第542話:大崩壊/リベンジ・ワード(放送禁止) 作:◆eUaeu3dols
閑話休題。
これはある一連の流れの傍流である。
殺した者も殺された者も罪深い、ただの復讐劇である。
それが何から始まり何に繋がるかという事を考えなければ大した悲劇では無いだろう。
この殺し合いの中で言うならば幾つでも転がっている、そんな出来事である。
そう、大した悲劇じゃない。
これはある一連の流れの傍流である。
殺した者も殺された者も罪深い、ただの復讐劇である。
それが何から始まり何に繋がるかという事を考えなければ大した悲劇では無いだろう。
この殺し合いの中で言うならば幾つでも転がっている、そんな出来事である。
そう、大した悲劇じゃない。
ただの惨劇だ。
     * * *
23時30分を、過ぎる。
光明寺茉衣子は夜闇の森の中、身を縮めて放送を待っていた。
24時に始まる第4回放送をだ。
今更死んで悲しい者など居ないが、禁止エリアと殺し合いの進行状況は気になっていた。
もしも上手くすれば彼女は生き残れるかもしれない。
元の世界に帰れるかもしれない。
(……けれど、そこに班長は居ないのですね)
そう思うと自分が何を望めばいいのかすら判らなくなる。
ただ死にたくないとは思うけれど、それ以上に望むことは――何も無いのだ。
閉塞した未来へ向かって歩いているだけ。果ての有る今を歩いているだけ。
それは何の意味も無い事に思われた。
(考えるのはよしましょう)
今はただ時を待とうと、茉衣子はそう思った。酷く寒く静かな夜を、ただ越えようと。
だが。
『おい、茉衣子……』
「……わかってます」
誰かが木々を掻き分け近づいてくる音がする。数は1人と……
24時に始まる第4回放送をだ。
今更死んで悲しい者など居ないが、禁止エリアと殺し合いの進行状況は気になっていた。
もしも上手くすれば彼女は生き残れるかもしれない。
元の世界に帰れるかもしれない。
(……けれど、そこに班長は居ないのですね)
そう思うと自分が何を望めばいいのかすら判らなくなる。
ただ死にたくないとは思うけれど、それ以上に望むことは――何も無いのだ。
閉塞した未来へ向かって歩いているだけ。果ての有る今を歩いているだけ。
それは何の意味も無い事に思われた。
(考えるのはよしましょう)
今はただ時を待とうと、茉衣子はそう思った。酷く寒く静かな夜を、ただ越えようと。
だが。
『おい、茉衣子……』
「……わかってます」
誰かが木々を掻き分け近づいてくる音がする。数は1人と……
(なんなんです、この足音は……?)
まるでロボットが歩いているような重々しい足音。
どういうわけか水を零しながら歩いてでもいるのか、奇妙な水の音が絶えず続いている。
(隠れなくては)
静かに這い回り、木に隠れて近づく者達をやり過ごそうと試みる。
問題ない、この暗闇ならやりすごせる。やり過ごせば……
『おい、茉衣子』
「わかってます」
だから喋らないで欲しい。この声が聞かれたら……
『違う、そっちじゃねえ後ろだっ』
(え?)
エンブリオの警告に首を傾げたその先に……二人の女が立っていた。
「わお、かわいこちゃん発見♪」
「なっ!?」
更に振り返り驚愕する茉衣子の背、さっきまでの前方からも声がかかった。
「さっきからそこでこそこそ隠れてるけど……何者なの?」
(二組居た――!?)
茉衣子は自らの不運を、呪った。
まるでロボットが歩いているような重々しい足音。
どういうわけか水を零しながら歩いてでもいるのか、奇妙な水の音が絶えず続いている。
(隠れなくては)
静かに這い回り、木に隠れて近づく者達をやり過ごそうと試みる。
問題ない、この暗闇ならやりすごせる。やり過ごせば……
『おい、茉衣子』
「わかってます」
だから喋らないで欲しい。この声が聞かれたら……
『違う、そっちじゃねえ後ろだっ』
(え?)
エンブリオの警告に首を傾げたその先に……二人の女が立っていた。
「わお、かわいこちゃん発見♪」
「なっ!?」
更に振り返り驚愕する茉衣子の背、さっきまでの前方からも声がかかった。
「さっきからそこでこそこそ隠れてるけど……何者なの?」
(二組居た――!?)
茉衣子は自らの不運を、呪った。
茉衣子は冷静に、目の前に出てきた者達を観察する。
まず目の前に居るのは二人の女だ。どういうわけか互いの片腕を長い革ひもで繋いでいる。
どこかで衣服を調達したのか、それとも同じ世界から来たのか、二人とも旅館っぽい雰囲気の服を着ている。
小さな方の女……というより少女はこちらをじっと見つめて、しばらくして呟いた。
「“ウィルオウィスプ”、それから“金の針先”かな」
(何……?)
怪訝な表情が表に出たのだろう。少女はにっこりと笑って答える。
「あなた達の今の魂のカタチだよ、“ウィスプ”さん」
「何を言って……」
「ウィルオウィスプは彷徨う鬼火。森の中を彷徨って、旅人達を破滅に誘ってしまう」
その言葉が茉衣子の蛍火の力と重なる。
(この女、私の能力を知っている!?)
何故? どうして!?
「でもウィルオウィスプは旅人達を迷わせるけれど、それは自分も彷徨っているから」
少女は唄うように教える。
「可哀想な“ウィスプ”さん。元は夜に舞う蛍だったのに、傷を負って変わってしまった。
自らの後ろに有るべき夜を失って、暗澹たる闇に踊る鬼火になってしまったんだねぇ」
(後ろに有るべき夜……班長の事!? この女どうしてそれを知ってるの? まさか、あの女の……!)
驚愕し後ずさり……背後に居る者達を思いだし、茉衣子はゆっくりと振り返った。
目に蒼い壁が映った。
「ひっ」
そこに夜闇にも浮かび上がる蒼いロボットが有った。
そのロボットはじっと茉衣子を見つめているだけで、何も言おうとはしない。
だがその威圧感は殺意にも感じる程だ。
その横には女が足下を懐中電灯で照らし、何か頷いている。ここからは見えないが、何が有るのか?
女は顔を上げて言った。
「奥の二人は子爵の知り合いなのね」
「ああ、子爵の仲間なんだ。よく見るとそこに居るんだね。
知り合いだよ、ちょっと話しただけの。
ねえ、子爵はなんで姿を見せないの? それじゃ話せないよ」
背後から背が高い方の女の声がした。
前に居る女の足下、茂みに隠れたそこに誰かが居るというのか? 子供が入るのがやっとの空間に。
(小人でも居るのですか? それなら、上手くすれば……)
敵対しても隙を見て捕まえれば人質に使えるかも知れない。
目の前に居るロボットはとてつもない脅威だろうが、上手くすればなんとかなるかもしれない。
「この状況で知らない相手に姿を見せるのは良くないってさ。まあ判るでしょ?」
「“紳士”さんは紳士なのにねぇ」
少女の方がまるで意味不明な事を言う。
まず目の前に居るのは二人の女だ。どういうわけか互いの片腕を長い革ひもで繋いでいる。
どこかで衣服を調達したのか、それとも同じ世界から来たのか、二人とも旅館っぽい雰囲気の服を着ている。
小さな方の女……というより少女はこちらをじっと見つめて、しばらくして呟いた。
「“ウィルオウィスプ”、それから“金の針先”かな」
(何……?)
怪訝な表情が表に出たのだろう。少女はにっこりと笑って答える。
「あなた達の今の魂のカタチだよ、“ウィスプ”さん」
「何を言って……」
「ウィルオウィスプは彷徨う鬼火。森の中を彷徨って、旅人達を破滅に誘ってしまう」
その言葉が茉衣子の蛍火の力と重なる。
(この女、私の能力を知っている!?)
何故? どうして!?
「でもウィルオウィスプは旅人達を迷わせるけれど、それは自分も彷徨っているから」
少女は唄うように教える。
「可哀想な“ウィスプ”さん。元は夜に舞う蛍だったのに、傷を負って変わってしまった。
自らの後ろに有るべき夜を失って、暗澹たる闇に踊る鬼火になってしまったんだねぇ」
(後ろに有るべき夜……班長の事!? この女どうしてそれを知ってるの? まさか、あの女の……!)
驚愕し後ずさり……背後に居る者達を思いだし、茉衣子はゆっくりと振り返った。
目に蒼い壁が映った。
「ひっ」
そこに夜闇にも浮かび上がる蒼いロボットが有った。
そのロボットはじっと茉衣子を見つめているだけで、何も言おうとはしない。
だがその威圧感は殺意にも感じる程だ。
その横には女が足下を懐中電灯で照らし、何か頷いている。ここからは見えないが、何が有るのか?
女は顔を上げて言った。
「奥の二人は子爵の知り合いなのね」
「ああ、子爵の仲間なんだ。よく見るとそこに居るんだね。
知り合いだよ、ちょっと話しただけの。
ねえ、子爵はなんで姿を見せないの? それじゃ話せないよ」
背後から背が高い方の女の声がした。
前に居る女の足下、茂みに隠れたそこに誰かが居るというのか? 子供が入るのがやっとの空間に。
(小人でも居るのですか? それなら、上手くすれば……)
敵対しても隙を見て捕まえれば人質に使えるかも知れない。
目の前に居るロボットはとてつもない脅威だろうが、上手くすればなんとかなるかもしれない。
「この状況で知らない相手に姿を見せるのは良くないってさ。まあ判るでしょ?」
「“紳士”さんは紳士なのにねぇ」
少女の方がまるで意味不明な事を言う。
「……姿を見せてもらえませんか? 隠れて話すような相手は信用できません」
茉衣子は慎重に要求する。
彼女達の出方は判らないが、少なくともここで遭遇したのは予定にある事では無いらしい。
そのせいか馴れ馴れしく話し合いながら、どこか牽制しあっているような雰囲気も感じられる。
上手く話し合えば交渉できるかもしれない。
「……………………判ったわ。その前に私達も名乗っておくわね。
私は風見・千里。こっちはブルーブレイカー」
千里という女が自己紹介をするが、横にいる人型のロボットは微動だにしない。
「それからこっちが……」
ぶわりと。
千里の持つ懐中電灯の明かりの中に赤い液体が躍り出た。
――血飛沫が文字を為す。
【先程までは失敬。我輩はゲルハルト・フォン・バルシュタイン!
