四度目のスタートライン ◆KuKioJYHKM
飛び散る鮮血。巨大な槍に貫かれる、愛しい人。
川田章吾が「三度目の殺し合い」で、最後に見た光景はそれだった。
そこで意識はぷっつりと途絶え、気が付いた時には彼の体はどこかの体育館の中にあった。
そこで川田は「四度目の殺し合い」の開始を告げられ、一人の少女が死ぬところを見せつけられた。
それはついさっき、自分の目の前で殺されたはずの恋人だった。
川田章吾が「三度目の殺し合い」で、最後に見た光景はそれだった。
そこで意識はぷっつりと途絶え、気が付いた時には彼の体はどこかの体育館の中にあった。
そこで川田は「四度目の殺し合い」の開始を告げられ、一人の少女が死ぬところを見せつけられた。
それはついさっき、自分の目の前で殺されたはずの恋人だった。
◇ ◇ ◇
ここは刑務所。川田章吾は、牢獄の中にいた。ゲーム開始から約10分。彼はその間、微動だにしていなかった。
殺し合いの中で相思相愛の仲となった少女、柊つかさ。その彼女が死ぬ瞬間を、立て続けに二度も見せられた。
あり得ない事態に遭遇し、川田はひどく混乱していた。しかし、時が経てばやがてその混乱もおさまってくる。
心がある程度の冷静さを取り戻した時、川田の中にわき上がってきたのは「怒り」と「絶望」だった。
なぜ、つかさがあんな目に遭わされなければならないのか。なぜ、自分はまた愛しい人を守れなかったのか。
後から後から、脳内には後ろ向きな思いばかりが吹き出してくる。川田は大きくため息をつくと、牢の中に置かれていた粗末なベッドに腰を下ろす。
殺し合いの中で相思相愛の仲となった少女、柊つかさ。その彼女が死ぬ瞬間を、立て続けに二度も見せられた。
あり得ない事態に遭遇し、川田はひどく混乱していた。しかし、時が経てばやがてその混乱もおさまってくる。
心がある程度の冷静さを取り戻した時、川田の中にわき上がってきたのは「怒り」と「絶望」だった。
なぜ、つかさがあんな目に遭わされなければならないのか。なぜ、自分はまた愛しい人を守れなかったのか。
後から後から、脳内には後ろ向きな思いばかりが吹き出してくる。川田は大きくため息をつくと、牢の中に置かれていた粗末なベッドに腰を下ろす。
(さて、俺はどうするべきなのかね……)
混乱していた状態でも、川田は最低限のことは理解していた。自分はあの殺し合いの会場から更に拉致され、別の殺し合いに放り込まれたのだと。
この殺し合いの主催者が、なぜそんなことをしたのかはわからない。だが、どうでもいいことだ。
つかさを殺した主催者への怒りはある。だが今の川田は、それ以上に絶望していた。疲れていたと言ってもいい。
一度失ったものを、彼は取り戻しかけた。だがそれは、また彼の手からこぼれ落ちてしまった。
もはや彼に、四度目の殺し合いに挑む気力は残っていなかった。
この殺し合いの主催者が、なぜそんなことをしたのかはわからない。だが、どうでもいいことだ。
つかさを殺した主催者への怒りはある。だが今の川田は、それ以上に絶望していた。疲れていたと言ってもいい。
一度失ったものを、彼は取り戻しかけた。だがそれは、また彼の手からこぼれ落ちてしまった。
もはや彼に、四度目の殺し合いに挑む気力は残っていなかった。
(いっそのことこのまま動かずに、誰かが殺しに来るのを待つか……)
川田は体勢を変え、座っていたベッドにごろりと寝ころぶ。
何をするでもなく、ぼんやりと天井を見つめる川田。その時ふいに、彼の脳にあるフレーズが蘇った。
何をするでもなく、ぼんやりと天井を見つめる川田。その時ふいに、彼の脳にあるフレーズが蘇った。
「優勝した者は、どんな願いでも叶える権利を与えられる」
