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チートと神域と時々古代

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チートと神域と時々古代 ◆LcLEW3UbhI



遊戯は唐突なタイミングで、二つの理由から、支給品――たった今殺した少年の持っていた物――を漁る手を止めた。
一つは漁っていた支給品の中から思いもよらぬ物が出てきたこと。そしてもう一つは、後ろで明らかに何らかの物音がしたこと。

遊戯は恐ろしい程に素早い挙動で銃を振り上げると、後ろに佇む何者かに対し、その照準を合わせた。そのまま引き金を引こうとし、だが、指が引き金に掛かった時点で動きを止める。

「ククク……危ないな、全く。もう少しでこいつを壊すとこだった」

マーダーと化した遊戯。その彼に対し、唯一人質とすることができる物を、その男は所持していた。即ち、『千年パズル』を。

「そいつをこっちに渡せ」

静かに、だが果てしない威圧感を込めて遊戯が男に対し要求する。何処ぞの王様のように動揺をみせたりはしない。交渉を行う時にそんなことをすれば相手の思う壺に嵌るのは目に見えている。

「ククク……。まあ待ってくれ。こいつを渡すのは構わない。俺はこれがあんたにとってどういう物だかわかってるし、元々渡す予定で俺はあんたを見つけたわけだからな。だが、タダでってわけには行かない」
「交換……トレードってことだな。いいぜ。どんな物が欲しい? 俺が今持ってるのは……」

続けざまに言葉を発しようとする遊戯を、千年パズルを持つ手に力を加えることで、アカギは静かに制した。そしてそのままの状態で更に言葉を重ねる。

「まあ待てって。そう話を急ぐなよ……。こっちもこっちでやらなきゃならない事がある。……そこの死体、あんたがやったのか?」

男は静かにその言葉を投げかけた。そこにはそのことを攻めるるような気迫もなければ、問い詰めるような威圧も無い。ただ冷静に、状況を確認する、その目的のために発せられた言葉だというのは容易く見当が付いた。

「ああ。俺はこのゲームに、元主催として乗ることに決めたぜ」


「なるほど。なら仕方ない……」

本当の事を言うと、元主催というところに男が何らかの反応を示すのでは、と期待した言葉だったのだが、男は表情一つ変えない。
男はそのまま、千年パズルの一番端の部分……最も脆い部分を掴み、それとは逆の部位を遊戯へと差し出した。

「ククク……あんたが危険人物だと分かった以上、こっちの初めのプラン通り交換、とは行かなくなった。まずはそっちの端を掴んで、この中のもう一人のあんたと話をしろ……」

アカギが手に持った千年パズルを遊戯の方に押し出してくる。遊戯はそれを静かに、だが鋭い視線で見つめた。

「俺との交換はその後だ。言うまでもないと思うが、銃を俺に向けたり、こいつを強引に奪い取ろうとしたら、その瞬間、交渉決裂っ……! 俺はこいつを破壊する」

……遊戯にはまともな交渉をする気はなかった。
千年パズルさえ手に入れられれば、その瞬間に目の前の男を撃ち殺す気でいた。
故に、男のこの行動は遊戯を苛立たせた。時間の無駄だ。行動に意味がない。まさか千年パズルの中にいる『もう一人の遊戯』……『AIBO』を利用して何かを仕掛けようというのだろうか?
それこそ馬鹿げている。『AIBO』のことは彼が一番良く知っている。あれこそ最も純粋且つ邪悪な存在だ。言う事を聞かせることなどまず不可能。
よしんば協力体制を築けたとしても、不要と感じられたら一切の躊躇いも情けも無く、後ろから爆殺される。

まさに悪の中の悪。
優しさを一切持たない『AIBO』ほどに恐ろしい物は無い。『AIBO』の脅威から逃れられるのは、同じ体に住む彼のみだ。
同じ世界にいるならば、他の者達は全員、地雷原に片足を突っ込んでいるような物である。もっとも、だからこそ、この世界でマーダーをする上では是が非でも欲しいものなのだが。