子爵の位を賜り、グローワース島の元領主であり現在は隠居の身にある吸血鬼である!】
(吸血鬼――!?)
息を呑む茉衣子の背中を別の言葉が追い打ちをかけた。
「というかほんと、その姿で吸血鬼っていうのは信じがたいんだけど」
「“カルンシュタイン”さんはオーソドックスな吸血鬼だものねぇ」
(こいつらも!?)
茉衣子は直感した。
茉衣子は慎重に要求する。
彼女達の出方は判らないが、少なくともここで遭遇したのは予定にある事では無いらしい。
そのせいか馴れ馴れしく話し合いながら、どこか牽制しあっているような雰囲気も感じられる。
上手く話し合えば交渉できるかもしれない。
「……………………判ったわ。その前に私達も名乗っておくわね。
私は風見・千里。こっちはブルーブレイカー」
千里という女が自己紹介をするが、横にいる人型のロボットは微動だにしない。
「それからこっちが……」
ぶわりと。
千里の持つ懐中電灯の明かりの中に赤い液体が躍り出た。
――血飛沫が文字を為す。
【先程までは失敬。我輩はゲルハルト・フォン・バルシュタイン!
子爵の位を賜り、グローワース島の元領主であり現在は隠居の身にある吸血鬼である!】
(吸血鬼――!?)
息を呑む茉衣子の背中を別の言葉が追い打ちをかけた。
「というかほんと、その姿で吸血鬼っていうのは信じがたいんだけど」
「“カルンシュタイン”さんはオーソドックスな吸血鬼だものねぇ」
(こいつらも!?)
茉衣子は直感した。
――ここはまだ、あの女の庭だ。
無数の蛍火が輪舞した。
閃光。爆光。爆裂。炸裂。
「子爵!?」
誰かの叫びが聞こえる。
(どうやらあの血の塊には私の力が効くようです)
今が好機と全力で走り出した。その首に。
何か細い物が絡みついた。
閃光。爆光。爆裂。炸裂。
「子爵!?」
誰かの叫びが聞こえる。
(どうやらあの血の塊には私の力が効くようです)
今が好機と全力で走り出した。その首に。
何か細い物が絡みついた。
(しまった――!!)
「だーめ、逃がさないよ」
くすくすとカルンシュタインと呼ばれた吸血鬼がほくそ笑む。
次の瞬間、絡みついた紐が引き締まる。
「――っ!」
「あれ、反応早いね」
くすりと茉衣子の背後で吸血鬼が笑う。
茉衣子は辛うじて首と絡みつく革ひもの間に左手を滑り込ませていた。
「だけど」
「ぁ――!!」
ぎゅうっと。紐に掛けられた力が強くなる。
(なんて、力ですか――!?)
とても未成熟な女の力で抑えられる物ではない。
手に、掌に食い込んだ革ひもが、諸とも首を絞めつける。このままでは絞め殺される!
「さ、さっきの、光を、見なかったのですか」
「何が?」
「あの、吸血鬼と名乗った血の塊に当たった光の事です」
ああ、と聖は笑う。
「脅し? でも、私に当たったのは何ともなかったんだけどなぁ」
「っ!!」
聖にはその理由がよく判らなかったが、目の前の少女の素直な反応で理解した。
どういう理屈かはさっぱり判らないが、あの無数の蛍火は聖には効かないのだ。
「別に子爵は仲間ってわけじゃないけど、あなたは美味しそうだし。
お腹ぺこぺこの私の前に姿を見せたのが不運と思って諦めてね」
(そんな勝手な――!!)
蛍火の脅しが利かないなら、他は――
「だーめ、逃がさないよ」
くすくすとカルンシュタインと呼ばれた吸血鬼がほくそ笑む。
次の瞬間、絡みついた紐が引き締まる。
「――っ!」
「あれ、反応早いね」
くすりと茉衣子の背後で吸血鬼が笑う。
茉衣子は辛うじて首と絡みつく革ひもの間に左手を滑り込ませていた。
「だけど」
「ぁ――!!」
ぎゅうっと。紐に掛けられた力が強くなる。
(なんて、力ですか――!?)
とても未成熟な女の力で抑えられる物ではない。
手に、掌に食い込んだ革ひもが、諸とも首を絞めつける。このままでは絞め殺される!
「さ、さっきの、光を、見なかったのですか」
「何が?」
「あの、吸血鬼と名乗った血の塊に当たった光の事です」
ああ、と聖は笑う。
「脅し? でも、私に当たったのは何ともなかったんだけどなぁ」
「っ!!」
聖にはその理由がよく判らなかったが、目の前の少女の素直な反応で理解した。
どういう理屈かはさっぱり判らないが、あの無数の蛍火は聖には効かないのだ。
「別に子爵は仲間ってわけじゃないけど、あなたは美味しそうだし。
お腹ぺこぺこの私の前に姿を見せたのが不運と思って諦めてね」
(そんな勝手な――!!)
蛍火の脅しが利かないなら、他は――
「で、あたしらにはそれを見ておけっていうわけ?」
唐突に千里の言葉が掛かった。
その言葉に聖はオーバーなくらいに意外だと驚いて見せる。
「子爵の仇でしょ?」
【かってに ころさないで くれたまえ】
その言葉を否定する血文字が浮かび上がった。
【すこし――きいたのはたしかだがね――】
ひらがなばかりになって少しよれた字ではあった。
それでもしっかりと書き綴る。
【もっとも こわがらせてしまうことは わかっていた から
――よみぐるしくて すまない。 いきをととのえる】
しばし、間。血の池に幾つもの波紋が浮かび波打った。
まるで荒い息の様に浮かび上がる波紋は深呼吸のような物だろうか。
やがて子爵は元気を取り戻した様子で改めて話し始める。
だがそれでも樹にもたれかかった随分と萎びた字だ。ダメージは大きい。
【怖がらせてしまってすまない。だがそういう可能性は考えていたとも。
だから文字の部分は言うならば腕の部分だけを使っていたのだよ。
重いボディブローでも受けてしまった気分だがね。いやはや良いパンチだ】
子爵は慎重で、用心深く、奥の手を残しておく事に長けている。
子爵の強さはその肉体の高い不死性よりも、その紳士としての人格と知恵にある。
(それならどうすれば殺せるのです?)
茉衣子はもう対話という可能性を考えてすらいなかった。
こいつらは吸血鬼であり、即ち『あの女』の僕であり、そして既に交戦を開始した敵だ。
『落ち着いた方がいいぞ茉衣子』
囁きが――茉衣子以外にはくっついている聖にしか聞こえないくらいの囁きが聞こえる。
エンブリオの声だ。
「私は……冷静ですっ」
だから冷静に二つの事を考えているのに。
唐突に千里の言葉が掛かった。
その言葉に聖はオーバーなくらいに意外だと驚いて見せる。
「子爵の仇でしょ?」
【かってに ころさないで くれたまえ】
その言葉を否定する血文字が浮かび上がった。
【すこし――きいたのはたしかだがね――】
ひらがなばかりになって少しよれた字ではあった。
それでもしっかりと書き綴る。
【もっとも こわがらせてしまうことは わかっていた から
――よみぐるしくて すまない。 いきをととのえる】
しばし、間。血の池に幾つもの波紋が浮かび波打った。
まるで荒い息の様に浮かび上がる波紋は深呼吸のような物だろうか。
やがて子爵は元気を取り戻した様子で改めて話し始める。
だがそれでも樹にもたれかかった随分と萎びた字だ。ダメージは大きい。
【怖がらせてしまってすまない。だがそういう可能性は考えていたとも。
だから文字の部分は言うならば腕の部分だけを使っていたのだよ。
重いボディブローでも受けてしまった気分だがね。いやはや良いパンチだ】
子爵は慎重で、用心深く、奥の手を残しておく事に長けている。
子爵の強さはその肉体の高い不死性よりも、その紳士としての人格と知恵にある。
(それならどうすれば殺せるのです?)
茉衣子はもう対話という可能性を考えてすらいなかった。
こいつらは吸血鬼であり、即ち『あの女』の僕であり、そして既に交戦を開始した敵だ。
『落ち着いた方がいいぞ茉衣子』
囁きが――茉衣子以外にはくっついている聖にしか聞こえないくらいの囁きが聞こえる。
エンブリオの声だ。
「私は……冷静ですっ」
だから冷静に二つの事を考えているのに。
どうやってこいつらを殺すか。あるいはどうやってこいつらから逃げ延びるか。
彼らを殺しうる武器は一つしかない。あの首無し女を仕留めた銀の短剣だ。
ならばどうやって隙を作りこいつらを殺すか、あるいは傷つけるのか。
首を絞められるのを左手を挟んで少しは防いだが、このままでは左手が使えない。
背後の女が子爵とやらに気を取られて力を抜いているから手を抜く事だってできるが、
その状態で勢いよく紐を絞められれば一瞬で意識が飛ぶだろう。
『で、そうやって破滅する気かよ?』
「あなたは黙っていなさい、エンブリオ! あの女の僕共にあなたは渡しません!」
「エンブリオ? 今話してるのが詠子ちゃんの言った“金の針先”っていう人かな?」
「ひ――っ!」
首に掛かった紐が緩み、チャンスと思う間も無くゾクリと寒気が走る。
背後の聖が悪戯半分に耳に息を吹きかけながらその左手で胸を鷲掴んでまさぐってきたのだ。
だけど問題は性的な事などではない。
確か、吸血鬼と一緒に居た少女は自分ともう一人の誰かに話しかけていた。
「“ウィルオウィスプ”、それから“金の針先”かな」
謎の名前、金の針先。
――気づいているのだ。エンブリオの事に。
彼女の胸元に下がるエジプト十字架に秘められた意思に。
(あの女の僕にエンブリオが奪われる!?)
