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  • ラノベ・ロワイアル @ wiki
  • 鳥が空を飛ぶために

ラノベ・ロワイアル @ wiki

鳥が空を飛ぶために

最終更新:2008年02月26日 20:00

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だれでも歓迎! 編集

第574話:鳥が空を飛ぶために 作:◆MXjjRBLcoQ



 戦ってるときふと思い出すことがある。
 そんなに遠い昔じゃない、あの青色の約束。

 夜の帳に蒼ざめた月
 秋の月夜は真空みたいだ
 崩れ落ちる瓦礫がリノリウムに影を落とす
 もうもうと舞いあがる粉塵は戦場の匂いがした
 動かない左腕、右手は黒く血を流してる
 もう使えないものに未練はない
 立ち上がることもかなわず、それでも這いつくばってやっと答えに辿り着く
 ああ、と小さく息を吐いた
 あどけない寝顔に、震える胸、崩れる身体
 そして最後に手を伸ばす
 手の中から響く、遠い金属音に耳を澄まし

 あの時から私は、逃げることが出来なくなった。


                                ◆


 風切る音もなく、銀光が走った。
 瞬間、風見の時間が停止する。
 一振りで彼我の力量差が知れる、という事態はまれに存在することは知っていた。
 風見も戦士だ。潜り抜けた死線は両手で数えてもまだ足りない。
 当たり前に風見は軽い、一撃で受けるダメージやノックバックが大きいという意味だ。体重がではない。残念ながら。
 直撃はただの一撃でも論外、受けてもノックバック分不利になる。戦場では常に避けることを強いられる。
 その中で銃弾飛び交う前線を、ルナティック弾幕を走り向けてきた経験。特に目のよさにはそれなりの自負がある。
 前兆でもいい、目視さえできればほぼどんな攻撃にも対応してきた。
 軌道を見極め、速度を測り、外に出る。いかな砲撃も当たらなければ恐れることはなかった。
 その目が、わずか一秒も満たないうちに結論を下す。
 必至。
 出来ることなどありはしないない、ただの一手でも動かせば、そこで詰む(チェックメイト)。
 動いたと思った時にはもう何もかもが遅すぎた。
 呼吸すらする間もなく、声をかけられ振り返る終えるまでの一刹那。針先のような瞳孔だけが、ナイフの軌跡をただなぞる。
 風見は目を見開いたまま硬直する。
 そして冷たい刃が皮膚にめり込む、直前だった。
「ひあっ――」
 何かが風見の腕を掴み、引く。
 きつく柔らかい加速の負荷と独特の浮遊感に頭の芯が麻痺した。
「ひゃん」
 悲鳴も終わらないうちに、突き飛ばされて尻餅をついた。衝撃と冷たい水の感触が風見の背筋を走り抜ける。
 冷たさに一瞬まっさらになる。水を吸ったの布地が肌に張り付き、濡れたショーツが熱を奪う。
 そして、空っぽになった頭に、キリ、と金属の削れる音が響いた。
 目の前には限りなく黒に近い青。風見を突き飛ばして諸共にバランスを崩しながらも、ブルーブレイカーがガードを構えナイフを受ける。
 鼻先で、きりきりとナイフと装甲が鍔迫り合った。
 群青色の火花が散る。金属の削れる音は耳に障る、風見はそんなことをぼんやりと思っていた。
 拮抗はすぐに崩れた。ブルーブレイカーが腕を振りぬき、男が逆らわずに距離をとる。
 そのまま、二人はじりっと対峙する。
「あ、ちょ、ちょい、待……」
 待ちと叫ぼうとして、

彼と目が合った。

 絶句する。
 訂正しよう、怪物と、目が合ってしまった。
 月明かりの森の中爛々と輝く、人を呑み込む、赤く、紅い燃え滾る虹彩と目を合わせてしまった。
 全身を電流が走り抜けた。
 びりびりと肌が泡立って、頭皮が外気に触れるほど毛が逆立つ。
 脳を飛ばし、脊髄へ伝え、自律神経を駆け抜ける。刺激を受けた全器官が強制的に励起する。
 ごクリと風見は唾を飲み込む。
 赤はあまりにも色鮮やかだった。荒漠で薄っぺらな無機色ではない、どれだけの感情を煮詰めればこんな風になるのか、どこまでも深い、憎悪と歓喜の渦巻く赤の万色。
 憎しみがあった。歓喜があった。だが一方で、それは誰に向けられるものでもない、純然な自責のようにも見えた。
 どこにも行き場のない、向ける矛先のない絶望を、飴状になるまで煮詰め続けたらこうなるのかもしれない。
 人喰いの目。意思持つ怪物、ヒトから怪物になったものの目がこちらを見ていた。
 ポーズやブラフの気配はない、そう考えることすらおこがましい、混ぜ物なしの純正品、純度100%の殺意。
 ただの停戦の一言でも、決定的な侮辱ととられかねない。
 肌が、チリチリする。
 それ以前に、アテられて理性が飛びそうだ。
 彼から目をそらせずに、左手だけが無意識に首元をなぜた。柔らかい、けれど異常なまでに汗ばんだ皮膚の感触と結露のように冷たい指の感触。
 痛いほどの心音が風見が生きてることを肯定する。それでもまだ実感がわかない。
 震える爪が浅い切り傷に引っ掛かった。痺れるような痒みとともに、わずかににじむ血が風見の指をつぅと伝う。
「何を呆けている、風見!」
 今度こそ風見ははっとなった。
 BBの叫びと再び金属音が響く。
 交差して、弾きあって、二人がそのまま距離をとる。鈍い金属音が鼓膜を通して脳の深いところで残響する。
 弾かれるように風見は二人から距離をとる。意識が収束し、感覚が音をたてて開けた。
 再びの交錯。ブルーブレイカーが振り下ろし、梳牙の腹を男が手の甲で払う。
 よし、と一つ頷く。
 フィルターを取っ払ったように、二人の動きがよく見えた。
 進む赤に、立ちはだかる群青の装甲。ブルーブレイカーが梳牙をなぎ払い、
 そのまま巨体が宙を舞った。
 運動の法則をあざ笑い、怪物がブルーブレイカーを弾き飛ばす。
「う、そ」
 風見は呆然となる。
 数瞬遅れて、風見は梳牙を足場にした男のもう片方の踵がブルーブレイカーの頭部を、それこそ槌のように打ち据えたいうことをようやく理解した。
 錐揉みしながら数瞬の滞空時間を経て、数百キロを超える機体が地べたに叩きつけられる。

