めぐりあう双星 ◆DiyZPZG5M6
「殺し合い……なんて冗談でしょ……? そんな事できる訳が……」
暗闇に閉ざされた森の中に一人、柊かがみは木の根元で膝を抱え項垂れていた。
ついさっきまではどこかの体育館の中にいたはずなのに気がつけば森の中に放り出されていた。
だが、そもそもなぜ体育館で目を覚ましたのかわからない。
かがみは自らの記憶の糸を手繰り寄せる。
(そう、いつものようにこなた達と一緒に学校から帰って……)
いつも通りの下校風景。
途中のこなたやみゆきと別れ、後はつかさと家に帰る。
それが当たり前に続く日々。
変わった事と言えば雨が降ったり、電車が人身事故で遅れたりとするぐらい。
暗闇に閉ざされた森の中に一人、柊かがみは木の根元で膝を抱え項垂れていた。
ついさっきまではどこかの体育館の中にいたはずなのに気がつけば森の中に放り出されていた。
だが、そもそもなぜ体育館で目を覚ましたのかわからない。
かがみは自らの記憶の糸を手繰り寄せる。
(そう、いつものようにこなた達と一緒に学校から帰って……)
いつも通りの下校風景。
途中のこなたやみゆきと別れ、後はつかさと家に帰る。
それが当たり前に続く日々。
変わった事と言えば雨が降ったり、電車が人身事故で遅れたりとするぐらい。
(つかさと家に……? それから……あれ?)
かがみの記憶はそこで途切れていた。
つかさと一緒に家に帰る途中から先の記憶がすっぽりと抜け落ちている。
まるで録画中のビデオを途中で切った時のように記憶はその連続性を失っていた。
そして再び録画ボタンを押したように記憶は体育館の中から始まる。
かがみの記憶はそこで途切れていた。
つかさと一緒に家に帰る途中から先の記憶がすっぽりと抜け落ちている。
まるで録画中のビデオを途中で切った時のように記憶はその連続性を失っていた。
そして再び録画ボタンを押したように記憶は体育館の中から始まる。
仮面の道化師と白タイツ?の怪人の言葉『最後の一人になるまで殺し合いをせよ』だった。
もちろんそれが本当に殺し合いするものだとはその時点では思うわけがなかった。
しかし―――
もちろんそれが本当に殺し合いするものだとはその時点では思うわけがなかった。
しかし―――
二人の怪人の前に現れた一人の少女。
見間違えるはずがない。その姿は双子の妹、柊つかさの姿そのものだった。
どうしてつかさが二人?
もう一つ重要な点、もう一人のつかさは怪人と面識があるように見えたのだ。
そして彼女は彼らに奇妙な攻撃を仕掛けていた。
無数の文字列が怪人達に向かって高速で飛んでいった。そうとしか表現しようのない攻撃。
かがみの理解の範疇から大きく外れている。
でも彼女の攻撃は怪人には通用せず、彼女は殺された。
見間違えるはずがない。その姿は双子の妹、柊つかさの姿そのものだった。
どうしてつかさが二人?
もう一つ重要な点、もう一人のつかさは怪人と面識があるように見えたのだ。
そして彼女は彼らに奇妙な攻撃を仕掛けていた。
無数の文字列が怪人達に向かって高速で飛んでいった。そうとしか表現しようのない攻撃。
かがみの理解の範疇から大きく外れている。
でも彼女の攻撃は怪人には通用せず、彼女は殺された。
かがみの脳裏にもう一人のつかさの無残な死体の姿が湧き上がる。
ぼんっと間抜けな音を発し、首が落ちた。
落とされた首はころころとサッカーボールのように転がって、
首を失った胴はそのままどさりと崩れ落ち、切断面から大量の血液が吹き上がってもなお、
脊髄反射によりびくびくと痙攣する身体―――
ぼんっと間抜けな音を発し、首が落ちた。
落とされた首はころころとサッカーボールのように転がって、
首を失った胴はそのままどさりと崩れ落ち、切断面から大量の血液が吹き上がってもなお、
