人間、エルフ、ドワーフに獣人、この4つの種族の密接な関係は語らずに終わるわけにはいかないだろう。エルフ達はある山奥の、人には到底見つけられないであろう土地で住んでいた。彼等の歴史からすれば1000年程ーーあらゆる外敵や種族からは無縁の生活を送っていた。

 エルフの君主『スゥプリウム(エルフの言葉で至高と言う意味らしい)』は、数百年に渡り一族を代表して統治してきた、見た目は美しい金髪の青年であったと言う。彼の誤算は、人間が彼等が思っていた以上に強欲で、狡猾で、信用に足り得ない存在であったと言うことだ。その繁殖力を持ってして、エルフの国の土地を見つけ、あろう事か侵略すらしようとした。無論、彼等は精霊と密接した関係にあり、人間の侵略はとうに察知していた。強力無比な精霊魔法によって人間側の数師団が消滅した辺りで進行は止まった。

 スゥプリウムは、この無意味な戦いで命を落とす人間達に、そして、次第に荒廃していく自分達の土地に涙を流し、この争いの無意味さを説くために、あろう事か人間の国の王と直接会い、双方が納得する形で協定を結ぼうと手まで差し伸べた。

 国王は承諾し、エルフと人間は幸せに暮らしましたとさーーーとはいかなかった。

 国王はスゥプリウムを宴会に招き入れ、国王を信頼した彼はその場で毒を盛られ、もがき苦しむ所を惨殺した…と言い伝えられている。数世紀に亘る、一族の王にしてはあまりにも呆気なく、無惨な最後であった。

 兎も角、指導者を失ったエルフ達は土地を追われ、暫くの間は迫害されていたが、彼等の精霊魔法や文化は貴重かつ重宝するものであると言うことが分かり、打って変わって招き入れ、今に至る。

 最初こそは反発があったであろうが、今は比較的、良き隣人の様な存在として受け入れられている。


――最も、これは人間側の視点であり、彼らからすれば別の話であろうが…



───エルフ部門名誉教授/ヴェーメル・アルメーレ
最終更新:2022年07月24日 21:40