それは、三度目の殺し合いで主催者が言っていたこと。そして今回の殺し合いでも、主催者は同じことを言っていた。
(そうか、俺としたことがショックが大きくて失念していた……。優勝すれば、つかささんを生き返らせることが出来るかもしれない……)
前回の主催者は、死者を蘇らせる力があった。死んだはずの自分や桐山たちが参加させられていたことが、何よりの証だ。
では、今回の主催者はどうだろう。おそらく、ある。でなければ、死んだはずのつかさをもう一度殺すなど出来ないからだ。
つかさは一度蘇生させられ、その上でもう一度殺された。
それが川田の考えだ。
では、今回の主催者はどうだろう。おそらく、ある。でなければ、死んだはずのつかさをもう一度殺すなど出来ないからだ。
つかさは一度蘇生させられ、その上でもう一度殺された。
それが川田の考えだ。
殺すために生き返らせる。その非道な行いに、激しい怒りがわき上がる。
だがその怒りを感じている相手の意向に従わなければ、つかさを蘇らせることは出来ないのだ。
葛藤する川田。だが、答えはすぐに出た。つかさの命と憎い相手に従う屈辱、天秤にかけて重いのはどちらか。
つかさの命だ。
だがその怒りを感じている相手の意向に従わなければ、つかさを蘇らせることは出来ないのだ。
葛藤する川田。だが、答えはすぐに出た。つかさの命と憎い相手に従う屈辱、天秤にかけて重いのはどちらか。
つかさの命だ。
(本郷さん、ヒナギクさん、葉隠……。すまない、俺はみんなの思いを裏切る。
馬鹿なことだってのはわかってる。だが俺は……俺のつたない脳は決めちまったんだ。
どうせ帰るところなんてない身だ。この命、つかささんのために使わせてもらう!)
馬鹿なことだってのはわかってる。だが俺は……俺のつたない脳は決めちまったんだ。
どうせ帰るところなんてない身だ。この命、つかささんのために使わせてもらう!)
恩人の、仲間の思いを踏みにじってでも、つかさを生き返らせる。
すなわち、ゲームに乗って優勝する。それが、川田の決意だった。
すなわち、ゲームに乗って優勝する。それが、川田の決意だった。
(よし、それじゃあ支給品を確認しておくか。強力な武器があればいいんだがな……)
それ以上考えるのをいやがるかのように、川田は唐突に行動を切り替える。
彼がデイパックの中身を確かめると、そこからは三つの道具が出てきた。
ランダムの支給品が最大数である三つ入っていたことは喜ぶべきことだが、川田の表情は浮かない。
なぜなら、それらは見た限りではあまり役に立ちそうにない物ばかりだったからだ。
具体的に言うと、彼の支給品は義手、ベルト、カードの三つだった。
彼がデイパックの中身を確かめると、そこからは三つの道具が出てきた。
ランダムの支給品が最大数である三つ入っていたことは喜ぶべきことだが、川田の表情は浮かない。
なぜなら、それらは見た限りではあまり役に立ちそうにない物ばかりだったからだ。
具体的に言うと、彼の支給品は義手、ベルト、カードの三つだった。
(いや、見た目で判断するのは利口じゃない……。前回の殺し合いでも、俺の常識じゃあり得ないような支給品がいくつか存在した。
これだって、ひょっとしたら十分役に立つ道具かもしれないんだ)
これだって、ひょっとしたら十分役に立つ道具かもしれないんだ)
気を取り直し、川田は支給品の説明書に目を通していく。読み進めるにつれ、川田の表情は険しさを増していった。
偶然か意図的なものか、三枚の説明書には全てある単語が記されていた。
それは、「仮面ライダー」。
偶然か意図的なものか、三枚の説明書には全てある単語が記されていた。
それは、「仮面ライダー」。
(何だよ、これは……。俺が本郷さんの知り合いだと知ってこんな事しやがったのか?)