脊髄反射によりびくびくと痙攣する身体―――
「うぐっ……うぇぇ……」
忘れようとしていた凄惨な光景を思い出して、強烈な吐き気がこみ上げそのままかがみは木陰で嘔吐してしまう。
空っぽの胃からはただ酸っぱい胃液だけが出てきて、それでも吐き気は治まらず、
まるで胃の内壁をブラシで擦られる様な苦しみだけが続いていた。
空っぽの胃からはただ酸っぱい胃液だけが出てきて、それでも吐き気は治まらず、
まるで胃の内壁をブラシで擦られる様な苦しみだけが続いていた。
「はぁっ……はぁ……こなた……つかさ……みゆき……みんなどこ……」
胃液が通り過ぎヒリヒリする喉で友人の名前を呟くかがみ。
普段は気丈な彼女も、唐突に訪れた日常の崩壊に幾分か精神が参ってしまっていた。
胃液が通り過ぎヒリヒリする喉で友人の名前を呟くかがみ。
普段は気丈な彼女も、唐突に訪れた日常の崩壊に幾分か精神が参ってしまっていた。
ふと、かがみはこの中に確か飲料水が入っていることを思い出した。
とにかく何か飲み物を――憔悴した表情でかがみはデイパックの中を開ける。
中にはペットボトルに入ったミネラルウォーターが入っていた。
キャップを外し毒が入っていないかと恐る恐る口を付ける。毒は入っていないようだ。
ゆっくりと水を飲む。冷蔵庫に入っていないためぬるい感触が喉を伝う。
でも、胃液がこびり付いた喉を洗い流すのには十分すぎる効果があった。
「ふう……」
水を飲んだことで少しは精神も落ち着きが戻ってきたのか、かがみはデイバックの中をさらに調べてみる事にした。
怪人達が曰く、地図や食料など基本的な道具の他に各人にランダムでアイテムが配られている。
彼らにとって殺し合いを円滑に進めるためのアイテムが―――
とにかく何か飲み物を――憔悴した表情でかがみはデイパックの中を開ける。
中にはペットボトルに入ったミネラルウォーターが入っていた。
キャップを外し毒が入っていないかと恐る恐る口を付ける。毒は入っていないようだ。
ゆっくりと水を飲む。冷蔵庫に入っていないためぬるい感触が喉を伝う。
でも、胃液がこびり付いた喉を洗い流すのには十分すぎる効果があった。
「ふう……」
水を飲んだことで少しは精神も落ち着きが戻ってきたのか、かがみはデイバックの中をさらに調べてみる事にした。
怪人達が曰く、地図や食料など基本的な道具の他に各人にランダムでアイテムが配られている。
彼らにとって殺し合いを円滑に進めるためのアイテムが―――
デイバックから出てきた物は二種類だった。
映画などでよく目にするカートリッジ式のセミオート拳銃とは若干デザインを異とする拳銃――モーゼルC96なのだが、
こなたはともかく銃の知識を知らないかがみにとっては変わった形の銃としか認識されなかった。
そしてそのマガジンが四つ。殺し合いをするのであればそれなりに『当たり』と言えよう。
もう一つのアイテムは何らかの銃のマガジン三つだった。
ぱっと見では世界一有名なアサルトライフルAK-47のマガジンに見えなくもない。
しかしAK-47の物に比べるとずんぐりとした外見であり色も鮮やかな黄色で、おおよそ銃器の色しては似つかわしくなかった。
映画などでよく目にするカートリッジ式のセミオート拳銃とは若干デザインを異とする拳銃――モーゼルC96なのだが、
こなたはともかく銃の知識を知らないかがみにとっては変わった形の銃としか認識されなかった。
そしてそのマガジンが四つ。殺し合いをするのであればそれなりに『当たり』と言えよう。
もう一つのアイテムは何らかの銃のマガジン三つだった。
ぱっと見では世界一有名なアサルトライフルAK-47のマガジンに見えなくもない。
