アメノミハシラのシャトル発着場に、一人の少年が立っていた。
黒髪、黒い上下の服と全身が黒ずくめだの風体だが、特徴的なのはその目の色と、右の顎から頬にかけて縦に走った傷跡。
まるで暗い炎を宿したかのような赤い色である。
その服の色とあいまって死神を思わせなくでもない。
周りでシャトルの発進準備をしている男達も、暗い陰鬱な雰囲気が不気味なのか、決して誰も近寄ろうとはしなかった。
黒髪、黒い上下の服と全身が黒ずくめだの風体だが、特徴的なのはその目の色と、右の顎から頬にかけて縦に走った傷跡。
まるで暗い炎を宿したかのような赤い色である。
その服の色とあいまって死神を思わせなくでもない。
周りでシャトルの発進準備をしている男達も、暗い陰鬱な雰囲気が不気味なのか、決して誰も近寄ろうとはしなかった。
しかし世の中には何処にでも例外がある。
ここにある例外は美しい女性の形をしていたようだが。
その背の高い美しい女性を先頭とした一団は、迷うことなく少年に向かって歩みよっていく。
もっとも彼女が死神なんてものを恐れるとも思えないが。
むしろ死神こそ我が道を避けて通れとばかりに、威風堂々と歩むその女性はロンド=ミナ=サハク。
かつてオーブの影の軍神とも呼ばれた女性であった。
ここにある例外は美しい女性の形をしていたようだが。
その背の高い美しい女性を先頭とした一団は、迷うことなく少年に向かって歩みよっていく。
もっとも彼女が死神なんてものを恐れるとも思えないが。
むしろ死神こそ我が道を避けて通れとばかりに、威風堂々と歩むその女性はロンド=ミナ=サハク。
かつてオーブの影の軍神とも呼ばれた女性であった。
宇宙ステーション、アメノミハシラ宇宙港。
地球へ向かうシャトルの出発時間が迫っていた。
その発着待合ロビーの片隅で、少年はじっと考えていた。
これから行う事になるであろう事が成功するのかどうかを。
地球へ向かうシャトルの出発時間が迫っていた。
その発着待合ロビーの片隅で、少年はじっと考えていた。
これから行う事になるであろう事が成功するのかどうかを。
成功の可能性はひたすらに低い。
失敗すれば…………だが、そこまで考えて気がついた。
失敗しても仲間のもとに行くだけなのだから、成功しようが失敗しようが自分にとっては大差がない。
どうせ自分は生きていながら死んでいるのだからと。
失敗すれば…………だが、そこまで考えて気がついた。
失敗しても仲間のもとに行くだけなのだから、成功しようが失敗しようが自分にとっては大差がない。
どうせ自分は生きていながら死んでいるのだからと。
ただ……あいつだけは……必ず殺す。
自分が守りたくて守ると誓い。結局、守りきることができなかった少女。
自分の恋人だった、あの赤い髪の少女を殺した奴。
アイツだけは…………何があろうとも殺す!!
自分が守りたくて守ると誓い。結局、守りきることができなかった少女。
自分の恋人だった、あの赤い髪の少女を殺した奴。
アイツだけは…………何があろうとも殺す!!
