
712 名前:探し物(3/6) [sage] 投稿日:03/08/21(木) 00:44 ID:gXwjFA+6
もうだめだと思って座り込んだら
また井戸がすぐ近くに見えました
先生はがっくりしました
同じ事を繰り返すのは馬鹿だと思った先生は
芋虫のように井戸に近付けばどうだろう?と思いつきました
笑っちゃいますけど先生は本当に芋虫の格好を真似して前に進んだんですよ?
お尻をあげて体を伸ばす
お尻をあげて体を伸ばす
お尻をあげて体を伸ばす
おいっちにっ
さんしっ
おいっちにっ
さんしっ
するとどうでしょう。
先生は見事に井戸へたどり着いたんです!
先生がようやくの事で井戸に触れた瞬間
パーカッションの音と桜吹雪が先生を一斉に祝福しました
それは虫たちの大合唱した!なんて素敵なんでしょうか!
それに感動した先生は
むかし兵隊に行った時のことを思い出しました
先生は腕振り腕振り、軍艦マーチを唄いはじめました
「・・・・・・
きさまあとおれとはどおきのさくらあ
はなればあなれにちっろおともっ
はなのみやあこのやすぐにじんじゃ
はなのこずげぇにざいてぇあおお
・・・・・・・」
713 名前:探し物(4/6) [sage] 投稿日:03/08/21(木) 00:46 ID:gXwjFA+6
先生は涙を抑えながら感極まった顔をして歌い上げました
しかし、辺りを見回すと誰もいませんでした
虫も草木も白けきった様子です
可哀相な先生は、泣きながら泣きながら(もうそれは孤独そのものです)
崩れ落ちたのでした
先生はねっころがったまま
空のお月様を見ていました
お月様の優しい光で慰められた先生は気を取り直して
ふたたびなにかを探し始めました
きっとこの古びた井戸の中にあるんだと信じきっていました
すっきりした顔をして、井戸を覗き込むと
真っ暗でどこまでも続いているようです
先生はどのくらい深いのだろうかと思い
おおいと小さな声を井戸に落としました
やけに遠くまで響きます
やけに遠くまで響くのです
おおおいと今度は大きな声で叫んでみました
するとどうでしょうか
おおおおおおおおおおおおおおおいおいでええええええと返って来たのです!
714 名前:探し物(5/6) [sage] 投稿日:03/08/21(木) 00:46 ID:gXwjFA+6
先生はなんの躊躇もなく
井戸に落ち込みました
一直線に落ちていく中で先生は
色とりどりに咲く花を見ました
笑うと花びらが舞い散りました
ずいぶん落ちつづけました
世界の反対側まで落ちつづけているはずなのに
地面はみえませんでした
いつしか花もなくなって
先生は今、
真っ白な世界を落ちつづけているのです
真っ白な世界に、先生が探しているものがあるはずがありませんでした
先生はがっくりしました
脂汗が体中から滴り落ちて井戸の底の水に落ちる音がします
窒息しかけながら先生は時計の音を聞きました
ぼーんぼーんぼーん
ぼーんぼーんぼーん
ああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛――
715 名前:探し物(6/6) [sage] 投稿日:03/08/21(木) 00:53 ID:gXwjFA+6
時計の鳴る音で先生は目を覚ましました
もうとっくにお昼の12時を過ぎていました
寝すぎた!時間の浪費だ!
先生は、勢いよく布団から置きだして
玄関の扉を開けました
夏の生ぬるい風と共に
色とりどりの花びらが息もできないほど部屋に舞い込んできたのでした
先生は呆気に取られてしまいましたが
探し物を見つけた気になりました
716 名前:715 [] 投稿日:03/08/21(木) 01:10 ID:gXwjFA+6
訂正します。
4行目:先生は、勢いよく布団から置きだして×
先生は、勢いよく布団から起きだして○
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【得点】 0点
影・絵本
723 名前:影・絵本 [] 投稿日:03/08/22(金) 22:14 ID:7AUvdwS/
仕立てあげたドレスで
お姫さまは毒りんごをさがす
くちびるに浮かぶ花々
さわがしい空を吸いこむように
森は しん と、うなった
ゆらぐ影のように
ふらつく足を ぺたんと折り曲げて
ひらく絵本に 瞳つぶやく
「めでたし めでたし」 と。
その続きは?