しかしAK-47の物に比べるとずんぐりとした外見であり色も鮮やかな黄色で、おおよそ銃器の色しては似つかわしくなかった。
「何よ……本気で殺し合いさせるつもりなの……?」
ずっしりとした拳銃の重さが手に伝わる。
おもちゃの銃とは明らかに違う。間違いなく―――本物。
そしてこれらと同様の物が他の参加者に配布されている。
見ず知らずの人間が、物騒な兵器を所持して徘徊している。
つまり、いつでも殺し合いが行われいてもおかしくない状況なのである。
ずっしりとした拳銃の重さが手に伝わる。
おもちゃの銃とは明らかに違う。間違いなく―――本物。
そしてこれらと同様の物が他の参加者に配布されている。
見ず知らずの人間が、物騒な兵器を所持して徘徊している。
つまり、いつでも殺し合いが行われいてもおかしくない状況なのである。
殺られる前に、殺れ。
そんな声がかがみの心の中に響く。
相手は銃を持っている。つまりは自分を殺しにやってくる。
そんな相手を殺した所で自分は正当防衛なのだ―――罪には問われない。
生きるための本能がそう語りかける。
相手は銃を持っている。つまりは自分を殺しにやってくる。
そんな相手を殺した所で自分は正当防衛なのだ―――罪には問われない。
生きるための本能がそう語りかける。
ぱきっ。
ふと、背後で木の枝が折れる音がした。
「ひっ……」
極度の緊張により研ぎ澄まされた聴覚が確かにその音を捉えていた。
この音は誰かが地面に落ちた小枝を踏みしめる音。
誰かが近くに、いる。
悲鳴をあげそうになるのを必死で押し殺し、本能に従って支給された銃を構え、音がした方向へ向ける。
その行為こそ怪人達の目論見通りと分かっていてもそうせざるをえなかった。
極度の緊張により研ぎ澄まされた聴覚が確かにその音を捉えていた。
この音は誰かが地面に落ちた小枝を踏みしめる音。
誰かが近くに、いる。
悲鳴をあげそうになるのを必死で押し殺し、本能に従って支給された銃を構え、音がした方向へ向ける。
その行為こそ怪人達の目論見通りと分かっていてもそうせざるをえなかった。
「だ……誰……! わ、私銃を持って、るんだからヘンな事……し、したらタダじゃおかないわよッ!」
必死に強気な態度を見せるも恐怖で口がうまく回らない。
心臓が張り裂けそうなぐらいに鼓動しているの。
ごくりと唾を飲み込むかがみの前に、ゆっくりと人影が姿を現した。
必死に強気な態度を見せるも恐怖で口がうまく回らない。
心臓が張り裂けそうなぐらいに鼓動しているの。
ごくりと唾を飲み込むかがみの前に、ゆっくりと人影が姿を現した。
「良かった……『また』会えたね……」
☆
月明かりの下、姿を現したのは若い女だった。
いや、若い女と言ってもまだ少女のあどけなさが残る顔。年の頃はかがみとそう変わらないように見えた。
だが着ている服は一風変わったもの。
上半身は肩の部分を青く染め上げ、他の部分は白を基調としたジャケット。その下に見える赤いネクタイ。
下半身は青のタイトなミニスカートと白のオーバーニーソックス。
何とも奇妙な出で立ち。
どことなく軍服のような雰囲気を匂わせる服装と、幼さが残る少女の表情がミスマッチだった。
いや、若い女と言ってもまだ少女のあどけなさが残る顔。年の頃はかがみとそう変わらないように見えた。
だが着ている服は一風変わったもの。
上半身は肩の部分を青く染め上げ、他の部分は白を基調としたジャケット。その下に見える赤いネクタイ。
下半身は青のタイトなミニスカートと白のオーバーニーソックス。
何とも奇妙な出で立ち。
どことなく軍服のような雰囲気を匂わせる服装と、幼さが残る少女の表情がミスマッチだった。
「私は……あなたが本当にエリオを殺したかどうかはわからない。だけど……決して自分の命を粗末にしないで」
何を言っているんだこの女は?