「仮面ライダー」と聞けば、川田の脳裏には一人の男の顔が浮かぶ。
本郷猛。またの名を仮面ライダー1号。彼と川田の関わった時間は短い。
だが、それでも本郷という人間を理解するには十分だった。
「正義」。その一言で本郷猛という人間は表現できる。まさしく彼は、子供向けのテレビ番組に登場する正義の味方そのものだった。
その本郷と同じく、「仮面ライダー」の名を持つ者たちが使っていたという三つの道具。
おそらくは本郷がそうしたように、力無き者を悪の手から守るために……正義の行使のために使用されてきたのだろう。
本郷猛。またの名を仮面ライダー1号。彼と川田の関わった時間は短い。
だが、それでも本郷という人間を理解するには十分だった。
「正義」。その一言で本郷猛という人間は表現できる。まさしく彼は、子供向けのテレビ番組に登場する正義の味方そのものだった。
その本郷と同じく、「仮面ライダー」の名を持つ者たちが使っていたという三つの道具。
おそらくは本郷がそうしたように、力無き者を悪の手から守るために……正義の行使のために使用されてきたのだろう。
(これを自分勝手な人殺しに利用するってことは……。本郷さんたちへのこれ以上ない侮辱だな)
川田の顔を、脂汗が伝う。一度固めた決意が、再び揺れ動く。
(おいおい、何を今更迷ってんだ、俺……。仲間の思いを踏みにじってでもつかささんを生き返らせるって、さっき誓ったばかりじゃねえか)
だがその揺れは、ほんの一瞬。川田の決意は、すぐにまた強固なものとなる。
(本当にすまねえ、本郷さん……。今度死んだら、あの世で土下座でも何でもするよ……。
もっともこことあそこじゃ違う世界の可能性があるから、死んでもあんたと同じあの世に行けるかどうかはわからねえけどな)
もっともこことあそこじゃ違う世界の可能性があるから、死んでもあんたと同じあの世に行けるかどうかはわからねえけどな)
本郷への謝罪の念を胸に抱きながら、川田はベルトを手にする。説明書に書いてあったとおりにそれを腰に巻き、中心部を開ける。
するとどこからともなく、機械的なフォルムを持つバッタが地面を跳ねて川田の元へとやってきた。
川田はそのバッタをつかみ、開けられたベルトの中心部にセットする。本郷が使っていた、あの言葉を叫びながら。
するとどこからともなく、機械的なフォルムを持つバッタが地面を跳ねて川田の元へとやってきた。
川田はそのバッタをつかみ、開けられたベルトの中心部にセットする。本郷が使っていた、あの言葉を叫びながら。
「変身!」
『HENSHIN』
『HENSHIN』
川田の叫びを、機械音声が復唱する。同時に、彼の体が鎧で覆われていく。
数秒後、そこにはすでに学生服を着た青年の姿はなかった。
そこにいたのは額から伸びる角のような突起が目を引く、緑色の戦士だった。
数秒後、そこにはすでに学生服を着た青年の姿はなかった。
そこにいたのは額から伸びる角のような突起が目を引く、緑色の戦士だった。
(なるほど、変身した本郷さんによく似てるぜ……)
ペットボトルを鏡代わりに自分の姿を確認し、川田は心の中で呟く。全体的に本郷と比べ機械的な印象を受けるが、目の辺りなどは変身した本郷とほとんど変わらない。
(で……。肝心の強さの方はどうなんだ……?)