分からない。
男の行動の意味が。
どういう理由でこの行動をとるのか。
何の目的があるのか。

「……」

だが、結局のところ何らかの行動を起こさなければ、何も始まらない。
遊戯は男から視線を逸らさず、その手を千年パズルへと伸ばした。



……意識が流れ込んでくる。
遊戯の目の前に、彼と同じような見た目の、だが彼とは違い、優しくて善人そうな少年が現れていた。
悪い事なんて生まれてこの方一度も考えた事がありませんと言わんばかりの雰囲気を纏う少年。
だがその心はバリバリ裂けるドス黒いクレバスだ。

「やあ。会いたかったよ、もう一人の僕」

親しげな様子で『AIBO』が口を開く。思わずこちらが油断してしまいそうな優しい声音だ。
『AIBO』のことを知り尽くしているはずの遊戯でさえ気を抜いてしまいそうになる。

遊戯は落ち着いて数回呼吸を繰り返すと、男から視線を外さずに、意識を心中の『AIBO』に向けた。

「ああ、俺も会いたかったぜ、相棒」
「本当はもう少し君との再会の余韻に浸りたいところだけど、そうも言ってられないね、この状況じゃあ。説明してくれないかな、君の状況を」
「ああ、とは言っても俺はまだそんなに沢山のことはしていない。俺はここに来て、このゲームに乗ることに決めた。そしてそこのやつを殺した。まだそれだけしかしてない」

衝撃の告白と言えるだろうか。遊戯は自ら殺人者となったことを『AIBO』に知らせたのだ。
だが『AIBO』は表情をまるで変えなかった。カオスロワで既に何十人と殺している『AIBO』に、その言葉ははまるで影響を与えられない。『AIBO』は詰まらなそうな表情で遊戯の言葉を無視すると、

「その前は?」

静かに尋ねた。遊戯は一瞬こそ、言葉の意図が分からず動揺したが、すぐに表情を元に戻すと、

「何を言ってるんだ相棒。ここに飛ばされるまで俺達はカオスロワの主催をやってただろう?」
「ああ、なるほど。その時間から来たのか、君は」

『AIBO』が何処か意味深に呟いた。そして視線を外し、悩むようにして微かに顔をしかめると、再び遊戯の方に向き直る。

「いい、もう一人の僕。驚かないで聞いてね。僕の知ってる世界では、もう僕達が主催をしていたロワは終わってしまってる。更に言うなら僕達は既に死んだ」
「なっ!」

『AIBO』は分かりやすく、一から順に遊戯に対して説明した。喜緑によってロワが乗っ取られた事。それに対しての復讐は済ませた事。新たなロワが始まった事。そして……殺されたこと。

「……信じられないぜ。そんなことが……」

遊戯は大きく頭を振ると、話された内容の理解に勤めた。だが、その時間をほとんど与えず、『AIBO』は諭すよう言う。

「けど、事実だよ」
「だが、それじゃあ、なんで相棒や俺はここにいるんだ? 死んだんだろ?」
「僕らの世界じゃ死人が生き返るなんて日常茶飯事だったじゃない。僕だって死者蘇生のカードがあれば、それをチート化して死人を生き返らせられるよ」

『AIBO』が苦笑交じりに語る。その様子は何処か、人が心を許してしまうような愛らしさがある。

「僕としてはむしろ、君と僕と、更に言えばそこのアカギ君の間の時間のずれの方が気になるね。僕達のチートですら不可能だった時間操作……可能ならこれほどすごい能力もないよ」

『AIBO』の言葉に、思わず反射的に遊戯が頷く。『AIBO』恐ろしいほどの巨悪だが、やはりこういった面では頼りになる。
そこまで考えたところで、遊戯は小さく音を立てて自分の頬をはたいた。

(落ち着け俺。『AIBO』のペースに呑まれたら駄目だ。何時の間にか俺の意思とは無関係なところで全ての事態が動いてしまう……。意思をしっかり持て)