重ねたみずうみに沈むのは
汚れのない宝石でもなくて
美しい指をかざるのは
王子さまの甘いささやきでもなくて
背中のうらがわを刻む
赤黒い疎外感
タバコで焼きついた霧
一本がいくつにもなって
くだけるような眩暈
つぶやけない瞳
それでも空は青いよ
【コメント】
【得点】 0点
影磁石と、あと、ねずみ
724 名前:影磁石と、あと、ねずみ (1) [sage] 投稿日:03/08/23(土) 01:09 ID:3cNa+ZTk
その男は逃げ惑っていました。
とおくとおくの所まで、
彼の腰から生えた二本の足をつかい、
彼は川沿いまで来ていました。
彼は影に追われていました。
太陽を背に受け、影を作った者に追われていました。
男は常に月光をみつめながら走り、ときに歩き、
この川沿いまで来ていました。
男は川の流れをみていました。
正確には、河を泳ぐ落葉の、
川底に落ちた葉の影が、
泳ぐ落葉をひっぱっているその様を見つめていました。
男がその様をみて、もう影から逃げるその行動が、
影と影が磁石の反極のように、離れる行動が、
まるでいやになってしまいました。
725 名前:影磁石と、あと、ねずみ (2) [sage] 投稿日:03/08/23(土) 01:09 ID:3cNa+ZTk
男が目を上げるとそこにはコテージがありました。
もう逃げることをやめた男はそのコテージで、
追いかけてくる反極を待ち、人生を終わらせようと思いました。
コテージのドアをノックすると、老夫婦が顔を見せました。
ぐちゃぐちゃになったおとこの姿を見て、一瞬あわてたように見えましたが、
すぐにシャワーを浴びるように言われました。
シャワーをあび、老夫婦からもらった服を着ると、
老夫婦は男に、ここに住んでもいいよ、と言いました。
でも子供部屋しか空いてないけど、とも言いました。
男はそれでもありがたいぐらいでした。
老夫婦の子供部屋に落ちついた男は、
ここにいるべき人物について考えました。
考えたけれども結論はでず、悲しい推測だけが、頭をよぎりました。
子供部屋には遊び道具が沢山ありました。
おもちゃや絵本や、その他もろもろの子供の遊び道具でした。
その中で男が見つけた本「影磁石と、あと、ねずみ」という本を、
影が追いつくまで何度も何度も読みつづけました。
726 名前:影磁石と、あと、ねずみ (3) [sage] 投稿日:03/08/23(土) 01:10 ID:3cNa+ZTk
影が追いついた日、男は川岸に立っていました。
ふと、頭の中を、この原因をつくった少年をおもいだしたましたが、
ああ、わるいことをしたな、とその程度の考えでした。
そして沢山の警官隊に囲まれて、男はいいました。
「あの、影がついてくるのはそれはちがくて、
影がひっぱってるっていうのもそれもちがくて、
ええと、ただ落葉から落ちた影は大変きれいですね」
そういって男は川のなかに入り、
それは男は男自身の影になりました。
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童話(はなし)をしよう
727 名前:童話(はなし)をしよう [] 投稿日:03/08/23(土) 03:34 ID:Bff8+roc
いろいろ可能性が残ってるほど子供じゃないわけで
それでも星をとりたいと思う気持ちは残っているわけで
いちばん必要な今は
楽しくなるための時間(ひととき)
今日あったことと
なかった方がいいこと
お話ししよう
明日はきっとそうなるよ
オレたちは誰かの役に立っているのかなぁと思うとき
ゲームですよとやさしい声が聞こえてくるならば
ありがとう神さま今は
退屈な時間を楽しもう
ささやかな決心も
もひとつかなわないけど
お話しをきいてよ
やさしい心の光のことを
ひたむきに生きたって報われることは少ないんだけど
がっかりしてもそれでも年はとっていくわけで
いちばん必要な明日を
楽しく待つための時間(ひととき)
昨日なければ良かったこととか
明日あったら良いこと
話してみよう
願えばきっと明日はくるよ
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【得点】 0点
