「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

地獄への幕開け

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大西洋連邦第一艦隊と、統一連合オーブ方面艦隊の最初の交戦から既に四十八時間が経過していた。
最大戦力を差し向けた大西洋連邦に対し、オーブ側は一艦隊のみ。
本来ならば、長大な補給線が兵站を圧迫したとしても大西洋連合が力押しでも撃破可能な戦力差である。
しかし、最初の交戦の後、双方睨み合いが続くのみで戦闘は途絶えていた。
オーブ側の大陸間弾道ミサイル「ヘルモーズX」の存在が、大西洋連合に攻撃を躊躇させていた。

「まだか!?まだなのかバジルール君?!」
「タイムテーブルに変更がなければ、プロメテウスが『標的』を有効射程に納めるまで後6時間を切りました…もうしばらくお待ち下さい」
執務室の3Jは焦っていた。
電撃的にオーブに打撃を与えてプレッシャーを与え、有利な状況で交渉を進める。
だが、ソレには「ある理由」から時間制限があった。

「大統領、お電話です」
補佐官の口から重々しく告げられる。
「吉報かね?」
そう問う3Jに首を振って答える。
「残念ですが、『時間切れ』のようです。東アジア共和国の李耀大将からです」
「!」
3Jは溜息をつくと電話を代わった。
『お久しぶりですね、ジョンソン大統領』
受話器から柔和な声が流れる。
「お久しぶり…何時ぞやの議会以来ですかな?李耀大将」
『ははは…今は臨時ではありますが首相になりましてね』
「それは…劉建陽首相はいかがなされましたか?」
『大変遺憾ながら、レジスタンスを名乗る賊の手に…』
(クーデターか。情報部から報告が上がっていたが、こんなに早く全権を掌握するとはな)
そんなことはおくびにも出さずに続ける。
「おお、それはお悔やみを申し上げなくてはいけませんな」
『ありがとうございます。劉建陽「前」首相もお喜びでしょう』
「前」をわざわざ強調するイントネーション。早く現体制を認知して欲しい焦りか。
「正式発表は何時頃ですか?」
『近日中には。それよりも大統領、よくぞ御決断なさいましたな』
「なんのお話でしょう?」
『独裁者オーブを討つお積もりなのは現状を見れば子供でも判ります。及ばずながら我らも力を…』
「ああ!その事でしたか。いえ、ソレには及びませんよ。あくまで今回は我が大西洋とオーブの二国間の問題です」
『何を仰る?!あのウズミの馬鹿娘の無能に苦しんだのは貴方がただけではないのですよ?!』
3Jは深々と~ただし、受話器の向こうには届かぬ様に~溜息を漏らす。
本音は「自分達にも甘い汁を吸わせろ」という事か。
「李耀「大将」、私はお国のような駆け引きは苦手です」
敢えて「大将」とはっきり発音。
「はっきり言います。この戦闘は我が国がオーブから有利な条件を引き出すための外交戦術のひとつに過ぎません」
反論を許さぬ勢いでそのまま言い切る。
「東アジアまで参加されては火種が大きくなりすぎます。再び世界を煉獄の炎で焼く事は避けなくてはなりません」
『つまり、「お前達は指を咥えてみていろ」と?』
李耀の口調もなにも変わらない。しかし、その奥に隠されたドロリとした感情が仄見え始めた。
「…我が国は既にオーブの先制攻撃で少なからぬ被害を本土に受けました。貴方にその覚悟がお有りか?」
『…確かに、被害も何もない我が国を途中参加させろと言っても、感覚的に受けつけて頂けないでしょうね』
「ご理解頂けて幸いです。では、これから前線に指示を出さねばなりませんので」
『判りました。コチラこそ御忙しいのに時間を割いて頂き感謝します。御武運をお祈りします』