それだけを目標に、この三ヶ月間リハビリを行ってきたのだから。
どうすれば確実に奴を殺せるか、自分の命はどうでもいいが、奴を殺す前に死ぬわけにはいかない。
さっきまでは失敗しても死ぬだけだからと考えていたというのに、二転三転する考えに我ながら自分勝手なものだと、少年は苦笑する。
どうすれば確実に奴を殺せるか、自分の命はどうでもいいが、奴を殺す前に死ぬわけにはいかない。
さっきまでは失敗しても死ぬだけだからと考えていたというのに、二転三転する考えに我ながら自分勝手なものだと、少年は苦笑する。
陰鬱な思考に心を占められてはいたが、これまで幾重もの戦場を生き抜いてきた戦士の資質が、背後から自分に対し近づいてくる複数の気配を彼に気づかせる。
その気配は自分の背後で立ち止まった。
どうやら俺に用事があるらしいな、と少年は察した。
その気配は自分の背後で立ち止まった。
どうやら俺に用事があるらしいな、と少年は察した。
「いくのか?」
背後から聞こえてきた涼しげな声に、誰がきたのかは分かった。
振り向いた先には、自分と同じ黒髪を長く伸ばした男装の美女が立っていた。
振り向いた先には、自分と同じ黒髪を長く伸ばした男装の美女が立っていた。
「ああ……あんたには世話になったな」
やや仏頂面で面倒くさげにそう答えたが、世話になったどころではない。
なにせ少年にとっては、自分の命の恩人ともいうべき人間なのだから。
彼女の部下が宇宙を漂っていた自分の機体を回収しなければ
今も彼は愛機と共に宇宙を漂っていた事だろう。
少年のその態度に彼女の側近達は一瞬激昂しかけたが、彼女が微笑を浮かべつつ片手を上げて抑えた。
なにせ少年にとっては、自分の命の恩人ともいうべき人間なのだから。
彼女の部下が宇宙を漂っていた自分の機体を回収しなければ
今も彼は愛機と共に宇宙を漂っていた事だろう。
少年のその態度に彼女の側近達は一瞬激昂しかけたが、彼女が微笑を浮かべつつ片手を上げて抑えた。
彼女の側近が怒るのも当然だ。
何せ少年自身でさえ、自分がとったガキのような態度に腹がたつ。
彼女には感謝してもし尽くせないのだが。
どうしてもオーブという名が頭に浮かび、かたくなな態度をとらせてしまうのだ。
じっと少年を見つめながら、彼女は涼やかに問うてきた。
何せ少年自身でさえ、自分がとったガキのような態度に腹がたつ。
彼女には感謝してもし尽くせないのだが。
どうしてもオーブという名が頭に浮かび、かたくなな態度をとらせてしまうのだ。
じっと少年を見つめながら、彼女は涼やかに問うてきた。
「そうか。だが今さら地上に降りて何をしようというのだ?」
「奴は……いや……奴等は俺の全てを奪い去った!ルナを! レイを!!ミネルバの皆を!!!」
「……」
「奴は……いや……奴等は俺の全てを奪い去った!ルナを! レイを!!ミネルバの皆を!!!」
「……」
言いつのる度に心がきしみ、少年の中の怒りと憎悪の念が強くなっていく。
周りで作業をしていた連中は、突然の彼の大声に何事かと視線を集中させる。
しばしの間が、静かに流れた。
周りで作業をしていた連中は、突然の彼の大声に何事かと視線を集中させる。
しばしの間が、静かに流れた。
「そういえば」唐突にかけられた彼女の声に、興奮状態だった少年はようやく冷静さを取り戻す。
「お前のMSだが、修理もできないような状態なので廃棄処分にさせてもらった」
「……そうか」
「……そうか」
その事実は少年に軽い衝撃を与えた。
それが覚悟していた事とはいえ。
それが覚悟していた事とはいえ。
(俺の愛機、デスティニー……最後の戦いで大破してしまった機体、議長に託された俺のための剣。俺と共にこのアメノミハシラに収容されたはずの彼は、主人である俺より先に逝ってしまったのか……)
不意に彼女が自分の部下に軽く目配せをした。
すると部下は持っていたアタッシュケースを少年に手渡す。
少年は思わず受け取ってしまったが、これは何だ?といぶかしげにそれを眺めた。
すると部下は持っていたアタッシュケースを少年に手渡す。
少年は思わず受け取ってしまったが、これは何だ?といぶかしげにそれを眺めた。
「お前のMSを廃棄するさいにでてきた余剰パーツだ。選別代わりに持っていくがいい」
そう言い残し、彼女は部下を従え去っていった。
デスティニーの余剰パーツ?
デスティニーの余剰パーツ?
その時は、それが何なのか少年には分からなかった。
分かったのは、シャトルが発進した後に”彼”が話しかけてからだ。
分かったのは、シャトルが発進した後に”彼”が話しかけてからだ。
《久しぶりだなシン》
「レイ!?」
「レイ!?」