きっさんらが
幻想世界Ⅱ
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幻想世界Ⅱ
次の光景は、床だった。
床をじっと見ていた。
なんだっけ。何かの途中だった気がする。
『首』を縦に動かす。そうして、視界を変える。
床をじっと見ていた。
なんだっけ。何かの途中だった気がする。
『首』を縦に動かす。そうして、視界を変える。
彼女がいた。
ずっと、僕が見ていた少女だ。
少女が手を差し出していた。
僕はそれに向けて自分の『手』を伸ばした。
手が重なる。
感触はなかったけど…それでも、合わさっていることはわかる。
同時に僕は実感する。
僕は本当にこの世界に生まれてしまったんだ。
僕は存在してしまっている。
彼女に触れられる。
世界は悲しかった。
けど、彼女は優しかった。
彼女の手に触れていると、
悲しさと優しさが同時に僕の『胸』を満たした。
僕は彼女を求めて、ここに生まれた。
新しい世界での暮らしや、得られるはずだった幸せ、あらゆるものを犠牲にして。
彼女は僕の手を引いて、立ち上がらせると、また離れていった。
そして、数歩先で手を叩いた。
僕は彼女に向けて、歩き始める。
そう…僕は歩く練習をしていたのだ。
記憶は淀んでいた。
努力しなければ、思い出せない。
彼女が手を叩いている。
歩こう。
けど、足は思い通りに動いてくれない。
また、前のめりに倒れこんだ。
それでも繰り返し、彼女は僕の手を引いて立ち上がらせてくれた。
何度目の歩行になるのか。
ようやく、彼女の前まで辿り着くことができた。
彼女は彼女の背丈の半分しかない僕の体を抱き留めてくれた。
…よくできたね。
温もりだ。
この世界でたったひとつの温もりだ。
僕の求めていた温もりだ。
ガラクタの体では、体温は感じられなかったけど。
彼女の顔を見上げる。
訊きたいことがたくさんあった。
でも、僕には口がなかったから、言葉をしゃべることができなかった。
ずっと、僕が見ていた少女だ。
少女が手を差し出していた。
僕はそれに向けて自分の『手』を伸ばした。
手が重なる。
感触はなかったけど…それでも、合わさっていることはわかる。
同時に僕は実感する。
僕は本当にこの世界に生まれてしまったんだ。
僕は存在してしまっている。
彼女に触れられる。
世界は悲しかった。
けど、彼女は優しかった。
彼女の手に触れていると、
悲しさと優しさが同時に僕の『胸』を満たした。
僕は彼女を求めて、ここに生まれた。
新しい世界での暮らしや、得られるはずだった幸せ、あらゆるものを犠牲にして。
彼女は僕の手を引いて、立ち上がらせると、また離れていった。
そして、数歩先で手を叩いた。
僕は彼女に向けて、歩き始める。
そう…僕は歩く練習をしていたのだ。
記憶は淀んでいた。
努力しなければ、思い出せない。
彼女が手を叩いている。
歩こう。
けど、足は思い通りに動いてくれない。
また、前のめりに倒れこんだ。
それでも繰り返し、彼女は僕の手を引いて立ち上がらせてくれた。
何度目の歩行になるのか。
ようやく、彼女の前まで辿り着くことができた。
彼女は彼女の背丈の半分しかない僕の体を抱き留めてくれた。
…よくできたね。
温もりだ。
この世界でたったひとつの温もりだ。
僕の求めていた温もりだ。
ガラクタの体では、体温は感じられなかったけど。
彼女の顔を見上げる。
訊きたいことがたくさんあった。
でも、僕には口がなかったから、言葉をしゃべることができなかった。
僕は『顔』を窓に向けた。
いつだって、逆行が差し込んでいた窓。
外の世界が見たかった。
世界の終わりを、この『目』で確かめたかった。
いつだって、逆行が差し込んでいた窓。
外の世界が見たかった。
世界の終わりを、この『目』で確かめたかった。