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  • 水槽の中の鳥たち

ラノベ・ロワイアル @ wiki

水槽の中の鳥たち

最終更新:2008年02月26日 19:59

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だれでも歓迎! 編集

第573話:水槽の中の鳥たち 作:◆MXjjRBLcoQ



 裏切りの対価はあまりにも早く訪れた 

 風を切る音が、世界を切り取る
 突きつけられた凶器が、風見に目をそらすことを許さない
 ここは惨劇の島の最底辺
 渇望の音は果てしなく、怨嗟の声は途切れなく
 肉を破る音に、まるで心臓を甘噛みされたような悲鳴が続いた
 幼い膝はからめとられ、光沢に濡れる大腿が撫でまわされる、埋められた顔の下から、血と粘膜を啜る音がする
 体は一つの楽器、一つの刺激に一つの悲鳴
 優れた音は聞く者の身体に何がしかかを訴えかける
 時折混ざる嬌声、あまりにも幼い恍惚、糸を引く水音が観客を舞台の上へと駆り立てる
 ぬらぬら光って吐き気がする べたりと粘膜に張り付く香りがおぞましい
 どす黒い快楽を強制される苦痛に心が焼けた
 心臓を露出されてなお死ぬことも許されない血の呪い
 精神の一滴までドリップされる恐怖
 痛みさえ甘い味がすると体が教えてくれる

 それを黙って直視し続けることは風見にはできなかった
 受け入れるだけで自分が変質してしまう恐怖には逆らえない
 滑稽この上ない度し難いまでの狭量
 自分の居場所にそんなものが存在してはいけなくて、
 そして怒りの矛先を向けた先は致命的に間違っていた

