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作品





山神



黒茶けた落ち葉ガサガサ蹴って
分厚い霜柱ザクザク踏んで
お社様の坂道登る
痛いばかりの耳マフラーに隠して
塊のような北風やり過ごす
石油ストーブの匂いが
コートの下のセーターに染み付いている
暖かくてお守りみたい
足元の落ち葉がじょりっと滑る
だんだん
身体からぞわぞわと触角が伸びていって
凍えた栴檀の木や朽ちた鳥居を撫で回す
祠の擦り減った角々に
枝ばかりの冬影が柔らかく張り付いて
それは私の足元からもキノコの菌糸のように繋がれていく
巨大な血管が私を通り、山を抜け、木々の枝先まで張り巡らされる
私は一個の心臓になる
冬の拍動になる
お社様に手を合わせて祈りながら
私の触角は一本の糸になって麓町に届く
妹のくりくりと動く冷たい瞼に
そっと口づけする


836 名前:山神[] 投稿日:2006/12/17(日) 23:00:18 ID:HcAn0yLm


【コメント】

855 名前:侵入の作者[] 投稿日:2006/12/28(木) 04:57:04 ID:bBoFpbpH
>836 山神
一読:上品。
二読:情景と一体化していく。自然との合一。日本人の救われ方ですね。最終行、口づけが違和感。
三読:擬音が鼻につき始める。これ、山じゃなくても、街でもありそうですね。
ノスタルジー出すための山なんですね。しかし、これは個人の思い入れに左右されてしまうか。





侵入



きみは彼に向かって自分の気持ちを打ち明けたいと つよく 願った
しかし、こわい
自分は吐き出して楽になりたいだけではないのだろうか?
いったい、いまがそのタイミングなのだろうか?
それでひとりごとのように言った

好きになったんだけど

彼はブラックのコーヒーにスプーンを突っ込み、やたらにかきまわしながら
今度は誰?
と、目を上げずに訊いた
きみは
彼の口元に意地のわるいような
こばかにしたような笑みが一瞬浮かんだのを見逃さなかった
いいサイン、だと思った
きみは彼に対する観察をここ数週間怠らなかったので
彼が気取り屋の皮肉屋で自信のない善良な人間であることをはっきり把握していた
したがって
彼はきみの言葉になにかを期待した彼自身をわらったにちがいないのだ
彼はそうなることを望みながら、彼を過小評価する彼自身の性癖によって
きみに対する願望を妄想としていくたびも打ち消してきた


最後の確信を得たきみは
背中の筋肉を緩め、前かがみになって頬杖をつき、胸がテーブルの上に載るようにした
彼の視線が動いた
きみは自分の乳首がいま、とがっているのを感じた

わたし、あなたを好きになったんだけど

きみは言い、彼に愛おしさを覚え、慈悲を与える存在になった気がした
彼のくちもとにふたたび、こんどは貼りついたまま消えない嘲笑を見た
きみはきみの勝利がまったくのまぼろしだったような気になる

うすわらいを浮かべたまま、彼はスプーンを回しつづける
カップに触れてかちゃかちゃと音がする
不安に押しつぶされそうになり、きみは抗うように上体の姿勢を正した
ブラックコーヒーが深い渦をつくっているのが見えた
彼のつくる渦を見ながら、きみも口の片端でわらってみた
痛みは甘くなり、ぞくぞくした


837 名前:侵入1/2[] 投稿日:2006/12/18(月) 04:21:05 ID:+gUbGDh1
838 名前:侵入2/2[] 投稿日:2006/12/18(月) 04:22:19 ID:+gUbGDh1


【コメント】

147 名前:ゼッケン ◆ZkkenDgUE6 [] 投稿日:2007/01/06(土) 03:18:01 ID:zlSNeVGV
侵入を書きました。ゼケーンです。

本スレ23 アンダーさん、採点のまとめ、ありがとうございました。

山神書いたのはリーフさんに3000ペセタ。
アイスクリームサマーはエドさんに10ペソ。
39才のハゲ頭はまんこ将軍に10ペソ。長介さんかも。カノプスさんかも。
黄色い波は竹輪さんっぽいけどナップルさん
無償の娼婦は北さん?
貼り紙はひむらさん、これ鉄板。

