大都会交響楽(中篇) ◆BOMB.pP2l.
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【忘却のウッカリデス編 ~死地を迂回~】
[07:15]
「あの、奈緒ちゃん……大丈夫?」
いくらかの逡巡があったものの、結局ウッカリデスは奈緒へと声をかけることにした。
彼女がまるで拾ってきたばかりの猫の様に警戒心を露にしているのは自分の責任だという自覚があったからだ。
なので、できれば彼女が抱いてる誤解を解いてあげたいと彼はそう思った。
彼女がまるで拾ってきたばかりの猫の様に警戒心を露にしているのは自分の責任だという自覚があったからだ。
なので、できれば彼女が抱いてる誤解を解いてあげたいと彼はそう思った。
「……勝手にちゃんづけで呼ぶな。馴れ馴れしい」
「あぁ、御免ね。つい」
「あぁ、御免ね。つい」
棘のある言葉にウッカリデスは苦笑する。
けど、彼女が少しはらしい反応を返してくれたことにいくらか安堵した。
けど、彼女が少しはらしい反応を返してくれたことにいくらか安堵した。
「病院。嫌いなんだよ……いい思い出ないし」
「あぁ、そうだよね。僕も病院にはあんまりいい 【 思い出 】 ってのはないや」
「あぁ、そうだよね。僕も病院にはあんまりいい 【 思い出 】 ってのはないや」
【TIP】 「思い出」
忘却のウッカリデスにとって病院の思い出と言えば、ロリスキーの裸……ではなく、自身の死だ。
今と同じ様に彼と仲間は病院へとやってきて、その後彼は地獄紳士という書き手に謀殺されることとなった。
忘却のウッカリデスにとって病院の思い出と言えば、ロリスキーの裸……ではなく、自身の死だ。
今と同じ様に彼と仲間は病院へとやってきて、その後彼は地獄紳士という書き手に謀殺されることとなった。
「まぁ、病院が好きなやつってのも見たことないけどさ」
「それはそうだよね。ところで、その手首に巻いている”黒いリボン”って――」
「それはそうだよね。ところで、その手首に巻いている”黒いリボン”って――」
言って、そして強張る奈緒の表情を見てウッカリデスは失言したかと焦った。
彼女の抱える誤解や疑心暗鬼の元凶は彼が作品内で巻いたその黒いリボンにある。
それをどうにか外せば本来のアニ2の流れと同じく誤解は解消されるはずと考えたが、性急すぎたかもしれない。
彼女の抱える誤解や疑心暗鬼の元凶は彼が作品内で巻いたその黒いリボンにある。
それをどうにか外せば本来のアニ2の流れと同じく誤解は解消されるはずと考えたが、性急すぎたかもしれない。
「……な、な……これが、どうしたって……あんたに関係ないじゃないっ!」
「あ、あ、いや、女の子だしおまじないかな~とか、なんてね。気に障ったなら謝るよ。ごめんね」
「あ、あ、いや、女の子だしおまじないかな~とか、なんてね。気に障ったなら謝るよ。ごめんね」
ああ、とウッカリデスは後悔する。
まさか自分が書いた作品内のキャラと対面して、その中で与えたフラグが自分達に作用するなんて……と。
創作上の世界に紛れ込んで、自分が創作した苦難と戦うなんてSFもいいところだ。
まさか自分が書いた作品内のキャラと対面して、その中で与えたフラグが自分達に作用するなんて……と。
創作上の世界に紛れ込んで、自分が創作した苦難と戦うなんてSFもいいところだ。
「(あぁ、なんかデジャブを感じる流れ……このままだと、また僕が死んじゃうのかなぁ?)」
病院にやってきて、吸血姫二人はウッカリデスの苦悩をよそにイチャイチャ。
他の面子はあまり構ってもくれず、そして一人悶々としてる……となると、シチュはあの時によーく似ていた。
他の面子はあまり構ってもくれず、そして一人悶々としてる……となると、シチュはあの時によーく似ていた。
「( 【 再現展開 】 ……ありうるよなぁ。どうすれば予防できるのだろうか……?)」
【TIP】 「再現展開」
原作内におけるとあるシーンをロワ内のキャストを使って再現すること。
または、ロワ中の別のシーンをまたロワの中で同じ様な形で再現することを再現展開などと言う。
原作再現は主にファンサービス。ロワネタ再現はわかる人にはニヤリ……といった感じであろうか。
書き手ロワにおいては、出身ロワを原作とした特殊な原作再現ネタもよく見られる。
ちなみに、 【 私 】 はその特殊な原作再現はけっこう好きだったりします-☆
原作内におけるとあるシーンをロワ内のキャストを使って再現すること。
または、ロワ中の別のシーンをまたロワの中で同じ様な形で再現することを再現展開などと言う。
原作再現は主にファンサービス。ロワネタ再現はわかる人にはニヤリ……といった感じであろうか。
書き手ロワにおいては、出身ロワを原作とした特殊な原作再現ネタもよく見られる。
ちなみに、 【 私 】 はその特殊な原作再現はけっこう好きだったりします-☆
【TIP】 「私」
らき☆ロワの書き手である◆BOMB.pP2l.のこと。
そして同時に、このロワに参加している 【地球破壊爆弾No.V-7】 のことでもある。
ちなみにこのロワでの爆弾の登場話は、書き手1であったとある話の再現展開だった。
らき☆ロワの書き手である◆BOMB.pP2l.のこと。
そして同時に、このロワに参加している 【地球破壊爆弾No.V-7】 のことでもある。
ちなみにこのロワでの爆弾の登場話は、書き手1であったとある話の再現展開だった。
【ZAP】 「地球破壊爆弾No.V-7」
ザッピングします。
ザッピングします。
[07:15] 忘却のウッカリデス ⇒ [07:00] 地球破壊爆弾No.V-7
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【地球破壊爆弾No.V-7 編 ~シュレディンガーの書き手~】
[07:00]
「いやー、ウッカリデス氏が美形でちょっとびっくり☆」
仮面を脱いだらその下の素顔は美形――ってのはお約束がすぎるねーなどと爆弾はそんなことを口にする。
彼とは書き手ロワ2で長い間同行していたが、ずっと脱げないヘルメットを被っていたので素顔を見たのは今回が初めてなのだ。
ロワの中で明らかにならなかった素顔が別のロワの中で明らかになるとは、これも不思議なことだった。
彼とは書き手ロワ2で長い間同行していたが、ずっと脱げないヘルメットを被っていたので素顔を見たのは今回が初めてなのだ。