「ぐ!!」
 墜落の瞬間、風見は思わず両腕で顔を覆った。
 衝撃に土と露がはじけて飛沫き、両腕のスキマをぬって頬を走る。ぶつかり合う装甲が派手な金属音を撒き散らす。
 最後に圧倒的な畏怖を伴ううすら寒い沈黙が残った。
 顔のガードをゆるめると、腕の隙間から、地べたに這いつくばるブレイカーが覗く。
 耳が痛い、風見はごくりと唾を飲み込んだ。
 体重差があり過ぎる、仮にそれを成すだけの力があるとしても、同じ衝撃の分男のほうが弾かれるはずだった。
 すくなくとも接地していたり、X-vi、あるいは5-thやそれに準ずる概念・特殊能力などの補助なしにできることではない。
 だが直感はそれを否定する、あれを成したのは純然たる物理法則と鍛錬であると。
 ただ、わかてはいても、あまりにも異常過ぎる目の前の光景を、飲み込むことができそうにない。
 ざわざわと震えているのがわかる、今更になって動悸を感じる。
 末梢がひどく冷たい。
 肺は鉛でも詰め込まれたかのように重く、細い。呼気は喘ぐように、胸の奥で小刻みに振動するばかりだ。
 酸素が胸の奥まで届かない。
 こんなに激しく呼吸してるのに、溺れそうなぐらいに息苦しかった。
 彼が、こちらへ向かって一歩踏み出す。
「う……」
 瞬間、殺気の刃が音を立てて突き刺さる。風見をその場に縫いとめる。
(あれ?)
 握り締めようとした拳が1ミリたりとも動かせない。
(あ、この流れちょっとヤバくない?)
 頭の中のどこか冷静な部分がそんな事を暢気に告げる。
 ファーストアタックで完全にボードアドバンテージを握られた。そして風見は切り札(リセットカード)なんてもってない。
 一歩近付かれる。
 じわり、と嫌な予感が足の先から忍びあがった。
 また一歩。
 重い。
 構えてるのは格好だけ、体が萎縮してる事実を突きつけられる。
 一歩。
 不安が雪だるま式に膨れ上がった。いざというとき、動けるか、風見はその自信がもてない。
 違和感さえ覚える。さっきまでの意思はどこに行った。自分はこんなにも無力だったのか。
 一歩。
 ざりっと靴が砂をかむ音が、目と鼻の先で、響く。
 風見は、手を出すことができない。
 どうしても、ただの一歩を踏み出すことができなかった。
「と」
 唐突に、男が後ろに一歩下がった。
 意図が読めず混乱しかけた風見の前で、遅れて、梳牙が誰もいない空間をなぎ払う。
「ブルーブレイカー!!」
 息を詰まらせながらも風見はその名を叫ぶ。
 起き上がりざまに、BBが仕掛けたのだ。
 風を切り裂き、風圧が衝撃波の壁となって周囲の草露を弾き飛ばす。
「下がっていろ!」
 梳牙が振り下ろされる、男は、それを左手一つでそらすと同時に反動で一歩前へ、腋下をなぞるようにナイフが走る。
 鈍い音が響く、全身全速全体重をかけた男のナイフが関節に突き刺さって、なおあっさり金属に弾かれた。
 反動を流すように男が一歩後ろへ、そこに、梳牙が殺到する。
 左足、右肩、首……秒間3発を超える梳牙の連撃は、逃げ場を囲うようでしかし男に触れることもない。
 その一秒の隙間に、男が体を捩り込む。
 二人の得物が唸りをあげた。
 そのまま済し崩すように、切り結ぶというにはあまりに不恰好な乱舞が始まった。
 人の限界を超える速度で木剣が唸る。男は人の限界速度でかわしていく。
 ナイフが的確に急所をとらえる、それでも、青い装甲を破れない。
 戦術は、これっぽっちもかみ合わない。
 洗練さのかけらもない。切り崩す一撃を探るように二人は打ち合った。
 すべてが新手で、互いに次がどういう手で来るのか予測がつかない。
 じり、と握りしめた拳が汗に滑る。
 正直、風見には介在する隙間が見えなかった。
 距離をとって、ブルーブレイカーの後ろに回り込むでけで精一杯。そして、いつまでそれが続けられるか分からない。
(どうすればいい?)
 心に、通り風が吹いた。
 動くに動けない風見の前で、振り下ろされる軌道と切り払う軌道が交差する。
 風見はそれを他人事のように凝視して、
【いかん!】
「!」
 ぶわり、と肌が泡立った。
 悪寒に衝き動かされ、風見はとっさに右足の重心をはずし、さらに首を横に傾げる。
 目の前を、弾かれた梳牙が流れた。
 ガラスのような、緩やかな時間のなか、舐めるようにエッジが風見の眼の前をかすめて行く。
 心臓が、一際強く収縮する。胸がつぶれる。べコリとつぶれるペットボトルの気分。
 一瞬が過ぎる。時間が正しく流れ出す。
 通過列車の彷彿とさせる。梳牙が風見の視界から流れて消えた。
 前髪の2,3本が、まとめてぶちぶちと悲鳴を上げながら毟り取らる。
 不覚にも、ちょっと涙が出た。
 その一瞬に、赤い男が、弾かれて体を大きく開けたブルーブレイカーを潜り抜け、風見に迫る。
 冷汗も出ない。
 のけぞった勢いが、風見をそのまま後ろに引っ張っている。
 とっさに体を沈め、風見はバランスを強引にニュートラルに戻し、
 目と鼻の先で怪物が笑ってた。
「ちょ、はやっ!」
 頭の中がびりびりする。
 速過ぎる。
 遠目でも十分速いのは意識してたがその本質を見誤ってた。
 歪む口角に銀色の線。
 これは捌ききれない。一瞬で判断が下る。
 迎え撃つには、どうしてももうワンテンポ足りない。
 理解すると、思わず恐怖が先に立った。
 伸ばした右足に重心を移す。靴越しに地面を掴む。体を手繰り寄せてなめらかに押し出す。
 全体重の負荷にひざと太ももが悲鳴を上げるが気にしてる余裕もない。ひきつける余裕もなく、精密動作などもってのほか。
 できうる限りの大振りな、次を考えないバックステップ。
 一撃でもまともに貰えばアウトなのだ。あのサイズのナイフなら切り裂くだけでも十分戦闘不能ダメージが入る。
 水の中のように体が重い。直線でありながらなめらかに追尾するナイフが、くの字に引いたあごの下、喉元ぎりぎりを掠め、ブラウスの繊維を巻き込んで走り抜ける。
 こちらの体勢を崩すためだけの、たたみかける布石としての薙ぎ払い。
 瞬間、風見は勘だけで身体をひねった。上半身だけの半身の脇、さっきまで肩があった位置を刺突が抜ける。
 冷汗が背筋を伝う。
 今ので風見は確信した。やはり、完全に先の先と後の先を握られてる。
(こっちのモーション完全に見切られてるわね、真正面から対峙してるのに不意を打たれてるような錯覚を覚えるわけだ)
 いくら速いとはいっても数値に出るような速さならブルーブレイカーの方がまだ上。しかし、こと格闘戦となるとまだブルーブレイカーを相手にする方が気が楽だろう。
 なんていっても、ドツキ合いで勝つのは常にイニシアティブをとった方である。
「くぁっ!」
 回避に気を取られてを下半身が前に出過ぎていた。男に風見は強烈な足払いをもらう。
 辛うじて衝撃を逃がすが代わりに体が思いっきり宙でコマのように回った。
「こなくっそ!」
 風見はすぐさま重力の方向に体をねじった。三次元感覚は伊達に鍛えてない。
 つま先から着地、若干後ろに流され、腐葉土に足を取られる。重心を落として、転倒を防ぎ。
 そして、顔をあげたその真横に、唸りを上げたブーツの先があった。
「っ!」
 至近で火花が弾けた。
 まさに目と鼻の先を、青い物体が駆け抜けた。安定翼のはじっこが頬に浅い切り傷を残す。
「ブルーブレイカー!」
 声を張る。
 何故だかは明白だがまっ先に風見の脳裏によぎったのは、助かったでも安心でもなく、麻婆だった。トマトでもいい。
 状況は推測できる。ヒトの頭骨を卵と化す万力のごときマニュピレータ、それが男を捕らえたのだ、その発想自体は至極自然だろう。
 だが、ちょっと考えて欲しい。あれだけこっちの期待という期待を鮮やかに裏切っといてその結末はないんじゃないのか?
 人間できないことができるから驚くのではない。予想を裏切れるから驚くのであって、
「いいからさがれ! 風見!」
 叱責が飛ぶ。その向こうでぎりぎりとつばぜり合いのような音がしていて、
 その親指と残り四本の指に、男があろうことかたった二振りのナイフで鍔迫り合ってもそれは当然というものだろう。
「いや驚こうぜ、そこは」
「エンターテイナーが観客に拍手強要してんじゃないわよ!」
 風見は息を整えるのもそこそこに怒鳴り返した。ほほを流れる血を拭って息を吐く。やはり普段と同じことをした方が人間頭が働く、余裕もできる。
 世の中どんなウルトラCを決めても報われない哀れな存在がいるわけで、人はそれを荒唐無稽というらしい。
「そりゃない、努力したんだぜ。だが、まぁこれは無理だ。さすがに単純馬力で機械には勝てないな」
 額に冷汗が一筋流れた。
 口調はどこまでも能天気なのに、殺気がびしびし風見に突き刺さる。
 加えて、体術自体がどうこうよりも男の神経のほうがあり得ない。
 言葉とともに、その隙間が狭まる。圧搾機が眼前に迫ったその状況でも、へらへらと笑みを崩さない精神は不審を通り越してぞっとする。
「詰みだ」
 ブレーブレイカーの短い宣告。
「降伏しろ。命までは取らない」
 命、という言葉に風見は思わずぎくりとした。
 忘れていた、というよりは考えないようにしていたが、ブルーブレイカーは機動兵器。それもとびっきり攻性のだ。
「は」
 しかし、男は冷笑で答えた。宣告の欺瞞を見下ろすように、そうでもしないと殺せない傲慢をあざ笑い、同時に腕がその体を引き上げる。
 させじと握りしめるブルーブレイカーにコンマ数秒だけナイフが拮抗した。時間稼ぎはそれで充分だった。