それは絶対に避けなければならない事だ。許されない事だ。
エンブリオは班長から遺された唯一の物だ。絶対にあの女に渡してはならない物だ。
それ位なら――壊さなければならない。
「あ、有った、指に何か……あつっ!?」
何故か聖の力が一瞬抜けたその隙に、茉衣子は右手で聖の手を払った。
同時に首から抜いた左手で首もとに下がっていたエンブリオを手に取る。
後は一瞬だ、蛍火をエンブリオに叩き込んでその炸裂と閃光の隙に右手で短剣を抜いて
密着している吸血鬼の腹でも胴でも刺してその後で革ひもを切って逃げれば――!!
彼らを殺しうる武器は一つしかない。あの首無し女を仕留めた銀の短剣だ。
ならばどうやって隙を作りこいつらを殺すか、あるいは傷つけるのか。
首を絞められるのを左手を挟んで少しは防いだが、このままでは左手が使えない。
背後の女が子爵とやらに気を取られて力を抜いているから手を抜く事だってできるが、
その状態で勢いよく紐を絞められれば一瞬で意識が飛ぶだろう。
『で、そうやって破滅する気かよ?』
「あなたは黙っていなさい、エンブリオ! あの女の僕共にあなたは渡しません!」
「エンブリオ? 今話してるのが詠子ちゃんの言った“金の針先”っていう人かな?」
「ひ――っ!」
首に掛かった紐が緩み、チャンスと思う間も無くゾクリと寒気が走る。
背後の聖が悪戯半分に耳に息を吹きかけながらその左手で胸を鷲掴んでまさぐってきたのだ。
だけど問題は性的な事などではない。
確か、吸血鬼と一緒に居た少女は自分ともう一人の誰かに話しかけていた。
「“ウィルオウィスプ”、それから“金の針先”かな」
謎の名前、金の針先。
――気づいているのだ。エンブリオの事に。
彼女の胸元に下がるエジプト十字架に秘められた意思に。
(あの女の僕にエンブリオが奪われる!?)
それは絶対に避けなければならない事だ。許されない事だ。
エンブリオは班長から遺された唯一の物だ。絶対にあの女に渡してはならない物だ。
それ位なら――壊さなければならない。
「あ、有った、指に何か……あつっ!?」
何故か聖の力が一瞬抜けたその隙に、茉衣子は右手で聖の手を払った。
同時に首から抜いた左手で首もとに下がっていたエンブリオを手に取る。
後は一瞬だ、蛍火をエンブリオに叩き込んでその炸裂と閃光の隙に右手で短剣を抜いて
密着している吸血鬼の腹でも胴でも刺してその後で革ひもを切って逃げれば――!!
「カ……ハ…………ッ!?」
その全ての達成は困難でもほんの僅かな勝算の有った目論見は、最初の一手で崩れ去った。
裂帛の気勢を叫ぼうとした喉に巻き付いた革ひもが締め上げられて一瞬視界が白くなる。
(どう――し――て――――!?)
革ひもの片端は聖の右手首に繋がれている。
聖はそれを絡みつけもう片方の左手で締め上げていた。
だが聖は茉衣子の胸をまさぐる為に左手を革ひもから放していたはずだ。
その手の力が抜けた隙を狙ってその手を払った。革ひもは片端だけしか繋がれていない。
それならどうして――
「ごめんね、“ウィスプ”さん」
――茉衣子はようやく“吸血鬼と革ひもで繋がれていた少女”の事を思いだした。
次の瞬間、改めて聖が握り直した革ひもが蛇の様に首を締め上げていた。
「――――!!」
思考が飛んだ。
裂帛の気勢を叫ぼうとした喉に巻き付いた革ひもが締め上げられて一瞬視界が白くなる。
(どう――し――て――――!?)
革ひもの片端は聖の右手首に繋がれている。
聖はそれを絡みつけもう片方の左手で締め上げていた。
だが聖は茉衣子の胸をまさぐる為に左手を革ひもから放していたはずだ。
その手の力が抜けた隙を狙ってその手を払った。革ひもは片端だけしか繋がれていない。
それならどうして――
「ごめんね、“ウィスプ”さん」
――茉衣子はようやく“吸血鬼と革ひもで繋がれていた少女”の事を思いだした。
次の瞬間、改めて聖が握り直した革ひもが蛇の様に首を締め上げていた。
「――――!!」
思考が飛んだ。
【待ちたまえ、殺すのは】
「大丈夫、殺さないよ」
子爵が綴ろうとした言葉に先んじて聖が言う。
「お腹減ったから血は貰うけど、こんな可愛い子は殺さないってば」
その理由は徹頭徹尾欲まみれであったが。
なんとも吸血鬼らしい欲深さである。
その欲望に対してブルーブレイカーは無関心を、風見は不快感を示す。
特に風見は子爵が話し合おうとしていなければ一撃入れていたかもしれない程に不快だった。
人として吸血鬼の餌食を放置するのかとかそういう問題も有る。
だがそれは一部で、それ以外の言葉を集約するならこの一言だろう。
(覚並のエロ魔人だ、この女)
……割と本気である。
色んな意味がその一言に集約されて、風見・千里は腹を立てていた。
「あとそれと、『あの女の僕共にあなたは渡しません』って胸元のに言ってた事が気になってさ」
こっちは真面目な理由だった。
「胸元の触ったらちょっとだけ熱かったんだけど……詠子ちゃん取ってくれない?」
「うん、良いよ」
「大丈夫、殺さないよ」
子爵が綴ろうとした言葉に先んじて聖が言う。
「お腹減ったから血は貰うけど、こんな可愛い子は殺さないってば」
その理由は徹頭徹尾欲まみれであったが。
なんとも吸血鬼らしい欲深さである。
その欲望に対してブルーブレイカーは無関心を、風見は不快感を示す。
特に風見は子爵が話し合おうとしていなければ一撃入れていたかもしれない程に不快だった。
人として吸血鬼の餌食を放置するのかとかそういう問題も有る。
だがそれは一部で、それ以外の言葉を集約するならこの一言だろう。
(覚並のエロ魔人だ、この女)
……割と本気である。
色んな意味がその一言に集約されて、風見・千里は腹を立てていた。
「あとそれと、『あの女の僕共にあなたは渡しません』って胸元のに言ってた事が気になってさ」
こっちは真面目な理由だった。
「胸元の触ったらちょっとだけ熱かったんだけど……詠子ちゃん取ってくれない?」
「うん、良いよ」
朦朧となっている茉衣子はそれを聞いても何もできない。いや、聞こえすらしない。
詠子は易々と茉衣子の胸元をまさぐり、エジプト十字架を取りだした。
「こんばんは、“金の針先”さん」
『……ケッ。さっきからなんなんだよ、その呼び名は』
「“金の針先”さんは人を目覚めさせる金の針の名残だもの」
『ハン、全部お見通しって事かよ』
「名残になってしまっても、それでも綺麗だよ。あなたの魂のカタチは」
喋るエジプト十字架にも驚くことなく、詠子はにっこりと笑って言葉を交わす。
詠子にはエンブリオと人を差別する理由も、区別する理由さえも有りはしないのだ。
といっても子爵というとびきり変な者と一緒に居る一同も特に驚きはしないのだが。
「ああそっか、ロザリオだったんだ。道理でちょっと熱いと思った」
聖は茉衣子が完全に窒息しないように締め付けを緩めながら、苦笑する。
リリアン女学院のロザリオに触れた時に比べれば大した事は無いが、驚く程度の熱さは感じた。
「でも“カルンシュタイン”さんとは宗派が違うんじゃないかなあ?」
「十字架だったらどれも似たような物じゃない?」
そんなアバウトだから火傷するのだ。
「それであの女って……そのロザリオに訊けば判るかな?」
『茉衣子に聞け……いや良い、オレが話してやるよ』
茉衣子に話させるとややこしい事になる。
そう考え、エンブリオは少しだけお節介を焼いた。
『教会に居た吸血鬼の女のせいで、茉衣子の仲間が死んだんだよ。
で、オレは元々はそっちに支給された支給品だったってわけだ』
詠子は易々と茉衣子の胸元をまさぐり、エジプト十字架を取りだした。
「こんばんは、“金の針先”さん」
『……ケッ。さっきからなんなんだよ、その呼び名は』
「“金の針先”さんは人を目覚めさせる金の針の名残だもの」
『ハン、全部お見通しって事かよ』
「名残になってしまっても、それでも綺麗だよ。あなたの魂のカタチは」
喋るエジプト十字架にも驚くことなく、詠子はにっこりと笑って言葉を交わす。
詠子にはエンブリオと人を差別する理由も、区別する理由さえも有りはしないのだ。
といっても子爵というとびきり変な者と一緒に居る一同も特に驚きはしないのだが。
「ああそっか、ロザリオだったんだ。道理でちょっと熱いと思った」
聖は茉衣子が完全に窒息しないように締め付けを緩めながら、苦笑する。
リリアン女学院のロザリオに触れた時に比べれば大した事は無いが、驚く程度の熱さは感じた。
「でも“カルンシュタイン”さんとは宗派が違うんじゃないかなあ?」
「十字架だったらどれも似たような物じゃない?」
そんなアバウトだから火傷するのだ。
「それであの女って……そのロザリオに訊けば判るかな?」
『茉衣子に聞け……いや良い、オレが話してやるよ』
茉衣子に話させるとややこしい事になる。
そう考え、エンブリオは少しだけお節介を焼いた。
『教会に居た吸血鬼の女のせいで、茉衣子の仲間が死んだんだよ。
で、オレは元々はそっちに支給された支給品だったってわけだ』
茉衣子は朦朧としながらもエンブリオの言葉を聞いた。
(余計な事を……いえ、援護ですか? これは……)
結果として聖の視線は詠子の手にあるエンブリオを向いていた。
聖の紐もまた窒息はしない程度に緩んでいるし、詠子もまた動こうとしたら、判る。
今なら隙がある。
エンブリオはそんな事の為に彼女達の気を引いたわけではなかったが、結果は同じだ。
茉衣子は再び一撃を狙う。今度は聖を殺すために短剣を掴み――!
