私のお偽姉様

…ごめんなさいお姉様、今日もお役に立てなくって…。

…え?そんなことない…ですか?

…いえ、役立たずの私にできるのは前に立つことくらいですから…。

えへへ、お姉様は本当にお優しいんですね…こんな場所でもお姉様だけは信じられるって思っちゃいます。

え?そういえばどうしてお姉様と呼ぶのか…ですか?

…もしかして嫌でしたかお姉様?…あっ、ごめんなさい、また言っちゃいました…。

…実は私、お姉ちゃんがいたんです。

と言っても物心がついた頃には二人だっただけなので、血のつながりがあるかはわかりませんが。

私と5つくらいしか歳が変わらないのに、なんの役にもたたない私を育ててくれたんです。

決して裕福な生活ではありませんでしたけど、それでも幸せだったと私は思います。

お姉ちゃんは強くて気高くて、私にとってのヒーローでした。

…だけどあの日、お姉ちゃんの言いつけを守らず一人で出かけた私は…。

はい、人さらいにあったんです、珍しい話ではありませんよね。

…お姉ちゃん、きっと心配してるんだろうな…。

そんなこと…ないかな…バカな妹のことなんてっ…きっとっ…忘れてっ…。

…すみません、泣いてもどうにもならない…って…ぐすっ、わかってるんですけどっ…。

(ハンカチを差し出される)

…ありがとうございます…やっぱりお姉様は優しいですね…。

ごめんなさい、勝手にお姉ちゃんの面影を重ねているだけなんです。迷惑…ですよね。

…え?いいんですか?ありがとうございます!(ルコリスに抱きつく)

あっ、ごめんなさい…嬉しくってつい…。

でもやっぱり私にとってのお姉ちゃんはお姉ちゃんだけですし、私にとってのお姉様もお姉様だけです。

はい、これがお姉様をお姉様と呼ぶ理由です。

姉さんとか姉上…とかでもよかったかもしれませんが、やっぱりお姉様はお姉様って感じがします。

どこか高貴な感じがしますし。

…私、いつかここから出て、お姉ちゃんにもう1度会いたいんです。

役に立たない私ですけれど…いつか一緒にここから出ましょうね、お姉様。

――まあ、全部嘘なんですけど。
最終更新:2022年08月21日 01:07