「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

青春の門

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「アスラン・ザラ監察官殿!」
西ユーラシア到着早々、アスランは統一連合地上軍司令部に呼び出された。
実際のところ、アスランには召還を受ける理由が判らなかった。
査察も何も、到着して直ぐに呼ばれたのだから。
「一体、何事ですか?」
「ああ、助かりました・・・今、本当に貴方がこの国においでになられたのは不幸中の幸いでした・・・」
滝のように汗をかきつつ、司令官は事情を説明する。

ドム・クルセイダー
かつての第三特務部隊にて数多の敵を屠ってきた機体であり、リヴァイヴとの戦闘で同部隊が壊滅するまで、レジスタンスにとっては恐怖の対象、死の象徴そのものとなってきた。

その同形機が盗まれたのだ。

「・・・ご冗談でしょう?」
アスランは笑いながら否定の言葉を待った。いや、眼はまったく笑っていなかったが。
「これが・・・冗談か何かになるんだったら・・・私は銃殺されても構いませんよ・・・」
そのまま頭を抱えてデスクに俯く。
「恐らくは、内部に内通者が居ます。確かに、時々、横流しが有るのは黙認していましたが・・・」
「どう言うことです!」
流石にコレは聞き捨てならなかった。東ユーラシア軍ではない、統一連合の正規軍である。ココまでモラルが低下しているのか。その事実にアスランは慄然とする。
「徹底的に取り締まれば、完全に地下に潜ってしまいます。敢えて黙認して横流しのルートを捕捉しておけば、本当に外部に流出した場合に危険な物を防げます。それと、兵のガス抜きの役割も・・・」
「だからと言って私腹を肥やすとはどういう積もりです!」
アスランの怒声がオフィスに響く。それを聞いて殆ど泣き顔になる司令官。
「ならばどうしろと仰る?!オーブ育ちの兵の中にはココで知合った友人に同情的なあまりに、この手の横流しに荷担するものも珍しくないのですよ!?」
東西ユーラシアの食糧事情は、もはや厳しいを通り越して過酷と言った方がよい有様だ。オーブ等の食糧事情が安定している地域から配属された兵士の中には、友人達の惨状を見かねて配給のカロリースティック等をこっそり持ち出したりするものが居るという。
そして、そうこうしているうちに、レジスタンスに同調するものが居ないかと言えば・・・
そして、そう言った者達が今回の騒ぎに荷担したのだ。

「ともかく!今回の件は報告します!ソレでよろしいか?!」
「どうぞ報告なさって下さい・・・ただ、一つだけお願いがあります」
「何です?」
「どうか、関わったものに寛大なるご処置を。こんな事が言えた義理ではないのですが・・・」
「判りました。最大限努力します」
「せめて、せめて何か行動を起す前に捕捉出来れば・・・」
『司令!』
そんな空気を断ち切る様に報告が入った。
「何か?」
『市街地にてドム・クルセイダー1機が出現しました』
「!いいか、相手は核搭載機だ!余計な刺激をするな!適宜状況を報告せよ!」
『了解しました!・・・あ、ドム・クルセイダーが動き出しました!』
「なんだと!」
『こ、これは!』
「どうした!状況を報告せよ!」
『ド、ドムが・・・』
「ドムがどうした!」
『廃墟を整地してます・・・』
「は?」
司令とアスランの声が、場違いにハモった。

ジョウ・オダはオーブ生まれのオーブ育ちであり、二度の大戦を経てもオーブを離れなかった。
だから、統一連合成立後に、「自分でも何か世の中の役に立ちたい」と統一連合軍に志願し、ここ、ユーラシアへ配属されてからは衝撃の連続だった。
自分がいかに恵まれていたかを知ったオダは、自分の出来る範囲でガルナハンの人達を助けることを決意する。
最初は、こっそりとカロリースティックの横流しをする程度の「支援」だったが、一向に変わらない状況に業を煮やし、遂に無謀としか言い様がない行動に出た。