ロワの中で明らかにならなかった素顔が別のロワの中で明らかになるとは、これも不思議なことだった。
「なんか、炭酸の抜けたルルーシュって感じでしたよねー」
そしてそんな感想を述べるこなた。
二人は仲間より離れ病院の奥。輸血用血液が保存されている部屋の中で冷蔵庫から取り出した血液パックを机に広げていた。
透明なビニールパックに入ったひんやりとした血液。これが彼女達吸血鬼の食料である。
二人は仲間より離れ病院の奥。輸血用血液が保存されている部屋の中で冷蔵庫から取り出した血液パックを机に広げていた。
透明なビニールパックに入ったひんやりとした血液。これが彼女達吸血鬼の食料である。
「若干、心もとない量ではあるけどまぁ、おいおいなんとかしていこう。じゃ、早速――」
と言って、爆弾はパックの封を切りそこに口をつけた。そして、ちゅ~と音を立てて真っ赤な血を吸い上げてゆく。
そんな姿を見て、こなたも恐る恐るパックに手をつけ同じように血を吸い始めた。
そんな姿を見て、こなたも恐る恐るパックに手をつけ同じように血を吸い始めた。
「あ、意外とおいしい……ていうか、甘い?」
「血が甘く感じられるのは吸血鬼独自の味覚だねぇ。
ありがたいんだけれども、逆に今まで甘く感じられていた普通の食べ物の味は感じられなくなっちゃう」
「血が甘く感じられるのは吸血鬼独自の味覚だねぇ。
ありがたいんだけれども、逆に今まで甘く感じられていた普通の食べ物の味は感じられなくなっちゃう」
チョココロネもいまいちおいしく食べられないのさ。と、それを聞いてこなたは寂しそうな顔をした。
人間より遠くなっていくということは酷く寂しいことなのである。
ゆえに吸血鬼は人間に憧憬を抱き、人間と接し、彼らの真似事などをしてその寂しさを紛らわせるのだ。
人間より遠くなっていくということは酷く寂しいことなのである。
ゆえに吸血鬼は人間に憧憬を抱き、人間と接し、彼らの真似事などをしてその寂しさを紛らわせるのだ。
「ところで、かがみとかゆーちゃんのことなんですけれども……」
あぁそれか、それだねぇと、こなたの言葉に爆弾は頷く。
ウッカリデスが運んできた重傷を負った十代と言う少年。彼の状態も気になるが、彼にその傷を負わせた相手も同じく重要だった。
そして、その相手は”小早川ゆたか”であると、そうウッカリデスは証言したのである。
ウッカリデスが運んできた重傷を負った十代と言う少年。彼の状態も気になるが、彼にその傷を負わせた相手も同じく重要だった。
そして、その相手は”小早川ゆたか”であると、そうウッカリデスは証言したのである。
「ゆーちゃんも、私みたく誰かに吸血鬼とかにされたとか?」
「さてどうなんだろうねー? 最初の場所でこなたちゃん達の傍にはいなかったんでしょう?」
「さてどうなんだろうねー? 最初の場所でこなたちゃん達の傍にはいなかったんでしょう?」
だとしたら、全然別の存在。どこかのロワから来たゆーちゃんかも知れないよと爆弾はこなたに言ってみた。
聞いた話によれば、チートここに極まれりという感じであったらしいし、早々に普通のゆーちゃんがそうなってしまうとは
俄かには信じられないことだ。だとすればどこかカオス系ロワから来たと考える方が納得できる。
聞いた話によれば、チートここに極まれりという感じであったらしいし、早々に普通のゆーちゃんがそうなってしまうとは
俄かには信じられないことだ。だとすればどこかカオス系ロワから来たと考える方が納得できる。
「まぁ、探さないってわけにはいかないよね。かがみの方にしても」
「あの奈緒ちゃんって子が言ってたことは本当なんでしょうか……?」
「あの奈緒ちゃんって子が言ってたことは本当なんでしょうか……?」
恐らくはと、爆弾は頷いた。
柊かがみと言えばパロロワ界においても”発展性”と”多様性”に富んだキャラクターとして名高い。
爆弾とて全てを把握しているわけではないが、カオスや漫画の例を出せば最早何があってもおかしくないと言う所である。
柊かがみと言えばパロロワ界においても”発展性”と”多様性”に富んだキャラクターとして名高い。
爆弾とて全てを把握しているわけではないが、カオスや漫画の例を出せば最早何があってもおかしくないと言う所である。
「とは言え、かがみんが黒幕ってところまではまだ信用できないけれどね……キツいかな?」
気遣いの入った爆弾の言葉にこなたはゆるりと苦笑した。
「いきなり殺し合いとかで、二次元だーとか三次元だーとかで、知ってるキャラもいたりで、
楽しいのかなって思ったらやっぱり殺し合いで、みゆきさんが死んじゃうし、それでも実感あるのかどうか曖昧で、
そしてこんな状況なれっこって人も周りにいっぱいいるし――正直、いっぱいいっぱいです」
楽しいのかなって思ったらやっぱり殺し合いで、みゆきさんが死んじゃうし、それでも実感あるのかどうか曖昧で、
そしてこんな状況なれっこって人も周りにいっぱいいるし――正直、いっぱいいっぱいです」
そうだよねと、爆弾もこなたと同じ表情を浮かべる。
まさかやよもやの急展開である。そしてバトルロワイアル。これが普通の、普通の少女の反応だとそう思った。
まさかやよもやの急展開である。そしてバトルロワイアル。これが普通の、普通の少女の反応だとそう思った。
「じゃあさ、ちょっと気を紛らわせようか? これ見てみー」
「あれ? それってうちの夏服?」
「あれ? それってうちの夏服?」
爆弾が鞄から取り出したのは一着のセーラー服。こなた達が通う陵桜学園の夏用の制服であった。
今二人が着ている赤い襟のとは違って、こちらは涼やかな蒼の襟。そして半袖のセーラー服である。
今二人が着ている赤い襟のとは違って、こちらは涼やかな蒼の襟。そして半袖のセーラー服である。
「あの十代って子の鞄の中に入っていたのさ。こなたちゃん制服汚れちゃったしさ、これに着替えなよ」
「人のを勝手に……って、あれ? もしかしてこの展開って……」
「さぁ、楽しい着せ替えの時間だよ~♪」
「わ! わ! ちょっと――」
「人のを勝手に……って、あれ? もしかしてこの展開って……」
「さぁ、楽しい着せ替えの時間だよ~♪」
「わ! わ! ちょっと――」
あ~れ~☆ と、血の甘い香りが充満する部屋に 【 泉こなた 】 の可愛らしい嬌声が木霊した。
【ZAP】 「泉こなた」
ザッピングします。
ザッピングします。
[07:00] 地球破壊爆弾No.V-7 ⇒ [07:40] 泉こなた
