○アバン
CE78年2月。地球を真下に望む大気圏上空で、激しい戦闘が行われていた。プラントで反乱を起こした第二艦隊とムゥ大将率いる第一・第三艦隊の戦闘だ。しかし多勢はすでに決していた。
第二艦隊は半数に及ぶ艦艇を撃沈、戦闘不能に追い込まれ、MS隊も多くを失なった。
そんな中、シホ=ハーネフーンスの乗るイグとそれに率いられたザク・グフの小隊が、雲霞のごとく襲い来る統一連合軍のMS隊を相手に奮戦していた。
かろうじて戦線を支えていたその時、金色のMSがシホの前に立ちはだかる。ムゥの乗機「黄昏」だった。
激しい戦いを繰り広げる両機。しかし黄昏のガンパレル(orドラグーン)の一撃が、イグの頭部を破壊した。戦闘不能に陥るシホ機。残った味方、ユーコ・ゲーベルの機体に支えられ撤退する。
CE78年2月。地球を真下に望む大気圏上空で、激しい戦闘が行われていた。プラントで反乱を起こした第二艦隊とムゥ大将率いる第一・第三艦隊の戦闘だ。しかし多勢はすでに決していた。
第二艦隊は半数に及ぶ艦艇を撃沈、戦闘不能に追い込まれ、MS隊も多くを失なった。
そんな中、シホ=ハーネフーンスの乗るイグとそれに率いられたザク・グフの小隊が、雲霞のごとく襲い来る統一連合軍のMS隊を相手に奮戦していた。
かろうじて戦線を支えていたその時、金色のMSがシホの前に立ちはだかる。ムゥの乗機「黄昏」だった。
激しい戦いを繰り広げる両機。しかし黄昏のガンパレル(orドラグーン)の一撃が、イグの頭部を破壊した。戦闘不能に陥るシホ機。残った味方、ユーコ・ゲーベルの機体に支えられ撤退する。
この反乱に加わった多くの兵が元ザフト兵であり、第二艦隊旗艦、艦橋では反乱の首謀者である艦隊司令もそうだった。彼は覚悟を決めていた。当初の予定では奇襲で第三艦隊撃破後、地上で「ローゼンクロイツ」が蜂起。陸宙の同時反乱に政府が混乱している間隙を突き、オーブに降下部隊で強襲。一気に連合政府を制圧する電撃作戦を展開する手はずだった。
しかし予想に反して連合宇宙軍大将ムゥ=ラ=フラガは先手を打っていた。機先を制して軌道上に迎撃体制を整えていたのだ。
しかし予想に反して連合宇宙軍大将ムゥ=ラ=フラガは先手を打っていた。機先を制して軌道上に迎撃体制を整えていたのだ。
彼は共に反乱を起こした部下のラドル=ヨアヒムに告げる。このままでは全員犬死だ。残った部隊を引き連れて、オーブでは無くモスクワに下り、地上の「ローゼンクロイツ」反乱軍と合流しろと、と。ラドルは上官の意図と決意を悟り別れを告げる。
残った艦隊はラドル率いる残存部隊が地球に降下していくのを援護するために、統一連合艦隊に特攻をかける。
「ザフトのために!」
残った艦隊はラドル率いる残存部隊が地球に降下していくのを援護するために、統一連合艦隊に特攻をかける。
「ザフトのために!」
それが司令の残した最後の言葉だった。その後、地上に降りたラドルやシホ、ユーコら残存部隊はレジスタンスとして活動を開始する。
○Aパート
オフィスで荒れるドーベル。副官にも手がつけられない。ドーベルは焦っていた。度重なる敗退に東ユーラシア軍はもう誰も協力しようとしない。表立ってこそ言われないが、あれこれ言い訳をつけては非協力的態度に出る。サボタージュされているのは明らかだった。
このままでは自分は更迭されるだろう。治安警察本部に増援を頼もうにも、生半可な戦力で勝てる相手ではない。それ以前にこれまでの失態から、増援どころか更迭命令が下されるだろう。東ユーラシア軍にも治安警察本部にも頼らず、リヴァイブを決定的に上回る戦力を探し出さねばならない。
ドーベルは無精ひげとコーヒーとタバコにまみれながら、リヴァイブとの戦闘データや統一連合軍の膨大な資料を部下と共に漁った。何日も不眠不休で取り掛かる中、彼はある資料を探し当てる。
ヒルダ以下ドム三人組。前大戦の活躍はもちろん、最新鋭機ドムトルーパーを操り、レジスタンス討伐では数々の武勲を挙げている歴戦の勇士。また三人はラクスの熱狂的な信者であり、自らこそが親衛隊を自認していたという。
しかしその役目も今はPGにとって代わられている。新参者に役目を奪われ、ラクスのもとより遠ざけられた彼らの心中はどうだろうか?