「相棒、これからどうするんだ? 俺としては元主催者として、積極的に殺し合いに乗るつもりなんだが……」

気を取り直して遊戯が『AIBO』へと新たな言葉を投げかける。
これはある種の切り札だった。元主催というその単語の意味は、『AIBO』にも理解できるはずだ。そして、理解したなら、彼に同意し、マーダーとなるはず。
そうなれば、既にマーダーとして一人殺している彼が、これから先の主導権を握る事も出来る。

そんな遊戯の読みに対し、『AIBO』は二コリと笑った。邪気の全く無さそうな、まるで可愛い子供のような笑顔。
そっちの趣味のある人間なら男女に関係なく一発で落ちるだろう。
だがそこから吐かれる言葉はあまりにも辛辣だ。

「そんな下らないプライドや責任感は捨てた方がいいよ。そういうのに縛られるから、君はロワの主催を下ろされるんだ。もう少し考えて行動しなよ。何が賢くて、何が賢くないのか。君はとても傲慢で、下らないプライドに拘りすぎなんだ」

全ての言葉を発する間、全くといっていいほどにその優しげな表情を変えないのは流石という所だろうか。
ちょっぴりへこんだ遊戯は、それでも精神力を奮い立たせ、『AIBO』の雰囲気に飲まれないよう、言葉を重ねる。

「分かったぜ相棒。だが、じゃあお前の方針と目的ははどんなかんじなんだ? 何をするつもりで動いてるのか教えて欲しいぜ」
「悪いけど、それは今は言えない。君は心の中が表情や仕草に現れ過ぎるんだ。見てみなよ、アカギ君が哀れむような眼で僕らを見てる。まるで精神異常者を見るような目だ」

言われて、遊戯は思い出したかのように男……アカギの方に振り返った。
もしも今、『AIBO』との会話に夢中になっていた彼を、アカギが殺そうとしていたら……。
想像して、身震いする。そして今度からは常にあらゆる方向に注意を払い続ける事を心に誓う。

「僕の行動方針と目的は、アカギ君がいるこの場じゃあ、話せない。彼は君の表情や仕草だけで、僕らの会話の内容を把握しかねないんだ。ごめん」

『AIBO』がちらりと視線をアカギに向けつつ、侘びるようにして遊戯に語る。その表情があまりに真剣な物だから、遊戯は思わず頷いてしまった。

「分かったぜ相棒。今はお前に任せる事にするぜ」

遊戯は結局、『AIBO』に全てを任せることにした。なんだかんだ言って、『AIBO』の頭脳は本物だ。まず間違いなく、正しい判断を下せる。

……実のところこの時点で遊戯は『AIBO』に呑まれていたのだが、本人がそれに気付く事は無い。

「ありがとう、もう一人の僕。それじゃあ、まずは代わって」
「ああ」

遊戯が頷くと同時に、アカギと遊戯が互いに触れていた千年パズルが短く光を放った。同時に、見る見る内に遊戯の身長が縮んでいく。
そしてその光が止んだとき、そこにいたのは優しそうな笑顔を浮かべた『武藤遊戯』……別名『闇AIBO』だった。

「ククク……。上手く行ったようだな」
「うん。ありがとうアカギ君。約束通り、君が六期で主催側に付いたのは水に流すよ。もう一人の僕も五期の初期は主催側だったわけだしね」
「ククク……。なら次の話に入ろう……。そっちの所持品は?」

言われて、遊戯は持っている二つのデイバッグを確認する。その内の片方を空けた瞬間、ほんの少しだけその笑顔に驚愕が走ったが、それ以降は順々にアイテムを見ていく。

「そうだなあ。君が扱えそうなものって言うと……これなんか面白いかな」

呟きながら遊戯が取り出したのは奇妙な球だった。赤と白が中央で別れている、見た目的に言えば奇妙な球としか言いようがない。

「モンスターボール、だってさ。ええと、説明によると、『中になにかしらのポケモンが入っている。ポケモンはトレーナーの指示に従う』だって。中に何が入ってるかは僕にも分からないけど、そこはまあ君の得意なギャンブルって事で。どう?」
「なるほど。ククク……面白いっ。それでいい。それで『千年パズル』をここまで運んできた事はチャラだ」
「良かった」