さ、どうだ。





残酷な遊び



子供という王様は
残酷な遊びを思いつく暴君
家来の虫や動物に
悪の限りを試しつくす
今日は家来の触覚の
右側を引っこ抜いた

家来のアリは泣きながら
ぐるぐる ぐるぐる
触覚片方、どこにも行けない
ぐるぐる ぐるぐる
同じ場所を回り続ける
ぐるぐる ぐるぐる
いまでも目的地にたどり着けない

王様はその姿に
大いに笑って満足した後
回り続ける家来を置いて
夕餉の家路につくころには
もう彼らのことなど忘れている


839 名前:残酷な遊び[sage] 投稿日:2006/12/18(月) 10:58:19 ID:L1XtMEzZ


【コメント】

856 名前:侵入の作者[] 投稿日:2006/12/28(木) 04:59:09 ID:bBoFpbpH
>839 残酷な遊び
一読:だから?
二読:アリがち。なんつて。
三読:なんか書くために読む。なんだろうな、なんでこんなにスカスカなんだろう。
もうちょっとなんか工夫しようよ。

13 名前:ななほし ◆lYiSp4aok. [] 投稿日:2006/12/31(日) 23:27:40 ID:ByRqbFKC
>>839 :残酷な遊び :2006/12/18(月) 10:58:19 ID:L1XtMEzZ
  眼を閉じなかったから、生じた罪悪・嫌悪感に、……痛みのような、さっさと忘れよう。
  詩としては、どうかなぁ…… まあそれでも >、 3点。

156 名前: ◆Wani6uvhK. [sage] 投稿日:2007/01/06(土) 14:36:04 ID:39k2pqDs
あけましておめでとうございます。

ゼッケンさんチャンプおめでとうございます!
審査されたかた、コメントされたかた
まとめてくださった方、お疲れ様でした。

「残酷な遊び」を書きました。
ななほしさん3点もありがとうございました。
名無しのコメントのかた、ありがとうございます。

ちなみに、両方の触角を抜くと
ふらふら方向が定まらなくなり
自分の巣にも帰ることができなくなるそうです。


【得点】 3点
  • ななほし ◆lYiSp4aok.:3点





無償の娼婦



体なんていらないの
神経をはしる痛みも快楽もわたしを閉じ込めるの
せつなさだけでいいの
かなしさだけでいいの
生まれては死んでいく
生まれては死んでいく世界で
裸のマリアになるの

世界は冷たいからあたたかいキスをするの
世界は突き放すからきつく抱きしめるの

「さあ、ゆりかごにもどりなさい」

生まれては死んでいく
生まれては死んでいくこの世界で
やさしさだけになるの


841 名前:無償の娼婦[] 投稿日:2006/12/22(金) 22:46:42 ID:c4eS2c4d


【コメント】

856 名前:侵入の作者[] 投稿日:2006/12/28(木) 04:59:09 ID:bBoFpbpH
>841 無償の娼婦
一読:読みやすい。安心するための詩。信じられさえすれば。
二読:うまいですね、これ。「」が鼻につく。
三読:五感からの脱却。肉体をやさしく溶かして別の生命へと生まれ変わる。
簡単明瞭いい気分。題がイヤ。

19 名前:ゼッケン ◆ZkkenDgUE6 [] 投稿日:2007/01/05(金) 04:32:47 ID:OCGU2C7N
841 無償の娼婦に1点。
タイトルがくさいけど、この説明がないと私には読めないし。しかたないのかな。
よくある気分を書いているように見えて、なにも求めない、という部分が徹底されている。
諦めることさえ諦めてるのが心地よかった。

157 名前:あぶく ◆OPBYKkBBNQ [sage] 投稿日:2007/01/06(土) 17:46:29 ID:0kjACbYa
皆様お疲れさまでした。
チャンプさん、おめでとうございます。
『無償の娼婦』書きました。
ほんと、なんちゅー題名やねん、と自分でも思います。ゼッケンさん、ありがとうございました。


