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その日、閻魔業火は現世をうろついていた。

理由を聞かれても、「気まぐれ」以外に答えは見当たらない。
ついでに言うなら、珍しく有給休暇を取る事が出来たたはいいが、幻想郷で相手にしてくれる人は皆用事で何処かに出かけていた。無理矢理自分の暇を潰させる為にそれぞれの用事を邪魔する訳にはいかないと思い。現世に出て来た訳だ。

ちゃんと服装もTシャツにジーパンと現代人のものに合わせている為、赤髪という事以外は一般人のような見た目であった。

彼は裏路地と呼ばれるようなところを歩いていた。何故ならそういった変わった場所が好きだからである。

「暇だなぁー……」

今の彼の一言はもはや一種のぼやきであった。

「インドとインドネシアって…名前似てるのに結構離れてるよな…」
「そういやー…すき焼きの味付けって正解は存在するのかな…」
「パックンマックンって誰だっけ…ていうか何だっけ…」

もはや何を言っているか理解に苦しむが、それほど彼は暇だったのだ。

「それにつけても、暇だなぁ…」

彼の思考はそれしかなった。彼女の手が回るまでは。





それとほぼ同時刻、ある路地で金髪の男、うまいぼうと赤髪の女子、アシベは何かもめていた。

「だから!!お前食っただろ!!俺のうまい棒!!!」

アシベは少年にそう怒鳴る。

「いや食ってない!食ったとしてもお前のなんか誰が食うもんか!!!」

うまいぼうはそう言い返す。彼のこの名前の理由は後に回すとして、どうやら二人はアシベのうまい棒の行方でケンカしているらしい。何とも情けないというかなんというか……

「兎に角!!俺はお前のうまい棒なんか食ってないからな!!!」
「ふーん、その名前でよくそんな反論できるね。いかにもうまい棒大好きって名前で。」
「好きでこんな名前でいるんじゃねーよ!!それにこの名前はお前のせいだろうが完全に!!!」
「まだとぼける気!?」
「とぼけてなんかねーよ!!!もう勝手にしやがれ!!!」

うまいぼうはそう言って回れ右をして走り出した。

「あ、逃げた…」





うまいぼうはひたすらに路地を走っていた。

「あんな奴の事なんか知るか…ここまで疑いやがって!!!」

走っているうちに路地より少し広い裏路地に出た、と思った瞬間…

ゴツッ!!!

誰かと頭をぶつけてしまった。
うまいぼうは痛みが走る頭を押さえ、ぶつかった相手に謝罪をしようと顔をあげた。

「す、すみません…大丈夫ですか……!?」

あきらかに見覚えがあったその顔…間違いない。

「いやー、すんませんね…こちらこそボーッと歩いて…って、うまいぼうじゃねーか。」
「そういうあんたは…業火…」

うまいぼうがぶつかった相手は閻魔業火だったのだ。
二人とも面識はあった。

「奇遇だな、こんなところでお前と鉢合わせなんて。」
「本当に…って、なんでこんな所に?」
「暇だったから現世探検だ。どうだ?こんなところで会うのも縁だ、近くのファミレスで何かおごってやるよ。」
「いいの!?ありがとうマジで!!!」
「じゃー、行くか。」

その二人が一緒に歩く所を、こっそりうまいぼうについて行ったアシベは見逃さなかった。

「あれは…そうだ、さっきの事もあるし、イタズラしちゃえ、♪」

アシベはプロパティコントロールという、「設定」をどうにでも変えられる能力を持っているのだ。それを使えば自由自在に世界を少し変える事ができるのだ。実は、うまいぼうという彼の名も、アシベによって変えられている名なのだ。

「プロパティコントロール…うまいぼうの『性別』を女に…そして、業火のうまいぼうへの『認識』を恋人…それも結構関係が進んでいる。っと」

アシベがコントロールを始めてから、反映までそう時間は掛からなかった。
うまいぼうの体に変化が起きたのだ。

「な…何だ...?」

彼の髪は腰にかかるほどに伸び、身体にくびれが出来て…そう、まるでだんだん女の身体に変化して行くかのように…

「!?!?!?」

うまいぼうの驚きとは裏腹にどんどん変化は進む、胸が膨らみ、顔つきが変わって行き、声も高くなり、そして最後には身長が少し縮み、変化は終わった。

「……!?!?これって…!?ご、業火!!これ一体何が!?」
「どうしたんだ?うまいぼう?そんなに慌てて。」

おかしい、業火もすぐ横で起きた普通の人間にはあり得ない変化に驚いてもおかしくないはずなのに……

「いやどうしたって!!俺の身体が女にィ!!!」
「はぁ?何言ってるんだ?お前はもともと女だろうが。」
「ええ!?」
「え?」
「えって…俺男だろ!?」
「今日のお前、何か変だぞ?大丈夫か?」
「大丈夫かはこっちの台詞だ!!!」

その時うまいぼうは気づいた、業火がやけに身体をくっつけてくる事に。

「業火…あのさ…何か距離、近すぎない?」
「何言ってんだよ?俺たちの仲なら当然だろ。」
「はい!?」
「あ、分かったぜ、今日で付き合って1周年のサプライズの為にわざわざ何か隠してるだろ♪」
「い…いっしゅー……ねん…………???;;;」
「ーったく、そういうとこもかわいいなお前は♪」
「……………あのー……」
「さ、グズグズしないで早くレストラン行こうぜ、俺腹減っちまったよ。」
「あー…ちょっとー………」

業火はうまいぼうの手を引いて歩きだした。

「楽しくなりそうだなこれはwww」
民家の屋根の上からアシベはそう呑気に言った。





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最終更新:2012年08月01日 16:17