ゴールデンライアン/ライアン・ゴールドスミス


◆バーナビーの顔出し特性をはじめTV版の設定・コンセプトに矛盾をきたす存在

シュテルンビルトとは別の都市(作中海外での実績云々と説明されていたので、おそらく外国)であるコンチネンタルエリアでヒーローデビュー。
後にシュナイダーによってアポロンメディアに移籍、アポロンメディアを解雇された虎徹と入れ替わるようにバーナビーと新コンビを組む。
一部のファンの間でのあだ名は『さすらいの重力王子』。

世界各国にサッカーリーグがあるように、世界各地にヒーローがいてもいいんじゃないかという設定は
テレビシリーズのときからあったんですが、本編で描くことはあえてしてきませんでした。
今回はそれを踏まえ、別の地域からライアンがやってきたということになっています。

(「ライジング」パンフレット内・西田氏のインタビューより)

しかし、元々ヒーローシステムはマーベリックが独自に考案したオリジナルのシステムである。
一体いつ頃ライアンのいるコンチネンタルエリアに輸出されていたのだろうか?
なお、このヒーローシステムについてはプロデューサーの田村(一彦)氏が2011年9月に発売されたムックで以下のような発言を残している。

あと、これは全25話では描ききれなかったのですが、NEXTはシュテルンビルトだけではなく、世界各地に存在しているんです。
(中略)
シュテルンビルトという街だけにHERO TVというものがあるけど、NEXTは世界中にいると。
もう少し余裕があれば、そのあたりをより掘り下げてみたかったですね。

(TIGER & BUNNY ロマンアルバム 117ページ2段目より)

「余裕があれば掘り下げてみたかった」田村氏と「あえて描写しなかった」西田氏とは相反する発言が存在するのも興味深いが、ここでは『シュテルンビルトにのみHERO-TVが存在する』と明言されている点に注目したい。
つまり他エリアに同番組がないとすればHERO-TVのシステムが正式にコンチネンタルエリアに輸出されたとは考えにくい。
それどころかライアンはサラリーマンヒーローではないような描写もある(後述)ため、コンチネンタルに似たような番組・システムが存在するかどうかすら怪しくなっている。

また、西田氏の言うような世界各地のスポーツリーグのようにヒーローが存在しているのならば(例えば他国からスター選手が移籍する場合、どこのクラブチームから打診があった、又は名乗りをあげているという話だけでもかなり大きなニュースになるように)、実力派ヒーローであるライアンのシュテルンビルトへの移籍が、「ライジング」本編のように発表するまで誰も知らない、リークも一切なしというのは状況的にあり得ない。

バーナビーより年下だが、ヒーローとしてのキャリアはバーナビーより長い(作中でのマリオの説明と、ビギニング作中、シュテルンビルトの街の看板に現在より年若いライアンの姿が描かれている。※こちらについてはビギニングについて【設定・演出編】の項目を参照)。

つまり、バーナビーより先に【顔出しヒーロー】としてデビューしている事になり、これによってTV版で異例中の異例として【顔出しヒーロー】デビューしていたバーナビーの特異性と存在意義が揺らいでしまった。
ライアンという前例があるなら、TV版でマーベリックがバーナビーの顔出しにあそこまで大々的な宣伝はしないし、虎徹もあそこまで「ヒーローが顔出し云々」とは言わないだろう(それどころか、逆にバーナビーがライアンの【顔出しヒーロー】特性を盗用した形になってしまう)。

バーナビーの顔出しは、4歳の頃に両親を殺害した犯人への復讐の決意と覚悟の現れなのだが、ライアンがどのような理由や目的で【顔出しヒーロー】をしているのかは不明。

◆有能な俺様? ただの自分勝手?

一定範囲内(半径30m程度)の重力を増幅させるNEXT能力を持ち、初登場時には何と一般客もひしめくプレスの前で発動。更に出動時には、バーナビーをはじめ他ヒーローや市民まで巻き込んだ。
危険&ポイント争いで他社のライバルヒーローを妨害している(どころか負傷させかねない)事にもなるし、今なお偏見や差別が続くNEXTに対して悪印象を与える可能性がある。(実際作中の該当シーンでは「故意に他のヒーローの行動を止めるのは反則よ!」とアニエスに注意されている)

なお、このアメジストタワーにおけるライアンの能力発動によるヒーロー全員巻き込みについて、ライジングDVD及びBDのオーディオコメンタリー(オーコメ)にて、監督の米たに氏をはじめとする制作メンバーが以下の発言をしている。
西田「ライアンが能力を発動しましたけど、あの能力の説明をちょっと…」

米たに「ええ~(少々大げさに)」

西田「ハトとか飛んでる鳥も落ちてしまうのか」

「落ちるんじゃないの?違うの?」

西田「それが違うんです」

米たに「あれは上が何メートルとかだいたい決まってて」

「決まってるんだ!」

米たに「よく見るとドーム状になってて重力範囲が」

「ほうほう」

米たに「ええ、なんでスカイハイもそこの重力の…」

「重力の場に居なければ落ちなかったと」

米たに「そうなんですよ」

「ほうほう」

米たに「圏内に来ちゃったからおっこっちゃったんですよ」

(ライジングDVD・BD内、オーコメより抜粋・敬称略)

ちなみにTV版では、ヒーロー達は原則NEXTや犯罪者を相手にする時にしか能力を使っていない
もしも、ライアンがコンチネンタルエリア時代にも同様の能力の使い方をしていたのなら、シュテルンビルトのヒーローシステムとコンチネンタルエリアのそれが異なる様式である事にならないだろうか?(しかし、そんなライアンの行動に「あんなのあり!?」と文句を言うだけで市民の救出を二の次にしている他ヒーロー達も、ある意味ライアンといい勝負なのかもしれない)

『性格はクレバー(英国では「賢い」を意味するが、米国では「狡猾」の意味合いが強い)で、周囲の空気を読みさり気なくフォローするのに長けている』という監督の米たに氏をはじめとする公式イチオシのキャラだが、作中では出動中にダブルチェイサーを切り離さないまま乗り去ってしまった。
そのせいでバーナビーは敵に走って追い付く為だけに能力を発動する羽目になり、その後敵のボスと対峙する際回復まで時間を大幅にロスする事となった。

◆契約の信じられない軽さ

事件後は「もうこんなチンケなトコでやってられねえ」という個人的な理由から、独自で勝手に大富豪のオファーを受けバーナビーとのコンビを解消、シュテルンビルトを去る。
ライアンは、アポロンメディアのヒーロー事業本部長室にいた。ベンやロイズ、斎藤さんが応対している。

「海の向こうの大富豪からオファーされてよ。ほら」

そう言って得意げに一枚の契約書を三人に見せるライアン。そこにはアポロンメディアがライアンと契約した際に支払った額を大幅に上回るギャラが記載されている。
驚いた斎藤さんが誰にも聞き取れない小さな声で叫ぶ。

「……(こんなに)?」
「もうこんなチンケなとこでやってられねえわけ。ってことで、じゃ」

ライアンは契約書をこれ見よがしに振りかざしながら部屋を去っていく。

(高橋悠也著:ノベライズ版「ライジング」P250-252より。書式のみ変更)※当ノベライズは、サンライズ公式監修の発行物である

1912:ライアン、ベンと斎藤さんに契約書を見せる。近寄って見る斎藤さん。
1913:金額に小声で驚く斎藤さん。(字幕テロップあり)

ライアン(on)「海の向こうの大富豪からオファーされてよ。ホラ」
斎藤さん(off)「!(on)こんなに?」
1914:ベンの部屋の俯瞰。ロイズも一歩近づく。契約書を片手に振り返り去っていくライアン。

ライアン(off)「もうこんな(on)チンケなトコでやってられねえ訳。ってことで、じゃ」

1915:肩越しに振り向き去り際に一言。契約書でビラビラと手を振ってドアに向かうライアン。
1916:見送る斎藤さん、ベン、ロイズ一同。(SEドアを開けて閉める音)
1917:ポツンと取り残された3人。ベンと斎藤さんを見るロイズ。ロイズを見るベンと斎藤さん。2回うなずく2人。

ロイズ「悪かったな、チンケな会社でねえ?」
ベン・斎藤さん「(無言でうなずく)」
※ライジング本編では、キャストの宝亀氏のアドリブによるものか、ベンが頷きながら「うん」と言っている

(完成台本p345-355より抜粋)
だが、シュテルンビルトのヒーローは企業に所属するサラリーマンヒーローで、企業やスポンサーの後ろ盾がある反面、サラリーマンとしての契約その他に縛られているので、本人の自由意志による他社や他都市への移籍転出は基本不可能である。

そんなサラリーマンヒーローである以上、シュナイダーの勧誘で移籍してきたライアンが、そのシュナイダーが失脚したからといえど、アポロンメディアの上層部に無断で新たなオファーを個人で受けて移籍するというのは無理がある。 契約破棄による違約金の発生や、逆にシュナイダー絡みで一連の事件の事情聴取を受ける(場合によっては謹慎などのペナルティも有り得る)か、契約して日も浅いし一度コンチネンタルエリアに戻る方が自然ではないだろうか?

マーベリックの件で、アポロンメディアは経営も信頼もガタついていたのだが、自分への評価や物事に対する価値を金で判断するライアンが、どうした経緯や理由でスキャンダルの大元ともいえるアポロンメディアへ移籍を決めたのか謎である。

◆コンチネンタル時代のライアンは、サラリーマンヒーローではなかった?