【得点】 1点
  • ゼッケン ◆ZkkenDgUE6:1点





無駄遣い



体力の限界まで働く

今日も朝6時に起きて
2時間電車に揺られ

途中の駅で目の前の席が空いて
僕は浅い眠りを貪る

夢の中で僕は黒い学生服を着ていて
隣には若い頃の親父がいて
見覚えのある道端で
見覚えのある姉弟に出会った

姉の方は笑顔の素敵な美少女だった
将来はきっと美人になる

そして僕らは4人で学校に向かう

弾まない会話

親父が不意に携帯を取り出し
会話し始める
同時に姉弟の弟の方も携帯で
友人と話し始めた

僕と少女は手持ち無沙汰になって

「遅刻しちゃうね」と
ふたりで先に学校への道を急ぐ

弾まない会話

道の前方から母親が走ってきて
親父の居場所を僕らに尋ねた

「ああ、親父ならあそこで電話してる。えーっと…」
「シュン君」
優しい笑顔で少女は言った
「そう、シュン君と一緒」
どうしてその名前が出なかったのだろう

母親も去って
少女と再び目線を交わす
相変わらずの優しい笑顔

ふたりは再び学校へと歩き始める
空は晴天 夏の空気

弾まない会話

僕は彼女の右手を握っていた
彼女も僕の左手を握っていた
相変わらずの優しい笑顔

顔は気恥ずかしくてほとんど見ていないけれど
夢だからわかるんだ

かき消すように

夢の中で僕の携帯がふるえる

僕は夢から覚める

左手に感じていた
あたたかい感触
あたたかい時間

現実は変わらない

左手に感じる携帯電話の重さ
冬の寒さ 灰色の空
はじまる仕事

ああ
そうだ
     ああ
     そうさ

食うために働くのさ
好きでもない仕事するのさ
大切な時間を裂いて
もっと大切な時間買うのさ

何度だって言うのさ
読まれもしない詩を書くのさ
長ったらしい言葉を使って
ちっぽけな自分表すのさ

左手薬指にある指輪
指先で転がすのさ
冷たい感触
君との絆
ちっぽけな絆さ

夢の中の少女はもういない


843 名前:無駄遣い 1/3[sage] 投稿日:2006/12/23(土) 03:54:46 ID:NRDmh4Zx
844 名前:無駄遣い 2/3[sage] 投稿日:2006/12/23(土) 03:55:26 ID:NRDmh4Zx
845 名前:無駄遣い 3/3[sage] 投稿日:2006/12/23(土) 03:57:50 ID:NRDmh4Zx


【コメント】

856 名前:侵入の作者[] 投稿日:2006/12/28(木) 04:59:09 ID:bBoFpbpH
>843-845 無駄遣い
一読:一家の大黒柱、がんばってください。
二読:ひろがりませんね、これ。ぐち?
三読:する必要あるのか? お勤め、ごくろうさまです。





ヒトノコト



魂は彷徨い 道すがら心洗われるほどの夜空の星々に酔い痴れる間に
時は容赦なく 私を取り残して過ぎ去ってゆく
時の流れは水のように早く美しい
その美しさに惹かれて私は再び酔い痴れる
目を覚ませば私は硬直している事に気付き再び歩き始める
何故何 私は彷徨うのかを考える暇なく躊躇なく彷徨い 時と共にゆくのだ
道すがら考すは 人間の知覚とはどうしてこんなに繊細で緻密で敏感なのであろうか
それゆえ人間は蒼天の下に生きる事を考えるのだ
喜びも怒りも哀しみも、そして慰みも
全て人間の感知能力が恐ろしいほどに精密であり、目、耳、鼻と口を具えているから
私は感じる 風と光を 水と緑を
私は豊かに感じるのだ
道ゆく道では誰もが同じく助け合うのだ
そこには時に法悦的な調和が発生する
嗚呼ゆたか
それを感じる人間の触覚も
あらゆる森羅万象を感じる人間も
豊かなのだ


846 名前:ヒトノコト 1/1[] 投稿日:2006/12/23(土) 18:44:56 ID:gWeRPY5Q


【コメント】

856 名前:侵入の作者[] 投稿日:2006/12/28(木) 04:59:09 ID:bBoFpbpH
>846 ヒトノコト
一読:三行目で笑う。七行目で縦読みを探す。最後まで読んですげえと思う。
二読:思わずもういちど読む。作中の「私」の感受性の豊かさに驚いて吃る。
そういう作品なんだと思った。ナルシズム大爆発。
いかに自分が創作を演出したものに慣れてしまっていたのか、読み手として甘えていた自分を反省する。
三読:もうしないけど、これはこれでいいんだと思う。まじで。