ドーベルはニヤリと自信に満ちた笑みを浮かべた。
オフィスで荒れるドーベル。副官にも手がつけられない。ドーベルは焦っていた。度重なる敗退に東ユーラシア軍はもう誰も協力しようとしない。表立ってこそ言われないが、あれこれ言い訳をつけては非協力的態度に出る。サボタージュされているのは明らかだった。
このままでは自分は更迭されるだろう。治安警察本部に増援を頼もうにも、生半可な戦力で勝てる相手ではない。それ以前にこれまでの失態から、増援どころか更迭命令が下されるだろう。東ユーラシア軍にも治安警察本部にも頼らず、リヴァイブを決定的に上回る戦力を探し出さねばならない。
ドーベルは無精ひげとコーヒーとタバコにまみれながら、リヴァイブとの戦闘データや統一連合軍の膨大な資料を部下と共に漁った。何日も不眠不休で取り掛かる中、彼はある資料を探し当てる。
ヒルダ以下ドム三人組。前大戦の活躍はもちろん、最新鋭機ドムトルーパーを操り、レジスタンス討伐では数々の武勲を挙げている歴戦の勇士。また三人はラクスの熱狂的な信者であり、自らこそが親衛隊を自認していたという。
しかしその役目も今はPGにとって代わられている。新参者に役目を奪われ、ラクスのもとより遠ざけられた彼らの心中はどうだろうか?
ドーベルはニヤリと自信に満ちた笑みを浮かべた。
その頃、西ユーラシアと東ユーラシアの国境をまたぐ山間部。うっそうと森林地帯。
無数に連なる背の高い木々に囲まれたその中に、トレーラーの数倍は体躯する陸上艦艇(ギャロップぐらいの大きさ)があった。ZAFTや連合で使われていた大形地上戦艦よりは、ずっと小型だが。その周囲には大小何台かのトレーラーやトラックがあった。そのブリッジではラドルを中心にシホなど主なメンバーが話し合っている。90日革命の敗北から生き残りをまとめ、今日まで潜伏していたのだ。しかし最近は軍や治安警察の追跡も厳しく、このままではジリ貧で捕まるのは時間の問題だった。そこで東ユーラシア軍を打ち倒し、勢力の拡大が著しいコーカサス州のリヴァイブを頼れないか、という案が出る。
TV代わりに使っているブリッジのモニタでは、首都オロファトで行われているPGの閲兵式のニュースを映していた。
無数に連なる背の高い木々に囲まれたその中に、トレーラーの数倍は体躯する陸上艦艇(ギャロップぐらいの大きさ)があった。ZAFTや連合で使われていた大形地上戦艦よりは、ずっと小型だが。その周囲には大小何台かのトレーラーやトラックがあった。そのブリッジではラドルを中心にシホなど主なメンバーが話し合っている。90日革命の敗北から生き残りをまとめ、今日まで潜伏していたのだ。しかし最近は軍や治安警察の追跡も厳しく、このままではジリ貧で捕まるのは時間の問題だった。そこで東ユーラシア軍を打ち倒し、勢力の拡大が著しいコーカサス州のリヴァイブを頼れないか、という案が出る。
TV代わりに使っているブリッジのモニタでは、首都オロファトで行われているPGの閲兵式のニュースを映していた。
夕刻、軍の基地食堂。夜のニュースでも流れるそれを苦々しく見つめている三人がいた。ヒルダ達である。本来ならあそこにいるのは自分たちなのに、見知らぬ若造達がラクスに親しげに声をかけられている。三人は嫉妬していた。そんな時、たまたまウノ達PG三人組が食堂に入ってくる。閲兵式の予定からこの基地に立ち寄っていたのだ。PG三人組の一人に因縁をつけるドム三人組の一人。衝突、喧嘩が起きる。騒然となる軍食堂。
その騒ぎを止めたのは、基地司令のドム三人への呼び出しだった。執務室に呼びつけた司令は三人に告げた。東ユーラシア連邦コーカサス州ガルナハンに出向している治安警察のドーベルから、三人を名指しで援軍として呼びたいという内容の申し入れがあったと。本来なら門前払いする所だが、内容が内容なので三人に確認を取りたい、と。イマイチよく理解できない三人だったが、倒すべき敵の名を聞いた瞬間、理解した。敵は式典を狙ったリヴァイブ。これを倒せば自分達をPG以上の存在だと世界に知らしめる事が出来る。ラクスのそばに戻るのも夢ではないし、これを貸しにして治安警察側から斡旋させる手もある。これがドーベルの狙いなのだ。ラクスを餌に三人を呼びつける。