(余計な事を……いえ、援護ですか? これは……)
結果として聖の視線は詠子の手にあるエンブリオを向いていた。
聖の紐もまた窒息はしない程度に緩んでいるし、詠子もまた動こうとしたら、判る。
今なら隙がある。
エンブリオはそんな事の為に彼女達の気を引いたわけではなかったが、結果は同じだ。
茉衣子は再び一撃を狙う。今度は聖を殺すために短剣を掴み――!
「いや、流石にもう油断しないってば」
――掴んだ指ごと握られた。
万力のような力が手を締め上げる。痛みが走り、茉衣子は顔を歪めた。
『バカが……』
エンブリオの呟きが闇に溶ける。
「この短剣、血が付いてるね。そういえば服も返り血だらけじゃない。誰の?」
「……あの女の僕の血です」
「だからそのあの女ってのは誰なのさ?」
「教会に居た、美姫という女です!」
ああ、と聖は笑った。
「そっか、私の血を吸ったマリア様だ。私は僕っていうのに当てはまるのかな?
そんな自覚無いんだけどね」
「自覚が無くとも操られている事だって有るでしょう!
あのアシュラムという騎士だってそうだった! 志摩子という女だって――」
――――――。
「今、なんて言った?」
ぞくりと寒気がした。まるで吹雪の中に裸で投げ出されたような寒気。
いや、雪女に抱き締められているような寒気だ。
茉衣子は聖の顔を顧みる。
さっきまでの情欲に濁った紅い目とは違う、業火のように熱くそれなのに冷え切った目が見つめていた。
全てを見通そうとするかのように。
聖はゆっくりと、茉衣子の手ごと短剣を自らの口元に近づけると。
そっと舌を伸ばして短剣に残った血を舐め取って、その味を確かめる。
猛獣が獲物の匂いに涎を垂らすのではなく、猟犬が獲物の痕跡を嗅ぎ分けるように。
「ちょっと変な血も混じってるけど、可愛い女の子の血の味がするな。
ねえ。……この血は、誰の?」
茉衣子は直感し、感覚し、覚知し、知悉した。
(答えれば、殺される)
なのにその理性を超えた激情が沸き上がっていた。
――掴んだ指ごと握られた。
万力のような力が手を締め上げる。痛みが走り、茉衣子は顔を歪めた。
『バカが……』
エンブリオの呟きが闇に溶ける。
「この短剣、血が付いてるね。そういえば服も返り血だらけじゃない。誰の?」
「……あの女の僕の血です」
「だからそのあの女ってのは誰なのさ?」
「教会に居た、美姫という女です!」
ああ、と聖は笑った。
「そっか、私の血を吸ったマリア様だ。私は僕っていうのに当てはまるのかな?
そんな自覚無いんだけどね」
「自覚が無くとも操られている事だって有るでしょう!
あのアシュラムという騎士だってそうだった! 志摩子という女だって――」
――――――。
「今、なんて言った?」
ぞくりと寒気がした。まるで吹雪の中に裸で投げ出されたような寒気。
いや、雪女に抱き締められているような寒気だ。
茉衣子は聖の顔を顧みる。
さっきまでの情欲に濁った紅い目とは違う、業火のように熱くそれなのに冷え切った目が見つめていた。
全てを見通そうとするかのように。
聖はゆっくりと、茉衣子の手ごと短剣を自らの口元に近づけると。
そっと舌を伸ばして短剣に残った血を舐め取って、その味を確かめる。
猛獣が獲物の匂いに涎を垂らすのではなく、猟犬が獲物の痕跡を嗅ぎ分けるように。
「ちょっと変な血も混じってるけど、可愛い女の子の血の味がするな。
ねえ。……この血は、誰の?」
茉衣子は直感し、感覚し、覚知し、知悉した。
(答えれば、殺される)
なのにその理性を超えた激情が沸き上がっていた。
(志摩子はやはりあの女の僕で、そして目の前にはあの女から直接血を吸われた僕が居る。
そしてこいつは、カルンシュタインというらしいこの女は志摩子の事を大事に思っている)
あの女の僕にも大切な者が居た。そしてそれを茉衣子が殺した。
(班長はあの女の僕に殺された。何度も何度も切り刻まれ徹底的に殺された。
私はあの女の僕を殺していた。何度も何度も切り付けて、きっと今頃は死んでいる。
あの女の僕にとって大切な者を何度も何度も切り付けて徹底的に殺してやった)
今や彼女はその事に歓喜していた。
殆ど絶望の底で全てを諦めて投げ捨てていた過去が嘘のように光に満ちる。
代償は命を、即ち未来を投げ捨てる事。
迷うことさえない。
エンブリオが彼女に叫ぶ言葉も聞こえない。
(こんなに嬉しい事はありません)
だから茉衣子は未来を代価に過去を一つの達成へと変えて。
聖を見つめ返すと。
最高の満面の笑みを浮かべながら。
復讐の言葉を、告げた。
そしてこいつは、カルンシュタインというらしいこの女は志摩子の事を大事に思っている)
あの女の僕にも大切な者が居た。そしてそれを茉衣子が殺した。
(班長はあの女の僕に殺された。何度も何度も切り刻まれ徹底的に殺された。
私はあの女の僕を殺していた。何度も何度も切り付けて、きっと今頃は死んでいる。
あの女の僕にとって大切な者を何度も何度も切り付けて徹底的に殺してやった)
今や彼女はその事に歓喜していた。
殆ど絶望の底で全てを諦めて投げ捨てていた過去が嘘のように光に満ちる。
代償は命を、即ち未来を投げ捨てる事。
迷うことさえない。
エンブリオが彼女に叫ぶ言葉も聞こえない。
(こんなに嬉しい事はありません)
だから茉衣子は未来を代価に過去を一つの達成へと変えて。
聖を見つめ返すと。
最高の満面の笑みを浮かべながら。
復讐の言葉を、告げた。
「ええ、藤堂志摩子の血です。
両足を短剣で刺したら豚か蛙みたいな声を上げて無様に泣き叫んだから、
右腕も左腕も刺して放って置いたら悲鳴が続いてもうやかましくてしかたなくて、
だから喉に突きつけて黙れって言ってやったらぴたりと黙って面白いくらいでしたけど、
その内にまた耳障りな事を言いだしたから指を全部切り飛ばしてあげたらまた叫びだして、
もう無様で滑稽で可笑しいくらいにのたうち回った挙げ句に死んでいきました、ピエロみたいに」
両足を短剣で刺したら豚か蛙みたいな声を上げて無様に泣き叫んだから、
右腕も左腕も刺して放って置いたら悲鳴が続いてもうやかましくてしかたなくて、
だから喉に突きつけて黙れって言ってやったらぴたりと黙って面白いくらいでしたけど、
その内にまた耳障りな事を言いだしたから指を全部切り飛ばしてあげたらまた叫びだして、
もう無様で滑稽で可笑しいくらいにのたうち回った挙げ句に死んでいきました、ピエロみたいに」
――――――。
指が全て砕ける音は案外小気味よい音だった。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「ふうん、ほんと無様な声をあげるんだ、女の子って」
つまらなさそうに聖は茉衣子の手を離す。
転げ落ちる短剣を落とさないように掴むと、茉衣子の足が目に入った。
踏み砕いた。
「あがっ、あ、あぐあきゃああああああああああああっ」
「可愛い女の子だから優しくエスコートしてあげようと思ってたんだけどな」
聖は茉衣子のゴシックロリータ風の黒い服に手を掛けて、一息に引き裂く。
そして、引きちぎった布地を口に含んだ。
噛み締める。
じんわりと広がったのは濃密で甘い、志摩子の血の味。
全身に掛かった志摩子の返り血をたっぷりと吸い込んだドレスを口にはむ。
口腔から胸一杯に愛しい義妹の味と香りが広がっていく。
「甘い。味も、香りも……」
聖はくすりと笑う。
怒りと憎しみと怨みと悦びと苦しみと悲しみを込めて。
それから自立さえ出来なくなった茉衣子を押し倒して、唇を奪った。
「ん、んむ……!?」
舌で口腔を犯し尽くし、牙で彼女の舌を噛み裂いて、唇の味も舌の味も血の味も嫐り尽くす。
「んぐっ、ん、んー!!」
腕の下で藻掻く少女の姿が体と心を満たしてくれる。
だが、それでも。
「ふうん、ほんと無様な声をあげるんだ、女の子って」
つまらなさそうに聖は茉衣子の手を離す。
転げ落ちる短剣を落とさないように掴むと、茉衣子の足が目に入った。
踏み砕いた。
「あがっ、あ、あぐあきゃああああああああああああっ」
「可愛い女の子だから優しくエスコートしてあげようと思ってたんだけどな」
聖は茉衣子のゴシックロリータ風の黒い服に手を掛けて、一息に引き裂く。
そして、引きちぎった布地を口に含んだ。
噛み締める。
じんわりと広がったのは濃密で甘い、志摩子の血の味。
全身に掛かった志摩子の返り血をたっぷりと吸い込んだドレスを口にはむ。
口腔から胸一杯に愛しい義妹の味と香りが広がっていく。
「甘い。味も、香りも……」
聖はくすりと笑う。
怒りと憎しみと怨みと悦びと苦しみと悲しみを込めて。
それから自立さえ出来なくなった茉衣子を押し倒して、唇を奪った。
「ん、んむ……!?」
舌で口腔を犯し尽くし、牙で彼女の舌を噛み裂いて、唇の味も舌の味も血の味も嫐り尽くす。
「んぐっ、ん、んー!!」
腕の下で藻掻く少女の姿が体と心を満たしてくれる。
だが、それでも。
(ああ、足りない)
まだまだ渇きは癒えない。癒える側から怨嗟の業火が渇かしてしまう。
(これじゃ、まるで足りないじゃない)
この渇きを紛らわすのは僅かな血程度ではとても足りなかった。
「ねえ、茉衣子って言ったっけ」
だから、聖は告げた。
「茉衣子の体も肉も心も魂も血も生も死も■も■も■も――」
昏い情熱と共に。
まだまだ渇きは癒えない。癒える側から怨嗟の業火が渇かしてしまう。
(これじゃ、まるで足りないじゃない)
この渇きを紛らわすのは僅かな血程度ではとても足りなかった。
「ねえ、茉衣子って言ったっけ」
だから、聖は告げた。
「茉衣子の体も肉も心も魂も血も生も死も■も■も■も――」
昏い情熱と共に。
「ぜんぶ、犯してやる」
復讐の言葉を。
     * * *
「……あんたは、やる気なわけ?」
それを見た千里達は……少なくとも千里は、止めようとしていた。
だがその目前に、『魔女』十叶詠子が立っていた。
「ううん、私は止めないよ」
魔女は微笑む。背後から響く悲鳴を気にもせずに。
「私は止めない。だけどね」
千里はその視線が自分ではなく背後のブルーブレイカーに向いている事に気がついた。
ブルーブレイカーに魔女の言葉が贈られる。
「ただ、渡しておく物があるんだ。
これは“蒼空”さんをまた堕天させてしまうかもしれないけれど、
知らないでいるのはかわいそうだものね」
「俺に……?」
彼にはそもそもこの争いを止める気も、介入する気もなかった。
あの少女、茉衣子も危険な人物のようだ。助ける意味は無いはずだ。
やる事など、弱っている子爵と風見・千里が危なくなれば護る事しかない。
それを見た千里達は……少なくとも千里は、止めようとしていた。
だがその目前に、『魔女』十叶詠子が立っていた。
「ううん、私は止めないよ」
魔女は微笑む。背後から響く悲鳴を気にもせずに。
「私は止めない。だけどね」
千里はその視線が自分ではなく背後のブルーブレイカーに向いている事に気がついた。
ブルーブレイカーに魔女の言葉が贈られる。
「ただ、渡しておく物があるんだ。
これは“蒼空”さんをまた堕天させてしまうかもしれないけれど、
知らないでいるのはかわいそうだものね」
「俺に……?」
彼にはそもそもこの争いを止める気も、介入する気もなかった。
あの少女、茉衣子も危険な人物のようだ。助ける意味は無いはずだ。
やる事など、弱っている子爵と風見・千里が危なくなれば護る事しかない。
「そう、これをね」
『おい、何しやがる……?』
魔女はエジプト十字架を天に捧げるように投げ放った。
それは確かにブルーブレイカーの手に吸い込まれる。
(喋る十字架は奇妙だが、それ以外に何か有るのか?)
