ラクス=クラインという人物
ラクスの正義にあるように、ラクス=クラインという人物は統一連合において非常に重要な人物であるといえます。
しかしながら、彼女には為政者として一つの欠陥を持っています。それは「人を信じることが出来ない」という非常に個人的な問題です。
しかしながら、彼女には為政者として一つの欠陥を持っています。それは「人を信じることが出来ない」という非常に個人的な問題です。
この項では、この問題を紡ぎだすラクス=クラインという人物の悲劇を紐解いていきます。
ラクス=クラインの過去の矛盾
ラクス=クラインは、プラントにおける議員として大きな力を有していたシーゲル=クラインの娘として生まれました。シーゲル=クラインはプラントの中でも穏健派に属する議員で、ナチュラルとの共生を望む人物でした。
ラクスもシーゲルの意思を受け継ぎ、ナチュラルとの共生を望むようになります。しかし、彼女のとった行動はプラント・連合双方に対するテロ行為でした。
なぜこのような一見矛盾したかのように見える行動を彼女はとってしまったのでしょうか?
そこにはラクス=クラインという人物の「個」の喪失が深く起因しています。
ラクス=クラインという「個」
ラクスの行動を紐解くにあたり、重要な要素が二つあります。
- シーゲル=クラインの娘としての生活
- キラ=ヤマトとの出会い
まず、シーゲル=クラインの娘としてのラクス。
シーゲル=クラインの娘としてラクスは「平和の歌姫」としての役割を与えられました。これは10代前半という非常に多感な時期に役割を与えられたという事実です。
このことが意味することは何でしょうか?
彼女は自らの「個」が確立される前に、「平和の歌姫」という「公」が与えられたのです。つまり、彼女は彼女が彼女であるという確信を持つ前に「公のラクス=クライン」という、作り物の「個」を与えられてしまったことを意味します。
もう一つの要素。キラ=ヤマトとの出会い。
これはキラ=ヤマト自身がラクスと同じ問題を抱えていることにポイントがあります。
キラ=ヤマトはその類まれなる戦闘能力から、彼の個性を周囲に認められないということをムウ=ラ=フラガに指摘されていました。そして、その指摘は皮肉にも、それ以降のキラ=ヤマトの行動を的確に示したものとなりました。
彼はDestinyの時代に多くの軍事行動をとり、自らの存在意義を「戦闘行為」に特化させていきます。
「個」の喪失したもの同志は、お互いの「個」を補完することもなく、ただただ他者への理解という人間関係における最も重要な要素を欠落させていったのです。
それが、彼女の中で「共生」と「テロ」という相反する要素を結び付けてしまったのです。
ラクス=クラインの悲劇
またも、彼女は「個」と向き合うことが出来ない立場になってしまいます。個人として話し合いを持てる友人で合ったはずのカガリ=ユラ=アスハはすでに為政者として「個」を語ることは出来ず、一番そばにいるキラ=ヤマトは「個」を喪失しており、アスラン=ザラに至っては、一定の距離を保ちながら、まったく近づいてくることはしませんでした。
「個」を失ったラクスは、決定的なものを失ってしまいます。
「他者への信頼」です。
自らの「個」を信じることの出来ない彼女にどうやって他者の「個」を信じることが出来たでしょうか?
そんな彼女の周りには、彼女の言うことをそのまま受け入れる人物しか集まらなくなっていきます。
彼女はラクス=クライン個人として「他者への信頼」と「他者からの信頼」の二つを失ってしまったのです。
Reviveにおけるラクスの行く末
ラクス=クラインの失った「個」「他者への信頼」「他者からの信頼」。
それらを失ったラクスはどのようにして救われるのでしょうか?
それはソラの正義における「ソラの希望」です。
ソラの希望がラクスの「個」を表に出し、包み込んでいく。
この物語はそこへ向かっていくのです。