「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

第2話「逃避行」アバン

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
アメノミハシラのシャトル発着場に、一人の少年が立っていた。
黒髪、黒い上下の服と全身が黒ずくめだの風体だが、特徴的なのはその目の色と、右の顎から頬にかけて縦に走った傷跡。
まるで暗い炎を宿したかのような赤い色である。
その服の色とあいまって死神を思わせなくでもない。
周りでシャトルの発進準備をしている男達も、暗い陰鬱な雰囲気が不気味なのか、決して誰も近寄ろうとはしなかった。


しかし世の中には何処にでも例外がある。
ここにある例外は美しい女性の形をしていたようだが。
その背の高い美しい女性を先頭とした一団は、迷うことなく少年に向かって歩みよっていく。
もっとも彼女が死神なんてものを恐れるとも思えないが。
むしろ死神こそ我が道を避けて通れとばかりに、威風堂々と歩むその女性はロンド=ミナ=サハク
かつてオーブの影の軍神とも呼ばれた女性であった。

宇宙ステーション、アメノミハシラ宇宙港。
地球へ向かうシャトルの出発時間が迫っていた。
その発着待合ロビーの片隅で、少年はじっと考えていた。 
これから行う事になるであろう事が成功するのかどうかを。

成功の可能性はひたすらに低い。
失敗すれば…………だが、そこまで考えて気がついた。
失敗しても仲間のもとに行くだけなのだから、成功しようが失敗しようが自分にとっては大差がない。
どうせ自分は生きていながら死んでいるのだからと。

ただ……あいつだけは……必ず殺す。
自分が守りたくて守ると誓い。結局、守りきることができなかった少女。
自分の恋人だった、あの赤い髪の少女を殺した奴。
アイツだけは…………何があろうとも殺す!!

それだけを目標に、この三ヶ月間リハビリを行ってきたのだから。
どうすれば確実に奴を殺せるか、自分の命はどうでもいいが、奴を殺す前に死ぬわけにはいかない。
さっきまでは失敗しても死ぬだけだからと考えていたというのに、二転三転する考えに我ながら自分勝手なものだと、少年は苦笑する。

陰鬱な思考に心を占められてはいたが、これまで幾重もの戦場を生き抜いてきた戦士の資質が、背後から自分に対し近づいてくる複数の気配を彼に気づかせる。
その気配は自分の背後で立ち止まった。
どうやら俺に用事があるらしいな、と少年は察した。

「いくのか?」

背後から聞こえてきた涼しげな声に、誰がきたのかは分かった。
振り向いた先には、自分と同じ黒髪を長く伸ばした男装の美女が立っていた。

「ああ……あんたには世話になったな」

やや仏頂面で面倒くさげにそう答えたが、世話になったどころではない。
なにせ少年にとっては、自分の命の恩人ともいうべき人間なのだから。
彼女の部下が宇宙を漂っていた自分の機体を回収しなければ
今も彼は愛機と共に宇宙を漂っていた事だろう。 
少年のその態度に彼女の側近達は一瞬激昂しかけたが、彼女が微笑を浮かべつつ片手を上げて抑えた。

彼女の側近が怒るのも当然だ。
何せ少年自身でさえ、自分がとったガキのような態度に腹がたつ。
彼女には感謝してもし尽くせないのだが。
どうしてもオーブという名が頭に浮かび、かたくなな態度をとらせてしまうのだ。
じっと少年を見つめながら、彼女は涼やかに問うてきた。

「そうか。だが今さら地上に降りて何をしようというのだ?」
「奴は……いや……奴等は俺の全てを奪い去った!ルナを! レイを!!ミネルバの皆を!!!」
「……」

言いつのる度に心がきしみ、少年の中の怒りと憎悪の念が強くなっていく。
周りで作業をしていた連中は、突然の彼の大声に何事かと視線を集中させる。
しばしの間が、静かに流れた。

「そういえば」唐突にかけられた彼女の声に、興奮状態だった少年はようやく冷静さを取り戻す。

「お前のMSだが、修理もできないような状態なので廃棄処分にさせてもらった」
「……そうか」

その事実は少年に軽い衝撃を与えた。
それが覚悟していた事とはいえ。

(俺の愛機、デスティニー……最後の戦いで大破してしまった機体、議長に託された俺のための剣。俺と共にこのアメノミハシラに収容されたはずの彼は、主人である俺より先に逝ってしまったのか……)

不意に彼女が自分の部下に軽く目配せをした。
すると部下は持っていたアタッシュケースを少年に手渡す。
少年は思わず受け取ってしまったが、これは何だ?といぶかしげにそれを眺めた。

「お前のMSを廃棄するさいにでてきた余剰パーツだ。選別代わりに持っていくがいい」

そう言い残し、彼女は部下を従え去っていった。
デスティニーの余剰パーツ? 

その時は、それが何なのか少年には分からなかった。 
分かったのは、シャトルが発進した後に”彼”が話しかけてからだ。


《久しぶりだなシン》
「レイ!?」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー