バルザミーナちゃんの日常

この身体になってから睡眠なんて必要ないわけで、時間が余って仕方が無い。

まあ仮に睡眠時間が必要だったとしても、結局やることは特にないわけでどうしようもなく暇。

じゃあ護身術でも学ぼうかしら、とも思ったけれど、一朝一夕のへなちょこ武術で勝てる相手ならそもそも、ぷいっとラッパを吹けば解決するわけで。

目覚めてからはとりあえず本を読んで過ごしてきたけれど、流石にそろそろ気分を変えたくなってきた。

お姫様ちゃんから貰った羽ペンがふいに目に留まったので、じゃあ何か書いてみようかしらとこうして文字を綴ってみている。

さて何を書いたものか、日記みたいになるのだろうか。

そんなわけで少しお付き合い願いましょう、なんてね。

まあ誰かに見せようってわけでもないけれど。




そうだなあ、まずはエリー…エリュスタのことから書いてみようか。

彼女には色々とお世話になった…いや、現在進行形でお世話になってるというべきか。

神官、それもセンティアンな彼女にとって忌むべき存在でしかないはずの穢れの塊。

そんな私をこうして見逃してくれている。

もちろん少しくらいは私から収集できる知識ってやつもあるんだろうけれど、彼女が神様から嫌われないかちょっと心配になる。

暇つぶしに本を読めているのも彼女のおかげ。

バジリスクちゃん…ラフルルにもってきてもらった本を開いていきなり驚いた。

何この文字、そもそも本当に文字なのこれ?って感じ。

ずいぶん永いこと眠ってたみたいなわけで、そりゃ言語も変わっているのも当然なんだろうけれど。

この話題が思わぬ縁をもたらす要因の一つになったんだけど…それは後回しにしようかな。

思わぬところで躓いた私は、とりあえずエリーに相談することにした。

初めて会った時点で彼女の聡明さの鱗片は窺えていたので、彼女なら上手く今の言語を教えてくれるだろうと思ったから。

いざ相談してみると、待っていたのは地道なお勉強だったけれど。

どの道時間は十分すぎるくらいにあるわけで、確かに急ぐ必要は全くなかったからありがたい気もした。

ひょっとすると、私に合った形式であるという判断に基づいた彼女なりの優しさだったのかもしれない。

この件をきっかけに、彼女からは今の時代に関するあれこれを教えてもらうようになった。

こうして振り返ってみると、お世話になりすぎじゃなかろうかと改めて思う。

何かしら恩返しってやつをできるといいんだけれど、私は何かを壊してばっかり。

何もかも手の中から零れていって、返せるものが残らない。

だからせめて、ここに感謝の言葉を残そうと思う。

…なんだか日記というか遺言みたいになってしまった。

せっかくなんだからもう少し明るい内容にしたいんだけど。



次はそうだな…ファリスのことを書いてみよう。

初めて会ったのは確か…ファリスがエリーの護衛としてついてきた時だったと思う。

第一印象は騎士見習いって感じで、女の子にモテそうだなあとぼんやり思った。

褒め言葉として受け取るのかわからなかったから本人に言ったことはないけれど。

あの子には私の時代の言葉は通じないみたいで、あの頃の私も同じく、今の言葉の読み書きはある程度できても会話となると難しかった。

エリーに通訳をお願いしてちょっと会話をする、初めはそんな関係。

エリーの通訳と読み書きに慣れてきたおかげか、たどたどしくはあるけれど、だんだんファリスと会話ができるようになってきた。

きっと発音も文法も滅茶苦茶だっただろうし、ファリスには余計な苦労をかけてしまったかもしれない。

…今はいくらかマシになっているといいんだけど。

会話ができるようになるにつれ、ファリス一人で遊びにきてくれることも多くなってきた。

マトリちゃんと出会ったのもファリスがきっかけだったはず。

ファリスは普段鍛錬ばっかりしてるらしい。

私も運動不足が気になってきていたし、せっかくなので一緒にやってみることにした。

彼女は槍を使うみたいで、とりあえず素振り用の槍を借りてみた。

借りてみてこれまたびっくり、何あれ、重たすぎないかいって感じ。

私より小柄(気にしているかもしれないし本人に言ったことはないけれど)な身体のどこにあれを振り回す力があるのか不思議で仕方ない。

けっきょく振り回すどころか持ち上げることもできず、腕立て伏せから始めることにした。

この身体に筋肉はつくのだろうか、太る気配は今のところないけれど。

せっかくなら綺麗でいたい、乙女心はあるのです。

誰かに見せる予定はないけどさ。



では次はマトリちゃんと彼女のお姫様について。

あのふたりと関わるようになったきっかけは…まあ私がここに書くような話ではないだろう。

マトリちゃんの印象はおませさん、って感じで、隙あらば私に美辞麗句を投げかけてくる。

下心があるってわけでもないみたいで悪い気はしないけれど、お姫様が目に見えて機嫌を損ねるので気が休まらない。

お姫様のほうはびっくり、何あれ、見た目が良すぎないかいって感じ。

彼女の"同族"をずっと昔に見たことがあった気がするけれど、それに比べても明らかに顔がいいと思う。

ひょんなことからあのふたりはちょいちょいお菓子を持って遊びにくるようになった。

この身体は果物や野菜といった生ものを食べることはできないけれど、どうやら焼き菓子等は食べられるらしい。

食事が必要かと言われるとそういうわけではないけれど、小腹が空いていたという感覚はあるんだと思い出した。

お姫様とは数奇な運命というかなんというか、なにやらある意味似たような境遇にあるらしかった。

それからお互いのことを話したり調べたりするようになって文通なんてしちゃったり。

今の時代通話のピアスってものがあるけれど、私たちには手紙のほうがしっくりきたのかもしれない。

今の時代の言葉ほんと意味分かんないわ、って話で盛り上がった相手も彼女だ。

それにしてもあのふたり、とっととお互い素直になればいいのにね。



そろそろ日記みたいなことを書こうかな。

今日はマリスちゃんとカツブシが遊びにきた。

マリスちゃんもちょいちょい遊びにくる小さな女の子だ。

ナイトメアと呼ばれる種族で、生まれながら穢れを持ってるらしくてちょっと親近感。

まあ私のは後天的だからちょっと違うけど。

雪が積もっていたので雪だるまを作って遊んだ。

私が体を作って、マリスちゃんは頭。

一人だけじゃ寂しそうな気がして、急遽もう一人追加生産。

冷え切ったマリスちゃんの手を、私は温めることはできない。



その後珍しくドレイクさんがやってきた。

仲のいいバジリスクちゃんが行方不明らしく、ここに来てないか一応確認しにきたらしい。

なんだかちょっと嫌な予感がしたけれど、彼女のことなら心配いらないだろう。

私はバジリスクちゃんの代わりになることはできないけれど、せめて祈るくらいは許して欲しい。

神様に嫌われた私の祈りはどこへ行くんだろう。

まあ、心配いらないよね、グリム。


完全に想像で書いたので皆様のキャラクターが崩壊しているかもしれません。
コネ持ってるキャラ中心のつもり。おばあちゃんとはどう絡んでるのかわかんなかった。許して。
どうでもいいんですがファリスって魔法文明語話せないんですね。びっくりした。
最終更新:2021年01月27日 00:41