 上体を弓のようにしならせ、反動をつけて伸びあがる。
 つま先がサイクロイドを描いた。
 たとえて言うなら吊り輪のよう。マニュピレータとの接点を支えに、握りしめる力さえ利用して、身体がぐるりと宙を舞う。
 遅れてブルーブレイカーの禍々しい手が虚空を握りつぶす。
 ひとり分の体重を失い、さらに勢いに引きずられるように、その体勢が崩れる。遠く届かない手を伸ばしたように、隙だらけだった。
 風見の全身が総毛立つ。
 上から怪物がせせら笑う。
「OK、おーけー」
 ナイフが、月明かりを受けて冷たい青に染まる。
「お前からだ」
 彼の手を離れ、ゆるやかな弧を描き、コマ落としに落ちる。
 がら空きのブルーブレイカー肩、伸びきった可動部の隙間にナイフがもぐりこみ、
 強烈なかかと落としが、グリップに決まった。
 再び音叉の合唱が響きわたる。
 完璧な一撃だった、芯も軸ももずれてない、下手な力も入ってない、惚れ惚れするほど奇麗に入った。
 そして金属のかけらがこぼれたのは、ナイフのほうだけ。
 弾かれ空中でくるくると円を描き吸い込まれるように彼の手に収まる。
 折れこそしなかったものの、肉厚な大型ナイフがわずかに歪み、そしてブルーブレイカーはたぶん傷一つ付いていない。
 男が口笛一つ、今まで風見が聴いたどんな音色より鮮やかに響いた。
 こめかみをはじめ、全身がズキリと痛む。
 異常な血圧がホースを大きく脈動させる。
 中枢から末梢へ。膨れて戻って熱を奪う。
 全身の管という管が焼けるように痛んだ。圧で拳を握れないほどの血流が塊となって、回路を押し広げ、痛めつけながら走る。
 体が、制御を超えて研ぎ澄まされた反動だ。
「硬いな」
 そのまま数十合の打ち合い、ふと男がつぶやいた。
 すべてが関節を狙い、装甲のスキマというスキマを切っ先が走り、弾痕をナイフが穿つ。
 振われる腕を、蹴り穿つ足を足場に、縦横にBBの全身を隈なくナイフの洗礼が見舞われる。
 けれど、その一閃たりともBBを貫くには至らない。
「硬い、か?」
 BBの声には少しだけ呆れてるようにも聞こえる。
「出直してこい。硬度を問題にする時点で、単体で機動歩兵に立ち向かうには準備不足だ」
 ガードも崩して、ひたすら進路を防ぐように立ち回る。
「なるほど、これがあんたの支給品ってわけか。下品というかセコイな。
 確かにあんたが使ったほうが生かせるんだろうが、だかこそここはか弱い女主人公(ヒロイン)に貸してやるのが筋だろう?」
 片や、軽口に反してナイフの軌跡が加速する。
「しかし、確かにこれはどうあっても刃が立たない。いや、世界は深いね。今度ウェルズも見てみるか」
 男がナイフの持つ向きを逆手に変える、グリップがブルーブレイカーの装甲を打ち、そのたびブルーブレイカーの軌道がわずかに逸れる。
 フェイントを織り上げ、狂ったように打撃の嵐が吹き荒れる。
(何とか、なるかもね)
 慄きの技も数を重ねれば見切れなくもない。そして、どこを狙ってくるかもわかってる。あと、ウェルズって誰?
 確かに彼の技量や体術はそれこそ独逸製奥様は魔女に近いものが、というか概念加護抜きで考えるならそれ以上なのだが、どうにも武装が貧弱だった。
 音叉の音にノイズが混じる。
 すれ違いざま股関節に一閃、極厚なハンティングナイフの刃が、少しづつだが毀れ歪む。
 いろんなGの喧嘩を買ってきた風見の目でさえ、ブルーブレイカーの躯体が持つ物理特性を正しく評価できない。
 突き崩すにナイフ二振りは、たとえそれが肉を切り裂き骨を断つものであっても、あまりに繊細過ぎる。まず決定的に質量(オモミ)が足りない。
 男がグリップをハンマーのように、装甲に打ち据えた。それでも、ブルーブレイカーの装甲にはへこみ一つ疵一つ付かない。
 それを突破するには硬度なんかの物理特性とは違うの性質、ブルーブレイカーの言う『気』や風見の知る‘概念’が必要になる。
 それでも、そこまで判断できてもまだ風見の不安は晴れない。
 証拠をいくら積み重ねても、安心にはならない。
(ブルーブレイカーが抑えて、私が仕留める)
 だからこそわずかな勝機を見逃せなかった。
 自分の精神状態が普通でないことぐらい風見はとっくに気付いている。
 ここは一秒でも早く勝ちを決める。
 男が一歩踏み込む。
 勝てば、終わらせる。そんなことを願って――油断した。
 たぶん男はそれを見逃してなかったんだろう。
 同じように、ブルーブレイカーが進路を遮り、
「!」
 彼の驚愕が木霊する。
 蒼い機体が『自ら』横にスライドした。
 風見への射線がわずかに開く。すぐさま姿勢を整えるが遅い。
 慄く間もなく、男の手が風見に届く――