試しに、自分が先程まで寝ころんでいたベッドを蹴り上げる川田。ベッドはあっさりと宙に舞い上がり、見るも無惨に変形して床に叩きつけられた。
(なるほど、さすが仮面ライダーってところか。本郷さんや葉隠みたいな強者と出くわさない限りは、武器なしでも戦えそうだ)
そう考える川田だが、その思考に慢心はない。そんな強者と出くわす可能性は、十分にあるのだから。
(自分より強いやつを相手にするなら、頭を使う必要がある。逆に言えば、頭を使えば自分より強いやつでも殺せるんだ。
その点、このカセットアームとやらは使えるな……。いくらでも応用が利く。
だけど、さすがに腕を持ち歩くのは気が引けるな。とりあえず変形させておくか)
その点、このカセットアームとやらは使えるな……。いくらでも応用が利く。
だけど、さすがに腕を持ち歩くのは気が引けるな。とりあえず変形させておくか)
川田は義手を取り出し、そこに付属のカートリッジをセットする。するといかなるメカニズムなのか、義手は瞬く間に変形しマシンガンとなった。
(ライダーの力にマシンガン……。こりゃちょっと引きがよすぎたかもな。
反動が来なけりゃいいんだが……。まあ、精神的なものを考えればトントンか。
さて、それじゃあぼちぼち繰り出すか。四度目の、くそったれなゲームによ!)
反動が来なけりゃいいんだが……。まあ、精神的なものを考えればトントンか。
さて、それじゃあぼちぼち繰り出すか。四度目の、くそったれなゲームによ!)
準備を整え、川田は牢獄を後にする。仮面ライダーという鎧に包まれた体に、闘志と殺意をみなぎらせながら。だが……。
(みんな……本当にすまねえ……)
仮面の下の瞳からは、なぜか涙が溢れていた。
◇ ◇ ◇
川田は、自分が冷静に考えた結果ゲームに乗ることを選んだと思っている。
だが恋人の死を二連続で見せられるという異常事態を前にして、彼の脳はまだ完全には正常な働きを取り戻してはいなかった。
川田は思い出していない。見せしめにされた少女が、つかさが持っているはずのない異能の力を使っていたことに。
川田は気づいていない。自分が名簿の確認を忘れるという凡ミスを犯していることに。
そしてその名簿には、「柊つかさ」という名前が記されていることに。
果たして川田が、それらに気づく時は来るのか。そして気づいたとしたら、その時彼はどうするのか。
その答えは、まだわからない。
だが恋人の死を二連続で見せられるという異常事態を前にして、彼の脳はまだ完全には正常な働きを取り戻してはいなかった。
川田は思い出していない。見せしめにされた少女が、つかさが持っているはずのない異能の力を使っていたことに。
川田は気づいていない。自分が名簿の確認を忘れるという凡ミスを犯していることに。
そしてその名簿には、「柊つかさ」という名前が記されていることに。
果たして川田が、それらに気づく時は来るのか。そして気づいたとしたら、その時彼はどうするのか。
その答えは、まだわからない。
【B-3/刑務所/一日目-深夜】
【川田章吾@漫画ロワ】
[状態]:混乱(本人は正常だと思っている)、キックホッパーに変身中
[装備]:ゼクトバックル(ホッパー)@なのはロワ、カセットアーム(マシンガンアーム)@書き手ロワ2nd
[持物]:支給品一式、サバイブ(烈火)@書き手ロワ2nd
[方針/行動]
基本方針:優勝し、つかさを生き返らせる
1:出来る限り効率的に参加者を殺していく。
※漫画ロワ201話「笑顔」より、つかさが斗貴子に殺された直後からの参戦です。
※愛媛のことをつかさだと思っています。
※ホッパーの変身に関する制限はなのはロワ準拠です(変身時間無制限、変身解除後は1時間変身不能、使用条件は「絶望」)
[状態]:混乱(本人は正常だと思っている)、キックホッパーに変身中
[装備]:ゼクトバックル(ホッパー)@なのはロワ、カセットアーム(マシンガンアーム)@書き手ロワ2nd
[持物]:支給品一式、サバイブ(烈火)@書き手ロワ2nd
[方針/行動]
基本方針:優勝し、つかさを生き返らせる
1:出来る限り効率的に参加者を殺していく。
※漫画ロワ201話「笑顔」より、つかさが斗貴子に殺された直後からの参戦です。
※愛媛のことをつかさだと思っています。
※ホッパーの変身に関する制限はなのはロワ準拠です(変身時間無制限、変身解除後は1時間変身不能、使用条件は「絶望」)
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川田章吾 | 058:男の戦い |