基地司令にしてもPGや治安警察の影に隠れがちな軍の存在感をアピールする絶好のチャンスだと考えていた。式典を襲撃したリヴァイブを治安警察の代わりに討ち果たせば今後、軍は治安警察に対して優位に立てる。自分の出世コースも開けるだろう。
司令やドーベルの下心は分かっていても、ドム三人に断る理由は無かった。これは彼らにとってもチャンスなのだから。
申し出を受ける三人。司令は脂ぎった笑みを浮かべながら、すぐに治安警察と交渉する、と言った。
数日後、ドム三人の部隊はガルナハンに向けて出動した。
その騒ぎを止めたのは、基地司令のドム三人への呼び出しだった。執務室に呼びつけた司令は三人に告げた。東ユーラシア連邦コーカサス州ガルナハンに出向している治安警察のドーベルから、三人を名指しで援軍として呼びたいという内容の申し入れがあったと。本来なら門前払いする所だが、内容が内容なので三人に確認を取りたい、と。イマイチよく理解できない三人だったが、倒すべき敵の名を聞いた瞬間、理解した。敵は式典を狙ったリヴァイブ。これを倒せば自分達をPG以上の存在だと世界に知らしめる事が出来る。ラクスのそばに戻るのも夢ではないし、これを貸しにして治安警察側から斡旋させる手もある。これがドーベルの狙いなのだ。ラクスを餌に三人を呼びつける。
基地司令にしてもPGや治安警察の影に隠れがちな軍の存在感をアピールする絶好のチャンスだと考えていた。式典を襲撃したリヴァイブを治安警察の代わりに討ち果たせば今後、軍は治安警察に対して優位に立てる。自分の出世コースも開けるだろう。
司令やドーベルの下心は分かっていても、ドム三人に断る理由は無かった。これは彼らにとってもチャンスなのだから。
申し出を受ける三人。司令は脂ぎった笑みを浮かべながら、すぐに治安警察と交渉する、と言った。
数日後、ドム三人の部隊はガルナハンに向けて出動した。
○Bパート
このところ戦闘もなく、リヴァイブ基地は落ち着いた様子だった。そんな中、メンバーたちの間で囁かれているのは、ソラがもうすぐオーブに帰るという話題だった。我が身のように喜ぶ者、残念がる者、中には厄介者がいなくなるとホッとする者もいたが、おおむね彼女が無事帰れることを歓迎していた。
その頃、食堂では少尉とシゲト、ソラがジャガイモの皮むきをして、コニールが大なべと格闘していた。夕食の仕込みだ。
シゲトはジャガイモの皮むきが下手だったが(少尉曰く、皮じゃなくて実まで剥いてる)、ソラにコツを教えてもらって大分上手くなっていた。少尉が上手くなったシゲトを誉める一方、ソラにポツリと謝る。「巻き込んですまなかった」と。不器用だが真摯な一言。シゲトはソラが帰ることに残念がるが、コニールに諌められる。「無茶言うんじゃない」と。重くなった場を取り成すように、コニールはソラに鍋の味見をしてもらう。十分ダシが出ている。「うん、いい感じですよ」ソラが笑顔でOKを出す。少尉がコニールの料理を「ちゃんと食えるものにしてくれよ」と茶化すが、ソラがちょっとおどけて答える。「大丈夫ですよ。私がみっちり鍛えましたから」コニールも笑ってそれに同意する「そういうこと。後で吠えヅラかかないでよ(笑)」辺りにたちまち笑いが溢れる。
ふとソラは周りを見回す。使い慣れた包丁やまな板。壁には自分が書いたレシピや料理のコツが書いた紙が何枚も貼り付けてある。いくつかはここの定番メニューになった。そして誘拐されたとはいえ、自分の事を気遣い優しく受け入れてくれたリヴァイブのメンバーや他の人々。
いつのまにかリヴァイブの中で自分の居場所が出来ていた事に気づく。そしてそれがもうすぐ無くなる事も。
短い間だったが楽しい事、悲しい事いろんな経験をした。どこかソラは一抹の寂しさを感じずにはいられなかった。
このところ戦闘もなく、リヴァイブ基地は落ち着いた様子だった。そんな中、メンバーたちの間で囁かれているのは、ソラがもうすぐオーブに帰るという話題だった。我が身のように喜ぶ者、残念がる者、中には厄介者がいなくなるとホッとする者もいたが、おおむね彼女が無事帰れることを歓迎していた。
その頃、食堂では少尉とシゲト、ソラがジャガイモの皮むきをして、コニールが大なべと格闘していた。夕食の仕込みだ。
