今日もオレは仕事をサボ……一休みして、街をぶらぶら歩いていた。
何せここの所平和過ぎて何もやることが無え。数ヶ月前からとある魔導師の姿が全く見当たらねえが、
魔導師の仕事は危険が付き物だし、長期の仕事かもしれねぇから、特に騒ぐ事じゃねえ。

……だが、俺の中じゃあ何処かしらおかしい所があるような気がしてならねぇんだ。


_カランカラン

「いらっしゃい、今日はジェイド君と一緒じゃないのかい?」
「おう、アイツは何かと忙しいみたいだし……」

ここまで言いかけて、オレは戸惑った。
失踪した魔導師というのはアイツの幼馴染で、その所為で未だ精神不安定の状態が続いている……なんて、軽々と言って良いのか?

「他にも何かあるんだね」

……まあ、相手はオレの知り合いだし、滅多に人が来ない穴場の店だから良いか。
マスターの前じゃあ隠し事もし辛いしな。

「まだ気持ちの整理が付いてないだろうと思って。実は、この頃アイツの幼馴染の姿が見あたらないんです」
「ユリーラ……という名前かい?」
「おう。 ……え?」

オレ、名前は言ってねえぞ?

「驚くのも無理は無い。 実は昨日、ジェイド君が此処に来てね」
「アイツが?」
「ああ。少し楽しそうな顔はしてたけど、裏で何かを抱え込んでいるみたいだったよ」
「何か言ってたんですか?」
「特には…ああ、町外れの丘の上が心配だとか」

そういえば、最近其処に纏わる不穏な噂をちらほら耳にするな……

「真夜中にガイコツを持った奴が居るらしいけど」
「それかな……明日の夜に確認すると言っていたから」
「今日の夜か……」

最近暇だし、行ってみるか。



カランカラン…

「ケイン君」

店を出るとき、珍しくマスターに呼び止められた。

「何ですか?」


「……間違いは正せると思うかい?」

……へ?

「逆に正せない間違いなんてあるんすか?」
「そうか……すまない、呼び止めてしまって」
「いや、良いですよ」


そういうわけで、オレは仕事を終えた後、町外れの丘の上に向かう事にしたが……
何故だかな、また嫌な予感がするんだよなあ。


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最終更新:2012年10月23日 19:10