 ここは惨劇の島の最底辺
 夢を見るにはあまりにも暗い


◆


 目を凝らしても星さえ見えない、真空みたいな月夜だった。
 夜は不安になる、昼の間は気にもしなかったことがのしかかってくるみたいで、息苦しい。
 何もできずに一日が終わる焦燥感というか、今日一日が空っぽだった様な寂寞感というか。
 よくないものが中からあふれてしみだしてくるような感じ。
 おかしな話だと思う。こんなにも長い一日だったのに。
「それだけ。じゃあね、ばいばい」
 魔女が微笑み手を振って、くるりと裾を翻し、森の奥へと歩いて行った。
 真っ青な光が木漏れ日みたいに差し込んで、下草に落ちた月影が世界を底から幻想的に照らし出す。
 月明かりがまばらに散る、躓きそうな森の中、先行する聖をパタパタと追いかけていく。
 足取りはふわり虚空を踏みしめているように軽やかで、去っていく姿はなんだか現実感が希薄だ。
 さっきまでの惨劇なんて微塵も見せない。
 まるで木霊でも追ってるみたい。
 呆然とした頭で、風見はそんなことを思う。
 ここは暗い。
 ただ、森の奥といっても足元が見えないほど光がないわけじゃない。
 空には月が出ている。
 梢にさえぎられて直接には見えないけど、天窓から光がさしこんでいて、辺りはほのかに青く光っている。
 ふと水族館というフレーズが浮かぶ。仄暗い都会派アクアリウム。月明かりの間接照明。潮の匂いも磯の香りもしない。清潔で無味無臭の展示場。
 真っ暗だったりほの青かったりする巨大な水槽は、なんとなく真空の世界につながってる気がする。
 要するに、広くて遠いのだろう。
 背中がある程度小さくなって、ようやく風見は、なんだかまだ悪い夢の中にいるみたいだと、小さく溜息を吐いた。
 身体の調子が悪化したか、それともまだ夢から抜け出せないのか、重い頭はぐるぐる振ると、視界がぼんやりふわふわ揺れた。
 世界がひどく、粘液に浸かったみたいに生ぬるい。
 そして、気を抜くと、未練たらしくぼうっと遠ざかる背中を追っている自分に、また気づく。
 風見は大きく息を吸った。湿った空気で肺を満たす。水の中の風船を膨らませるような抵抗感。水気が痰や咳でかすれた気管に少ししみた。
 あの後ろ姿はいつまでも見えてるわけじゃない、と風見はわずかに目を伏せた。
 世界はそこまで連続的にできてない。
 今はまだ見えているけど、ちょっと影の位置がずれただけで、一秒後にはそれこそ神隠しのように風見の視界から消えてしまう儚いもの……というのは少し比喩が過ぎるか。
 まだ何かできることがあるんじゃないか、そんな錯覚に陥りそうにもなる。
 呼び止めるなら今しかないんじゃないか。さっきそんなことばかり考えている。
 苦笑しようとして、筋肉がひきつる。
 話し合って、和解する。戦って引き留める。
 いつだって選択肢は、勝手気ままに無責任に、風見の願望を誘惑色に塗りたくって、甘くて柔らかな肌触りを付け加える。
 それでも触感はとてもリアルで、風見にも一笑に付すには無理がある。
 信用は重さと似てる。感覚の話だ。カタチがあたえる質量を、人間はそんな簡単には無視できない。
 ぐっと、声の気配が喉にある。錯覚に伴う衝動は、根拠がない分なかなかに暴力的だ。
 じっとりとした感覚が指に滑る。
 舌の奥で詰め物でもしたみたいに重いものが、じっと身じろぎ一つせずに放たれるのを待っている。
 あと一息、お腹に力を入れたら言葉になる。
 そのままで風見はじっと待った。
 考えてるわけでも迷ってるわけでもない。答えは最初から決まっている。ただそれだけの時間が必要だっただけ。
 詰まるように喉をひきつらせ、風見はそのまま力を抜いた。
 息を吐く。
 まとわりつくような気配が風見の周りで渦を巻いた。
(呼び止めたら、どうするつもりだったのかしらね?)
 彼女とは、これっぽっちも話の通じる気がしなかったはずだ。
 ちょっと自分の感情に深入りし過ぎただけ。
「重いわね」
 誰にも聞こえないぐらいぐらいの声で風見はひとりごちた。
 先まで考えようとすると憂鬱になる。
 止める? どうやって? 戦って? 説得して? 
 どっちも無理だ。
 彼女達と戦うには理由が無くて、説得するにも通じる論拠が無い。
 昔読んでもらった童話を思い出す。あの背中は最初っから手の届かないところにあったんだと思う。
 そうでも考えないことには精神衛生上あまりよろしくない。
 見つめた背中はますます遠くなって、そうしているとだんだんそういうもやもやも薄れていった。
 衝動につき合っていたらきりがない。そんな感情どうせ長持ちはしないのだ。
 何とかしようとしないほうがいい、生きていればそんな時もある。
 行動派の風見にはなかなかに受け入れがたい事実だけど、世の中むしろそのほうが多いのだろう。
 たった一つの理由がない。
 井戸の底の粒子もこんな気分なのかもしれない。
 どんなにうず高く積み上げたところで、ひとつひとつがわずかばかりのエネルギーでは絶対に山を越えることはできない。
 排泄不能の熱に変換されるのが関の山。
 後悔もするし、むかつきもする。けれど人間それだけじゃ動けない。どんなにせっつかれても動けないものは動けない。
 彼女の後ろ姿をただ見送る。
 後悔はやっぱり胸を締め付けた。
 それはある意味当たり前なのかもしれない。
 最初っからコミになってるものをどけようとしたら無理が出る。
 さわり、と森の向こうで風が吹く。
 木々がざわめき、月影も揺れる。しっかりと繋がった二人の後ろ姿は、それこそこの世のモノならざるまれびとみたいに、その中に溶けるように消えていった。
 これで終わりか、そう思っても、ちっとも気が晴れななかった。



 大きく溜息をすると、のどがひりひりと痛む。
 あー、本格的に風邪かしらねー。
 風見は額に手を押しあてながらそう呟く。
 渇きを催す鉄錆びた匂い。ざらざらとした、熱のこもった血の臭い。
 中はとっくにぼろぼろだ、至る所で炎症が起き、供給ラインはとっくにズタズタ。やはり少し無理が過ぎたかもしれないと風見は思う。