存外素直に頷くアカギに、遊戯はあからさまにホッとした様子でモンスターボールを手渡す。あからさま過ぎて逆に怪しいくらいにホッとした様子だ。

「それともう一つ、僕は欲しい物があるって言ったよね?」

受け渡しが終わったところで、遊戯が再びアカギに言葉を放った。アカギはそれに小さく頷くと、

「ああ……このカードは俺が使う以上にお前が持った方が有効利用できそうだしな……。実のところを言えば、俺と組むのなら、ただでくれてやってもいいんだが……」

アカギが言うが、遊戯はデイバッグを探るのをやめない。
そのまま顔を向けずに、アカギに告げる。

「あはは。ごめんね。僕もどうしてもやりたい事があるからさ。そうだなあ……カードに吊り合いそうなのは、ないなあ……。あ、こっちの方面ならどうだろ。アカギ君、車って運転した事ある?」
「一応ある。あまり正しい方法で運転したとは言い難いが……」
「あはは。けど、あるんだね? じゃあ、ちょっと離れて」

アカギに告げると同時に、遊戯はデイバッグの中から多少恐る恐ると言った様子で、それを取り出した。それ……あまりにも巨大な、車というには明らかに相応しくないような存在……即ち、ロードローラー。

「どうぞ、乗って行って」

笑顔で言う遊戯に、アカギは思わず頬に一筋の汗を垂らしたが、すぐに自らのデイバッグを開くと、どうやってか、その中に強引にロードローラーを納めた。

「これは、乗って動くにはでかすぎる。マーダーからすればまさに格好の的っ……! 流石にそんな物に乗る気にはなれない。悪いが、これは別の使い方で使わせてもらう」
「そう。まあいいや」

遊戯は頷くと、アカギが差し出したカードを受け取った。かくして、滞り無く取引は終了。実際は遊戯の中ではもう一人の遊戯が五月蝿く文句を言っていたのだが、少なくとも外見上は滞りなく取引は終了した。

「じゃあ、約束通り、ここでお別れだ。これにて取引は終了っ……!」
「うん。じゃあね、アカギ君。君と居たのは僅かな時間だったけど、中々面白かったよ」
「ああ」

呟き、手を上げて、アカギが遊戯から離れて行く。その背はあまりにも無防備に見える。もしも今後ろから銃撃したら、アカギは死ぬだろう。制限を受けた遊戯のチート能力の一つ『爆☆殺』ですら死ぬだろう。どうすることも出来ずに。
実際のところ、遊戯……『AIBO』でない方の遊戯はそれを主張していた。だが『AIBO』は聞く耳を持たない。
だけですらなく、更に最悪の選択を行う。

「待って、アカギ君。やっぱりさっきの車じゃ、カードには吊り合わないよ。もう一つ、これも付ける」

そう言って遊戯が放ったのは、遊戯の持つ『千年パズル』と酷似した物だった。円の中心に眼が嵌められたような形の首飾り……『千年リング』

「そうかい。クク……。まあ、ありがたくもらっておこう」

それだけ言い残すと、今度こそ、アカギはその場から去っていった。そのまましばしの時間が経過する。

遊戯はアカギが間違いなくいなくなったと確信出来るような状況に至ると同時に、表と裏、共に心の内へと入り込んだ。もっとも、どっちが表でどっちが裏かは最早怪しいが……。