ブルーブレイカーは怪訝にその十字架を観察する。
形状は多少特殊な形状の十字架。十字の一端が長く伸びた……その先に、見つけた。
切っ先とも言うべき尖った先端に奇妙な汚れが多少付着している。
血……では無い。それとは全く別物だ。
機械的な油、機械的な液体、機械的な……血?
(これは……)
それはブルーブレイカーにとってよく知る液体だ。
ブルーブレイカーの体にも僅かなら使われている液体。
機械化歩兵が破壊された時に一部に付着しているそれに、似ていた。
(機械化歩兵、特に精密な形状の機体に多く使われる衝撃緩衝液……)
だとすれば、それは何を意味する?
何があれば、それが付着する?
この切っ先を何に突き刺せばそれが付着する?
この島において、ブルーブレイカー以外の誰に突き刺せばそれが痕となる?
「…………まさか」
『…………まさか』
ブルーブレイカーとエンブリオの声が唱和する。
魔女は哀しげに、優しげに、慈しみと悲しみを、慈悲を湛えて真相を告げた。
「“蒼空”さんは、片翼を折られてしまったんだねぇ」
『そうか、テメェしずくの……』
「いぎっ、ええええああああああきゃあああああああああがっあぎいいいいいいいい」
背後では声ともいえない悲鳴が響き続けていた。
風を裂く音が、した。
………………。
『おい、何しやがる……?』
魔女はエジプト十字架を天に捧げるように投げ放った。
それは確かにブルーブレイカーの手に吸い込まれる。
(喋る十字架は奇妙だが、それ以外に何か有るのか?)
ブルーブレイカーは怪訝にその十字架を観察する。
形状は多少特殊な形状の十字架。十字の一端が長く伸びた……その先に、見つけた。
切っ先とも言うべき尖った先端に奇妙な汚れが多少付着している。
血……では無い。それとは全く別物だ。
機械的な油、機械的な液体、機械的な……血?
(これは……)
それはブルーブレイカーにとってよく知る液体だ。
ブルーブレイカーの体にも僅かなら使われている液体。
機械化歩兵が破壊された時に一部に付着しているそれに、似ていた。
(機械化歩兵、特に精密な形状の機体に多く使われる衝撃緩衝液……)
だとすれば、それは何を意味する?
何があれば、それが付着する?
この切っ先を何に突き刺せばそれが付着する?
この島において、ブルーブレイカー以外の誰に突き刺せばそれが痕となる?
「…………まさか」
『…………まさか』
ブルーブレイカーとエンブリオの声が唱和する。
魔女は哀しげに、優しげに、慈しみと悲しみを、慈悲を湛えて真相を告げた。
「“蒼空”さんは、片翼を折られてしまったんだねぇ」
『そうか、テメェしずくの……』
「いぎっ、ええええああああああきゃあああああああああがっあぎいいいいいいいい」
背後では声ともいえない悲鳴が響き続けていた。
風を裂く音が、した。
………………。
「……ブルーブレイカー。あんたの要求は、何?」
「アレを見殺しにしろ」
それが、彼の復讐の言葉。
突きつけられた木刀は千里の動きを奪っていた。
如何に木刀とはいえ、ブルーブレイカーの出力で振るえばそれは十分な凶器と化す。
「子爵、おまえにも要求する」
【………………】
(これは、まずい…………)
子爵も、動きを奪われていた。
そもそもやせ我慢はしたが、ついさっき茉衣子に叩き込まれた蛍火のダメージは重い。
腕(?)だけで文字を綴ったのは二度目以降で、最初の一撃は直撃していたのである。
なんとか文字を綴って見せたが、正直完調するには30分は掛かるだろう。
「いあああっぎああああああああああぎぎぎっひあああああぁあぁあああぁあああはあぁっ」
凄惨な悲鳴が響きわたる中で、魔女は一人朗らかだった。
「気に病む事は無いと思うな」
微笑んで、笑みを浮かべて、静かに笑って言葉を紡ぐ。
「これは正当な復讐であり、正当な報復であり、正当な捕食だもの」
魔女は手を広げて、くるりと踊るようにその陵辱を振り返る。
「だから私は祝福するの。この惨劇を」
「あきゃあああっあっぎひきいいいいぃいぃいぃやあああああぁあぁあぁあぁあああぁ」
悲鳴は延々と夜の森に響きわたっていた。
僅か十分程度の永遠、ずっと響き続けていた。
「アレを見殺しにしろ」
それが、彼の復讐の言葉。
突きつけられた木刀は千里の動きを奪っていた。
如何に木刀とはいえ、ブルーブレイカーの出力で振るえばそれは十分な凶器と化す。
「子爵、おまえにも要求する」
【………………】
(これは、まずい…………)
子爵も、動きを奪われていた。
そもそもやせ我慢はしたが、ついさっき茉衣子に叩き込まれた蛍火のダメージは重い。
腕(?)だけで文字を綴ったのは二度目以降で、最初の一撃は直撃していたのである。
なんとか文字を綴って見せたが、正直完調するには30分は掛かるだろう。
「いあああっぎああああああああああぎぎぎっひあああああぁあぁあああぁあああはあぁっ」
凄惨な悲鳴が響きわたる中で、魔女は一人朗らかだった。
「気に病む事は無いと思うな」
微笑んで、笑みを浮かべて、静かに笑って言葉を紡ぐ。
「これは正当な復讐であり、正当な報復であり、正当な捕食だもの」
魔女は手を広げて、くるりと踊るようにその陵辱を振り返る。
「だから私は祝福するの。この惨劇を」
「あきゃあああっあっぎひきいいいいぃいぃいぃやあああああぁあぁあぁあぁあああぁ」
悲鳴は延々と夜の森に響きわたっていた。
僅か十分程度の永遠、ずっと響き続けていた。
     * * *
――怪物が悲鳴を耳にした。
(誰かが愉快で馬鹿な事をやっている)
怪物が認識したのはそれだけだった。
(つまりそこには愉快で馬鹿な奴らが居る)
怪物が理解したのはそれだけだった。
(獲物は狩る物だ)
怪物が判断したのはそれだけだった。
(待ってろ、バカな獲物共)
怪物が進路を変えた――
(誰かが愉快で馬鹿な事をやっている)
怪物が認識したのはそれだけだった。
(つまりそこには愉快で馬鹿な奴らが居る)
怪物が理解したのはそれだけだった。
(獲物は狩る物だ)
怪物が判断したのはそれだけだった。
(待ってろ、バカな獲物共)
怪物が進路を変えた――
     * * *
ブルーブレイカーは、ゆっくりと木刀を下ろした。
「………………」
もう悲鳴は響いていなかった。
茉衣子の居た場所には亡骸が残るだけだったから。
それがついさっきまで生きていた事を連想するのは難しい。
だが茉衣子が完全に息絶えたのは僅か十数秒前でしかなかった。
「まあ、私のむかつきは収まったかな」
復讐者にして捕食者は独り言つと、立ち上がった。
手に持っていた短剣と、茉衣子のデイパックから奪い取ったスタンロッドをしまい込む。
それからすぐに屈み込んで、亡骸を掴んで、拾い上げて……掲げた。
その場にいる者達全てに見せつけて晒し者にするかのように。
(こいつ……!!)
風見はそれを見て、思わず歯を噛み締めた。
千里から見ても光明寺茉衣子の死に様は自業自得だと言える。
同情の余地はまるで無い。だが。
如何なる罪人で有ったとしても、どうしようもなく哀れに思える死に様というのは有るものだ。
その亡骸は正にそれだった。
「………………」
もう悲鳴は響いていなかった。
茉衣子の居た場所には亡骸が残るだけだったから。
それがついさっきまで生きていた事を連想するのは難しい。
だが茉衣子が完全に息絶えたのは僅か十数秒前でしかなかった。
「まあ、私のむかつきは収まったかな」
復讐者にして捕食者は独り言つと、立ち上がった。
手に持っていた短剣と、茉衣子のデイパックから奪い取ったスタンロッドをしまい込む。
それからすぐに屈み込んで、亡骸を掴んで、拾い上げて……掲げた。
その場にいる者達全てに見せつけて晒し者にするかのように。
(こいつ……!!)