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【泉こなた 編 ~オタク吸血姫走る!~】
[07:40]
薄暗い廊下を二人の泉こなたが並んで歩いている。
赤い冬用のセーラー服を着ているのが地球破壊爆弾No.V-7で、蒼い夏用のセーラー服を着ているのが本物の泉こなた。
吸血鬼としての食事と、ちょっとしたレクリエーションを終え、二人はウッカリデス達のいる病室へと戻る途中だった。
赤い冬用のセーラー服を着ているのが地球破壊爆弾No.V-7で、蒼い夏用のセーラー服を着ているのが本物の泉こなた。
吸血鬼としての食事と、ちょっとしたレクリエーションを終え、二人はウッカリデス達のいる病室へと戻る途中だった。
「(また”見ちゃった”……)」
日焼け止めクリームを塗られた時同様、
こなたはまた何時か何処かの爆弾とロリスキーの情事を流れ込んできた記憶の中に見ていた。
それは今いる様な病院を舞台としたもので、今度はロリスキーから爆弾へと、そしてより過激な交わりの形だった。
こなたはまた何時か何処かの爆弾とロリスキーの情事を流れ込んできた記憶の中に見ていた。
それは今いる様な病院を舞台としたもので、今度はロリスキーから爆弾へと、そしてより過激な交わりの形だった。
「(あれは、もう人間じゃあありえない)」
一言で表すならカニバリズム。
食べられてもなお復元する能力を持つ化物だからこそ許される極致の交ざり合い。快楽を貪る姿であった。
そして、そこに理解が及んでしまうことがこなたを憂鬱な気持ちへと傾けていた。
食べられてもなお復元する能力を持つ化物だからこそ許される極致の交ざり合い。快楽を貪る姿であった。
そして、そこに理解が及んでしまうことがこなたを憂鬱な気持ちへと傾けていた。
「(ある日、突然に吸血鬼に噛まれてその下僕とか、血の契約とか)」
ベタすぎて、そしてよく見るだけによく知ったパターン。
自身が人間から離れてゆくことに対する不安と、自身が化物に近づいてゆく不安。お約束の展開。
そんなことはフィクションの中だけであるはずなのに、しかし実現し、その現実は実にヘビーなものだった。
自身が人間から離れてゆくことに対する不安と、自身が化物に近づいてゆく不安。お約束の展開。
そんなことはフィクションの中だけであるはずなのに、しかし実現し、その現実は実にヘビーなものだった。
「スラップスティックでいこーよ、こなたちゃん。 【 おもしろき こともなき世を おもしろく 】 の精神でね」
【TIP】 「おもしろき こともなき世を おもしろく」
幕末の世を生きた高杉晋作が残した辞世の句。
幕末の世を生きた高杉晋作が残した辞世の句。
「――住みなすものは 心なりけり」
と、下の句をつけたして爆弾はにんまりと微笑む。
その言葉の意味を簡単に捉えれば、この世の中は自分の心持ち次第でどんな風にでも変わるということだ。
その言葉の意味を簡単に捉えれば、この世の中は自分の心持ち次第でどんな風にでも変わるということだ。
「そうだよね。ヴァンパイアガール☆こなたってのも、悪くはないよね♪」
こなたは笑う。
それはまだ強がりにしか過ぎなかったが、それを体言しているそっくりさんが目の前にいるのだから自分もそれに倣ってみようと。
それはまだ強がりにしか過ぎなかったが、それを体言しているそっくりさんが目の前にいるのだから自分もそれに倣ってみようと。
「ヴァンパイアって”男たらし”って意味もあるんだけど……」
「――なっ!」
「 【 ドラキュリーナ 】 にしておきなよ」
「検討します……」
「――なっ!」
「 【 ドラキュリーナ 】 にしておきなよ」
「検討します……」
【TIP】 「ドラキュリーナ」
吸血姫。女性の吸血鬼のこと。男性の場合はドラクルと呼ぶ。
しかし…… 【 地球破壊爆弾No.V-7 】 はドラクルとドラキュリーナのどちらが相応しいのか……?
吸血姫。女性の吸血鬼のこと。男性の場合はドラクルと呼ぶ。
しかし…… 【 地球破壊爆弾No.V-7 】 はドラクルとドラキュリーナのどちらが相応しいのか……?
【ZAP】 「地球破壊爆弾No.V-7」
ザッピングします。
ザッピングします。
[07:40] 泉こなた ⇒ [07:50] 地球破壊爆弾No.V-7
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【地球破壊爆弾No.V-7 編 ~シュレディンガーの書き手~】
[07:50]
二人の小さな吸血鬼が揃って病室の扉を潜ると、そこに 【 ミステリ 】 が発生していた。
【TIP】 「ミステリ」
推理物のこと。
ミステリーやミステリィと表記するのが本来の音に近いと言えるが、ミステリと最後を省略するとなんかそれっぽい。
3文字以上の単語の語尾につく長音符を省略するというのは、一部の業界では標準の表記法である。
推理物のこと。
ミステリーやミステリィと表記するのが本来の音に近いと言えるが、ミステリと最後を省略するとなんかそれっぽい。
3文字以上の単語の語尾につく長音符を省略するというのは、一部の業界では標準の表記法である。
「……なんで、十代くんが死んでるの?」
爆弾の発した言葉に、部屋の中の時間が止まった。
隣に立つこなたは勿論、病室にいたウッカリデスと奈緒もそれに気付いていなかったのだろう。
ただ困惑し、ベッドの中で眠った様に、眠っている様にしか見えない十代を見るだけだ。
隣に立つこなたは勿論、病室にいたウッカリデスと奈緒もそれに気付いていなかったのだろう。
ただ困惑し、ベッドの中で眠った様に、眠っている様にしか見えない十代を見るだけだ。
狼狽する三人をそのままに爆弾はベッドに寄り、そして十代の脈を確認する。
そこに血流と鼓動を感じることはできず、感じ取った彼の死は気のせいでも勘違いでもないことが確定した。
そこに血流と鼓動を感じることはできず、感じ取った彼の死は気のせいでも勘違いでもないことが確定した。
「私達以外の誰かがこの部屋に入ってきたってことは……ないよ、ねぇ……?」
振り向き、そして問うた爆弾の言葉にこの部屋で待機していたウッカリデスと奈緒が頷く。
そもそも不審者なり新しい登場人物がいれば真っ先に報告していただろうから、それは当たり前のことだった。
そもそも不審者なり新しい登場人物がいれば真っ先に報告していただろうから、それは当たり前のことだった。