   ◆

「ん、浅いか?」
 男のそんな言葉とは裏腹に、喉を守るようにクロスした腕の間から生温い液体が零れ落ちた。
「   」
 何か言おうとして、言葉にならなかった。
 腕の下の口元から、かはっ、とわずかに赤い飛沫が漏れる。
 ねちゃりとした感触が、布越しの腕に染み渡る。油っぽい粘性を持って、風見の腕を滑り落ちる。
 一見、明らかに死に至る生命の漏出だった。
 セリフを忘れた役者のように硬直する。次にするべき動作が風見には思いつかない。
 数秒を要した。それだけ経って風見はようやく全身を弛緩させる。重力に身を任せ、崩れ落ちる。土の反動は意外ときつくて息が詰まった。
 吸い込んだ噎せるような緑色の空気に、風見は思わず咳込み、血がそのたびに隙間から溢れ出る。
 まだまだ動けるには遠いだろうに、まったく、芸が細かい。
 心落ちつけようと土肌に身を寄せると、草のやわらかい感触と消えずに残る草露が風見の体にじんわりと浸みた。
 熱が奪われ心地よい。
 穏やかにぶれる視界に、梳牙の唸りがぼんやりと映った。
「まぁ、まだだ。お楽しみはこれからだろ?」
 金属音をまとって声が嗤う。
「まだあいこにもならないぜ。世界を壊したんだ、どれほどの代償も甘んじて受けるべきだ」
 怪物は梳牙をその場を動くことなく避ける。ほとんど隙は見当たらない。
 本当に、とんでもない体術だ。いつかみた某UCAT雑技団のレベル。四竜兄弟を思い出す。少なくともコレは不意打ちでもしない限り当たる気がしなかった。
 巻き込むように怪物が、そのまま積層装甲を掴み、引く。足を刈り取り、捻る。淀みない即興連動。
 ブルーブレイカーがバランスを崩した上で宙に投げ出され――
 次の瞬間、その背中が大きく広がった。
 飛行ユニットが、枝の間を縫うように展開。見た目、倍近くまで膨れ上がる。
「うお!?」
 翼を広げるような威容に赤い男の動きが一瞬止まるのを見て、風見はその身を跳ね上げた。
 手足を縮め、押し出す。
 靴底に土を噛ませ、右足の切り傷が熱を帯びるのもかまわず、男の膝裏めがけ、そのまま、思いっきり、ワンストライドで加速をかけた。
 筋繊維の一本一本に質量を感じる、重い荷物を手繰り寄せるように、体をぐんと、引き寄せる。
 さらに一歩。 男の視界の外から、一気に接近する。
 ブースターが一瞬だけ火を噴き、熱風が風見を焦がす。
 あと一歩で、届く。
――獲った!
 風見に猛禽の笑みが浮かんだ。
 アフターバーナーが群青の装をが一瞬だけ照らし出す。梳牙が半月を描き、 ――赤く冷めた瞳がこちらを見ていた。
 加速が、緩む。
「いや、騙されないし」
 風見の眼前に、いつの間にか視界いっぱいの靴底が映っていた。
「っ!」
 とっさに体を捩る。
 ぎりぎり逃げ切れなかったこめかみが、ラバーにぞりっと抉られた。
 痛みはない。そこまで処理がまわらない。ただ痺れるような信号があるだけだ。首が折れなかっただけ僥倖だろう。
 足枷をかわした男がブルーブレイカーの飛行機能まで使った円月斬りも余裕をもって優雅に捌く。
 バックを、取られた。
(まずっ、いやさっきからこればっかだけどさ、ほんとにまずいってコレ)
 どこまでも意識はクリアなのに、思考がそれに追いつかない。
 もう怖いもへったくれもない。
 でたらめな文字、情報、記憶が風見の視界にぶちまけられる。
 詰め込まれた情報で、脳が腫れ上がるような圧迫感に吐き気がする。
 順に整理しろ、カラ回る歯車に風見は無理やり思考をかませ一気に巻き取る。
 今、一番怖いのはパニックだ。
 約束された未来が、前提条件、判断基準が消えてなくなる。
 映像としては認識できても、それがどういう意味を持つか、理解が追いつかない。
 銀色のナイフ、群青の上腕、子爵の赤、嗤う顔。定まらない視線が、断片映像を狂ったように紡ぎだす。
 先が読めない。
 何をすれば助かるのかが分からない。何をすれば死ぬのかが分からない。
 本当にピンチのとき、時間は間伸びたりはしない。風見の体は刻一刻と、投げ出されるように倒れていく。
 空中を知る体に弾幕戦がフラッシュバックする。
 数百メートルの虚空を超えて突きつけられる主砲、あたりには覆い尽くす全方位弾。誘導弾が退路という退路を塞いでいる。
 体が覚えてる死の恐怖だ。
 本能が動くなと叫んでる。動いたら死んでしまうと叫んでる。
 体が、硬直した。
 ナイフが隙だらけの背中をポイントしたのがわかる。そうとしか思えない殺気の塊が突き刺さる。
 瞬間、頭の中が沸騰した。
(わからない! でも、止まれば死ぬ!)
 動くなという命令と動けという命令。脳の奥、脳回とか視床下部とかそういうところでがりがりがりがり悲鳴が上がる。
 男はあえて、奇襲させたのだ。今の自分は格好のカモだ。だとしたら次に来るのは致命的な一撃。
 死ぬのがいやなら動くしかない、確かめてる暇はない。‘理解できるものが何もない’恐怖を無理やり捻じ伏せるしかない。
 喉の奥が詰まる。声帯が絞り込むように収縮する。
 腹膜がぐっと縮む。声が、舌の付け根の辺りまでせりあがる。