「何様の積もりだあの若造が!」
電話を切った李耀は毒づくとデスクを立ち、グラスとブランデーの壜を取り出すと溢れんばかりに注ぎ、一息に飲み干す。
が、それでも怒りが収まらぬのか窓目掛けてグラスを叩き付けた。
コレで窓ガラスなりグラスなりが割れたり砕けたりすればストレスの発散になり、血が上った頭も冷えたのだろうが、防弾ガラスと分厚いグラスはびくともせず、ゴトン、と間の抜けた音を立ててグラスが床に転がるだけだった。
李耀は濁った瞳で壁にかけられた地図を見ると、ばん!とオーブを平手て叩いた。まるで、そうすればオーブが消えてなくなるかのように。
「まあいい、始めてしまえばあの若造も受け入れざるを得まい…もともとあの国は我らの物だったのだ」

3Jと李耀の会談後、東アジア国営放送から臨時ニュースが世界に配信された。
「我が東アジア共和国は、オーブによる圧政に対して蜂起した大西洋連合を支持致します」
(ひとまずはこれで良い。この後に大西洋が苦戦してくれればその時に…)

この放送を聴いた3Jは激怒した。
「正気なのかあの馬鹿は!この放送がどう言う状況を呼び込むか想像できんのか!」
「大統領、どうか冷静に」
「冷静?そんなものはそこらの野良犬にでも食わせたまえ補佐官!だからあんな脳ミソの中まで○○○○で××××な(ピー)野郎は…」
上品とは決して呼べない4文字言葉を呪詛の様に3Jは執務室一杯にばら撒いていたが、一頻り喚くと深々と溜息をつき、席に戻るとドッカと脚をデスクの上に投げ出した。
「南アメリカがどう出ると思う?」
「最悪、南アメリカ合衆国と南アメリカ解放同盟が手を結ぶ可能性もあります。流石に今日明日で状況が動くとも思えませんが」
だが、この予想は外れた。大西洋連合にとって最悪の形で。

その日の夕刻、突如として南アメリカ合衆国が大統領声明を行うと発表した。
そして、大統領の傍らに立つ人物を見て、会見場に居並ぶ報道陣は目を剥いた。
マルセロ=ダ=シルバ。
南アメリカ開放同盟代表が対立している南アメリカ合衆国の大統領と肩を並べて立っている。
壇上の二人は笑みを浮かべると、会場を染め上げるフラッシュの光の中、堅く握手を交わし、報道陣を見渡し、口を開いた。
「かつて、我々は袂を別った。だか、今、こうして再び手を携える事が出来る事を心から嬉しく思う」
「私は、統一連合と共に有ることがこの国を豊かにすることだと思っている。同時に」
脇に立つシルバに視線を向ける。
「この友人のようにそれは危険だ、と私に苦言を呈してくれる人達もまた、多い。だからこそ」
再び報道陣に視線を戻す。
「私達はもっと話し合わなくてはならない。暴力では物事を解決する事は非常に困難だと、認めなくてはならない」
それに合わせ、シルバが一歩前に出る。
「私達「南アメリカ開放同盟」は現時点を持って武力闘争を放棄することを宣言します」
その言葉に会場にどよめきが走った。ソレに被せる様にシルバが言葉を続ける。
「同時に、合法的政党としての与党「南アメリカ開放同盟」を結党します。なお、当方の持つ全戦力は同日付けで全て正規軍に編入される事となります」
更なるどよめきと、南アメリカ開放同盟寄りの記者から罵声が浴びせられる。が、次のシルバの一言で一斉に沈黙した。
「パックス・アトランティカーナ。この言葉をお忘れですか?かつて、私達を苦しめたこの言葉を?」
「私とマルセロ氏は、確かに方法論で袂を別ったのは事実だ。だが、私も、彼も、この国を愛していることに一切の曇りは無い!」
「オーブを倒し、現在の統一連合のシステムをそのまま大西洋連合は掌握しようとしています。東アジアを抱き込んだ上で」
「今、この国で内乱を起す余力など無い!そんな愚挙をすれば大西洋連合の思う壷だ!」
「私達はここで、大西洋連合及びオーブ双方に対し、即刻戦闘の中止を要請します。又、大西洋連合のオーブ遠征を速やかに中止する事を要求します」
「もし、大西洋連合がこれ以上オーブへの侵略行為を続行する場合、我が国にもそれ相応の行動を取る事となるだろう。そのような不幸な自体にならないことを、私達は切に願う」

後に、8カ国が入り乱れ泥沼化したオーブ沖海戦の発端であった。

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