月とスッポンと39歳のハゲ頭



寂光がぬらぬら反射っている
―どこに?
39歳のハゲ頭

脱毛症を“病んだ”ここ10年
マニファクチュアと風俗店の
2つの力点のあいだをひたすら往復し
頑張る、頑張る
ミンミンゼミの鳴く暑い季節さえも
頑張る、頑張る
ぽくぽくぽくぽく
ちーん と
叩かれる木魚のような
黒光りしている頭皮
女たちは目を背ける
みんなの楽しさから完全にはみだしている
それでも頑張る
ぽくぽくぽくぽく
ちーん と

ところが



油の量が凄いのだよ、君。
無限大のガマの口からどんどん溢れ出してくるのだ
そしてどんどん荒地へと流れ込むのだ
どんどんどんどん
ぬらぬらてらてらひたひたぺたぺたぺけぺっちょん
つらちょんちょんちょんすけとはまさに怒涛のぬらりひょう(!)
その光景は圧倒的なコスミックの世界観を持って
やがていつしかハゲ頭の内部にねむる
ニューロンさんちの細胞核くんを
揺り動かす。振動させる。
ゆら~りゆらり

やがて起きたるニューロン細胞
核くんが、その触手のような手でがっちとつかんだのは
他でもないハゲ頭のクラウゼ小体!
ぞわぞわぞわわっと
ハゲ頭のてっぺんに向かって走りだすクラウゼ小体!のもたらす快感!
おーい止まれ!という制止も虚しく
クリトリス又は亀頭と化したハゲ頭。



性感=ハゲ頭。
性欲はハゲ頭によって満たされることになる
いや~参りましたね と
ぺたぺたハゲ頭を触ってご覧なさい
「どぴゅ」と“イク”かわりに
ぶるぶるっとふるえるでしょうよ
あんたたちの忌み嫌うハゲ頭がよ!
女たちは相変わらず目線を背ける
しかしハゲ頭は穏やかな寛容の眼差しを持って
それら格差社会の全体像を眺めやる
貫通への欲望は超えた
今や風が撫でれば潮を噴き
太陽が光を射せば射精する
存在自体がオルガズム!サンキュー世界!
ハゲ頭はここにおいてあらゆるセクシュアルな問題と
存在論的な壁をぶちやぶったのだ!

感覚が全てを乗り越えたのだ!
ニヒリズムも今や遠いお伽噺
ハゲ頭が生んだ新世界だ!
合理主義への回帰など不要!
ハゲ頭だ!髪の無い神の誕生だ!
あらゆる生への快感はハゲ頭の輝きの内に!
おおハゲ頭!ビバハゲ頭!お前の油は神のしょんべん。


847 名前:名前はいらない[sage] 投稿日:2006/12/23(土) 18:57:53 ID:9+w5iaYO
848 名前:名前はいらない[sage] 投稿日:2006/12/23(土) 18:58:24 ID:9+w5iaYO
849 名前:名前はいらない[sage] 投稿日:2006/12/23(土) 18:59:27 ID:9+w5iaYO


【コメント】

857 名前:侵入の作者[] 投稿日:2006/12/28(木) 05:00:06 ID:bBoFpbpH
>847-849 月とスッポンと39歳のハゲ頭
一読:「みんなの楽しさから完全にはみだしている 」←すばらしいです。かっこいい。
二読:ニューロンとかの説明を楽しく読ませようとするサービスがまだるっこしい。
三読:「存在論的な壁をぶちやぶったのだ!」←やぶってねーよ。
「感覚が全てを乗り越えたのだ!」←だから乗り越えてないって。
いやあ、笑った。楽しかったです。ありがとうございました。

16 名前:リーフレイン ◆LeafL/oiO. [sage] 投稿日:2007/01/03(水) 20:10:29 ID:K1/4P58H
 >「月とスッポンと39歳のハゲ頭」
これはもう解説いりませんわ、面白いです。
とにかく面白いです、これだけ面白い詩はひさしぶりという気がしました。すごいです
いや、もしかして笑ってしまってはもうしわけないんだろうかという一抹の不安まで感じてしまいましたが、、、
結構有名な(ふるいかな)フラッシュで、バッハの小フーガに合わせて唄う「はげの歌」があるんですが、
ついあれがBGMに流れてしまいましたよーーーー。


【得点】 1点
  • 葉土 ◆Rain/1Ex.w:1点



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最終更新:2007年01月08日 22:07