「おい、相棒!! あれは流石にまずいぜ。なんで千年リングを渡したんだ!! あれを俺たちで使えれば三つのチート能力……まさに無敵になれただろ!?」

遊戯が攻め立てる声音で、威圧感を持って言うが、『AIBO』は笑いながらそれを軽く流した。そこには一切の後悔がない。

「違うよ、もう一人の僕。確かにチート能力三つは強いけど、それも大前提……ここに来てから制限されてる僕らのチート能力が完全に解放されたら、だ」

『AIBO』が再び諭すようにして遊戯に語りかけて来る。そこには優しそうな口調と共に、反論を許さない強い意志がある。

「だからまず僕らがするのはチート能力の解放……つまりはこの首輪の解除だね。僕らのロワでは首輪にそんな機能は付いてなかったけど、他に原因があるとも思えないし……」

『AIBO』は身振り手振りを混ぜながら説明していく。その一つ一つの動作が、まるで何かの催眠術のようだ。
「この世界に掛かってるとしたら、主催側が僕らをここに送るのにも支障が生じるだろうしね。そうだなあ、まずは、主催の眼を僕等以外に向ける必要があるかな。僕らが怪しい行動をとっても、それが気取られないように。どう?」
「ああ。それ自体は分かるが、それが何故あいつに千年リングを渡した事に繋がるのかが分からないぜ」
「千年リングは争いを誘発させるための材料さ。バトルロワイヤルなんて面白い舞台に立って、中のバクラ君が大人しくしているわけ無いだろう? きっと絆とかを滅茶苦茶にしてくれるし、殺し合いも程よく加速してくれるよ」


『AIBO』はそこまで語ったところで苦笑した。何がそんなに面白いのか、遊戯にはいまいち分からなかったが……。

「まあ、アカギ君なら上手い事扱っちゃうかもしれいけど、それならそれでいい。アカギ君は対主催になるらしいからね。千年リングを彼が持てば相手がどんなに強いマーダーが相手でも、そう簡単には負けないよ」

『AIBO』はざっと説明を終えると、遊戯の理解を待った。

遊戯は考えるようにして顎に手を当てるが、しばらくして頷くと、口を開いた。

「つまりこういう事か? もしも千年リングが制御されなかったら、仲間の内部崩壊によって主催の興味を引く事が出来、制御されたらマーダーと対主催のバトルを面白くして、主催の興味を引ける」

遊戯の言葉に『AIBO』は嬉しそうに頷くと、あくまでも優しそうな表情で言う。

「そういうこと。まあ、どっちに転んでも、僕には美味しいってことだね」
「だが、そうそう上手く行くのか? 主催が反応しなかったらどうするんだ?」

遊戯が投げかける疑問に、『AIBO』は何処か楽しそうに答える。
もっとも、それは遊戯を恐怖こそさせ、安心など全くさせなかったが。

「するさ。もし僕が主催だったら、仲間内での争いや、信じあうものの絆の崩壊なんていうドロドロした物は、楽しいゲームを中断してでも見たいし、均衡したバトルっていうのは万人の興味を引くものなんだよ」

まるっきり第三者のような口調で『AIBO』が語りを続ける。その優しげな眼はいったい何を見ているのか。

「ロワを開くのは多分、主催者がそういうのを見たいからだと思うしね」
「じゃあ相棒。さっきは結局聞けなかったから今聞くぜ。相棒の方針と、後目的はなんなんだ?」
「方針は、そうだなあ。これからは出来るだけ他の人達に見つからないようにヒソヒソと行動する、かな」

『AIB』は悩むような仕草を交えつつ語る。実際に悩んでいるわけでは無いだろう、とだけ遊戯は推測できた。

「主催の経験上、僕らはこの首輪の仕組みをそこそこ知ってるからね。他の人と協力体制をとる必要も少ない。誰にも見つからないように必要な道具を見つけて、首輪を外す。所謂『空気キャラ』になれれば最高かな」