意味不明な事を口走る少女にかがみの思考はますます混乱する。
自分はこの少女と面識があるようで、さらに自分はエリオという名の人間を殺した可能性がある。
そんな馬鹿な事があるわけない。彼女とは初対面のはずなのだから。
意味不明な事を口走る少女にかがみの思考はますます混乱する。
自分はこの少女と面識があるようで、さらに自分はエリオという名の人間を殺した可能性がある。
そんな馬鹿な事があるわけない。彼女とは初対面のはずなのだから。
「なに……訳の分からないこと、言ってんのよ……私は学校の帰りにここに連れて来られたんだから……! あんたの顔も知らないし、ましてやエリオとか言う人を殺したなんか知るわけないでしょッ!」
必死に恐怖を押し殺し、銃を狙いを少女に定める。
銃を突きつけられても落ち着いた仕草を変わらせなかった少女だったが、かがみの発した言葉に初めて表情を変化させた。
「……! それってどういう――? まずは落ち着いて……ちゃんとお話しよう、ね?」
少女の反応は明らかにかがみが少女と面識が無いという事実に驚いた物であった。
しかし、かがみはますます不信感を募らせる。
恐怖で震える指がトリガーを添えられる。
少しでも力を入れてしまえば発砲してしまうだろう。
必死に恐怖を押し殺し、銃を狙いを少女に定める。
銃を突きつけられても落ち着いた仕草を変わらせなかった少女だったが、かがみの発した言葉に初めて表情を変化させた。
「……! それってどういう――? まずは落ち着いて……ちゃんとお話しよう、ね?」
少女の反応は明らかにかがみが少女と面識が無いという事実に驚いた物であった。
しかし、かがみはますます不信感を募らせる。
恐怖で震える指がトリガーを添えられる。
少しでも力を入れてしまえば発砲してしまうだろう。
「落ち着く……? こんな状況……でそんな事……!」
「こんな状況だもの……落ち着いてられないのはわかってる。でも信じて、私はあなたの味方だから……」
「こんな状況だもの……落ち着いてられないのはわかってる。でも信じて、私はあなたの味方だから……」
さらに一歩を進める。
「く、来るなぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
限界に達したかがみの恐怖心は本人の意思と無関係に銃の引き金を引いた。
「く、来るなぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
限界に達したかがみの恐怖心は本人の意思と無関係に銃の引き金を引いた。
静かな森に銃声が鳴り響き、ぱっと彼女の左肩から血飛沫が舞い上がる。
見る見るうちに肩の周りを血で染め上げてゆく。
「あ……嫌……あぁぁあ……私……人を……」
呆然と立ち尽くすかがみ。
本当に人を撃ってしまった。
少女は肩を撃たれた苦痛を堪えながらもかがみの説得を試みる。
見る見るうちに肩の周りを血で染め上げてゆく。
「あ……嫌……あぁぁあ……私……人を……」
呆然と立ち尽くすかがみ。
本当に人を撃ってしまった。
少女は肩を撃たれた苦痛を堪えながらもかがみの説得を試みる。
「く……ぅ……私は大丈夫、大丈夫だから……」
茫然自失とするかがみを彼女は優しく抱きしめた。
茫然自失とするかがみを彼女は優しく抱きしめた。
「あ……」
「ごめんね……とっても怖かったんだよね。わけも分からないままこんな所に連れてこられて……安心して、私はあなたの味方だから……」
手から銃が滑り落ちる。
そして優しい彼女の笑顔を見た彼女は初めて自分が取り返しのつかない事をしてしまったと気がついた。
「ごめん……なさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……うっうあああああああぁぁぁぁぁ!」
彼女の腕の中でひたすら泣き続けるかがみ。
人を撃った事への罪悪感、一人ぼっちになってしまった事への孤独感。
堰を切ったようにありとあらゆる感情の津波が押し寄せる。
少女はかがみが泣き止むまでずっと彼女を抱きしめていた。
「ごめんね……とっても怖かったんだよね。わけも分からないままこんな所に連れてこられて……安心して、私はあなたの味方だから……」
手から銃が滑り落ちる。
そして優しい彼女の笑顔を見た彼女は初めて自分が取り返しのつかない事をしてしまったと気がついた。
「ごめん……なさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……うっうあああああああぁぁぁぁぁ!」
彼女の腕の中でひたすら泣き続けるかがみ。
人を撃った事への罪悪感、一人ぼっちになってしまった事への孤独感。
堰を切ったようにありとあらゆる感情の津波が押し寄せる。
少女はかがみが泣き止むまでずっと彼女を抱きしめていた。
☆
「どう? 少しは落ち着いた?」
「うん……」
二人は木の根元で腰を落ち着け向かい合っていた。
かがみの目元にはまだ涙が滲み、まだ目の周りが赤く腫れていた。
「あっそうだ! これ……食べる?」
少女はデイバックからチョココロネを取り出した。
何の変哲のないチョココロネ、こなたが好物だったパン。