 締め付ける痛みがザクザク内臓に突き刺さる。
 たった今だけの安全が風見をその場に縫いとめる、一歩でも動けば事故るという確信が、風見を雁字搦めに縛り付ける。
 下手な機動は命を脅かし、そして動かなければ死ぬ。
 凶刃は、たぶんもうすぐそこまで迫っているはずなのだ!
 だから、泣いている暇はなんてない。
 (動け!)
 祈り、風見はすべてを忘れて、反射に、今まで積み重ねてきたアルゴリズムに身を任せた。
 左足を中心に、両腕を引き寄せ体を一本の軸とする。傾いた姿勢を使って、勢いを回転モーメントに変換し、ターン。
 視界の端に銀色が、突きこまれるナイフが映る。
 大事なことは動き続けること、思考も体も、絶対に留めてはならない。どんなダメージでも、どんな失敗をしても、動き続けなきゃ死ぬしかないのだ。
 右腕と右足を後ろに伸ばし、モーメントを殺す。腰を落として、重心を軸から右足へ。
 身体を引き寄せさらに半歩分の距離を稼ぐ。そして気付かれないぎりぎりの幅、直撃ぎりぎりのタイミングで射線軸から右へ寄せた。
 半身になった風見の隣をナイフが抜ける。
 そして、間髪を入れない引き戻しと、風見のバックステップが交差した。
 前に出た左腕に、細い糸のような冷たい圧力が引っ掛かる。
 寒気が、走る。
 押された肉がつぶれて凹み、摩擦とともにぷっちと弾けた。
「痛ぅ!」
 度重なる斬撃でつぶれた刃が、切り口を裂く。歯こぼれした所が引っ掛かり、鋸みたいに柔らかい繊維をぷちぷち毟る。
 痛みが神経を駆け上がり、他の雑多な情報にまぎれて消えた。
 拳を軽く握る。大丈夫だ、腱と信号は切れてない。
 くいしばって、引き寄せた右足で今度は押し出す。体を攻撃領域から引き剥がすと同時にばねを矯め、直角に跳ぶ。
 眼前に、ブルーブレイカーが着地した。
 守られてることの安堵がかすめ、一瞬気が抜けた。苔むした根に、踵が地面を捉え損なう。
「うぐぅ!!」
 制御を外れた体が土の上をワンバウンドして転がった。
 衝撃に息がつまる。
 みじめだ、宙に浮いたままそう思う。
 なぜこんなにも頑張ってるんだろう、とそう思う。
 逃げていれば、よかったのかもしれない、少なくとも彼には子爵も、ブルーブレイカーも殺せない。
 プライドにこだわったんだろうか、逃げたくないというのは単なるわがままにすぎなかったんではないか。
 泣き喚きたい。地面にへたり込み、みっともなく手足を振り回したかった。
 助からなくても、いい。
 そう叫んで、ただ楽になりたかった。
 プライドの奴隷になって、カッコ良くは死にたくはない。それでも醜態をさらすことは風見自身が許さない。
 どの道死ぬのが決まってるなら、少しでいいから報われたかった。
 何かが欲しい、空っぽのままじゃ耐えられない。道連れでも、慰めでも、誇りでもいい。
 ただ、今このまま死んだら、あんまりにも救いがなさすぎる!
 それでも風見は地面を掌で弾き、一挙動で跳ね上がり、
 とたん腹の中がごろりと呻いた。
「! おァっ」
 咄嗟に口を押さえた。
 次いで喉を引き絞る。
 息を飲んで、せりあがる胃液をシャットアウト。
 それがよくなかった。
 抑えつけれらた胃袋が、むずがるようにぐるりとのたうつ。直後猛烈な吐き気が風見の喉をこじ開けてせりあがった。
 ナカミが膨れ上がったように一層の圧力をもって逆流する。
 胃袋から腕が生えて、食道を、じゅるるるるるっ、と押し広げてくるような錯覚。
 ぞわぞわぞわっと、ムカデの足が粘膜を押さえ引っ掻き駆け上がるような、おぞましくも耽美な信号が風見の背筋を駆け上がった。
 脳が拒絶と恐怖で真っ白になる。
 痺れるようなパルスに、肉が強制的に弛緩。
 手で口元を押さえると同時に、あふれ出た液体が音速で口内を蹂躙した。
 粘液が舌の裏側を舐めとり、歯茎をなぞって、しゃぶり尽す。
 腰が砕けそうになる。
 頬が膨らむ、鼻から飛沫が飛び、袖口に線を作った。
(吐いて、たまるか)
 風見の中の女に火が入る。
 酸が胸をやく、鼻が曲がるような臭気、それを、喉を絞り、目を押し込むような感覚とともに一息に飲みほす。
 ぷはぁ、と胃酸臭い息を吐き、顔をあげ、
 彼は触れ合うような距離に居た。
 世界が凍る。
「ああ、大丈夫、聞きたいことがあるからな、腰のそれさえ抜かなきゃ殺しはしないさ」
 まるで、旧知を歓迎するように両手を広げ、彼が穏やかに嗤う。
 今度こそブルーブレイカーのフォローは、ない。
「今はまだ、な」
 ナイフが向けられる。
 今度こそ、死んだ、そう思った。
 たしかに、なぜこんなにも頑張ってきたんだろう、と、そう思う。
 ブルーブレイカーのことの後悔は強い。
 今だって、自分の無力感に泣きたくなる。
 世界はこっれっぽっちもうまくいかなくて、誰かをきっと傷つけてしまう。
 そんな思いが重なって、風見は前に進むことを躊躇してしまう。
(まだ、殺さないと言っている)
 敗北にゆだねてしまいたい。殺され可能性はあっても、今はそれで生き延びれるのだ。
『“鬼嫁”さんとそのつがいは、きっと共には死ねないよ』