遊戯は再び顎に手を当てると、言われた事を順良くまとめ、『AIBO』の目的を推理する。

「……それで、俺たちの首輪を外した方法を使って、他の参加者の首輪も外して回って、対主催になるのか?」


遊戯の導き出した答えを、もう何度になるのか、『AIBO』は笑いながら否定する。

「何言ってるんだい、もう一人の僕。そんなことしたら主催のところに対主催が攻めて、下手したらロワが終わっちゃうじゃないか」
「分からない。分からないぜ、相棒。結局、相棒の目的はなんなんだ!?」

ついに遊戯が大声を出した。もっとも、ここは遊戯の心の中。どんなに大声を出そうとその声が届く相手は、ただ一人のみだ。もっとも、その一人はどんな大声も笑いながらそれを無視できる存在だが。
遊戯の大声に対し、やはり表情を優しげに保ちながら、対照的に静かに『AIBO』は答えた。

「僕は、君が以前失敗したことをもう一度やり直して、今度こそ成功させたいだけだよ。首輪を外すのはそのための手段だよ」
「もったいぶらずに話してくれよ。具体的な目的はなんなんだ?」
「それはねえ」

『AIBO』は静かに息を吸うと、相変わらずの優しげな、一転の曇りも無い笑みを浮かべたまま、言った。

「僕がこのロワの主催者になり変わって、このロワを成功に導くんだ」


【A-2/公園/一日目 黎明】
【武藤遊戯@カオスロワ】
【状態】闇AIBO
【装備】ワルサーPPK改(30/30)@現実 千年パズル@カオスロワ
【持物】支給品一式、遊戯王カード@ニコロワ、支給品×2(中身は確認しました)
【方針/思考】
[基本方針]
この世界のロワ主催者に、僕はなる!!
1、首輪を外すための道具を手に入れる。必要なら殺人も躊躇わない。むしろ多少、多めに殺した方が、絆を壊しやすいか?
2、とはいえ、出来る限り他の参加者には関わらず、空気でもいたい。
3、自分に関係ないところで主催の興味を引くような事を行わせたい。アカギ君と千年リングには期待。

※六期カオスロワ死後からの参戦です。
※主催者が時間を時間を操る能力を持っていると推測しています。
※闇のゲームにはほとんど制限が掛かってませんが、チート能力はほぼ封じられてます。
※ワルサーPPK改はただ弾が増えただけです。
※遊戯王カードの内訳は次の書き手さんに任せます。
※千年パズルがあれば誰でも中の遊戯とは話せます

【闇遊戯@カオスロワ】
【状態】健康
【方針/思考】
[基本方針]
AIBOに付いて行く
1、AIBOは俺の無念を晴らすために主催になろうとしてるのか?
2、AIBOにばかりいいところを取られて空気になりたくない
3、元主催の俺がロワを成り立たせなくていいのか……? まあ、相棒はいいって言ってるし、大丈夫だろう

※5ndで主催をやっていた時、幕張メッセに飛んだ後からの参戦です。
※『AIBO』がいなくなったり、信頼出来なくなったら、マーダーに戻る可能性があります


アカギは震えていた。
再び命と魂の削りあい……バトルロワイヤルに参加しているが故に。
それも、かつての彼の居た世界……死後に世界が用意された場ではなく、正真正銘の一度きり……たった一度、死ねば終わりのルールの世界でっ……!!

アカギがカオスロワ六期において主催に付いた理由は、あの世界での破滅は、ほとんど何も失わないからだ。死んだ後に和気藹々と死後の世界で仲良くやるようなのを、破滅とは言わない。
破滅に手が届く……魂が震えるようなギャンブルをするには主催の方がいい。それががほぼ全てである。

だが、この世界ならば、あの世界とは別の世界ならば話は別っ……!
アカギは感じ取っていた。この世界はさっきまでいた場所とは違う事……この世界には『破滅』が存在することをっ……!

(ククク……面白いっ。態々破滅のある世界を用意してバトルロワイヤルを開くとは、まさしく狂気の沙汰っ……! 俺は待っていたっ……! こういう事に巻き込まれるのをっ……!)