「まだたくさんあるから―――ってそんな気分じゃないよね、あはは……」
少し困ったように笑う少女。
それでもかがみは首を振って。
「ううん、食べるわ……泣いたらお腹空いちゃった」
少し恥ずかしそうにはにかむかがみだった。
「うん……」
二人は木の根元で腰を落ち着け向かい合っていた。
かがみの目元にはまだ涙が滲み、まだ目の周りが赤く腫れていた。
「あっそうだ! これ……食べる?」
少女はデイバックからチョココロネを取り出した。
何の変哲のないチョココロネ、こなたが好物だったパン。
「まだたくさんあるから―――ってそんな気分じゃないよね、あはは……」
少し困ったように笑う少女。
それでもかがみは首を振って。
「ううん、食べるわ……泣いたらお腹空いちゃった」
少し恥ずかしそうにはにかむかがみだった。
「あの……ごめん、肩」
かがみは申し訳なさそうに言った。
でも少女は気にすることもなく朗らか表情だった。
「ううん、気にしないで。弾は抜けてるし、簡単な治癒魔法もかけて置いたから心配しないで」
「あ……うん……?」
一瞬、魔法なる単語を聞き怪訝な表情をするかがみ。
頭に浮かんだ疑問をかき消すように少女は口を開いた。
かがみは申し訳なさそうに言った。
でも少女は気にすることもなく朗らか表情だった。
「ううん、気にしないで。弾は抜けてるし、簡単な治癒魔法もかけて置いたから心配しないで」
「あ……うん……?」
一瞬、魔法なる単語を聞き怪訝な表情をするかがみ。
頭に浮かんだ疑問をかき消すように少女は口を開いた。
「時空管理局機動六課、スターズ分隊隊長の高町なのは、本当に私の名前を知らない?」
もう一度少女――高町なのははかがみに尋ねる。
しかしかがみは無言で首を振るだけであった。
「なのは、て呼んでいいよ。みんなそう呼んでるから」
「私は……柊かがみ。かがみでいいわよ」
「念のため聞くけど……かがみは陵桜高校という学校に通ってるんだよね?」
「どうして……その事を……」
「前にあなたが言ってたの。私が『陵桜高校3年B組の、高町なのは』って……」
もう一度少女――高町なのははかがみに尋ねる。
しかしかがみは無言で首を振るだけであった。
「なのは、て呼んでいいよ。みんなそう呼んでるから」
「私は……柊かがみ。かがみでいいわよ」
「念のため聞くけど……かがみは陵桜高校という学校に通ってるんだよね?」
「どうして……その事を……」
「前にあなたが言ってたの。私が『陵桜高校3年B組の、高町なのは』って……」
言いようのない気持ちの悪さが二人の間を包み込む。
お互いの記憶の食い違い。
かがみはなのはの事なんて知らない。
だけどなのははかがみの事を知っていて、でもなのは自身はその時に出会ったかがみとは初対面なのに、そのかがみはなのはの事を知っていたのである。
お互いの記憶の食い違い。
かがみはなのはの事なんて知らない。
だけどなのははかがみの事を知っていて、でもなのは自身はその時に出会ったかがみとは初対面なのに、そのかがみはなのはの事を知っていたのである。
「正直意味が分からないわ……なのはは私と会った事がある。でも、その時のなのはは私の事を知らなかった。でもその時の私はなのはの事を知っていた? ごめん頭痛くなってきた……」
頭を抱えるかがみ、なのはも困ったような仕草で苦笑する。
「でも―――決定的に違うのが一つだけあるよ。私はここに連れて来られる前に同じような出来事に遭遇していた」
「え―――? それって……」
頭を抱えるかがみ、なのはも困ったような仕草で苦笑する。
「でも―――決定的に違うのが一つだけあるよ。私はここに連れて来られる前に同じような出来事に遭遇していた」
「え―――? それって……」
「私は殺し合いに参加させられて―――そこでかがみと出会ったの」
☆
なのははこれまでの事を思い返し、かがみに簡潔に伝えた。
プレシア・テスタロッサによって開催された殺戮遊戯。
目の前で親友を殺されたなのは。二度とこんな悲劇を繰り返さないと決意したその矢先にかがみと出会ったのだ。
自分がエリオを殺したと自暴自棄になっていたかがみ。
半狂乱となったかがみはなのはの説得に応じず突然大蛇を召喚する。
だがそこで乱入した若い男と中年の男。
かがみの召喚する怪物との戦闘の最中、彼女は狂ったかのような哄笑を上げ姿を消した。
後は……そう、金居と名乗る若い男とペンウッドと名乗る中年の男と情報を交換したのだが……
プレシア・テスタロッサによって開催された殺戮遊戯。
目の前で親友を殺されたなのは。二度とこんな悲劇を繰り返さないと決意したその矢先にかがみと出会ったのだ。
自分がエリオを殺したと自暴自棄になっていたかがみ。
半狂乱となったかがみはなのはの説得に応じず突然大蛇を召喚する。
だがそこで乱入した若い男と中年の男。
かがみの召喚する怪物との戦闘の最中、彼女は狂ったかのような哄笑を上げ姿を消した。
後は……そう、金居と名乗る若い男とペンウッドと名乗る中年の男と情報を交換したのだが……
それが覚えている最後の記憶だった。
後は体育館のような場所に連れてこられ、再び殺し合いをせよと告げられた。
