[Chapter 36] ギコ

目が覚めた。
カプセルの中だ。
ほとんど強制的な脱出だったが、無事にログアウト出来たようだ。

カプセルを開ける。
隣のフサギコも起きたようで、カプセルを開けて伸びをしていた。
街で受けた傷は夢の中のものだったのか、全て治っていた。
「おお、ギコ…よくやったな」
「…ああ」
モララーを撃破出来たのは良かった。
しかし、俺にはあの街にはまだ心残りなことがあった。

「まーだあのCとやらを考えてるのか」
図星だった。フサギコには何もかも見透かされているような気がした。
しぃを最後まで守ってやれなかったという罪悪感。
しぃを連れて帰られなかったという悔しさ。
まあ、AIだから連れて帰られないのは仕方がないが。

それでも、街から脱出出来たのも、モララーを倒せたのも、俺はしぃが居たからだと思う。
もししぃが居なかったら、多分俺はモララーを倒せていなかったと思う。
それどころか脱出さえ出来ずに消えていたかもしれない。
結果的にはしぃのおかげ、ということになるから、しぃには感謝すべきなのかもしれない。


モララーを倒した時点で生き残っていた、俺達を含めた143人は全員ここで目が覚めたようだった。
残りの、夢の中で倒された2857人は昏睡状態のまま全員病院に運ばれたらしい。
「みんなよく生き残れたもんだなあゴルァ」
「ギコくんも凄いよ。モララー倒せたんだし」
「多分まぐれだぞゴルァ」
「そうかなあ」
しょぼんの性格がどことなく変わったように見えた。
この街でいろいろなことを経験したことで、精神的に成長したんだろうか。

「儀古君か!よくやったなあ」
1階に降りると研究員が待っていた。
「キミはよく最後のAIを倒してくれた。ここに感謝状を贈ろう」
「せっかくだけど、要りません」
とっさに出た言葉だがまあ良い。
「…?何を言っているのだ」
「感謝状を贈るなら、しぃに贈ってやってください。ほとんどしぃのおかげみたいなもんなので」
「…そうか、ならばCに贈っておいてあげよう」
「では、さようなら」
「ああ、待ってくれたまえ!」
何か言っているけどそんなことは気にしない。

「いいのか?あれで」
帰り道でフサギコが聞いてきた。
「いいんだ、あれで」
「お前らしくないな」
「うるせーなゴルァ」
いつものような会話をしながら自転車を漕ぐ。
俺達の住んでいるアパートはもうすぐだ。




数日後。

「やっべぇ!遅刻だゴルァ!」
いつものように遅く起きた俺は朝飯もそこそこに家を飛び出した。
「…勇敢になった割にはそこは変わらないんだな」
フサギコは笑っていた。
高校まではそう遠くはないが、走らないと間に合わない時間だ。
いつもの十字路を曲がる。

ドスッ。
「気を付けろゴルァ…?」
「あ…ごめんなさい」
女の子だ。
俺と同じ高校の制服だ。
「あー…悪いな」
「…ううん、こちらこそ」
俺は少しの間ぼーっとしていた。
「…あ、もう時間ないから、それじゃあ!」
俺には、あの子がしぃのように見えた。




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+ Credit
[Cast]
Giko
Fusagiko

Anija
Otoja
Imoja

1
Onigiri

Syobon
Neno
Remona
Jien
Dokuo
Hicky

Morara
Mona
8tousin
Tuu

C


[Original Story]
Mi-ya
"Nightmare City"
BGM:Southern Cross(403)
"Nightmare City Catastrophy"
BGM:Northern Lights(403)


[Writer]
ty

(C)2004/2005 Mi-ya
(C)2012 ty

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最終更新:2012年09月03日 21:36