ドム・クルセイダーをパクって脱走したのだ。

「あ、あのさ、オダ。気持ちは嬉しいんだけど・・・」
「お前なぁ、こんなゴツい機体持ってきてもどうしようもないだろ?」
「何を言うんだ!皆のMS、全部旧式じゃないか!コレなら大抵の相手はやっつけられるぞ!」
「お前・・・『人殺しになりなくない』って言ってたんじゃ・・・」
「大丈夫だ!『ドム・クルセイダーが居る』と言うだけで政府軍の連中は尻尾を巻いて逃げるに決まっている!悪名高き『第三特務部隊』御用達の機体なんだぞ!」
レジスタンス「平和の砦」のメンバーは激しく当惑していた。
むしろ、はっきり言って迷惑していた。
統一連合軍の兵士が、ガルナハンの内情を知り、義憤に駆られて涙してくれたのは正直嬉しかった。
そして、カロリースティックなどを横流ししてくれたお蔭で飢え死にせずに済んだ家族が大勢居るのも感謝しきれないほどだ。
だが・・・
(MS盗んで俺達に合流する、って言うのは・・・)
何かがズレている。全員そう思ったが、口には出さない。出せる訳がない。
そもそもがリヴァイヴのような(平和の砦的には)武闘派イケイケの連中とは異なり、平和的な活動が主で、MSでの戦闘など数える程しかない組織だったのだ。
ソレがこんな強力な機体である。はっきり言って迷惑以外の何者でもなかった。
「せめてルタンドを複数持ってきてくれたら・・・」
そんなリーダーのボヤキに耳ざとく
「僕一人じゃ複数の機体は持ってこれないよ!第一ルタンドじゃ弱そうじゃないか!」
と全く空気を読まないのであった。

結局、リーダーが下した決断は至極簡単なものだった。

「とりあえず、今日の作業に出よう」

早い話、問題解決を先送りにしたのである。この状況を直視出来なかったと言うのもあるが。
「平和の砦」は特に目立ったパトロンも、後ろ盾となる組織も持たない。ソレは身軽に動けるという利点でもあるが、同時に金蔓らしき金蔓がないということでもあった。
したがって、彼らはまず自らの手で糊口を凌がねばならないのだ。

「いつもありがとうな!」
「いやー、助かるよ!」

何時ものように近所の土木作業に労働力を供給し、見返りとして資金を援助してもらう。
こう言うとレジスタンス活動のように聞こえるが、なんの事はない。
単なる土木作業員として日々の糧を得ているだけである。

昼食としてカロリースティックとミネラルウォーターのボトルを受け取り、黙々と口に運ぶ。
何時もなら軽口と笑いが絶えない「平和の砦」のメンバーだが、今日は流石に静かだった。

『コレから先、どうしよう・・・』

いくらなんでも統一連合がこのまま放置してくれるとは思えなかった。
腐っても核搭載機である。近いうちに何らかのアクションはあるかもしれない。
「売り飛ばすか・・・」
リーダーが思い詰めたようにボソリと呟くと、全員の視線が集まった。
「薔薇辺りなら、言い値で引き取ってくれるかもしれん。コレだけの機体だしな」
とはいえ、そんな連中に渡せば血が流れるのは間違いないだろう。正直、抵抗がある。
「駄目だよ!薔薇の人達にこんな機体渡したら沢山血が流れるって!」
「じゃあどうするって言うんだよ」
力強く反対するオダに半眼で問うメンバー達。
「と、取り敢えず…」
「取り敢えず?」
「土木作業に使うのはどう?」

『土木作業のご用命は我が社に!』

多分、開発者が見たら腰を抜かしたり頭を抱えてしまうような看板を掲げ、街中をドムクルセイダーが闊歩する。
土木作業に使うなど、長期的視点ならば、運用の為のメンテナンスなどを考えたらどう考えても割に合わない。
が、「平和の砦」は思い切った方法論でソレらをクリアして見せた。
…要するに「簡単なメンテのみで動かして、動かなくなったら乗り捨てる」と言うことだ。
甚だしく迷惑な発想では有る。
が、この判断は結果的に「平和の砦」にかなりの利益をもたらしてくれた。