「治療の甲斐も無く……って、ことですか?」
ウッカリデスが爆弾にそう問いかける。
それが今考えられるもっともありえる解答だろう。元々いつ死んでもおかしくないような傷だったのだ。
胸に拳大の穴が貫通し、肺が破壊されていたのである。カードの力と情報操作で一命を取り留めたが、所詮そこまで。
失血量も考えれば、そのまま死に至るのが通常の道理というものであろう。
それが今考えられるもっともありえる解答だろう。元々いつ死んでもおかしくないような傷だったのだ。
胸に拳大の穴が貫通し、肺が破壊されていたのである。カードの力と情報操作で一命を取り留めたが、所詮そこまで。
失血量も考えれば、そのまま死に至るのが通常の道理というものであろう。
「そう、だと……問題はないんだけどね。いや、もちろん死んじゃったってこと事態が問題ではあるんだけれども」
爆弾が手を触れる十代の身体はまだ熱を保ったままで温かい。
外因がないとするならばやはり自然な死なのだろうが、しかしその外因を察したからこそ爆弾は彼の死を悟ったのだ。
外因がないとするならばやはり自然な死なのだろうが、しかしその外因を察したからこそ爆弾は彼の死を悟ったのだ。
「(問題は、”動機”だよね。”彼女”がどうしてこんなことをしたかっていう)」
ベッドの傍らより離れ、爆弾は腕を組んでふむと唸る。
ここにきてまさかのミステリ編。手段も犯人も想像はついているが、しかし動機が謎だった。
さて、ネクストコナンズヒントでもないかと窓の外を見てみると――
ここにきてまさかのミステリ編。手段も犯人も想像はついているが、しかし動機が謎だった。
さて、ネクストコナンズヒントでもないかと窓の外を見てみると――
――桂言葉がそこに、窓の外に張り付いていた。
あれ? もしかしてミステリ編でなく、サバイバル編? 思う間もなく、刃が窓を突き破り襲い掛かってくる。
★ ★ ★
「みんな逃げてぇぇぇえええぇぇぇ――っ!」
言いながら爆弾は片手で空いていたベッドを持ち上げそれを迫り来る刃に向けて放り投げた。
――ズン!
――ズン!
――ズン!
――ズン!
――ズン!
――ズン!
――ズン!
四本の刃が突き刺さり、そしてベッドは無残に四散する。
シーツと布団とスポンジとスプリングがばらばらに弾け跳び、部屋の中にいた四人へと雨の様に降り注ぐ。
爆弾は一瞬でソード・カトラスを投影し、その向こう側に立つ言葉へと向けて弾丸を撃ち込む。
が、しかし。
生き物の様に蠢く四本の刃がそれをことごとく叩き落し、言葉を守った。
シーツと布団とスポンジとスプリングがばらばらに弾け跳び、部屋の中にいた四人へと雨の様に降り注ぐ。
爆弾は一瞬でソード・カトラスを投影し、その向こう側に立つ言葉へと向けて弾丸を撃ち込む。
が、しかし。
生き物の様に蠢く四本の刃がそれをことごとく叩き落し、言葉を守った。
「バルスカに、レバ剣って……いつの間にそんなチートチックに……っ!?」
再び迫り来る刃を転がって避けながら爆弾は毒づく。
放送前に一戦を交えた時にはアイスソードしか持っていなかったはずなのに、今は支給品が二つも増えていた。
元々持っていたのか、それとも誰かから奪ったのかは謎だが、楽観できる状況ではない。
放送前に一戦を交えた時にはアイスソードしか持っていなかったはずなのに、今は支給品が二つも増えていた。
元々持っていたのか、それとも誰かから奪ったのかは謎だが、楽観できる状況ではない。
「臓物をぶち撒けて――くださいっ!」
「やなこった!」
「やなこった!」
肉薄し、レヴァンティンを振り下ろす言葉の一撃を爆弾は咄嗟に投影した 【 鳳凰寺風の剣 】 で受け止める。
甲高い悲鳴の様な金属音が響き、二人の視線が交わるそこに火花が散った。
甲高い悲鳴の様な金属音が響き、二人の視線が交わるそこに火花が散った。
【TIP】 「鳳凰寺風の剣」
アニ1に参加していた鳳凰寺風@レイアースの魔法剣。
適格者が持つと羽の様に軽い風の剣だが、逆に適格者じゃない者が持つととんでもなく重い。
アニ1内ではロベルタが 【 病院の廊下 】 でこれを振るいアンデルセンの首を一刀両断とした。
そこからの縁で、爆弾はこの剣を投影することができる。適格者ではないが吸血鬼であるので重さは逆に丁度いい。
アニ1に参加していた鳳凰寺風@レイアースの魔法剣。
適格者が持つと羽の様に軽い風の剣だが、逆に適格者じゃない者が持つととんでもなく重い。
アニ1内ではロベルタが 【 病院の廊下 】 でこれを振るいアンデルセンの首を一刀両断とした。
そこからの縁で、爆弾はこの剣を投影することができる。適格者ではないが吸血鬼であるので重さは逆に丁度いい。
【TIP】 「病院の廊下」
逃げろと言われて、言われるまんまにスタコラサッサだぜぇーということで、ただ今絶賛逃亡中の
【 忘却のウッカリデス 】 達がその廊下を走っています。
今が平時であればマナー違反だと叱られただろうが、緊急事態なので仕方がない。
逃げろと言われて、言われるまんまにスタコラサッサだぜぇーということで、ただ今絶賛逃亡中の
【 忘却のウッカリデス 】 達がその廊下を走っています。
今が平時であればマナー違反だと叱られただろうが、緊急事態なので仕方がない。
【ZAP】 「忘却のウッカリデス」
ザッピングします。
ザッピングします。
[07:50] 地球破壊爆弾No.V-7 ⇒ [08:00] 忘却のウッカリデス
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【忘却のウッカリデス編 ~死地を迂回~】
[08:00]
「クソッ!」
廊下を全力で走り、息を切らせながらもウッカリデスは毒づかずにはいられなかった。
それは、こういったマーダーに追われる危機――ではなく、呆気なく十代を死なせてしまったことに対してだ。
それは、こういったマーダーに追われる危機――ではなく、呆気なく十代を死なせてしまったことに対してだ。
「(何ができて、何ができなかったなんて今更だけど――)」
十代が死んでしまったのは自分が選択肢を選び間違えたからではないかと、ウッカリデスは後悔する。
仲間となる人物達と出会えたし、病院にも無事到着した。けど、十代は死んでしまった。
だったら、病院へ向かおうとしたことが間違いだったのかも知れない。
ゆーちゃんを放っておかずにいれば、また別の展開があったかも知れない。