 最後にごほりと詰まるような咳をして、黄色くぶよぶよとした、塊みたいにな痰を絞り出して吐き捨てる。
 もう一度、確かめるように深呼吸。でも、まだ少し息苦しい。呼吸するたびに何かが少し引っかかる。胸の奥のあちこちで、へばりつくように残ってるものがある。
 緊張とか、後悔とか、不安とか、とにかくすべて吐き出したかったけど、胸にわだまかる澱のような気分はため息ぐらいでは吹き飛ばせない。
 それこそ煙のように風見の周りを漂うだけだ。
 木々のざわめきが、雲の流れる音が響く。ささめきが辺りを包む。
 でも森の奥に、風は届かない。
 空気は重く淀んでいる。
(放送まであと十五分ちょっとか)
 中途半端な時間だ。振り返るには短すぎるが、抱えて、気まずいまま過ぎるのを待つには少しばかり長い。
「ブルーブレイカー」
 本当にいろいろなことがありすぎて感情が自力ではリセットできそうになかった。
 もう二人はここにはいない、子爵が二人の足元にいるが当分口出しはできないだろう。
「どういうつもり?」
 言葉は実に舐なめらかに風見の口を衝いて出た。
 なるべくニュートラルに声をかけたつもりだったが、口調にはしっかり不機嫌が乗っかっている。
 視線は森の奥に固定したまま、見向きもしない。けれど肌が隣にブルーブレイカーの気配を感じてる。
「どういう?」
 返事はいたってシンプルだった。
 そこでようやく風見はブルーブレイカーに視線を投げる。
 非難含んだ風見のそれに、ブルーブレイカーはどうかしたという視線を投げ返す。
 正直、イラっときた。
(その態度はないんじゃないの?)
 反射でそんな言葉が口をつきそうになって、飛び出しかけた罵声を風見はすんでで飲み込んだ。
 そんなに大袈裟な話にはしたくない。修羅場はあまり望ましくない。こと風見にはそれに関して手痛い思い出が多すぎる。
 かといって、見過ごすつもりもなかった。
 なんだそれ、だ。風見はそんなごまかしを聞きたかったのではない。
 じっと見つめ合ったままの、無言の応酬。
 一秒ごとに空気が剣呑なものにと変わっていくのがわかる。
 しらを切っているのか、本当に分かっていないのか、風見の曇った耳では合成音から判断できない。
 ただ、いろいろなことなんて言ってみたけどそんなことはなく、今風見を苦しめてるのはたった一つの裏切りで、
 風見にはそれははっきりと解釈の余地なく次なる裏切りだった。
 ずっと胸に障ってた。
 期待が裏返って心地よい悪意に火が入る。
 癪に障るとかそういう気まぐれなものじゃない。信じれるか信じられないか、そこへ直結しうる理不尽に対する怒りだ。
 だって、これだけの敵意に、無反応なんてありえない。
 触らなければ流せるとでも思っているのか、守られるものだから仕方ないとでも考えると思ってるのだろうか。
 だというならいくらなんでも舐めている。
 身じろぎひとつしない。二人とも、静かに窺い合う。
 不穏な空気が今の風見にはかえって都合がいい。
 何といってもやりやすいのがいい。遠慮しなくていいのは気が楽だし……お互い様なら心も痛まない。
 譲歩はなしだ、風見がそう決めた。不安とかをガラガラ巻き込みながら速度をあげる。
 焦るな、自分に短く言い聞かせ、冷静を努める。
 あれが正当な復讐なら、これは真っ当な追及。
 彼だってわかっているはずなのだ。
 筋を通してくれればそれでいい。詫びの一つでもあれば、それでチャラにする。
 何かが風見に囁く。
 彼が言わないというのなら、言わせなければならない。
 実力行使だって厭う気はない。
 そうじゃないと釣り合いが取れないような気がした、なんの釣り合いかはわからないけど、あれほど摩耗していたはずの感情が風見を駆り立てた。
 風見は黙りこくる。
 絶対、こっちからは教えない。
 自分でもよくわからない感情に駆られて、さらにベットを上積みする。
 突き上げてくる焦りを抑えて、風見は待った。彼に自ら答えてほしかった。といかそうでなければ意味がないと風見は思う。
 お前はそんな奴だったのか、この問いはそういう意味を持つ。わかってないとは、言わせない。
 ここで告げても、風見はその答えを信じられない。風見が問い詰めたら、ブルーブレイカーの言葉が嘘になる様な気がした。
 そう言うことに、しておいた。間違っては、いない。
(ねえ、どうなのよ)
 風見の中でブルーブレイカーはもっと高潔な存在だったはずだ。
 銃使いの少年に襲われた時、風見は死んでいた。諦める諦めないの前に、詰んでいた。自力では、どうしようもなく死んでいたのだ。
 だが風が吹いた。
 人でも、機竜でもない、深い群青の機体。
 飛ぶ姿はキレイだった。
 人のカタチをした者ならだれもが憧れる、理想の結晶。
 風見は共感した。
 同じ空飛ぶヒトとして、道こそ違うが真摯に飛ぶことを突き詰めた最適の運動。生身では再現不能のしかし明らかに人体を模した旋回性能。
 そして武神や機竜とは一線を画す、生物に近いサイズならではの繊細なモーション。
 それは、機能だけで見るならもう一人の風見だった。
 彼は風見に手を差し伸べた。
 戸惑いはした、疑いもした。けど、彼は当たり前に手を伸ばしてくれる者だと理解して、風見は嬉しかった。
 風見はあの時の気持ちを汚されたくはなかった。
(ねえ、ってば、応えなさいよ!)
 こみあげる言葉を必死に抑える。
 風見は待った。続く言葉を、誰からも強制されたものじゃない、ブルーブレイカーからの否定の言葉を待った。
 そして、風見が言わなければブルーブレイカーが答えないと理解した瞬間、風見は一気にぶちぎれた。
 首元に手を伸ばし、力任せにつかみ寄せる。
「さっきの事よ!」
 叫びとともに、ごとり、と、頭の中、価値基準とか優先順位とか、そういう何かがまるごと反転する、心が不可逆変化する音がした。
 手の中で装甲がみしみしと悲鳴を上げた。
 そのまま押し込んだ腕と気迫がブルーブレイカーを一歩後退させ、背後の木に背中が当たる。
 荒い息をつきながら、風見はブルーブレイカーをねめあげる。
「あんな胸糞悪い見せ物を見物するのが趣味なわけ?」
 自然、声は脅しつけるような、静かなドスの利いたものになった。
 自信がある、この声で選挙に出てたら当選確実だ。
 絶対に対立候補が棄権する。
「……そうらしいな」
 なのにブルーブレイカーは平然と答えた。
 そのもう何にも興味がないといった態度が、さらに風見の不安と恐怖を掻き立てる。
「この……!」
 心臓が早鐘のように鳴り響く。
 着地点とか落とし所という単語は風見の頭の中から完全に消えていた。
 かまうまい、と風見は思った。彼に痛覚はない。こっちの本気さえ伝わればいい。
 いつの間にこんなにずれてたんだろうという後悔と、なぜ彼に期待したんだろうという失望が渦を巻き、

