ステラ「…こんにちは」
ベル「…あなたは?…というかそもそもここは?」
ステラ「えっと、あたしはステラ。…そしてここはあたしたちのアジト」
ベル「…?ああ、確かあの夜、何者かに襲われて…」
ステラ「…ごめんなさい、やったのはあたしたち
三眼の蛇のだれか」
ベル「…!…なぜあなたのような少女があの組織に?」
ステラ「その…わかんない…ここでそだったから…」
ベル「…そうですか、それで何かご用ですか?」
ステラ「あの…あたしがおせわ役にえらばれたから…あいさつしようと思って…」
ベル「…そうですか」
ステラ「ご、ごめんね…お姉さんをとじこめたりなんかして…」
ベル「…ベルです」
ステラ「…?」
ベル「ベルフィエルっていうんです、私の名前」
ステラ「…そっか、よろしくね、ベルさん」
ベル「…ふふっ、よろしく、ですか」
ステラ「わわっ、ごめんなさい…よろしくなんてしたくないよね…」
ベル「…先程からあなたが謝ることは何一つないでしょう、よろしくお願いしますね、ステラさん」
ステラ「あの…ベルさん、これ」
ベル「…?食事の時間は済んだはずでは?」
ステラ「その…きのうベルさんおなか空いたって言ってたから…あたしの残りでよければ…」
ベル「…ちゃんと食べなきゃ大きくなれませんよ?」
ステラ「お、おなかいっぱいだっただけだもん!」
(お腹のなる音)
ベル「ほら、やっぱりお腹空いてるんじゃないですか」
ステラ「で…でも」
ベル「捕虜に食事を与えた、なんて知られればステラさんが叱られてしまうでしょう」
ベル「第一あなたからパンを頂いたりしたらザイア様に私も叱られてしまいます」
ベル「"弱き者の盾となれ"です。ステラさんは弱くないかもしれませんが、子供を護るのは大人として当然ですから」
ステラ「…ザイア様?」
ベル「ええ、私が信仰している神様ですよ、こう見えて神官なんです」
ステラ「で、でもベルさんだって今よわってるってことでしょ?"よわきもののたてとなれ"だよ!」パンを差し出す
ベル「そう来ますか…いいからあなたが食べてください、大人だから栄養は蓄えているんです」
ベル「その素晴らしい志だけでもきっとザイア様には届いていますから」
ステラ「へー、ベルさんは海をこえて遠くから来たの?そうぞうもできないや」
ベル「…まあ逃げてきただけですけどね」
ステラ「そっかー、ヒューイにのったらそんな遠くでもいけるかなあ」
ベル「ヒューイ?」
ステラ「うん、あたしのおともだち。ペガサスなんだ」
ベル「ペガサスですか、空を自由に飛べるなんて素敵ですよね」
ベル「…私の翼ではただ堕ちていくことしかできませんから」
ステラ「うん、全身で風をかんじるの。そうだ、ベルさんもいっしょにのろ…」
ベル「…」
ステラ「…ご、ごめん、あたしたちのせいでこんなことになってるのに…」
ベル「…ここでの生活は辛くないですか?ステラさん」
ステラ「辛くなんてないよ、父さんたちはやさしいし。ただ…」
ベル「ただ?」
ステラ「みんながわるいことをしてるのはわかってるの。それがいや。それをどうにもできないあたしがいや」
ベル「ステラさん…」
ステラ(ベルさんが日に日によわってる気がする…いったいどうすれば…)
ベル「…ふふっ、あはは」
ステラ「ベルさん!?どうしたの!?」
ベル「きっとこれは天罰なんです。逃げて辿り着いたこの場所で、結局私はまた逃げ出した」
ステラ「その…なにがあったの?」
ベル「…とある人からプロポーズされたんです、仲間だと思っていた人から」
ベル「だけどその場で返事ができず逃げ出してしまったんです、ひどいですよね」
ベル「そもそも好意には薄々気づいていたはずなんです。なのにきっと気のせいだって、あなたは違うはずですよねって」
ベル「…本当にひどいですよね、最低です」
ステラ「…ベルさんは本当はどう思ったの?いやだったの?」
ベル「…答えは出てたんですよ、断ろうと思えば断れた、だけど断ろうとは思わなかった」
ベル「…逃げてきた結果このザマです、彼女が私のことを忘れてくれればいいのですが」
ステラ「…だめだよ、だめだよそんなの、ちゃんといわないと…」
ベル「ステラさん…なんで泣いてるんですか」
ステラ「大切なことはちゃんとつたえないとだめだよ、つたえられるうちにつたえないと!」
ベル「…でもあれからもう何日も経ちましたし…もう手遅れですよ」
ステラ「…決めた、あたしがベルさんをここから出すよ」
ベル「ちょ、ちょっと待ってください、そんなことしたらあなたが…」
ステラ「"おくびょうな心にてっついを"でしょ?なにかしないと、みんなをとめることなんてできないもん」
ステラ「だからここから…ベルさんをたすけることからはじめるの」
――駄天使のいない日に続く
ベルさんがまるで神官みたいだあ
最終更新:2022年05月09日 03:00