「おーい、ココの廃屋の取り壊し、頼めるかー?」
ドムが街を徘徊していると、あちこちで行われている土木作業現場から声が掛かる。
人力なら手間が掛かる作業も、MSなら簡単に解決出来る為、街中引きも切らずに受注が舞い込み、おかげでにわか建築ラッシュが生じたくらいだ。

「一体、どう言う状況で奪われたのですか?」
そうアスランに問われ、司令官はしどろもどろに答える。
「じ、実は…配備されて早々、オーブのモルゲンレーテ本社から連絡がありまして、当該機体に至急メンテナンスが必要だと」
「メンテナンス?」
「そんな訳でして、実戦で使う訳にも行かず。直ぐに送り返せば良かったのですが…」
「呑気な事ですね」
ふと言葉に棘が入るが、司令官は気にしたそぶりも無く続ける。
「なんやかやと後回しにしてしまいまして。兵達もあのMSが使いものにならない事は知っていましたので、警備も自然と緩く…」

「おーい、アレ、何だ?」
ドムクルセイダーに乗って~パイロットのジョウ以外は両手に乗っていた~次の現場へ移動中、リーダーに言われて空を見上げる『平和の砦』一同。
「あー。MSだよなアレ…」
「見ない機体だよなぁ」
「新型かね?」
「…なんか、どっかで見た事が…」
「…嘘だろ?」
最後のジョウの言葉に一同の視線が集まるが、引き攣った顔をするばかりで無言。
そして、ドム・クルセイダーの眼前に真紅のMSが舞い降りた。

『私は、統一地球圏連合査察部査察官、アスラン・ザラだ!そこのMS、至急止まれ!』

「ト、TJ?!」
「うわ、本物だよ…」
「すげー、初めて見た」
「つーか、統一地球圏連合のお偉いさんだろ?なんでこんな辺鄙な町に?」
「案外偽物だったりしてな」
「みんな、何呑気なこと言ってるんだよ!相手はあのアスラン・ザラだよ?!」
『全部丸聞こえなんだがな!』
「ほら見ろ怒られた!」
「うわー、短気…」
「横暴だ!横暴だ!」
『…もう、いい加減にしてくれ…』
呑気な『平和の砦』に対し、疲れ切った声を上げるアスラン。いい加減色んな物が限界を超えつつあった。
『いいか!そのMSはな!』
「皆、逃げるよ!」
次の瞬間、ジョウはそう言うと返事も待たずにアクセルを踏み込み、脱兎の如く逃走を開始。
『お前等な…!!』
アスランの悲鳴じみた怒声を受けながら走り去った。

しかし、その10分後、必死に逃走するドムクルセイダーの頭上に真紅の猛禽が舞い降りる。
「うわー…粘着質だなアンタ」
「えーと。『我々はー、統一地球圏連合のー、横暴からー』」
『それどころじゃないんだ!』
TJのコクピットから乗り出し、アスランが叫ぶ。
「そのMSは…」
「統一地球圏連合の横暴に屈しないぞー!」
アスラン目掛けてイモとかカボチャが投げつけられる。
『いい加減にしないか!その機体はもうすぐ爆発するんだぞ!』


話は出撃前に遡る
「司令、そもそもそのメンテナンスの内容は何なのですか?」
「一応、動力系のメンテナンスと兵には伝えましたが…メインリアクターに欠陥が有ったのです」
「メイン…リアクター…ってまさか!」
「NJCと核動力炉が連結した構造になっているのですが、一定以上の連続運用すると、出力が固定され緊急停止装置も働かなくなるらしく」
「そんな機体を放置したと言うんですか?!」