プレシア・テスタロッサではなく、仮面の道化師と白い怪人によって―――
後は体育館のような場所に連れてこられ、再び殺し合いをせよと告げられた。
プレシア・テスタロッサではなく、仮面の道化師と白い怪人によって―――
「何よそれ……あなたが知ってる私って……」
なのはの話を聞いたかがみはまたもや頭を抱える。
謎のモンスターを使役する自分の姿―――全く想像つかない。
「ごめんなさい……私も今置かれて状況について何もわかっていないの、現状を把握するだけ精一杯……」
なのはは少し疲れたような表情だった。
無理もない。突然殺し合いに参加させられて、親友を失って、それでまた別の殺し合いに参加させられるとういう状況。
これで普通の精神を保っていられるほうがどうかしている。
なのはの話を聞いたかがみはまたもや頭を抱える。
謎のモンスターを使役する自分の姿―――全く想像つかない。
「ごめんなさい……私も今置かれて状況について何もわかっていないの、現状を把握するだけ精一杯……」
なのはは少し疲れたような表情だった。
無理もない。突然殺し合いに参加させられて、親友を失って、それでまた別の殺し合いに参加させられるとういう状況。
これで普通の精神を保っていられるほうがどうかしている。
「まあ、考えても仕方ないわ……チョココロネでも食べて気分を落ち着かせましょ」
かがみはそう言ってなのはのデイバックからビニール袋に包まれたチョココロネを取り出した。
「あ、ごめん勝手に開けちゃった」
「いいよ、気にしないで」
「はい、なのはの分」
チョココロネは残り8個。さっきかがみが食べた分を合わせると計10個入ってた事になる。
かがみはそう言ってなのはのデイバックからビニール袋に包まれたチョココロネを取り出した。
「あ、ごめん勝手に開けちゃった」
「いいよ、気にしないで」
「はい、なのはの分」
チョココロネは残り8個。さっきかがみが食べた分を合わせると計10個入ってた事になる。
「とりあえず……お互いの持ち物を確認してみようか」
チョココロネを食べ終わったなのはは自分の持ち物を調べる事にした。
中から出てきたのは銀色に鈍く光るリボルバー式の拳銃と、その弾丸計30発だった。
「私はこれよ、まあなのはと似たような物ね」
かがみもまた支給された拳銃と正体不明のマガジンを見せる。
「これって……! うん、間違いないよ。レイジングハートのカートリッジだ……」
少し驚いた表情でなのははそれを手に取る。
「えっと……レイジングハートって何? あなたが時空管理局とかいう組織の魔法使いらしいって事はさっきの話で理解してるつもりだけど」
「えっとデバイスと言って……簡単に言うと魔法使いの杖ってことかな、で、それは魔力を一時的に高めるための物なの」
「ふーん……魔法使いが扱うにはえらく現代的な物ね。杖の事をデバイスと呼んだり、どうみても銃の弾倉っぽい部品とかね。もしかして『魔法のロケットランチャー』とかあるわけ?」
「あはは……さすがにそんなことはないよ」
「で、そのレイジングハートとやらは持ってるの?」
かがみの問いになのはは首を振る。
「ごめんなさい……どうも奪われちゃったみたいなの」
「そう……デバイス無しでの魔法は?」
「使えないことはないけど……大幅に発動までの時間がかかるし、威力も出ない」
チョココロネを食べ終わったなのはは自分の持ち物を調べる事にした。
中から出てきたのは銀色に鈍く光るリボルバー式の拳銃と、その弾丸計30発だった。
「私はこれよ、まあなのはと似たような物ね」
かがみもまた支給された拳銃と正体不明のマガジンを見せる。
「これって……! うん、間違いないよ。レイジングハートのカートリッジだ……」
少し驚いた表情でなのははそれを手に取る。
「えっと……レイジングハートって何? あなたが時空管理局とかいう組織の魔法使いらしいって事はさっきの話で理解してるつもりだけど」
「えっとデバイスと言って……簡単に言うと魔法使いの杖ってことかな、で、それは魔力を一時的に高めるための物なの」
「ふーん……魔法使いが扱うにはえらく現代的な物ね。杖の事をデバイスと呼んだり、どうみても銃の弾倉っぽい部品とかね。もしかして『魔法のロケットランチャー』とかあるわけ?」
「あはは……さすがにそんなことはないよ」
「で、そのレイジングハートとやらは持ってるの?」
かがみの問いになのはは首を振る。
「ごめんなさい……どうも奪われちゃったみたいなの」
「そう……デバイス無しでの魔法は?」
「使えないことはないけど……大幅に発動までの時間がかかるし、威力も出ない」
そう言ってなのはは目を閉じて意識を集中させる。
数秒ほどするとぽうっとピンク色の光球が浮かび上がった。
数秒ほどするとぽうっとピンク色の光球が浮かび上がった。
「うわっほんとに魔法使いなんだ……!」
そしてなのはの手から放たれた光球は高速で近くの幹に突き刺さる。
パラパラと煙と砕けた木屑が舞い上がり、幹には抉られたような穴が開いていた。
ぽかんとするかがみをよそになのはは光球を撃った感触を確かめていた。
(デバイス無しにしても……発動までの時間が遅く、威力が弱い……?)