 それでも、脳裏に、魔女の言葉がリフレインする。
『その時“鬼嫁”さんとその夫は、何か変わってしまうかな?』
 不吉な言葉だ。
 新庄の、あの控え目ではにかむような笑顔を思い出す。ここにいることが少し申し訳なさそうで、けれどもここでしか生きていけないと信じている笑顔だ。
 拍子抜けしてしまうほどあっさりと、人は変わる。
 きっとそれはどうしようもないことだ。もうそれは認めるしかない。
 出雲の存在はもう風見の組織に癒着した風見の一部で、亡くして壊れないほうがおかしいのだ。
『思いっきり悲しんで、その後は忘れるな』
 だが、出雲は、変わらない。
 受け流すことなく、代わりを求めるでもなく、悲しみも、その想いも、飲み込んで、この空に溶かしていく。
 重い、潰れてしまいそうになる。無謀になれたらどんなにか楽だろう。
 結局、風見は誰も傷つけたくないのだ、風見は出雲を傷つけるのは、いやだった。
 鉛色が煌く。
 風見は神様を恨む。だった矛盾してる。人はどこまでも独りなのに、こんなにも今までに出会ったすべての人たちをを背負って生きている。
 苦しくても、悲しくても、風見は死ねない。死ぬわけにはいかない。
 風見は強くかみしめた。
 迷ってる暇は、なかった。
 一か八かだ、幸いにも、スライドストップは外してある。
 ブルーブレイカーとのことも、魔女の預言のことも、今の風見にはどうすればよかったのかはわからない。
 風見は戦いたくはない、引いてしまえば、誰も傷つかずに済ますこともできる。自分のせいで誰かが傷つくのはいやだった。
 命をチップにさしだすのは怖い、失敗したら、それこそ笑うしかない様な死に様になる。
 それでもたぶん、この死線の上で綱を渡り切るようにしか、人は生きていけないのだ。
 失敗しても、傷つけても、それを理由に退いては、あきらめてはいけないのだ。
(死にたく、ない!)
 私たちはつながってる人を大なり小なり背負って生きている、そのことを忘れたくはない。そうすれば、自分の感情に振り回されずにがんばることが出来るから。
 思い出すのは冬の月、月の光りのさし込む病棟。
 あの時風見は確かに約束した。
 願ったといってもいい、誓ったといってもいい。
 絶対に怯えることはしたくなかった。風見はもっと恐ろしいものを知っている。
 どんなに恐ろしくても、怯えることだけはしたくない。
 風見には仲間達と違って、UCAT自体には因縁などなかった
 風見が戦う必要なんてなかった。誰かに任せても風見自体には何の不都合もなかった。
 一年前、出雲と出逢い、引き離された。彼の残滓にすがって、追いかけて、巻き込まれた。
 別に風見が戦う必要なんてなかったのだ。
 それでも戦って、絶対に退くことはしなかった。
 そして、次に彼と出合った時、風見は力の担い手となっていた。
 以来、風見の人生はずっと出雲と一緒に回っていた。
(戦えないなら受け入れるしかない。どんなにつらくても、どんなに苦しくても、ね)
 戦いから逃げていたら、置いていかれるのだ。置いていかれたら戦うことは出来ない。
 守りたいものがあっても戦えない。
 諦められない夢も、譲りたくない一線も、どんなに手を伸ばしても、届かない。
 今逃げたら、死ぬ。死ねば、出雲が悲しむのを、遠くから見ていることしかできない。
 希望を失いたくないなら、戦わなきゃいけない。
 戦い続けていくために、戦い続けなきゃならない。
 もし戦うことをやめていれば、一光と戦ったとき、出雲と、あの子をきっと守れなかったろう。
(力がなくてもズタぼろになっても、怯えたら、戦うことをやめたらそこで終わりなのよ)
 自分が弱いことを知ってるから。
 怯えて、萎縮して、逃げ出してしまうことが、何より怖い。
 だから、戦うことはこれっぽっちも怖くない!
「子爵!」
 突きこまれる右手の下に、風見は左手をねじ込んだ。同時に一息にグロックを引き抜く。
 それを見逃す男ではない。子爵がのしかかるのに頓着せず、すぐさま左ナイフが抑えにかかる。
 相手の右手を左手で転がしながら、風見は重心を落とし流れるように潜り込む。
 中国拳法で言うところの閃通臂。ただし突き出すのは拳ではなく銃である。
 あまりにも軽い、金属が樹脂を弾く音。
 風見の手を離れる。
「!」
「動くな!」
 喉元で、ナイフがぴたりと静止した。
 ごくり、と風見は生唾を飲んだ。切っ先がチクリと触れる。
「なるほど」
 そして、男が嘲う。
「確かに、これは一杯喰わされたな」
 自らを嘲う声。
 一見して玩具と取られかねない、重量にしてわずか600グラムに満たぬ、牙。
 弾き飛ばされたそれを赤い液体に受け止めさせて、風見はすかさず男のどってっぱらに突き付けた。
 耳が痛いほどの、静寂。
 じり、と男が一歩左へ、すかさず同じように時計回りに回る。
 一歩、回る。こちらも、一歩。
 ひどく座った目で、風見は男を睨みつける。腱一筋の動きも見逃すまいと、ねめあげる。
 一触即発。
 口の中で転がしたその言葉はひどく乾いた味がした。