アカギはこのロワの主催は彼と似たような存在……同じように破滅をすぐ傍に置いて戦う事を楽しむ存在だと考えていた。そうでないなら、元主催で首輪の構造をある程度把握しているアカギや遊戯を、この世界に呼んだりはしないだろう。
単にバトルロワイヤルを楽しみたいなら、破滅しても安全のある程度約束されたかつての彼の世界……カオスロワの世界で、何も知らぬ哀れな参加者に限定してやればいいのに、それをしないのだから。

アカギが対主催になった何よりの理由……彼は戦いたかったのだ。そんな主催者と。明らかに狂気に触れている、主催者と。

(まずは首輪の解除だな……これがある限りは主催に喧嘩を売れない。幸い、俺が主催していたロワの物と、構造はそこまで変わらないらしい。流石にそのままと言う事でも無いようだが……)

アカギはそこで一旦思考を区切ると、周囲を見渡した。一瞬、何者かの声が聞こえたような気がしたのだ。
そのまましばらく周囲を警戒するが、以降の反応はない。呼吸をするような音も聞こえない。アカギは警戒を強めつつ、静かに思考を再開した。

(遊戯の言っていた能力の制限とやらの機能も、俺のロワの首輪には付いていなかった。今はやはり、情報と仲間を集める事に力を入れるべきだろう……)

本音を言えば、アカギは遊戯と組んで行動したかった。同じ元主催として、扱った首輪の情報を共有すれば、首輪の解除はかなり近付くはず。
結局のところ、遊戯は頑としてそれを拒んため、遊戯との取引は支給品の交換のみになってしまったが。

(まあ、あの千年パズルの中にいた方ならば兎も角、マーダーになったらしいもう片方の遊戯とは、出来る限りの関わりを避けたい……。考えようによっては今の状況こそ、まさに理想的展開っ……!)

知り合う事が出来た関係で、一応の利害の一致した関係。もう一度会うことがあったら、情報の交換くらいは出来る関係。常にマーダーと共にいざる終えないという地雷を抱え込み、それでいてこちらにとっての価値のある者に対して、まさに理想的な距離感と言える。

「ククク……」

アカギは心底楽しそうに笑いながら、歩む速度を速めた。仲間を探すにしても、首輪解除の情報を得るにしても、片端から回るのが有効なのは間違いない。
まずはここから最も近い、この島の端……北西をを目指す。

「おいおい、また妙なところに飛ばされて、王様に会ったと思ったら……、随分と面白え奴が俺様を持ってるじゃあねえか」

声は、何処からともなくアカギの耳に響いた。


【A-2/一日目 黎明】
【赤木しげる@カオスロワ】
【状態】神域 強運
【装備】強靭な顎と鼻(たぶんコンクリより硬い)、千年リング@なのはロワ
【持物】支給品一式、ロードローラー@漫画ロワ、モンスターボール@ニコロワ
【方針/思考】
[基本方針:仲間を集め、主催者を倒す
1、なんだ……今の声は?
2、片端から島を回り、情報と仲間を集める。
3、共に戦った6/、アナゴ朝倉涼子真・長門有希南千秋南春香、遊城十代を重点的に探す。彼が六期の主催だった事を知ってる者には五期の自分を語る。
4、ロワの後は元の世界に返りたくない。

※六期カオスロワの主催者になった後の参戦です。
※もう一つ自分の名前があることについては、カオスロワの世界ではよくあったこと、と流しています。
※千年リングは誰でも身に付ける事が出来ます。
※モンスターボールの中身については次の書き手さんに任せます


030:夜天の天使、飛び立つ 投下順に読む 032:四度目のスタートライン
029:空を見上げる少女達の瞳に映る世界 時系列順に読む 034:おまえら人間じゃねぇ!(読者視点)
024:パロロワ大戦3~主催側の決意~ 武藤遊戯 071:集結するカオス
赤木しげる(13歳) 052:隠し砦の三狂人


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