濡れるような夏の
728 名前:濡れるような夏の.1 [age] 投稿日:03/08/23(土) 04:09 ID:SM0YKXwE
「そうか、ベイさんは、まだキジムナーとは会ってないんだね」
南国特有の濡れるような暑い夜、居酒屋の大きなテーブルで泡盛を傾けて、
カコちゃんとヨシコさんは、内緒ばなしをするようにお互いの顔を近付け、
くつくつと屈託なく笑った。
「キジムナー?いるの、本当に?」
「うん、いるよ、やんばるあたりに行くと」
「ガジュマルの木に住みついてるんだよ」
コンクリートの床、プラスチックのテーブルとイス、
正面にはステージもあって、「内地」から来たバンドが
「いちゃりば ちょーでー」と大声で歌っている。
大勢の客は彼らを歓迎して、合いの手をいれたり、指笛を吹いたり、
なかなかやかましい。若衆と目が合って、にんまり笑う。
三人とも相当量の泡盛が入っているはずなのに、
カコちゃんとヨシコさんは、ほとんどかわらない。
「五歳のころから飲んでるからね」
「いちゃりば、ちょーでー?」
「うん、『一度会えば兄弟』という意味だよ」
「沖縄のことば。私たちもそんなものね」
汗がじっとりと吹き出す、頭はぐるぐるまわる、耳がわんわんいって、
夜は真っ青に湯だって終わりそうにない。
729 名前:濡れるような夏の.2 [age] 投稿日:03/08/23(土) 04:10 ID:SM0YKXwE
「キジムナーと、ちょーでーになれるかな?」
「わあ、ちょーでー、なれるよ。キジムナーの好きなものを、木の下にそっと
置いておくの。魚とか、蟹とか。あとは氷」
「氷?何、それ。私も知らない」
「氷はね、昔は沖縄にはなかったから。キジムナー氷食べて、気に入ったんだ
よ、きっと」
「そうかしらねえ。でもキジムナー、悪さもするからねえ」
「そんな時は、キジムナーの嫌いなもの置くのよ、知ってた、ベイさん?キジ
ムナーは、蛸が嫌い。あとはね、うふう、オナラが嫌いなんだって」
「うふう」
ライブはますます盛り上がって、囃子も指笛もいっそうやかましく、
夜はまだまだ終わりそうにない、観客は総立ちで、踊り出す者もいる。
「ベイさん、明日はきっとキジムナーに会えるよ」
「うん、キジムナーは、どこにでもいるから」
カコちゃんに手を引っ張られて、あやしい手付きで、ふらつきながら、
隣のニイニイ(兄さん)と肩を組んで、暑く濡れるような夏の夜、
夜はいつまでも終わりそうになく、みんなで大きく口を開いて、
終わらない琉球の夜、終わらない夜、夜の中、白い蛍光灯、踊る、踊る、
踊る。
【コメント】
【得点】 0点
死の舞踏
733 名前:死の舞踏~シンデレラ~ [] 投稿日:03/08/23(土) 23:48 ID:/sTe0QUL
ナルシストな彼女は 今日も薄幸なヒロインを演じている
エデンの泉に溺れるように 妄想を抱きエーゲ海へ沈みゆく
ガーデニアの蕾の中 閉ざされた世界に幻想の花を咲かせて
パラレルな恋模様はパリの空 彼女は深い目覚めの中で微笑む
キャラメル色の髪を結い 化粧を施しドレスを纏い 舞踏会へ消ゆ
734 名前:死の舞踏~白雪姫~ [] 投稿日:03/08/23(土) 23:57 ID:/sTe0QUL
空白の瞬間の中で 夢物語をなぞっていく指
残雪に足をとられぬように 階段を上って行く
お姫様が夢見た舞踏会 煌びやかな衣装と仮面
その内に秘められた悪意と悲劇に気付かないまま
報復と殺伐さをとぐろ巻くアクセサリーの不気味
復讐の時は今 彼女の足に燃え滾る鉄の靴を
惨劇の夜は狂ったステップと共に 死の舞踏をご覧あれ
735 名前:死の舞踏~眠りの森の美女~ [] 投稿日:03/08/24(日) 00:02 ID:cdGeLD3b
眠りは永遠にあれ
りんご売りがそっと呟く
のぞきこめば苦悶
森の中に葬られた、悪意と悲劇の犠牲
のぞきこめば安息
美しい姿を遺して
女は舞踏会に消ゆ
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【得点】 0点
最終更新:2006年10月05日 23:54