ライジング作中、ライアンのコンチネンタルエリア時代のヒーロー活動の動画が流れるシーンがあるが、そこに映っているライアンのヒーロースーツには、架空企業でもスポンサーロゴが見当たらない。(背面はマントに覆われているので、従来なら腕や胸など目立ちやすい前面につけられるだろう)


コンチネンタルエリア時代のライアン(ライジング本編より)※wiki以外への転載禁止
このライアンのスーツにある「G」マークは、桂氏のラフ(『桂画集2』P117参照)やアポロンメディア移籍後、斎藤さんによる新スーツの実験の時にもそのまま残っているので、恐らくスポンサー会社のイニシャルではなく当時から名乗っていたヒーロー名「ゴールデンライアン」のGと思われる。(ちなみにTV版第2話でも、斎藤さんがワイルドタイガーの「クソスーツ」を同様に爆発させたシーンでは、架空とはいえシュテルンビルトの世界には実在する企業という事で、Top Magのロゴはついていない)


左:WTのスーツ実験シーン(TV版第2話より)右:ライアンのスーツ実験シーン(ライジング本編より)※wiki以外への転載禁止
という事は、コンチネンタル時代のライアンは、企業の援助(と制約)を受けたサラリーマンヒーローではなかったのではないだろうか?
ならば、コンチネンタルエリアとシュテルンビルトのヒーローシステムの形式は異なるのだから、アポロンメディアに雇用される前にまずは司法局から個人のヒーロー認可を取得してからでないと、シュテルンビルトで活動できない事になる。

TV版最終話から約3ヶ月後が舞台のライジングで、一体ライアンはいつの間にシュテルンビルトの個人ヒーロー認可証を申請・取得&アポロンメディアへの雇用やスポンサー契約を取り付けていたのだろうか?

◆力不足のトリックスター

ライジングにおけるライアンの役割は主に以下の3点である。
(aとbは物語の展開上の役割、cは作品を商品として見た時の役割である)

  • a:虎徹との対比的存在
バーナビーが虎徹とコンビでやっていく事を選択する理由説明の為の比較材料なのだが、片やヒーローデビューからこれまで苦楽を共にしてきた虎徹と、片や新たに来た単なる職場の同僚程度のライアンとでは、同じ土俵にすら立っていないので比較自体が無意味であり、結果作中でライアンの登場するシーンが冗長に流れていくだけになってしまっている。

  • b:視聴者に女神伝説になぞらえた事件と思わせる為のミスリードやブラフ要員
ライアンの能力や女神伝説になぞらえた事件から、一時バーナビーから怪しまれていたライアンだったが、その疑惑が晴れて上記の役割を終えた以降は、語の展開には必要不可欠な存在ではなくなり(最後まで舞台から降りないのは項目aの理由もあるが)、ライジングの物語において特別ライアンに限定しな(いどころかぶっちゃけいな)くてもストーリーの進行や成立に支障がない事から、誰がやっても変わらないブラフ要員程度の役割でしかなくなってしまっている。(特に最終のラスボス戦→朝日のシーンが顕著で「あれ、まだいたの?」と空気のような扱いである)

  • c:新しい玩具やグッズ展開・プレイスメント枠の追加
続編の企画を立てる際には、新規のファン獲得、スポンサーやグッズ等の関係で、新しいキャラクターを追加する事がほぼ必須条件となっているのだが、TV版での既存キャラの魅力を全て取り払ったり、常に既存キャラを下げたり貶めなければ新キャラクターの魅力を表現できないというのは、大いに問題である。

上記abの2項目に加え、更に項目cの為の強力な宣伝広報を合わせると「特別登場する必要のない(又は代役で充分な)モブキャラなのに、何故か虎徹とバーナビーその他ヒーローズ達を押しのけてまで主役級にごり推しをされている」という異様な状態になっている。

◆ゲスト? 新キャラ?

本来ビギニングのロビン同様、ライジングの「ゲストキャラクター」の位置づけであるライアンだが、尾崎氏をはじめ公式スタッフからは「新キャラ」「新しい仲間」と形容されることはあるが、一度も「ゲスト」と呼ばれていない。
これによって、ファンの間では一時期「本当に虎徹とバーナビーのふたりが、永遠にコンビ解散になるのではないか」と危惧されていた。

◆デザイン案完成時にも指定がなかったはずの銃

ライアンのフィギュアには銃パーツが搭載されていると、説明書に記載があることが確認されている(ちなみにライジング本編では、ライアンが実際に銃を使用している描写はない)。
彼の能力ではブルーローズのリキッドガンのような使い方は出来ない上、ポイントを争うヒーロー達の間では極端な能力の差はつけないようにしている筈なのだが、どのような意図で彼に銃を携帯させたのだろうか?

銃パーツの説明書 wiki以外への転載禁止
最終更新:2016年07月26日 00:24