「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

ドーベルマンと呼ばれた男

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ピースガーディアン隊ホト小隊と臨時の指揮官となる男とのファーストコンタクトは男の辛辣な一言から始まった。

「最強の『正義の味方』ねぇ。お前らのボス…キラ・ヤマトか、奴の不殺は随分と評判がいいようだが、あんなものはただの自己満足だ。分かるか?コックピットだけを撃ち抜かれなかったせいでそのまま宇宙を漂流する恐怖が。抵抗する事もできずゆっくりと死ぬんだぜ。いや、その前に狂うか?」

その一言は、キラを尊敬するレイラには何よりも許せない言葉だった。 だが、今はこの男が自分達の『指揮官』なのだ。 何故、こんな統一連合の少しくらい偉い士官に自分達、『ピースガーディアン』が馬鹿にされなければならないのか。 そんなプライドも手伝って、何を考えているのかよくわからないウノはまだしも、シラヒはレイラ以上にこの男に対して反感を持ったようだが。

「…何なのよ、何なのよあの男!ムカツク!!」

レイラは形の良い眉をしかめ、顔を真っ赤にしながら歩いていく。
その横で何故か申し訳なさそうに宥めるウノ。

「まぁまぁ…そういわずに。アノ人、あれで相当のやり手らしいし。」

急に辺りを見回し、不思議そうな顔をするレイラ。

「そういえば、シラヒは?」

「さっきまで一緒にいたのに。どこに行ったんだろ?」


その頃、シラヒは訓練室にて会議室でレイラを怒らせた男、ドーベルマンと向き合っていた。始めは見学だけで部外者故に口出しをするつもりはなかったが、凄惨とも言える訓練の内容についに口を挟んでしまったのだ。

「こんな事をいつもやってるのかアンタは!このままじゃ死んじまうだろうが!」

喧嘩腰とも取れるシラヒの態度に対し、ドーベルマンは口元で不敵な笑みを浮かべると、そのまま脱水症状で虚ろな目をしている 若い隊員の首根っこを掴み、そのままバケツに入った水を掛けた。

「な、何を!!もう止めろ!!」

自分も人並み以上に辛い訓練を耐えてきた。 だから、訓練の重要さは理解できる。 だが、これは誰が見てもやり過ぎだ。こんなものは訓練ではなくもはや拷問だ。シラヒはそう思い

「こんな事が上層部に知られたら只では済まないんだぞ!」

これ以上やるなら自分が上層部に報告する、と暗に仄めかす。しかしドーベルマンは全く意に介さないという様子で

「知られたら…どうだって言うんだい坊や?」

シラヒに顔を近づけると、ドーベルマンはそのまま 彼の顔面にタバコの煙を吹かした。

「うわっ!な、何をする!?」

ドーベルマンは若い隊員が起き上がるのを確認するとそのまま 顎で指図をした。かすかに頷いた隊員は、倒れそうな体を引きずりながら、MSシミュレーターのコックピットへ入っていく。

「馬鹿野郎!!死にたいのかよお前!」

思わず制止しようとするシラヒの手を、ドーベルマンが遮る。

「ふん、これだからお坊ちゃんは…。 いいか、こいつ等はな。金も無く、地位も無い。おまけに家族もいねぇ。 だが、それでも生きていくしかねぇんだよ。 お前らお坊ちゃんどもは、帰る家もあれば遊ぶ銭もあるんだろうさ。だがな、俺らには元々そんなモンありゃしねえんだ。だからそれ手に入れるには強くなるしかねぇだろうが。 この程度の訓練ですら生き残れないようじゃ、戦争に行っても結果は同じなんだよ。」

コックピットルームから、撃墜を意味する警告音が鳴り響く。計器の反応からしてパイロットは気絶してしまったようだ。

「…ゲームオーバー。今のうちに死んどいた方がコイツらの為なんだ。今なら『何回でも』死ねるんだからよ。」

シラヒはこの男の言う言葉が納得できなかった。だが、否定する気にもなぜかなれなかった。



夕方、ライヒの執務室。一台の大型スクリーンに写るニュース。 そこでは、統一連合の主席、カガリ・ユラ・アスハが紛争の被災者への慰問を自ら行っている様子が伝えられていた。

「これも、あんたの”やり方”か? 慰問に演説か…好きだねぇ。綺麗過ぎて反吐が出る。」

ドーベルマンはタバコをふかしながら不服そうにライヒに向かい問いかけた。

「別に私も好きでやっているわけではないよ。 正しいか、そうでないかなど私は興味が無い。 重要なのは、必要な処置を必要な時にする事だ。」

並みの男なら震え上がるような声色のドーベルマンを前にしても顔色一つ変えず言ってのけるライヒに、白けたような顔つきでタバコの吸殻を握りつぶすと、一枚の書類を突きつけた。

「地球連合政府が誇る正義の味方『ピースガーディアン』。この前の会議で何人か見かけたが駄目駄目だな。MSの操縦は確かにマシなようだが…なんであんな甘っちょろいのが親衛隊なんだか、世も末だな。」

ライヒは机の上のコーヒーカップを取ると一度、香りを嗅ぎ、 ゆっくりと書類を手に取りながら飲み始めた。

「仕方あるまい。彼らは自分達が選ばれた人間だと思っている。 上昇を怠る人間が出て来ても、それは予測の範囲内だ。 そうやってエリートと平民の格差が出来る。今に始まった事ではない事だ。…だが君の顔を見る限りではそれだけでもない様だが?」

ドーベルマンはライヒの言葉を聞くなり、ニヤりと笑うと
1枚の写真を差し出した。

「そんな腑抜けどもの中でも少しくらいは骨のありそうな奴がいてな、この3人組だ。何とか3人で一人前ってところだが、な」

ライヒはドーベルマンの報告に満足そうな笑みを浮かべると、再びTVの方へと向き直った。同じく、彼と共にTVへと目線を移したドーベルマンは画面に映る綺麗に化粧をし、上等なスーツを纏うカガリが泥まみれの戦災孤児を抱擁するシーンを見て悪態をついた。

「お優しい事で。だが泥を喰った事の無い人間が泥の味を…泥を喰わなきゃ生きてこれなかった人間の気持ちなんぞ分かる事は一生ないだろうがな…」

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