風見はそれを見て、思わず歯を噛み締めた。
千里から見ても光明寺茉衣子の死に様は自業自得だと言える。
同情の余地はまるで無い。だが。
如何なる罪人で有ったとしても、どうしようもなく哀れに思える死に様というのは有るものだ。
その亡骸は正にそれだった。
人として。
人類として。
そして女として。
ここまで酸鼻を覆う亡骸を見たのは、その場に居る殆どの者にとって初めてだった。
子爵に限り長い人生の中で似た光景を見た事が有ったが、結末の一場面としてはそれをも超えた。
(たった十分程度で行われた殺人が、か)
子爵はただ哀れだと思った。
「……それで、悪趣味な劇を無理矢理見せられたあたしのむかつきはどうすればいいわけ?」
「ああ、ごめんごめん。でも……」
聖は千里の背後に立つ彼を見て、更に言う。
「そっちの彼のむかつきはまだ終わってないんじゃないの?」
「………………」
「ブルーブレイカー!」
千里の非難の声の間隙に。
「もう死んでるけど、あなたも壊す?」
そう言って、聖は茉衣子の遺体を放った。
「っ!!」
千里の横を抜けてブルーブレイカーへと飛んでいく亡骸を千里は振り返り。
「――――!」
ブルーブレイカーは木刀を振り上げ。
【やめたまえ!】
樹の側面に乱れた子爵の文字が浮かび。
茉衣子の遺体はそのまま別の立木に叩きつけられた。
木刀は振り下ろされなかった。……別の理由で。
人類として。
そして女として。
ここまで酸鼻を覆う亡骸を見たのは、その場に居る殆どの者にとって初めてだった。
子爵に限り長い人生の中で似た光景を見た事が有ったが、結末の一場面としてはそれをも超えた。
(たった十分程度で行われた殺人が、か)
子爵はただ哀れだと思った。
「……それで、悪趣味な劇を無理矢理見せられたあたしのむかつきはどうすればいいわけ?」
「ああ、ごめんごめん。でも……」
聖は千里の背後に立つ彼を見て、更に言う。
「そっちの彼のむかつきはまだ終わってないんじゃないの?」
「………………」
「ブルーブレイカー!」
千里の非難の声の間隙に。
「もう死んでるけど、あなたも壊す?」
そう言って、聖は茉衣子の遺体を放った。
「っ!!」
千里の横を抜けてブルーブレイカーへと飛んでいく亡骸を千里は振り返り。
「――――!」
ブルーブレイカーは木刀を振り上げ。
【やめたまえ!】
樹の側面に乱れた子爵の文字が浮かび。
茉衣子の遺体はそのまま別の立木に叩きつけられた。
木刀は振り下ろされなかった。……別の理由で。
「むかつきは、晴れたんだけどさ」
千里はぞくりとした寒気を感じていた。
「やっぱり、穴は開いちゃうんだね」
背中に胸が当たる。押しつけられた胸がひしゃげ柔らかな感触を返す。
首筋にひんやりとした腕が巻き付いている。冷たい、ほっそりとした腕が絡みつく。
フッと、耳に優しい息が掛けられた。
「……なんのつもり?」
千里はぞくりとした寒気を感じていた。
「やっぱり、穴は開いちゃうんだね」
背中に胸が当たる。押しつけられた胸がひしゃげ柔らかな感触を返す。
首筋にひんやりとした腕が巻き付いている。冷たい、ほっそりとした腕が絡みつく。
フッと、耳に優しい息が掛けられた。
「……なんのつもり?」
「うん、ちょっと寂しいかなって思ってさ」
志摩子を奪われた事に対する憎しみは全て纏めて吐き出した。
残ったのは志摩子を失った事による深い、悲しみ。
胸に開いてしまった虚ろな穴だ。
「だからあたしで自分を慰めようって腹?」
「……そういう事」
BBが動く。敵対者に向け木刀を構える。
子爵の文字も踊る。
【それは認められない】
だが、千里は目でそれらを制した。
(要らないわ)
この身勝手な女に対してそんな物は要りはしない。要るのは一つだ。
「子爵から聞いた所だと……聖って言うんだっけ、アンタ」
「うん、そうだよ」
「じゃあ聖。一つ言っておくわ」
風見・千里は大きく息を吸うと。首を振った。
身につけていたクロスのシルバーペンダントがくるりと回り聖の顔面に直撃。
「あちゃあっ!?」
そして、千里は言った。
「甘えんな!」
言葉と同時に熟練の裏肘が聖の脇腹を抉る。
「あたしはそんなに安くない!」
振り解いた僅かな隙間に振り返り滑り込ませた膝蹴りが聖の股間に直撃。
「ついでにそういう趣味も、無い!」
トドメに渾身の正拳突きが聖の顔面に炸裂した。
志摩子を奪われた事に対する憎しみは全て纏めて吐き出した。
残ったのは志摩子を失った事による深い、悲しみ。
胸に開いてしまった虚ろな穴だ。
「だからあたしで自分を慰めようって腹?」
「……そういう事」
BBが動く。敵対者に向け木刀を構える。
子爵の文字も踊る。
【それは認められない】
だが、千里は目でそれらを制した。
(要らないわ)
この身勝手な女に対してそんな物は要りはしない。要るのは一つだ。
「子爵から聞いた所だと……聖って言うんだっけ、アンタ」
「うん、そうだよ」
「じゃあ聖。一つ言っておくわ」
風見・千里は大きく息を吸うと。首を振った。
身につけていたクロスのシルバーペンダントがくるりと回り聖の顔面に直撃。
「あちゃあっ!?」
そして、千里は言った。
「甘えんな!」
言葉と同時に熟練の裏肘が聖の脇腹を抉る。
「あたしはそんなに安くない!」
振り解いた僅かな隙間に振り返り滑り込ませた膝蹴りが聖の股間に直撃。
「ついでにそういう趣味も、無い!」
トドメに渾身の正拳突きが聖の顔面に炸裂した。
「…………き、効いた」
聖はよろよろと後ずさる。
その鼻からは鼻血が流れ始め、肘の直撃を受けた脇腹は大層痛んでいる。
幸い女性のおかげで股蹴りの被害は少なかったが、男性なら急所攻撃だった。
激しく容赦がない。
「最初の十字架以外は対覚用必殺コンビネーションよ。アンタには勿体ない位ね」
聖はよろよろと後ずさる。
その鼻からは鼻血が流れ始め、肘の直撃を受けた脇腹は大層痛んでいる。
幸い女性のおかげで股蹴りの被害は少なかったが、男性なら急所攻撃だった。
激しく容赦がない。
「最初の十字架以外は対覚用必殺コンビネーションよ。アンタには勿体ない位ね」
「……その覚ってのとどういう交際してるのか、ちょっと気になるんだけど」
「普通の交際」
凄く嘘臭かった。
「あと、一つって前置いて三つ言わなかった?」
「気のせいよ」
大嘘だった。
「………………」
「まだ、何か?」
「ううん、別に。ただ……」
聖は少し黙り。すぐに言った。
「迷惑かけたわね。それと……ありがと」
「………………」
千里は何も言わなかった。
そもそも彼女を“殴ってやった”のだって勢いだ。
千里は聖の起こした過剰すぎる惨劇を許すつもりはない。
ただ、孤独を訴えてきた彼女が見ていられなくなっただけで。
……狡いと思った。
「普通の交際」
凄く嘘臭かった。
「あと、一つって前置いて三つ言わなかった?」
「気のせいよ」
大嘘だった。
「………………」
「まだ、何か?」
「ううん、別に。ただ……」
聖は少し黙り。すぐに言った。
「迷惑かけたわね。それと……ありがと」
「………………」
千里は何も言わなかった。
そもそも彼女を“殴ってやった”のだって勢いだ。
千里は聖の起こした過剰すぎる惨劇を許すつもりはない。
ただ、孤独を訴えてきた彼女が見ていられなくなっただけで。
……狡いと思った。
「それじゃ行くよ、詠子ちゃん」
聖は振り向いて声をかける。
「何処に行くのかな? “カルンシュタイン”さん」
「志摩子の遺体を捜しに」
「そっか。良いよ、付き合ってあげる」
魔女はくすりと笑う。
「魔女はかつては悪役に誑かされて、今は吸血鬼に囚われの身だもの」
まるで怖れない様子でそう唄う。そして。
「ああそうだ、一つ聞いておこうっと。
“カルンシュタイン”さんとは関係がないわたしの用事」
そう言って、呼んだ。彼女の魂のカタチで。
「――ねえ、“鬼嫁”さん」
「………………」
沈黙。
聖は振り向いて声をかける。
「何処に行くのかな? “カルンシュタイン”さん」
「志摩子の遺体を捜しに」
「そっか。良いよ、付き合ってあげる」
魔女はくすりと笑う。
「魔女はかつては悪役に誑かされて、今は吸血鬼に囚われの身だもの」
まるで怖れない様子でそう唄う。そして。
「ああそうだ、一つ聞いておこうっと。
“カルンシュタイン”さんとは関係がないわたしの用事」
そう言って、呼んだ。彼女の魂のカタチで。
「――ねえ、“鬼嫁”さん」
「………………」
沈黙。
「…………ねえ。あたしの魂のカタチって、本気でそんな形なの?」
「うん、そうだよ。お嫁さんが鬼だなんて心強いよね。とても頼もしいと思うな」
心底から善意で言っている辺りタチが悪かった。
(これが悪意有ったりエロ意あったりすれば対処法は色々あるのに。
殴るとかどつくとか殴るとか叩くとか殴るとかこづくとか殴るとかしばくとか)
千里の物騒な思考を知る由も無く、魔女は真面目に話を続ける。
「もう子爵さんから聞いているかもしれないけれど、“法典”君は前進を選んだ。
“欠けて”しまっても尚、前に向かって進撃する事を選んだ」
囁くように、魔女は言葉を伝え始める。
それは何処か不吉な響きを持っていた。
「……何が言いたいの?」
「“鬼嫁”さんはまだ“欠けて”いない。つがいの翼もきっとまだ生きてるよ。今はまだ」
いや、何処かではない。それは。
「でもね。“鬼嫁”さんとそのつがいは、きっと共には死ねないよ。
あなたが失うか、あなたが失わせるか。そのどちらかが待っている」
それは何処から何処までも不吉な言葉だった。
「その時“鬼嫁”さんとその夫は、何か変わってしまうかな?