「だがおまえもそういう面は有るのではないか?」

 今度こそ、頭の中が真っ白になった。
 拳が止まる。
 横から突き出された鉄棒に、動きを止められた車輪のような感覚。
 吐き気を催す。身体の中で感情がどろりと飽和する。
 行き場を失ったなにかで中がぐしゃぐしゃになる。
「魔女の言った通りの事が起きれば」
 自分の言葉を失くして、ようやくブルーブレイカー言葉が沁みた。
 拒絶されて、目が覚めた。
 血の気が引いていくのがわかる。掴んだ手がじんと痛む。
 違う、という言葉は出てこなかった。
「EDの仮説は間違っていた」
 反論されないと、たかをくくっていたわけじゃない。
 でも、どう考えても、筋を通すのはブルーブレイカーの方で、
 それが当たり前のことだと、思っていた。
 だから、そういうつもりじゃなかったのだ。
「しずくはこの島に居た。そして殺された」
 だから風見は、そんな、押し潰され、殺され続けたような言葉は聞きたくなかった。
「……そうなんだろう? 金の針先」
 小さく子爵の水音がした。 ひどく遠い。
 風見の中でコールタールのような自己嫌悪と後悔が飽和する。
 眩暈がする。
 ぷつりと、あまりにも軽い音がする。感情に意識のヒューズが焼き切れる。
 もう、自分の心音さえ聞こえない。
 ただ、二人の間で傷つけたあった痛みだけが響きあう。
『オレの名はエンブリオだ。その呼び名でも間違ってるとはいえねぇけどな。
  それとその通りだよ。しずくとは短い間だが、一緒に居たのさ』
 相手にも伝えたい言葉があること。そんなことすら忘れていた。
 傷つけられて、傷ついて、言葉をたたきつけて、わかってもらう、それしか考えていなかった。
「………………」  
 子爵の飛沫の音が少し大きくなるだけの静寂。
 その音さえ、風見に届くにはあまりに遠すぎた。
「俺の片翼は失われた」
 その言葉を最後に糸が切れた。
 膝が笑う。押さえつけていた手が落ちる。
 首が意思に反してうなだれる。全身の筋肉が弛緩する。
 信号が消えていく。
 雨の中で聴く音みたいな、視覚も触覚も柔らかい雑音に押され溶けていく錯覚の中で、言葉だけがしみるように風見の中に届いた。