病院の代わりにホテルへと向かえばそこに 【 回復魔法 】 を使える人がいたかも知れない。
仲間となる人物達と出会えたし、病院にも無事到着した。けど、十代は死んでしまった。
だったら、病院へ向かおうとしたことが間違いだったのかも知れない。
ゆーちゃんを放っておかずにいれば、また別の展開があったかも知れない。
病院の代わりにホテルへと向かえばそこに 【 回復魔法 】 を使える人がいたかも知れない。
【TIP】 「回復魔法」
実際に今現在ホテルには回復魔法を使える高町なのはが滞在している。
デバイスを持たない彼女の力で十代が救えたかは不明だが、しかし可能性はあっただろう。
そして、回復のマテリアを持ったフラグビルドが現在豪華客船内に滞在しているが、
もし彼女が病院へ向かう方の選択肢を選んでいればこの場所での展開はまた別のものとなったに違いない。
この様に、一つの選択が一つの命に繋がるのがバトルロワイアルというものである。
実際に今現在ホテルには回復魔法を使える高町なのはが滞在している。
デバイスを持たない彼女の力で十代が救えたかは不明だが、しかし可能性はあっただろう。
そして、回復のマテリアを持ったフラグビルドが現在豪華客船内に滞在しているが、
もし彼女が病院へ向かう方の選択肢を選んでいればこの場所での展開はまた別のものとなったに違いない。
この様に、一つの選択が一つの命に繋がるのがバトルロワイアルというものである。
「(後悔したって仕方がないって解っているけれども!)」
それでも、十代を背負っている時に安易な選択をしてしまった。
もっと頭を使って最善の方法を模索するべきだった。状態表の思考欄に馬鹿丁寧に従うべきではなかった。
と、後悔の種は尽きない。なまじ、十代が一言も発せずに逝ってしまったからこそ、それは酷く自身を苛む。
もっと頭を使って最善の方法を模索するべきだった。状態表の思考欄に馬鹿丁寧に従うべきではなかった。
と、後悔の種は尽きない。なまじ、十代が一言も発せずに逝ってしまったからこそ、それは酷く自身を苛む。
”いやー、いきなりウッカリデスさんみたいな人に会えてラッキーだったぜ! 一緒に頑張ろうぜ!”
思い出す言葉が重かった。
書き手として、バトルロワイルの経験者として彼を導いて行く責任があったはずなのに、無為に死なせてしまうなんて。
書き手として、バトルロワイルの経験者として彼を導いて行く責任があったはずなのに、無為に死なせてしまうなんて。
「君の命は無駄にはしない――とでも言えばいいのかよ! 畜生っ!」
ありきたりだが、簡単な言葉じゃない。
それを強く噛み締めながらウッカリデスは懸命に走り、そして 【 6/氏 】 が門番に立っている玄関へと駆け込んだ。
それを強く噛み締めながらウッカリデスは懸命に走り、そして 【 6/氏 】 が門番に立っている玄関へと駆け込んだ。
【ZAP】 「6/氏」
ザッピングします。
ザッピングします。
[08:00] 忘却のウッカリデス ⇒ [08:05] 6/氏
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【6/氏 編 ~The wrong man 六~】
[08:05]
「おい! 一体、何があった――」
「言葉だよっ!」
「言葉だよっ!」
叫びながら目の前を駆け抜けたこなたの言葉を一瞬で理解。逃げる面々の最後尾に6/氏も素直に加わった。
「爆弾さんはっ? それにどこまで逃げるんだ?」
「足止めして貰ってって――うわぁっ!?」
「足止めして貰ってって――うわぁっ!?」
その瞬間。
彼らが飛び出してきた病院の玄関が爆音を立てて吹き飛んだ。
散乱するガラス片と一緒に小さな爆弾の身体が中より転がり出てきて、次いで刃を足とする言葉の異形が姿を表す。
彼らが飛び出してきた病院の玄関が爆音を立てて吹き飛んだ。
散乱するガラス片と一緒に小さな爆弾の身体が中より転がり出てきて、次いで刃を足とする言葉の異形が姿を表す。
「なんでパワーアップしてるんだよっ!?」
「怪獣とかホラーのお約束なんじゃない――っ!?」
「怪獣とかホラーのお約束なんじゃない――っ!?」
引き返す……などという無謀は敢行せずに、6/氏は先を行くこなた達を追って走る。
元々の運動神経もあるのだろうし吸血鬼化したということもあって彼女の足取りは速く軽い。
その次を行く奈緒にしても、表情は強張っているものの足取りに怪しいところは全くない。
そして更に後ろを行くウッカリデスは、……あ、こけ――
元々の運動神経もあるのだろうし吸血鬼化したということもあって彼女の足取りは速く軽い。
その次を行く奈緒にしても、表情は強張っているものの足取りに怪しいところは全くない。
そして更に後ろを行くウッカリデスは、……あ、こけ――
「しっかりしろっ!」
「……す、すみません」
「……す、すみません」
――そうになったが、6/氏が腕をつかんでなんとかこけずに済んだ。
息は上がって顔は真っ青。その見た目どおりに相当体力がないと見える。
息は上がって顔は真っ青。その見た目どおりに相当体力がないと見える。
「おい、前の二人。ペースを落としてくれ! ていうか、どこいくか教えろ!」
体力のない男二人に合わせて、こなたと奈緒はペースを落とし走る以下歩く以上ぐらいの速度で四人は道を南下する。
爆弾がこなたに伝えておいた次の目的地は”ホテル”だった。
安全か危険かはともかく人が集まる施設であるだろうことと、設備が整っていて拠点にするのは都合がいいとのことだ。
爆弾がこなたに伝えておいた次の目的地は”ホテル”だった。
安全か危険かはともかく人が集まる施設であるだろうことと、設備が整っていて拠点にするのは都合がいいとのことだ。
「ちょっと、休憩しようっか。爆弾さんを待ちたいし」
丁度、大きな交差点に差し掛かったところでこなたはそう言って足を止めた。
病院から南へ1キロメートルほど。それだけ走れば疲労も十分らしく、休憩という案に反対する者は誰もいない。
病院から南へ1キロメートルほど。それだけ走れば疲労も十分らしく、休憩という案に反対する者は誰もいない。
「……ゼェ、ハァ……あれ? さっき、通った時は信号機倒れていたっけ?」
見過ごしただけかな? と、特に気にもとめずウッカリデスは地面に横たわった信号機の上に腰を下ろす。