『そう言う訳なんだ!危ないから下りなさい!』
「子供じゃあるまいし、そんなこと言われても」
「そーだー、我々はー統一地球圏連合のー横暴にー対しー」
「…どうしたんだ、ジョウ?」
「みんな、大変だよ…核エンジンの出力が落ちない!ずっと上がり続けてる!」
『とりあえず!全員降りろ!パイロットも!』
「しかし…」
『あとは俺が何とかする!』
そう言うと出撃前にダウンロードしたドムクルセイダーの設計図を画面に呼び出す。
「現在の発熱量から炉心溶解までの時間を算出。同時にNJCを原子炉本体から炉心溶解までの時間内に解体して排除可能な手順を炉心を破損する可能性の低い順に表示。炉心破損の可能性のあるモデルは排除」
【炉心溶解まで13分15秒。提示された条件満たす条件は】
「条件は?!」
【ありません。何らかの形で炉心が破損します。再度条件を変更して検索しますか?】
「クソッ!」
コンソールに拳を打ちつけかけるが、踏み止まる。
「検索条件を変更。当該機体のNJCのみを現在の武装で破壊できるルートを。炉心破損モデルは抜いて!」

『そっちのパイロット、聞こえるか!』
「は、はい、」
『今からTJでピンポイントでNJCを破壊する!君はそのまま機体を保持してくれ!』
「ええ!?」
そのままビームブーメランを逆手に振り上げ、実体刃の狙いをドムクルセイダーの喉笛につける。
「現時点での炉心溶解までの時間は?」
【9分25秒】
「了解。以後、30秒ごとに残り時間を提示。残り1分になった時点でカウントダウン」
【オーダーを確認しました】
「いくぞ!」

ガツン!

ビームブーメランの実体刃がドムクルセイダーの胸部装甲に深々と突き刺さる。
それは、そのままNJCを刺し貫く筈だった。
「うわあ!」
「くっ!シミュレートより刺さらない!?」
【初期値より胸部装甲厚が増えているものと思われます】
「なんで余計な改修なんか!再検索を!」
【オーダーを確認しました。残り2分15秒以内にNJCを破壊できるルートは】
「ちょっと待て!なんでいきなり時間が飛ぶんだ!?」
【先ほどの衝撃で冷却系に破損が確認されました】
「くそ!」
今度は慎重に胸部装甲の隙間に実体刃を滑り込ませ、引き剥がしに掛かる。
【残り、1分30秒】
「まず、コイツから…」
内部に衝撃を与えぬ様、ゆっくりと引き剥がされていく胸部装甲。
【残り、1分。カウントダウンスタートします】
「メインフレームからの切除終了。次は、各部配線を剥離…よし!」
ガラン、と音を立てて装甲が剥がれ落ちる。
【45、44、43】
「次は…!」
【30、29、28、27】
コクピットの背後、原子炉とNJCがセットでユニット化されたブロックに実体刃を突き立て。
【15、14、13】
ゆっくりと。しかし、確実に。
【8、7、6】
金属の刃が食い込んでいき。
【4、3、2、1…炉心溶解予想時間を経過しました】
その瞬間、核反応を示す数値が一斉に0を示した。
「止まった…炉心温度が急激に下がってる!」
「やれやれ…コレでひと安心だな」
アスランがTJのコクピットから下りると、『平和の砦』のメンバーに取り囲まれた。
アスランは咄嗟に身構えるが、そのままリーダーに抱きしめられた。
当惑するアスランを尻目に、そのまま胴上げをはじめる『平和の砦』一同。
「ばんざーい!」
「アスラン・ザラ、ばんざーい!」
「ばんざーい!」
「いい加減にしないか!!」

その直後、応援に駆けつけた地上軍が見たものは、アスランに正座で説教を受けている『平和の砦』一同だったと言う。

「今度、この話、記事にしますね?」
「…監察官権限でオーブタイムズ発禁にしても良いんだな?」

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