どういう事だろうか?
確かに肩の傷を治療したときも回復が遅いことが気になっていた。
それは慣れない治癒魔法を使ったためだと思っていたのだが、どうもそのせいではないらしい。
なんらかの力が魔法の力を弱めている……そうとしか考えられない。
パラパラと煙と砕けた木屑が舞い上がり、幹には抉られたような穴が開いていた。
ぽかんとするかがみをよそになのはは光球を撃った感触を確かめていた。
(デバイス無しにしても……発動までの時間が遅く、威力が弱い……?)
どういう事だろうか?
確かに肩の傷を治療したときも回復が遅いことが気になっていた。
それは慣れない治癒魔法を使ったためだと思っていたのだが、どうもそのせいではないらしい。
なんらかの力が魔法の力を弱めている……そうとしか考えられない。
「ねえなのは、もしデバイスがあったら今のどれくらいだせるの?」
「え!? あっ、うん……20発程度なら一瞬で出せるかな」
「……戦車とでも戦う気ですか」
「あ、あはは……」
肩をすくめるかがみと苦笑するなのは。
「え!? あっ、うん……20発程度なら一瞬で出せるかな」
「……戦車とでも戦う気ですか」
「あ、あはは……」
肩をすくめるかがみと苦笑するなのは。
「かがみ……あなたは自分を守るため、誰かを守るために誰かを殺す覚悟はある……?」
「何よそれ、私に対する当て付け?」
かがみはちらりとなのはの左肩を見た。
「あっごめん……そんなつもりはなかったんだけど……」
「何よそれ、私に対する当て付け?」
かがみはちらりとなのはの左肩を見た。
「あっごめん……そんなつもりはなかったんだけど……」
管理局のエース・オブ・エースとして活躍してきたなのは。
無論危険な任務もこなして来た。だけど彼女はまだ一度も人を殺めてはいない。
扱う魔法には常に非殺傷設定で任務に望んでいた。
いかに大出力の砲撃魔法であるディバインバスターやスターライトブレイカーとて、
非殺傷設定で撃ってしまえば撃たれた相手は昏倒するぐらいで命に別状はない。
だけど今はレイジングハートを奪われ、魔法もうまく働かない。
身を守れるのはこの拳銃のみである。そして銃器には非殺傷設定なんて物は存在しない。
撃てば傷つき、死に至らしめる。
自分は誰かのために誰かを殺すなんて行為ができるのだろうか?
自分のため誰かのため、他の誰かを殺す。
それこそあの怪人達の思う壺なのだ。
無論危険な任務もこなして来た。だけど彼女はまだ一度も人を殺めてはいない。
扱う魔法には常に非殺傷設定で任務に望んでいた。
いかに大出力の砲撃魔法であるディバインバスターやスターライトブレイカーとて、
非殺傷設定で撃ってしまえば撃たれた相手は昏倒するぐらいで命に別状はない。
だけど今はレイジングハートを奪われ、魔法もうまく働かない。
身を守れるのはこの拳銃のみである。そして銃器には非殺傷設定なんて物は存在しない。
撃てば傷つき、死に至らしめる。
自分は誰かのために誰かを殺すなんて行為ができるのだろうか?