 ただ謝ってほしかったとは、もう言えなかった。



――ねぇ、ブルーブレイカー、あんたはそれを信じるの
 灯台で、EDの説を聞いた時、風見は確かにそう聞いたことを覚えている
 冷静に判断できれば、そこはどう聞いても屁理屈以外の何物でもない。
 ブルーブレイカーは、ああ、とだけ淡々と答えた。
 あの時の声が風見には忘れられない。
 ため込んで、無理してるんじゃないかと思っていた。
 しかし吐き出せるよう水を向けて、結局思い知ったのは風見だった。
 ほんの少し、彼の気持ちを考えてみれば、わかることだった。
(信じるしか、ないじゃない)
 場の雰囲気を変えようとするかのようにエンブリオが軽い口調で喋り出す。
『最初にオレを持った奴は死んで、受け継いだ茉衣子は何人も巻き添えにして……破滅しちまった』
 明るく、しかしどこか寂しそうに語る、その声が聞こえない。
 ‘軍’に切ったタンカが、返り返って呪縛のように風見を苛む。
 なんで大切なことを忘れたまま、過ごしてしまうんだろう。
 求めた時点で歪んでいた。
 自分の感情を棚上げするための、根拠もなく、都合のいい言葉を期待した時点で、風見は間違っていたのだ。
 EDの仮説はBBを落ち着かせる為の虚説にすぎない。想定に組み込むほうがどうかしている。
 最初に裏切られたのは彼だった。時間稼ぎで凌いでいただけ。これは単なる終りの続き。最初からわかりきっていた、すれ違いの幕開け。
 余りも自明すぎて見落としていた。最初からリミットは決まっていて、風見はそれに気づかずにわめいていただけだった。
 たった一つの謝罪を求めて、正論を振りかざすなんて浅ましいにもほどがある。正当性に酔って、傷ついた者に鞭打つ残酷さに吐き気がする。
 なんでいつも大切なことにに気づかずに、走ってしまうんだろう。
 しんとした静寂が耳に煩い。子爵が弱々しく木を這い上がる音がするだけ。
『まったく、大した疫病神っぷりだと思わねえか?』
 外の言葉がうまく聞こえてこない。
――それとも“蒼空”さんのように……ううん、これはわたしが言う事じゃないか。
 だから、いやなセリフと笑顔がリフレインする。
――だから私は祝福するの。この惨劇を。
 思い出しただけでぞっとする、女の風見から見ても、真実蕩けるような笑みだった。
 なぜか脈絡もなく底なしの淵というフレーズを連想させる。とくにあの目は良くない、攫われてしまいそうだ。
 無菌室の空気や摩周湖の水だってあれよりはもっと汚れてる。
 風見は、うつむいて動かない。
(……なんであたしが悪者なのよ)
 理解できても、納得がいかない。自分の心の行き場所がどこにもない。
 ブルーブレイカーに素直にすまないという謝意さえ持てないことが途方もなく悲しい。
 心をかすかな憧憬がかすめる。
 あれぐらい純粋だったら、こんな気持ちに捕らわれることもないのだろう。
 せめて彼女の十分の一でいい、ただ少し、気づくことができれば変わるものもあるのに。
 なんだかひどくもがき疲れてしまったみたいに心が重かった。
 実際その通りなのかもしれない。
 肉より感情のほうが摩耗している。あまりに強い感情の連打に、神経がへこみっぱなしのボタンのように沈黙してる。
 それなのに何かが心に引っかかる。肉に埋まったささくれのように、風見の中でじくじくと腐りながら風見の心を刺激するのだ。
 なきたいよ、覚。
 風がほしい、と風見は思った。気持ちの置き場所がどこにもない。
 風と向き合うことができたら、きっと何かが変わる気がしてた。
(全部あたしのわがままだった)
 結局、涙は出なかった。そんなおこがましいことが出来るわけがなかった。
『なあ。ちょっくらオレを壊して――』
 子爵が流れ落ちて形になる音が……
【気を付けろ!】
「!?」
 自ら浮き上がる力が出ず、子爵は木に登って張り付く事で警告の文字を作りだした。
 その僅かなロスが決定的な差を作り出す。