隣にはうっすらと汗を浮かべた奈緒が座り、目の前のアスファルトには6/氏が大の字になって転がっていた。
隣にはうっすらと汗を浮かべた奈緒が座り、目の前のアスファルトには6/氏が大の字になって転がっていた。
「爆弾さん、大丈夫かな……」
心配そうに来た道を振り返るこなたは疲れがないのか立ったままだ。
6/氏は、あの人ならもしもはないだろうと思ったが、しかし 【 桂言葉 】 に追われるのが定番化するのは心臓に悪いなと考える。
ヤンデレなんてフィクションの中で見るだけならともかく、実際に関わられるなんてとんだものではない。
6/氏は、あの人ならもしもはないだろうと思ったが、しかし 【 桂言葉 】 に追われるのが定番化するのは心臓に悪いなと考える。
ヤンデレなんてフィクションの中で見るだけならともかく、実際に関わられるなんてとんだものではない。
【ZAP】 「桂言葉」
ザッピングします。
ザッピングします。
[08:05] 6/氏 ⇒ [08:15] 桂言葉
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【桂言葉 編 ~ヤンデる想い~】
[08:15]
「邪魔をしないで下さいっ!」
両手両足に構えた六本の刃を爆弾へと殺到させながら、言葉は悲鳴の様に裏返った声で叫ぶ。
愛する誠君。愛する愛する誠君。愛して止まず、そして愛されいるはずの誠君。
その彼のパーツの匂いが遠ざかっていく。つまりは、逃げた四人の内の誰かがそれを持っているはずなのだ。
だから追おうとする。なのに――
愛する誠君。愛する愛する誠君。愛して止まず、そして愛されいるはずの誠君。
その彼のパーツの匂いが遠ざかっていく。つまりは、逃げた四人の内の誰かがそれを持っているはずなのだ。
だから追おうとする。なのに――
「追う女は嫌われるって知らないっ!?」
――目の前の”泉こなた”がそれを阻止せんと幾度と無く邪魔をしてくる。
「そんなんじゃありません! 彼は、私のところに帰ってくるんです――っ!」
拳銃から吐き出される弾丸をバルキリースカートを盾に受け止め、アイスソードを水平に、レヴァンティンを脇に構え突進。
肉薄し、冷気を纏う剣を袈裟に振り下ろす――も、爆弾は身を引いて回避――次いで炎の剣を突き出し――
肉薄し、冷気を纏う剣を袈裟に振り下ろす――も、爆弾は身を引いて回避――次いで炎の剣を突き出し――
「う、ぐぅ――ぁっ!」
幅広の刃が爆弾の脇腹へと突き刺さり、払われて――真っ赤な血が噴出――裂かれる。
止まらず、――斬、斬、斬、斬ッ! と続けざまに四つの刃が突き刺さり、矮躯を持ち上げ、そして勢いよく放り投げた。
赤色の放物線を描き、爆弾の身体がアスファルトへと叩きつけられ、黒いキャンバスに鮮血の華が描かれる。
止まらず、――斬、斬、斬、斬ッ! と続けざまに四つの刃が突き刺さり、矮躯を持ち上げ、そして勢いよく放り投げた。
赤色の放物線を描き、爆弾の身体がアスファルトへと叩きつけられ、黒いキャンバスに鮮血の華が描かれる。
「今度こそ死んでくださいっ!」
しかし、そんな程度で化物が死なないことを言葉は学習している。
アイスソードを逆手に構えて地面へと突き刺し、剣の持つ魔力でもって氷の柱を爆弾の下より突き上げる。
再び吸血鬼は串刺しになったかと思ったが、しかし――
アイスソードを逆手に構えて地面へと突き刺し、剣の持つ魔力でもって氷の柱を爆弾の下より突き上げる。
再び吸血鬼は串刺しになったかと思ったが、しかし――
「今度こそってのはこっちの台詞っ!」
――学習しているのは爆弾も同じ、突き上げてくる氷柱の勢いを利用し跳躍。再び放物線を描き言葉へと肉薄する。
両手からソード・カトラスを捨て、空中で再び鳳凰寺風の剣を投影。両手に構え――突貫。
両手からソード・カトラスを捨て、空中で再び鳳凰寺風の剣を投影。両手に構え――突貫。
「……かかりましたね」
奈落の底の様な瞳を持つ少女は、それに対して至極冷静。
逆手に構えたままのアイスソードは防御に、
レヴァンティンを再び腰溜めに引き、
バルキリースカートの四本の刃を身体を支える肢として、迎撃の態勢を完了する。
逆手に構えたままのアイスソードは防御に、
レヴァンティンを再び腰溜めに引き、
バルキリースカートの四本の刃を身体を支える肢として、迎撃の態勢を完了する。
「何っ!?」
惑うままに突き出された爆弾の剛剣をアイスソードで受け止める。
化物に抵抗できるような力は言葉にはない。だが、地に突き刺した四本の刃がその助けとなった。
だがしかし、それでも拮抗するほどの力はない。なので、いなす。
化物に抵抗できるような力は言葉にはない。だが、地に突き刺した四本の刃がその助けとなった。
だがしかし、それでも拮抗するほどの力はない。なので、いなす。
「死んでください」
そして、一閃。
炎の揺らめきが走り、剣先を逸らされて身体を宙へと泳がせていた爆弾の顎の下をするりと通る。
炎の揺らめきが走り、剣先を逸らされて身体を宙へと泳がせていた爆弾の顎の下をするりと通る。
頭を失った身体は糸の切れた人形の様に無様に地面へと滑り込み、その手から離れた剣は宙でクルリと回り地面に突き刺さる。
そして半瞬の後、飛んでいた首が遠くに落ちて不快な音を立てた。
そして半瞬の後、飛んでいた首が遠くに落ちて不快な音を立てた。
静寂が続き終わったと悟ると、言葉はレヴァンティンを胸の谷間に戻し、爆弾の残した剣を拾って道を歩き始めた。
「……待っていて下さいね」
まだ遠くはない匂いを辿り、彼女にとって、そして誰にもとっての 【 運命の交差点 】 へと――……
【TIP】 「運命の交差点」
そして彼女らも遂に運命の交差点へと到着する。
現在そこに止まっている、泉こなた、6/氏、 【 忘却のウッカリデス 】 、結城奈緒。
そしてすでに通りすぎた、安部高和、ラッド・ルッソ。
さて、彼らはどう交わり、そして交わらないのか。物語はこの後も続くが、この話はもう少しで終わりを迎える。
そして彼女らも遂に運命の交差点へと到着する。
現在そこに止まっている、泉こなた、6/氏、 【 忘却のウッカリデス 】 、結城奈緒。
そしてすでに通りすぎた、安部高和、ラッド・ルッソ。
さて、彼らはどう交わり、そして交わらないのか。物語はこの後も続くが、この話はもう少しで終わりを迎える。
【ZAP】 「忘却のウッカリデス」
ザッピングします。