シゲトはジャガイモの皮むきが下手だったが(少尉曰く、皮じゃなくて実まで剥いてる)、ソラにコツを教えてもらって大分上手くなっていた。少尉が上手くなったシゲトを誉める一方、ソラにポツリと謝る。「巻き込んですまなかった」と。不器用だが真摯な一言。シゲトはソラが帰ることに残念がるが、コニールに諌められる。「無茶言うんじゃない」と。重くなった場を取り成すように、コニールはソラに鍋の味見をしてもらう。十分ダシが出ている。「うん、いい感じですよ」ソラが笑顔でOKを出す。少尉がコニールの料理を「ちゃんと食えるものにしてくれよ」と茶化すが、ソラがちょっとおどけて答える。「大丈夫ですよ。私がみっちり鍛えましたから」コニールも笑ってそれに同意する「そういうこと。後で吠えヅラかかないでよ(笑)」辺りにたちまち笑いが溢れる。
ふとソラは周りを見回す。使い慣れた包丁やまな板。壁には自分が書いたレシピや料理のコツが書いた紙が何枚も貼り付けてある。いくつかはここの定番メニューになった。そして誘拐されたとはいえ、自分の事を気遣い優しく受け入れてくれたリヴァイブのメンバーや他の人々。
いつのまにかリヴァイブの中で自分の居場所が出来ていた事に気づく。そしてそれがもうすぐ無くなる事も。
短い間だったが楽しい事、悲しい事いろんな経験をした。どこかソラは一抹の寂しさを感じずにはいられなかった。
ガルナハンの東ユーラシア軍基地にヒルダ達が着任した。彼女達の上司である基地司令が治安警察に話を通してくれたのだ。申し出を出された以上、治安警察としても断れるわけにはいかない。ドーベル、ヒルダ達、基地司令ら三者の思惑が結実した瞬間だった。今までの戦闘データなどから、リヴァイブ攻略法を練るドーベルとヒルダ達。敵にチームプレイを取らせず、エース機ダストを潰すこと。それが結論だった。彼らはそのための作戦を決めた。
MS格納庫ではシン、AIレイ、サイがダストのコックピット周りの調整をしていた。他の機体は整備中で動けるのはこの機体だけだ。この三人の間でもソラの事が話題になる。シンはサイに言う。「アイツはここにいるべきじゃないんだ。何も知らずオーブで一生幸せに暮らす。それでいいんだ」その言葉はどこか無理やり納得させようとしているように見えた。その時、警報が鳴った。村を治安警察が襲っているという報告が入ったのだ。すぐさまシンはフライトパック装備のダストで出撃していった。
MS格納庫ではシン、AIレイ、サイがダストのコックピット周りの調整をしていた。他の機体は整備中で動けるのはこの機体だけだ。この三人の間でもソラの事が話題になる。シンはサイに言う。「アイツはここにいるべきじゃないんだ。何も知らずオーブで一生幸せに暮らす。それでいいんだ」その言葉はどこか無理やり納得させようとしているように見えた。その時、警報が鳴った。村を治安警察が襲っているという報告が入ったのだ。すぐさまシンはフライトパック装備のダストで出撃していった。
治安警察に襲撃された村は、レジスタンスとも何者とも関係のないよくある平和な小さな村だった。ところが突然、治安警察がテロ協力容疑だと称して押し入ってきたのだ。家々が荒らされ、女子どもも次々と検挙されていく。けが人も出ている。警察という肩書きがなければ、野武士や山賊の襲撃と代わらない様だった。その時、村を包囲するPAの一機が突然、爆発した。ダストのライフル攻撃だった。しかし治安警察はほとんど応戦せず、撤退してしまう。村人は喜んでいたが、シンとレイは何か腑に落ちなかった。その時、レーダーが新たな機影を察知した。その数三機。敵はヒルダ達が操る最新鋭機、ドムクルセーダーだった。
ここは遮蔽物のない完全な平野だ。地の利は明らかに敵にあった。ゲリラ戦が出来ない地形におびき出し、機体の性能とチームプレイで叩き潰す。村を襲ったのもリヴァイブが数々の寒村・貧村を支援している一種の民兵である事を見抜き、おびき出す餌として使ったのだ。これがドーベルとヒルダ達の作戦だった。
シンとAIレイは罠にかかった事を悟った。
ここは遮蔽物のない完全な平野だ。地の利は明らかに敵にあった。ゲリラ戦が出来ない地形におびき出し、機体の性能とチームプレイで叩き潰す。村を襲ったのもリヴァイブが数々の寒村・貧村を支援している一種の民兵である事を見抜き、おびき出す餌として使ったのだ。これがドーベルとヒルダ達の作戦だった。
シンとAIレイは罠にかかった事を悟った。