「イーディー、いや、シーディーだな。そうか。つまり俺は、ようやく見つけたって事だ」
 ぞっとするほど近くから男の声がした。
 針の筵にも似た殺気が、 真っ暗な森を漆黒に塗りつぶす。
 風見が衝き動かされるように振り返った先に、立っていた。
「そしておまえらは運が悪い」
 顔には幽鬼の笑い。手を伸ばせば届く距離。足元には少女の亡骸。両手にハンティングナイフ。
 近寄れば気づけるはずだった。腐葉土未満の落ち葉、露だらけの下草。動けば、必ずなにがしかの音がするはずなのに。
「俺を敵に回してしまったんだからな」
 怪物が、忽然と立っていた。
 (ヤバイ……!)
 あまりにも出来すぎなエンカウントに、風見は全身が総毛だつ。
 きょうびB級映画でもお目にかかれないシチュエーション。笑えるぐらいにヤバすぎる。
 風見はBBに詰め寄り二人揃って態勢を崩してしまっている。
 子爵は先程受けた攻撃のダメージが思いの外大きいのかまともに動けない。
 そして怪物は、一息の間合いに立っていた。
 赤い青年が口を歪め劫火のような笑みを浮かべて告げる。

「さあ、狩りの始まりだ」
 風切る音もなく、銀光が走った。



【B-6/森/1日目/23:50】
【灯台組(出張中)】
【ゲルハルト・フォン・バルシュタイン(子爵)】
[状態]:やや疲労/グロッキー状態(物にもたれて文字を綴るのと移動しかできない)
[装備]:なし
[道具]:なし(荷物はD-8の宿の隣の家に放置)
[思考]:クレアに対応したい
    アメリアの仲間達に彼女の最期を伝え、形見の品を渡す/祐巳のことが気になる
    /盟友を護衛する/同盟を結成してこの『ゲーム』を潰す
[備考]:祐巳がアメリアを殺したことに気づいていません。
    会ったことがない盟友候補者たちをあまり信じてはいません。

【風見・千里】
[状態]:風邪/右足に切り傷/あちこちに打撲/表面上は問題ないが精神的に傷がある恐れあり
[装備]:懐中電灯/グロック19(残弾0・予備マガジンなし)/カプセル(ポケットに四錠)
    /頑丈な腕時計/クロスのペンダント
[道具]:懐中電灯以外の支給品一式/缶詰四個/ロープ/救急箱/空のタッパー/弾薬セット
[思考]:クレアに対応
     早く体調を回復させたい/BB・ED・子爵と協力/出雲・佐山・千絵の捜索
[備考]:濡れた服は、脱いでしぼってから再び着ています。
    EDや子爵を敵だとは思っていませんが、仲間だとも思っていません。

【蒼い殺戮者(ブルー・ブレイカー)】
[状態]:精神的にやや不安定/少々の弾痕はあるが、今のところ身体機能に異常はない
[装備]:梳牙(くしけずるきば)、エンブリオ
[道具]:なし(地図、名簿は記録装置にデータ保存)
[思考]:????
    /風見・ED・子爵と協力?/火乃香・パイフウの捜索?
    /脱出のために必要な行動は全て行う心積もり?


【B-6/森/1日目/23:50】
【クレア・スタンフィールド】
[状態]:健康。激しい怒り
[装備]:大型ハンティングナイフx2
[道具]:デイパック(支給品一式・パン6食分・水2000ml)、コミクロンが残したメモ
[思考]:この世界のすべてを破壊し尽くす/目の前の奴らをCDの仲間と誤認
    “ホノカ”と“CD”に対する復讐(似た名称は誤認する可能性あり)
    シャーネの遺体が朽ちる前に元の世界に帰る。
[備考]:コミクロンが残したメモを、シャーネが書いたものと考えています。
    シャーネの遺体は足下に置いています


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第548話 時系列順 第553話
第542話 BB 第574話
第542話 クレア 第574話
第542話 子爵 第574話
第542話 風見・千里 第574話
第542話 エンブリオ 第574話



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