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[08:15] 桂言葉 ⇒ [08:30] 忘却のウッカリデス
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【忘却のウッカリデス編 ~死地を迂回~】
[08:30]
カキン……カキン……カキン……カキン……カキン……カキン…………
そこに現れたのが爆弾ではなく、言葉であったということにウッカリデスと他の全員が信じられないという風な表情をした。
「おい、また剣が増えてないか……?」
6/氏が誰ともなしにそう問う。
北より交差点へと入ってきた言葉の片手にはアイスソード。胸の谷間にレヴァンティン。そして、もう片手には鳳凰寺風の剣。
それは爆弾の剣であり彼が敗北したことの証明であり、そして何よりウッカリデスにとっては忘れられない最悪の剣。
北より交差点へと入ってきた言葉の片手にはアイスソード。胸の谷間にレヴァンティン。そして、もう片手には鳳凰寺風の剣。
それは爆弾の剣であり彼が敗北したことの証明であり、そして何よりウッカリデスにとっては忘れられない最悪の剣。
「(僕を……”殺した”剣……っ!)」
あの病院の廊下で地獄紳士が取り出し、そして自分をまるで虫の標本かの様に壁へと打ち止めた剣だと彼は思い出す。
蘇った記憶に怖気が湧き上がり、全身から汗が噴き出して、氷の上に立っているかの様に身体が震えだした。
死んでしまうのだろうか。あの時の様に、また同じ様に何を成す事もままならない内にあの剣に串刺しにされるのだろうか。
蘇った記憶に怖気が湧き上がり、全身から汗が噴き出して、氷の上に立っているかの様に身体が震えだした。
死んでしまうのだろうか。あの時の様に、また同じ様に何を成す事もままならない内にあの剣に串刺しにされるのだろうか。
どうする? どんな選択肢が存在する? 何を選べば助かることができる? 何を選べば誰かを助けることができる?
何を思いつけばこの場面を逆転することができる? 何て台詞を吐けばこの場を収めることができる?
この先にどんな展開が待っている? これまでにどんな複線があった? 自分はどんなフラグを今までに立てていた?
何を思いつけばこの場面を逆転することができる? 何て台詞を吐けばこの場を収めることができる?
この先にどんな展開が待っている? これまでにどんな複線があった? 自分はどんなフラグを今までに立てていた?
どうする? どうする? 忘却のウッカリデスはこの場面でどうする?
「――ウッカリデスさんっ!」
こなたの声に、ウッカリデスはハッと意識を取り戻す。
呆けていたのは一瞬のことだったのだろう。
言葉はまだ交差点の入り口に立ったままで、ぼうっとしてる間に死ぬ……なんて間抜けな終わり際は避けられたらしい。
呆けていたのは一瞬のことだったのだろう。
言葉はまだ交差点の入り口に立ったままで、ぼうっとしてる間に死ぬ……なんて間抜けな終わり際は避けられたらしい。
「ウッカリデスさんっ! ”彼女”を追ってっ!」
こなたの方を見ればこちらへと向かってその小さな指を指していた。
いや、正確にはウッカリデスの背後を。気付き、彼が振り返るとそこには道を東へと駆けて行く奈緒の後姿があった。
この場から、自分達から彼女は逃げ出したのだと、僅かに遅れて察する。
いや、正確にはウッカリデスの背後を。気付き、彼が振り返るとそこには道を東へと駆けて行く奈緒の後姿があった。
この場から、自分達から彼女は逃げ出したのだと、僅かに遅れて察する。
「でも――」
「――ここは大丈夫っ!」
「――ここは大丈夫っ!」
再びこなたへの方へと向き直ったウッカリデスへと、彼女は前よりも長くなった犬歯を見せて笑ってみせる。
マスターである爆弾が敗北した以上、彼女が勝てる可能性は低いと言うのに、”ここは任せて行け”と言うのだ。
迷い――かけるが、ウッカリデスは踵を返し走り出した。
マスターである爆弾が敗北した以上、彼女が勝てる可能性は低いと言うのに、”ここは任せて行け”と言うのだ。
迷い――かけるが、ウッカリデスは踵を返し走り出した。
「これが! 正解であってくれよなっ!」
小さな吸血姫である 【 泉こなた 】 と6/氏を交差点に残し、彼もまた東の道へと駆け出していった。
【ZAP】 「泉こなた」
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[08:30] 忘却のウッカリデス ⇒ [08:35] 泉こなた
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【泉こなた 編 ~オタク吸血姫走る!~】
[08:35]
「もう一人の泉さんは死んでしまいましたよ」
「嘘ばっか」
「嘘ばっか」
この場に現れたのが言葉である以上、爆弾が敗北を期したことは明白でありそこに疑う余地は存在しないだろう。
しかし、それと死んだか死んでないかは別問題だ。そして彼女は己の主人が死んでないことを知っていた。
しかし、それと死んだか死んでないかは別問題だ。そして彼女は己の主人が死んでないことを知っていた。
「首を、斬り落としたんです。あの化物でも死んでいるは――」
「ほうらやっぱり」
「ほうらやっぱり」
くすりと笑うこなたに、言葉の顔に怪訝の表情が浮かぶ。
「な、なんだ首をくびり落としただけかよ。やられたのかと思って心配したぜ」
こなたの隣に立つ6/氏も次いでそんなことを言い、言葉の眉間の皺は深く、そこに怒りを表し始める。
「首を斬ったら! 世界さんだって、化物だって、なんだって死にます! 死ななかったら、それは――」
「じゃあ、”そこ”にいるのは誰?」
「じゃあ、”そこ”にいるのは誰?」
聞いて、言葉が振り返るとそこには――殺したはずの 【 地球破壊爆弾No.V-7 】 が相変わらずのとぼけた顔で立っていた。
【ZAP】 「地球破壊爆弾No.V-7」
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[08:35] 泉こなた ⇒ [08:40] 地球破壊爆弾No.V-7
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【地球破壊爆弾No.V-7 編 ~シュレディンガーの書き手~】
[08:40]
「悪いけれども、吸血鬼ってのは首を斬り落とされたぐらいじゃあ死なないんだ☆」