自分のため誰かのため、他の誰かを殺す。
それこそあの怪人達の思う壺なのだ。
「私自身を、そしてかがみを守るためにこの銃を使わないといけない時がやって来るかもしれない。魔法は威力を調節して死人が出ないようにすることができる。だけど銃は―――」
「なら、使わないように努力しましょ。みんな誰しも進んで殺し合いをするわけがない。怖くて、見知らぬ他人が自分を殺しに来ると思って疑心暗鬼なってしまうのよ。私がそうだったように……」
「…………」
「今回は私を救えたんでしょ? 前の私は良心の呵責に耐え切れず壊れてしまったけど……今の私はあなたのおかげでこうしていられる」
「そう……だね。ありがとう」
表情を曇らせるなのはにかがみは少し安心した表情を見せていた。
最初出会った時はその落ち着きぶりに異様な物を覚えたが、いざこうして話してみると内面はかがみと同じ年頃の女の子であるということを再認識できたのである。
「なら、使わないように努力しましょ。みんな誰しも進んで殺し合いをするわけがない。怖くて、見知らぬ他人が自分を殺しに来ると思って疑心暗鬼なってしまうのよ。私がそうだったように……」
「…………」
「今回は私を救えたんでしょ? 前の私は良心の呵責に耐え切れず壊れてしまったけど……今の私はあなたのおかげでこうしていられる」
「そう……だね。ありがとう」
表情を曇らせるなのはにかがみは少し安心した表情を見せていた。
最初出会った時はその落ち着きぶりに異様な物を覚えたが、いざこうして話してみると内面はかがみと同じ年頃の女の子であるということを再認識できたのである。
「とりあえずここを離れない? じっとしてても意味がないわ」
「そうだね、かがみはどこか行くあてはあるの?」
「ないけどとにかく私の友達と合流する」
「私も同じ、そして……もう悲劇は繰り返させない、今度こそ一人でも多くの人を救ってみせる!」
「そうだね、かがみはどこか行くあてはあるの?」
「ないけどとにかく私の友達と合流する」
「私も同じ、そして……もう悲劇は繰り返させない、今度こそ一人でも多くの人を救ってみせる!」
二つの星は再び巡り合う。
かつて救えなかった少女と再会し不屈のエースは決意を新たにする。
生まれ変わった新しい世界で柊かがみと高町なのはの運命がゆっくりと廻りだすのであった。
かつて救えなかった少女と再会し不屈のエースは決意を新たにする。
生まれ変わった新しい世界で柊かがみと高町なのはの運命がゆっくりと廻りだすのであった。
【C-3 森/一日目 深夜】
【柊かがみ@らき☆すた(原作)】
【状態】:健康
【装備】:モーゼルC96(9/10発)@現実
【所持品】:支給品一式、モーゼルC96のマガジン×4@現実
【思考・行動】
基本方針:知り合いを探す
1.高町なのはと行動を共にする
【状態】:健康
【装備】:モーゼルC96(9/10発)@現実
【所持品】:支給品一式、モーゼルC96のマガジン×4@現実
【思考・行動】
基本方針:知り合いを探す
1.高町なのはと行動を共にする
※参戦時期は一年生組と面識がある時期です。
【高町なのは(StS)@なのはロワ】
【状態】:疲労(小)、左肩負傷(止血済)
【装備】:マテバ 6 Unica(6/6発)@現実
【所持品】:支給品一式、マテバ 6 Unicaの弾×30@現実、カートリッジ×3@なのはロワ チョココロネ×8@らき☆すた
【思考・行動】
基本方針:悲劇の連鎖を止め、一人でも多くの人間を救う。
1.柊かがみと行動を共にする。
【状態】:疲労(小)、左肩負傷(止血済)
【装備】:マテバ 6 Unica(6/6発)@現実
【所持品】:支給品一式、マテバ 6 Unicaの弾×30@現実、カートリッジ×3@なのはロワ チョココロネ×8@らき☆すた
【思考・行動】
基本方針:悲劇の連鎖を止め、一人でも多くの人間を救う。
1.柊かがみと行動を共にする。
※参戦時期はなのはロワ26話、『残る命、散った命』の直後です。
※何らかの原因により魔力が減衰しています。
※何らかの原因により魔力が減衰しています。
010:赤木しげるはシゲラナイ | 投下順 | 012:6/「俺三人とか多くね?」 |
010:赤木しげるはシゲラナイ | 時系列順 | 012:6/「俺三人とか多くね?」 |
001:OP 開演 | 柊かがみ | 040:Advent:One-Winged Angel |
高町なのは |