鬼であってもお嫁さんは、つがいを無くしても変わらずに居られるのかな?
“法典”君のように傷を受け入れて前に進むかな?
“カルンシュタイン”さんのように膿を吐き出す事で変わらない事を選ぶかな?
それとも“蒼空”さんのように……ううん、これはわたしが言う事じゃないか」
「……未来を見たみたいな事を言うわね」
「わたしにそんな力は無いよ。これはただの魔女の不確かな予言の言葉。
当たるかもしれないし当たらないかもしれない、それだけのものだもの」
「………………」
それでも魔女の言葉は浸み入る。脳裏に響き奥底まで浸透し足の先までどす黒い血が流れるように。
それを待って、魔女は微笑んで手を振った。
「それだけ。じゃあね、ばいばい」
魔女は吸血鬼と共に歩き出した。
闇の奥に。
「うん、そうだよ。お嫁さんが鬼だなんて心強いよね。とても頼もしいと思うな」
心底から善意で言っている辺りタチが悪かった。
(これが悪意有ったりエロ意あったりすれば対処法は色々あるのに。
殴るとかどつくとか殴るとか叩くとか殴るとかこづくとか殴るとかしばくとか)
千里の物騒な思考を知る由も無く、魔女は真面目に話を続ける。
「もう子爵さんから聞いているかもしれないけれど、“法典”君は前進を選んだ。
“欠けて”しまっても尚、前に向かって進撃する事を選んだ」
囁くように、魔女は言葉を伝え始める。
それは何処か不吉な響きを持っていた。
「……何が言いたいの?」
「“鬼嫁”さんはまだ“欠けて”いない。つがいの翼もきっとまだ生きてるよ。今はまだ」
いや、何処かではない。それは。
「でもね。“鬼嫁”さんとそのつがいは、きっと共には死ねないよ。
あなたが失うか、あなたが失わせるか。そのどちらかが待っている」
それは何処から何処までも不吉な言葉だった。
「その時“鬼嫁”さんとその夫は、何か変わってしまうかな?
鬼であってもお嫁さんは、つがいを無くしても変わらずに居られるのかな?
“法典”君のように傷を受け入れて前に進むかな?
“カルンシュタイン”さんのように膿を吐き出す事で変わらない事を選ぶかな?
それとも“蒼空”さんのように……ううん、これはわたしが言う事じゃないか」
「……未来を見たみたいな事を言うわね」
「わたしにそんな力は無いよ。これはただの魔女の不確かな予言の言葉。
当たるかもしれないし当たらないかもしれない、それだけのものだもの」
「………………」
それでも魔女の言葉は浸み入る。脳裏に響き奥底まで浸透し足の先までどす黒い血が流れるように。
それを待って、魔女は微笑んで手を振った。
「それだけ。じゃあね、ばいばい」
魔女は吸血鬼と共に歩き出した。
闇の奥に。
     * * *
結局、彼女達は完全に、完璧に場を振り回して去って行った。
自らに必要な事を全て行い、必要な物を全て持っていったのだ。
聖は自らの憎悪を思う存分吐き出した。
そしてその後に心に開いてしまった大穴を、千里の拳で穴埋めした。
身勝手にも千里を利用して……甘えたのだ。見も知らぬ相手に。
千里には自分を殺すほどの理由が無いことを知っていて。
おかげで詠子は餓えた聖にも欠けた聖にも襲われる事は無くなった。
聖の血の渇きは癒されて、憎しみは吐き出され、悲しみもひとまずは誤魔化したのだから。
自らに必要な事を全て行い、必要な物を全て持っていったのだ。
聖は自らの憎悪を思う存分吐き出した。
そしてその後に心に開いてしまった大穴を、千里の拳で穴埋めした。
身勝手にも千里を利用して……甘えたのだ。見も知らぬ相手に。
千里には自分を殺すほどの理由が無いことを知っていて。
おかげで詠子は餓えた聖にも欠けた聖にも襲われる事は無くなった。
聖の血の渇きは癒されて、憎しみは吐き出され、悲しみもひとまずは誤魔化したのだから。
「“カルンシュタイン”さんは残酷だねぇ」
魔女はまるで敬意を払うかのように言う。
「ん? さっきの事?」
吸血鬼は何事もなかったかのように聞き返す。
それに対し魔女は微笑みと共に答えた。
「違うよ。そういう所だよ」
「うーん、詠子ちゃんの言うことはほんとよく判んないな」
そう言って佐藤聖は……笑った。
ついさっき自らの手で引き起こした惨劇も、茉衣子にぶつけられた憎悪も忘れて。
「さあ、志摩子の遺体は何処にあるのかな。やっぱりマンションかな?
血を吸うかお墓を作るかは……どっちもしてあげればいいか」
藤堂志摩子を失った悲しみは、抑えているだけだ。
だけど志摩子を殺した光明寺茉衣子への憎しみは、早くも忘れつつあった。
それを見て詠子も笑う。その完成された魂のカタチの美しさに。
「何も変わらないで居られる事こそが“カルンシュタイン”さんの一番大きな変化なんだね」
聖は何も変わらなかった。吸血鬼になっても。誰かを激しく憎んでも。
相手からぶつけられた憎悪と相手に向かってぶつけた憎悪を、すぐに忘れて流してしまった。
「そんな事より早く行こう。詠子ちゃん」
それこそが佐藤聖が光明寺茉衣子に向けた、最も残酷な復讐の言葉だった。
魔女はまるで敬意を払うかのように言う。
「ん? さっきの事?」
吸血鬼は何事もなかったかのように聞き返す。
それに対し魔女は微笑みと共に答えた。
「違うよ。そういう所だよ」
「うーん、詠子ちゃんの言うことはほんとよく判んないな」
そう言って佐藤聖は……笑った。
ついさっき自らの手で引き起こした惨劇も、茉衣子にぶつけられた憎悪も忘れて。
「さあ、志摩子の遺体は何処にあるのかな。やっぱりマンションかな?
血を吸うかお墓を作るかは……どっちもしてあげればいいか」
藤堂志摩子を失った悲しみは、抑えているだけだ。
だけど志摩子を殺した光明寺茉衣子への憎しみは、早くも忘れつつあった。
それを見て詠子も笑う。その完成された魂のカタチの美しさに。
「何も変わらないで居られる事こそが“カルンシュタイン”さんの一番大きな変化なんだね」
聖は何も変わらなかった。吸血鬼になっても。誰かを激しく憎んでも。
相手からぶつけられた憎悪と相手に向かってぶつけた憎悪を、すぐに忘れて流してしまった。
「そんな事より早く行こう。詠子ちゃん」
それこそが佐藤聖が光明寺茉衣子に向けた、最も残酷な復讐の言葉だった。
     * * *
「………………」
千里は闇の中に去り行く二人の姿を見送った。
彼女達と戦うには理由が無くて、説得するにも通じる論拠が無かった。
だけど。
「ブルーブレイカー」
振り返ったそこには、何も変わらぬ様子で……表情の見えない機械化歩兵が立っていた。
彼には、一つ言わなければならない。
「どういうつもり?」
「どういう?」
「さっきの事よ!」
千里はブルーブレイカーの首もとを掴み寄せて怒鳴った。
そのまま押し込んだ腕と気迫はブルーブレイカーを一歩後退させ、背後の木に背中が当たる。
「あんな胸糞悪い見せ物を見物するのが趣味なわけ?」
「……そうらしいな」
ブルーブレイカーは平然と答えた。
「この……!」
「だがおまえもそういう面は有るのではないか? 魔女の言った通りの事が起きれば」
小さく子爵の水音がした。
「EDの仮説は間違っていた。しずくはこの島に居た。そして殺された。
……そうなんだろう? 金の針先」
『オレの名はエンブリオだ。その呼び名でも間違ってるとはいえねぇけどな。
それとその通りだよ。しずくとは短い間だが、一緒に居たのさ』
「………………」
子爵の飛沫の音が少し大きくなるだけの静寂。
そう、EDの仮説はBBを落ち着かせる為の虚説だった。
「俺の片翼は失われた」
子爵が弱々しく木を這い上がる音がするだけ。
BBは喪失を噛み締め。
千里は彼を責める言葉を失った。
千里は闇の中に去り行く二人の姿を見送った。
彼女達と戦うには理由が無くて、説得するにも通じる論拠が無かった。
だけど。
「ブルーブレイカー」
振り返ったそこには、何も変わらぬ様子で……表情の見えない機械化歩兵が立っていた。
彼には、一つ言わなければならない。
「どういうつもり?」
「どういう?」
「さっきの事よ!」
千里はブルーブレイカーの首もとを掴み寄せて怒鳴った。
そのまま押し込んだ腕と気迫はブルーブレイカーを一歩後退させ、背後の木に背中が当たる。
「あんな胸糞悪い見せ物を見物するのが趣味なわけ?」
「……そうらしいな」
ブルーブレイカーは平然と答えた。
「この……!」
「だがおまえもそういう面は有るのではないか? 魔女の言った通りの事が起きれば」
小さく子爵の水音がした。
「EDの仮説は間違っていた。しずくはこの島に居た。そして殺された。
……そうなんだろう? 金の針先」
『オレの名はエンブリオだ。その呼び名でも間違ってるとはいえねぇけどな。
それとその通りだよ。しずくとは短い間だが、一緒に居たのさ』
「………………」
子爵の飛沫の音が少し大きくなるだけの静寂。
そう、EDの仮説はBBを落ち着かせる為の虚説だった。
「俺の片翼は失われた」
子爵が弱々しく木を這い上がる音がするだけ。
BBは喪失を噛み締め。
千里は彼を責める言葉を失った。
場の雰囲気を変えようとするかのようにエンブリオが軽い口調で喋り出す。
『最初にオレを持った奴は死んで、受け継いだ茉衣子は何人も巻き添えにして破滅しちまった。
まったく、大した疫病神っぷりだと思わねえか?』
子爵が流れ落ちて形になる音が……
『なあ。ちょっくらオレを壊して――』
【気を付けろ!】
「!?」
自ら浮き上がる力が出ず、子爵は木に登って張り付く事で警告の文字を作りだした。
その僅かなロスが決定的な差を作り出す。
「イーディー、いや、シーディーだな。そうか。つまり俺は、ようやく見つけたって事だ」
ぞっとするほど近くから男の声がした。
振り返ると、周囲に警戒を払っていれば絶対に気づけた筈の距離に、怪物が立っていた。
その背後の足下には少女の亡骸がそっと横たえられている。
雨に打たれ青白く変色し背中には死斑の浮き出ている死体が。
「そしておまえらは運が悪い。俺を敵に回してしまったんだからな」
風見・千里はブルーブレイカーに詰め寄り二人揃って態勢を崩してしまっている。
子爵は先程受けた攻撃のダメージが思いの外大きいのかまともに動けない。
そして怪物は、彼にとっては一息の間合いに立っていた。
(ヤバイ……!)
