魔導師様、尋問のお時間です

「目が覚めたか、蛮族」

「状況が理解できないか? 己の失態を忘れていられるとは、随分と羨ましい脳ミソをしている」

「……ふん。ようやく思い出したか」

「そうだ。お前はこの国に潜り込み、仲間の蛮族どもに情報を流していた」

「騎士団の警備を欺き、蛮族の群れを街の中に引き入れて、市民を虐殺しようとしていたな」

「愚かにも貴様はその連絡網を察知され、俺に捕えられたという訳だ」

「言っておくが、誤魔化す意味はない。貴様が群れに送った情報は解読している」

「いかにも蛮族が作りそうな程度の低い暗号だったからな。お陰で楽ができた」

「……“だからどうした”か。そうだな」

「貴様は──もちろん蛮族にしては、だが──少しは頭が回るようだ」

「細心の注意を払ったんだろう。群れの居場所に関する情報は、巧妙に隠蔽されていた」

「このままでは貴様だけを殺して終わりになってしまう。面倒なことに、貴様に問い質さなければならなくなった訳だ」

「……“拷問には屈しない”だと? 愚か者め。貴様は何か勘違いをしているな」

「この状況にあって、貴様の意思など用をなさない」

「魔導師を目の前にして、無防備でいることの危険を想像したことはないのか?」

「……理解したようだな。だが、もう手遅れだ。既に発動の準備は終えている」

『操、第十四階位の封。精神、記憶、流失、消失──収憶』

『スティール・メモリー』


超越級魔導師のちょっといいとこ見てみたい、という気持ちで書いた。
SSにする都合上アルマがお喋りになったけど、実際には「貴様の記憶を抜き、仲間ごと殺す。抵抗は無意味だ」くらいの発言量になると思う。
最終更新:2023年01月28日 22:09