「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

平和の歌、その曲名は『破滅』

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ラクス・クラインの執務室にゲルハルト・ライヒが訪れる。
この「珍事」の意味するところを正確に理解し得た者は、当事者たる二人以外にはこの瞬間には存在しなかった。

「ザラ監察官の戦死と、それにともなう第一艦隊の敗走により、アメノミハシラ率いるレジスタンスが勢いづいたことは既にご存知かと思いますが」
「ええ、知っています」
ライヒに対し、憂いを帯びた瞳で返すラクス。
「遂に、かつての亡霊が蘇りました。大西洋連合がオーブとの武力衝突の用意を進めています」
『統一連合』ではなく『オーブ』。
つまり、大西洋連合が「国益の為に」オーブを追い落とすと言う意味。
「現時点では明確な宣戦布告はありませんが、統一連合関連施設のみが『偶然』テロの標的にされ、『偶然』全ての統一連合施設が使用不能になり、『偶然』周辺は無人になっていたお蔭で標的以外に被害は無かったそうです」
「そうですか…やはり…」
何故?どうして?
ラクスには理解できなかった。
特定の国家の利益を得るため、他の国家を攻撃する。
それになんの意味がある?
この状況では、コップ1杯の水を、独占しようと奪い合い、結局、全て零してしまう結果になるのは間違い無いのに。
どうして、自分と言うものをまず最初に考える?
人間全てがまず隣人の事を思えば、争う事になんの意味も無いことは自明なのに。

(やはり、いまだヒトには自分を律することなど無理なのでしょうね…)

ソレは、ラクスにとってとても哀しく、辛い事だった。
何時かは皆が気付いてくれる。
その思いの元に今まで頑張ってきたのに。

「ラクス・クライン。ご決断を」

ラクスの思考を断ち切る様にライヒが決断を求めてくる。

プロジェクト・EP

最愛の男性の複製品達による、恒久平和を生み出す「不滅の暴力装置」

(キラだけに背負わせる訳には行きません。私も永遠の牢獄へ…)

「わかりました。…やむを得ませんね」
「判りました。では」
ライヒは一礼し、懐から携帯端末を取り出すと、何処かヘ接続。
そのままラクスに差し出す。
「5分までなら外部から盗聴される恐れはありません。『彼女』と直接会話が可能です」
一瞬、躊躇。が、次の瞬間、端末を受けとって。
「お願い、します…『平和の歌を世界へ』」
「起動コマンド受領。システム起動しました。『こんにちは、ラクス・クライン』」
「こんにちは、ラクス・クライン。もう一人の私」



J3の元に、信じがたい報告が上がって来た。
オーブ先遣艦隊(既に統一連合軍と言う呼称でなく、オーブ軍と言う呼称で統一されていた)を撃破した直後、大西洋連合第二艦隊が壊滅したと言うのだ。
「状況はどうなっているんだね、バジルール君?」
そうJ3に問われるも、補佐官の歯切れは悪い。
「いえ、なにぶん情報が錯綜しておりまして…フリーダムに全滅させられたと言う情報も…」
まさか。J3には俄かに信じられなかった。
統一連合の戦力は殆どがアメノミハシラに貼りついており、PGも例外では無かった。
だからこそ地球でのオーブ侵攻作戦が成立するのだ。
「一体、何が起きているんだ…」

第3艦隊旗艦、アーリントンの艦長、ジョナサン・グレーシーは眼前の状況が理解できなかった。
いや、理解する事を拒否した、と言うべきか。
オーブ先遣艦隊を苦も無く蹴散らした直後。
艦の、MSの、全てのモニターがホワイトアウト。
が、次の瞬間、そこに映った者は。
「皆さん、戦争は…争いは何も生みません。憎しみの連鎖を招くだけなのです」
ラクス・クライン。平和の使者。
「オーブめ…小癪な!ウイルス攻撃か!」
即座に予備回線に切り替え、モニターから肉眼による索敵に変更。
そして、彼らは悪夢のただ中にいる事を自覚する。
「フリーダム…ヤキンの亡霊…」
純白の、十枚の翼を持つ天使が空を埋め尽くしていた。
「かつて、私達人類は、ナチュラルとコーディネーターーの二つに分かれ…」
ラクス・クラインの演説をBGMに、無数の「自由の天使」達は蹂躙する。
その悪夢のような光景をぼんやりと見つめていると、天使の内の1機が旗艦のブリッジの前に舞い降りて…
そして、艦長の視界は真っ白く塗りつぶされた。
その光が、第3艦隊旗艦アーリントン艦長、ジョナサン・グレイシーの見た最後の光景だった。

「真実の平和」が歴史の表舞台に現れた瞬間だった。

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