赤い青年、クレア・スタンフィールドは口を歪め劫火のような笑みを浮かべて、告げた。
『最初にオレを持った奴は死んで、受け継いだ茉衣子は何人も巻き添えにして破滅しちまった。
まったく、大した疫病神っぷりだと思わねえか?』
子爵が流れ落ちて形になる音が……
『なあ。ちょっくらオレを壊して――』
【気を付けろ!】
「!?」
自ら浮き上がる力が出ず、子爵は木に登って張り付く事で警告の文字を作りだした。
その僅かなロスが決定的な差を作り出す。
「イーディー、いや、シーディーだな。そうか。つまり俺は、ようやく見つけたって事だ」
ぞっとするほど近くから男の声がした。
振り返ると、周囲に警戒を払っていれば絶対に気づけた筈の距離に、怪物が立っていた。
その背後の足下には少女の亡骸がそっと横たえられている。
雨に打たれ青白く変色し背中には死斑の浮き出ている死体が。
「そしておまえらは運が悪い。俺を敵に回してしまったんだからな」
風見・千里はブルーブレイカーに詰め寄り二人揃って態勢を崩してしまっている。
子爵は先程受けた攻撃のダメージが思いの外大きいのかまともに動けない。
そして怪物は、彼にとっては一息の間合いに立っていた。
(ヤバイ……!)
赤い青年、クレア・スタンフィールドは口を歪め劫火のような笑みを浮かべて、告げた。
「さあ、狩りの始まりだ」
復讐の言葉を。
【077 光明寺茉衣子 死亡】
【残り 48人】
【残り 48人】
【B-6/森/1日目/23:50】
【灯台組(出張中)】
【ゲルハルト・フォン・バルシュタイン(子爵)】
[状態]:やや疲労/グロッキー状態(物にもたれて文字を綴るのと移動しかできない)
[装備]:なし
[道具]:なし(荷物はD-8の宿の隣の家に放置)
[思考]:クレアに対応したい
アメリアの仲間達に彼女の最期を伝え、形見の品を渡す/祐巳のことが気になる
/盟友を護衛する/同盟を結成してこの『ゲーム』を潰す
[備考]:祐巳がアメリアを殺したことに気づいていません。
会ったことがない盟友候補者たちをあまり信じてはいません。
【灯台組(出張中)】
【ゲルハルト・フォン・バルシュタイン(子爵)】
[状態]:やや疲労/グロッキー状態(物にもたれて文字を綴るのと移動しかできない)
[装備]:なし
[道具]:なし(荷物はD-8の宿の隣の家に放置)
[思考]:クレアに対応したい
アメリアの仲間達に彼女の最期を伝え、形見の品を渡す/祐巳のことが気になる
/盟友を護衛する/同盟を結成してこの『ゲーム』を潰す
[備考]:祐巳がアメリアを殺したことに気づいていません。
会ったことがない盟友候補者たちをあまり信じてはいません。
【風見・千里】
[状態]:風邪/右足に切り傷/あちこちに打撲/表面上は問題ないが精神的に傷がある恐れあり
[装備]:懐中電灯/グロック19(残弾0・予備マガジンなし)/カプセル(ポケットに四錠)
/頑丈な腕時計/クロスのペンダント
[道具]:懐中電灯以外の支給品一式/缶詰四個/ロープ/救急箱/空のタッパー/弾薬セット
[思考]:クレアに対応
早く体調を回復させたい/BB・ED・子爵と協力/出雲・佐山・千絵の捜索
[備考]:濡れた服は、脱いでしぼってから再び着ています。
EDや子爵を敵だとは思っていませんが、仲間だとも思っていません。
[状態]:風邪/右足に切り傷/あちこちに打撲/表面上は問題ないが精神的に傷がある恐れあり
[装備]:懐中電灯/グロック19(残弾0・予備マガジンなし)/カプセル(ポケットに四錠)
/頑丈な腕時計/クロスのペンダント
[道具]:懐中電灯以外の支給品一式/缶詰四個/ロープ/救急箱/空のタッパー/弾薬セット
[思考]:クレアに対応
早く体調を回復させたい/BB・ED・子爵と協力/出雲・佐山・千絵の捜索
[備考]:濡れた服は、脱いでしぼってから再び着ています。
EDや子爵を敵だとは思っていませんが、仲間だとも思っていません。
【蒼い殺戮者 】
[状態]:精神的にやや不安定/少々の弾痕はあるが、今のところ身体機能に異常はない
[装備]:梳牙 、エンブリオ
[道具]:なし(地図、名簿は記録装置にデータ保存)
[思考]:????
/風見・ED・子爵と協力?/火乃香・パイフウの捜索?
/脱出のために必要な行動は全て行う心積もり?
[状態]:精神的にやや不安定/少々の弾痕はあるが、今のところ身体機能に異常はない
[装備]:
[道具]:なし(地図、名簿は記録装置にデータ保存)
[思考]:????
/風見・ED・子爵と協力?/火乃香・パイフウの捜索?
/脱出のために必要な行動は全て行う心積もり?
【B-6/森/1日目/23:50】
【クレア・スタンフィールド】
[状態]:健康。激しい怒り
[装備]:大型ハンティングナイフx2
[道具]:デイパック(支給品一式・パン6食分・水2000ml)、コミクロンが残したメモ
[思考]:この世界のすべてを破壊し尽くす/目の前の奴らをCDの仲間と誤認
“ホノカ”と“CD”に対する復讐(似た名称は誤認する可能性あり)
シャーネの遺体が朽ちる前に元の世界に帰る。
[備考]:コミクロンが残したメモを、シャーネが書いたものと考えています。
シャーネの遺体は足下に置いています。
【クレア・スタンフィールド】
[状態]:健康。激しい怒り
[装備]:大型ハンティングナイフx2
[道具]:デイパック(支給品一式・パン6食分・水2000ml)、コミクロンが残したメモ
[思考]:この世界のすべてを破壊し尽くす/目の前の奴らをCDの仲間と誤認
“ホノカ”と“CD”に対する復讐(似た名称は誤認する可能性あり)
シャーネの遺体が朽ちる前に元の世界に帰る。
[備考]:コミクロンが残したメモを、シャーネが書いたものと考えています。
シャーネの遺体は足下に置いています。
【B-6/森/1日目/23:50】
【吸血鬼と魔女】
【佐藤聖】
[状態]:吸血鬼(身体能力大幅向上)/満腹/良いパンチ貰った
[装備]:銀の短剣/剃刀/スタンロッド
[道具]:デイパック(支給品一式、シズの血1000ml)
[思考]:志摩子の遺体を捜す。
身体能力が大幅に向上した事に気づき、多少強気になっている。
詠子は連れ歩いて保存食兼色々、他に美味しそうな血にありつければそちら優先
詠子には様々な欲望を抱いているが、だからこそ壊さないように慎重に。
祐巳(カーラ)の事が気になるが、状況によってはしばらくそのままでも良いと考えている。
[備考]:詠子に暗示をかけられた為、詠子の血を吸うと従えられる危険有り(一応、吸血鬼感染は起きる)。
詠子の右手と自身の左手を数mの革紐で繋いでいます。半ば雰囲気
【吸血鬼と魔女】
【佐藤聖】
[状態]:吸血鬼(身体能力大幅向上)/満腹/良いパンチ貰った
[装備]:銀の短剣/剃刀/スタンロッド
[道具]:デイパック(支給品一式、シズの血1000ml)
[思考]:志摩子の遺体を捜す。
身体能力が大幅に向上した事に気づき、多少強気になっている。
詠子は連れ歩いて保存食兼色々、他に美味しそうな血にありつければそちら優先
詠子には様々な欲望を抱いているが、だからこそ壊さないように慎重に。
祐巳(カーラ)の事が気になるが、状況によってはしばらくそのままでも良いと考えている。
[備考]:詠子に暗示をかけられた為、詠子の血を吸うと従えられる危険有り(一応、吸血鬼感染は起きる)。
詠子の右手と自身の左手を数mの革紐で繋いでいます。半ば雰囲気
【十叶詠子】
[状態]:やや体調不良、感染症の疑いあり。
[装備]:『物語』を記した幾枚かの紙片
[道具]:新デイパック(パン5食分、水1000ml、魔女の短剣 )
[思考]:聖が満腹状態でしばらく危険も無い為、同行する。
[備考]:右手と聖の左手を数mの革紐で繋がれています。
[状態]:やや体調不良、感染症の疑いあり。
[装備]:『物語』を記した幾枚かの紙片
[道具]:新デイパック(パン5食分、水1000ml、
[思考]:聖が満腹状態でしばらく危険も無い為、同行する。
[備考]:右手と聖の左手を数mの革紐で繋がれています。
- 2007/02/10 修正スレ290
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| 第540話 | クレア | 第573話 | 
| 第541話 | 子爵 | 第573話 | 
| 第540話 | 佐藤聖 | - | 
| 第541話 | 風見・千里 | 第573話 | 
| 第537話 | 光明寺茉衣子 | - | 