まぁ、さすがに君相手に首を落とされるとは思って無かったけれども。
などと嘯きながら、驚愕する言葉を横目に爆弾はてくてくとその隣を抜けて交差点へと入り、こなた達の前へと立つ。
などと嘯きながら、驚愕する言葉を横目に爆弾はてくてくとその隣を抜けて交差点へと入り、こなた達の前へと立つ。
「さて、足止めご苦労様。君達は予定通りホテルに……って、あれ? ウッカリデス氏と奈緒ちゃんは?」
「あー、奈緒ちゃんは逃げちゃいました。ウッカリデスさんには言われていた通りに追ってもらいましたけれども」
「あー、奈緒ちゃんは逃げちゃいました。ウッカリデスさんには言われていた通りに追ってもらいましたけれども」
なるほど想定内だねと爆弾は頷く。
そして、じゃあ君達は行っていいよとこなたと6/氏をホテルのある方角――南へと送り出した。
離れてゆく誠君の匂いを追おうと言葉が動こうとするが、しかし爆弾が三度立ちふさがる。
そして、じゃあ君達は行っていいよとこなたと6/氏をホテルのある方角――南へと送り出した。
離れてゆく誠君の匂いを追おうと言葉が動こうとするが、しかし爆弾が三度立ちふさがる。
「……邪魔しないで下さい」
「なぁに、これが多分最後だからもう少しつきあってよ」
「なぁに、これが多分最後だからもう少しつきあってよ」
東よりの海風が交差点の中に入ってきて、それぞれの長い髪を靡かせる。
「しかし、君も大した”ヤンデレ”だね。素体はただの女子高生でありながら化物と同等の力を発揮する」
”先鋭化”かと爆弾は目の前の存在の強さを分析する。
桂言葉は本来はただの女子高生であることは確かで、あんな力強く剣を振り回したり核鉄を操ったりはできないのである。
むしろ体力に関しては標準よりも弱いぐらいで、剣術の心得があるとしてもそれは一般人の範疇を越えないはず。
しかし、現実に桂言葉は超人と呼んで差し支えない能力を見せている。
その根源が”ヤンデレ”。その”属性”を極限にまで高め”先鋭化”させたことにより彼女は”イメージ”を手に入れたのだ。
桂言葉は本来はただの女子高生であることは確かで、あんな力強く剣を振り回したり核鉄を操ったりはできないのである。
むしろ体力に関しては標準よりも弱いぐらいで、剣術の心得があるとしてもそれは一般人の範疇を越えないはず。
しかし、現実に桂言葉は超人と呼んで差し支えない能力を見せている。
その根源が”ヤンデレ”。その”属性”を極限にまで高め”先鋭化”させたことにより彼女は”イメージ”を手に入れたのだ。
二次創作において、キャラクターはその最も特徴的な部分を更に強調されて表現される場合が多い。
目の前の存在を例にすればそれはヤンデレ。
彼女は原作内で自らの愛の障害を取り除くためにはそれこそ様々な手段を用い、
時に自分の命を、場合によっては恋敵を殺害してまでそれを達成した。
実に印象深くそれだけでも十分と言った感じではあるが、その印象の強調が彼女を更に発展させて行く。
彼女の持つ、”恋の障害を取り除くために発揮される力”が二次創作の中で何物をも優先する力となってゆく。
目の前の存在を例にすればそれはヤンデレ。
彼女は原作内で自らの愛の障害を取り除くためにはそれこそ様々な手段を用い、
時に自分の命を、場合によっては恋敵を殺害してまでそれを達成した。
実に印象深くそれだけでも十分と言った感じではあるが、その印象の強調が彼女を更に発展させて行く。
彼女の持つ、”恋の障害を取り除くために発揮される力”が二次創作の中で何物をも優先する力となってゆく。
結果。ヤンデレの化物がそこに誕生した。
イメージは力だ。
作内最強と言う属性が本来の実力差を凌駕したり、魔王と呼ばれることで何に対しても冷徹に振舞うことが出来たり、
ヤンデレだと言うだけで超鋭敏な感知能力を発揮したり、いい男と見られるだけでそれが何をも貫く武器になったり……。
力を得て化物になるということは時に人間性を捨て去る諸刃の剣だが、しかしそれが強い力。生存の為の能力であることには違いない。
作内最強と言う属性が本来の実力差を凌駕したり、魔王と呼ばれることで何に対しても冷徹に振舞うことが出来たり、
ヤンデレだと言うだけで超鋭敏な感知能力を発揮したり、いい男と見られるだけでそれが何をも貫く武器になったり……。
力を得て化物になるということは時に人間性を捨て去る諸刃の剣だが、しかしそれが強い力。生存の為の能力であることには違いない。
「私は誠君が好きなだけなんです。これは、愛の力です」
黒髪を揺らめかせ、奈落の穴の様な眼を相貌に持ち、合わせて七本の刃を掲げる異形が蠢きだす。
「愛の力。私も大好きだよ。愛は地球を救うからね」
地面に転がっていた 【 信号機 】 を根元から持ち上げ、小さな少女の姿のままの化物が異形に相対する。
――FINAL ROUND FIGHT!
【TIP】 「信号機」
一時間半ほど前に 【 ラッド・ルッソ 】 が行き先を決めるために叩き折った信号機。
普段頭の上にしか見ないせいか割と小さなイメージだが、実際にはすっごく大きい。
丸い点灯部分の標準サイズは直径30センチで、それを3つ並べた外枠は100センチ×40センチ以上。
支柱は基本的にコンクリート製でその長さは地上に出ている部分だけでも大体10メートルぐらいはある。
一時間半ほど前に 【 ラッド・ルッソ 】 が行き先を決めるために叩き折った信号機。
普段頭の上にしか見ないせいか割と小さなイメージだが、実際にはすっごく大きい。
丸い点灯部分の標準サイズは直径30センチで、それを3つ並べた外枠は100センチ×40センチ以上。
支柱は基本的にコンクリート製でその長さは地上に出ている部分だけでも大体10メートルぐらいはある。
【ZAP】 ラッド・ルッソ
ザッピングします。
ザッピングします。
[08:40] 地球破壊爆弾No.V-7 ⇒ [09:10] ラッド・ルッソ
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085:大都会交響楽 | 投下順 | 085:大都会交響楽(後編) |
時系列順 | ||
地球破壊爆弾No.V-7 | ||
泉こなた | ||
6/氏 | ||
結城奈緒 | ||
忘却のウッカリデス | ||
遊城十代 | ||
阿部高和 | ||
ラッド・ルッソ | ||
桂言葉 | ||
真・長門有希 |