【B-6/森/2日目/00:00】

【灯台組(出張中)】
【ゲルハルト・フォン・バルシュタイン(子爵)】
[状態]:やや疲労/準グロッキー状態(支えがあれば起き上がれる、文字や一部を動かすぐらいならできる)
[装備]:なし
[道具]:なし(荷物はD-8の宿の隣の家に放置)
[思考]:誰も死なない形でこの諍いを治める
    アメリアの仲間達に彼女の最期を伝え、形見の品を渡す/祐巳のことが気になる
    /盟友を護衛する/同盟を結成してこの『ゲーム』を潰す
[備考]:祐巳がアメリアを殺したことに気づいていません。
    会ったことがない盟友候補者たちをあまり信じてはいません。

【風見・千里】
[状態]:風邪/右足に切り傷/あちこちに打撲/表面上は問題ないが精神的に傷がある恐れあり
[装備]:懐中電灯/グロック19(残弾0・予備マガジンなし)/カプセル(ポケットに四錠)
    /頑丈な腕時計/クロスのペンダント
[道具]:懐中電灯以外の支給品一式/缶詰四個/ロープ/救急箱/空のタッパー/弾薬セット
[思考]:どうやってこの状況を打開する。
     早く体調を回復させたい/BB・ED・子爵と協力/出雲・佐山・千絵の捜索
[備考]:濡れた服は、脱いでしぼってから再び着ています。
    EDを敵だとは思っていませんが、仲間だとも思っていません。

【蒼い殺戮者(ブルー・ブレイカー)】
[状態]:精神的にやや不安定/少々の弾痕はあるが、今のところ身体機能に異常はない
[装備]:梳牙(くしけずるきば)、エンブリオ
[道具]:なし(地図、名簿は記録装置にデータ保存)
[思考]:不明。惰性として風見の味方をしている。
    /風見・ED・子爵と協力?/火乃香・パイフウの捜索?
    /脱出のために必要な行動は全て行う心積もり?

【B-6/森/2日目/00:00】

【クレア・スタンフィールド】
[状態]:健康。激しい怒り
[装備]:大型ハンティングナイフ(片方に瑕多数、もう片方は比較的まし)x2
[道具]:デイパック(支給品一式・パン6食分・水2000ml)、コミクロンが残したメモ
[思考]:この世界のすべてを破壊し尽くす/目の前の奴らをCDの仲間と誤認
    “ホノカ”と“CD”に対する復讐(似た名称は誤認する可能性あり)
    シャーネの遺体が朽ちる前に元の世界に帰る。
[備考]:コミクロンが残したメモを、シャーネが書いたものと考えています。
    シャーネの遺体は木の下に安置してあります
    BBを火星兵器の類と勘違いしています。


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