397 彼女はコン、と泣いた 天城九曜真道阿須賀ミーティア、郷里沙織、ヒグマーマン、大海ミリア、リエル・リュシエール
九曜が真道をミーティアたちの下に送り届けるも、そこは暗いムードに包まれていた。マーダーに襲われて桜が死んだのだと言う。
更に放送でも多くの仲間がこの戦いで命を落としたことには悲しみを覚えた。
特にミリアは兄であるクライヴことイヴァンの死に大いに嘆いた。
しばらくするとリエルが合流し、九曜に因縁ある田山の件を教えられる。
大好きな仲間や後輩たちを守るためにどんな手を使ってでも奴は殺す必要がある――ふとライヘンバッハの滝の方面から仲間と田山のものと思わしき気を感じた九曜はそこへ向かうことに。
仲間たちとの別れ際に「私のことを忘れないでね」と呟きながら、九曜は涙を流して走り出した。
398 舞い降りた聖剣 夕露美維兎、ロボロン九条由奈回縞ロックスヒューマンスレイヤー、時軸未色、桜井カリン、雪風はるか、ジョン・ウェイン・ゲイシーレイ=ラグナウッド、魔人ウロボロス、大海舞菜、ブレイン、御神薙立華
由奈と合流した夕露とロボロンはライヘンバッハの滝へ向かっていたが、そこへ異形化したスーサイドの亡骸が襲いかかる。
異形はロボロンと由奈を吹っ飛ばし、夕露を捕まえると食おうとする。
ここまでかと諦めかけた夕露だったが、食われる寸前で一発の砲弾が異形を粉砕して九死に一生を得る。
夕露を助けたのはロボディに乗ったロックスであった。
夕露はロックスの帰還に喜び、今度こそ仲間を守れたと安堵する彼へ挨拶がわりに一発殴った後に抱きしめた。
それを見てまるで親子デスねHAHAHAと笑うロボロン
その直後に後から着たアイドル・ヒュスレ一行やウロボロス、勅使峰との協力によって首輪の解除に成功した舞菜、モリアーティたちの戦いから逃げてきたブレインと立華と合流する。
ブレインと立華のよると、モリアーティの戦闘力はここにいる全員でも無策で挑めば全滅させられるだけの実力はあり、さらに同格の戦闘力を持つ田山までいるのだという。
ではどうするのかと悩む夕露たちだったが、そこへ立華が持っていたトロナの形見である剣が輝きだした。
魔術師である舞菜とブレイン曰く剣には神聖の力が宿っており、トロナには神聖魔法の素質があったために死ぬ間際に剣にエンチャントされたのだという。
これは行けるかもしれないと思った夕露はさっそく作戦を立案し、二人の魔人を撃破する作戦を企て、ライヘンバッハの滝へと向かう。
モリアーティの絶大な力を前に一時的に恐慌状態に陥った立華は足がすくみかけたが、真由の願いとトロナ・ザコットの勇気を思い出し、戦いが得意というわけではないが死んでいった者の分も、この戦いの行く末を見届けたいと思い、同行した。
舞菜のみ、ミリアのいる後方の対主催がジョージに襲われる危険があったので夕露の指示によりそちらへ向かった。
399 SMILE セラフィム田山、魔人モリアーティ、真崎洸、夕露美維兎、ロボロン九条由奈回縞ロックスヒューマンスレイヤー、時軸未色、桜井カリン、雪風はるか、ジョン・ウェイン・ゲイシーレイ=ラグナウッド、魔人ウロボロス、ブレイン、御神薙立華
田山は焦っていた。
戦いは優勢だったがモリアーティは強く、モリアーティほど強くないが決して侮れる相手ではない洸の存在もあって消耗を余儀なくされる。
このままだと勝てても後の対主催や主催を倒しきる余力が残るかもわからない。
そこに夕露たちが辿り着いた……嬉しい誤算に田山はニッコリと笑う。
上手くモリアーティに夕露たちをぶつけて、田山はトンズラすることに決める。
モリアーティと対主催、どちらが勝っても消耗は免れず、後で戻って弱ったところを粛清する算段なのだ。
しかしそうは行くかと対主催は田山を包囲する。
だが一人だけ戦い慣れしていないもの……未色のロボディには動きにキレがないことを見抜いた田山は殴り殺して進むべく高速でバットを振りかぶった。
だがそれを庇ったのはサレオスことカリンであり、肉体に致命的なダメージを受け、契約していたサレオス自体も捕まってしまった挙句に田山を逃がしてしまうも、未色を救うことができた。
未色は涙ながらになぜ自分を庇ったのかとカリンに問う。
未色は不死蝶の再生力があるので簡単には死なないと言ったが、カリンは田山はそのぐらい予測して不死蝶をも殺せるマナをバットに込めていたことや、未色が不死蝶とバレれば田山が喰らってさらに力をつけて手が出せなくなってしまうこと……そんな打算以上にファンを守りたかったのだとカリンは言った。
カリンは最後の力を振り絞って未色に激励の言葉をかける。

「未色…ちゃん…ほら、笑って…
 アイドルは、女の子は…笑顔が…一番の力なんだよ…
 笑顔のアイドルは…最強なんだから…」

一人のアイドルが落命した。
未色だけでなくロックスも大いに悲しんだが、夕露の指示によりレイと共に逃走した田山を追うことにした。
そして洸と合流した対主催たちがモリアーティと総力戦を繰り広げることに。
400 キラークラウン ジョージ・ラングセンディスメラ・スイート、ブッチャー、ミーティア、郷里沙織、ヒグマーマン、真道阿須賀、大海ミリア、リエル・リュシエール
九曜と別れたミーティアたちの前にジョージ、ディスメラ、ブッチャーが襲いかかる。
ヒグマーマンが応戦するも、ディスメラはともかくブッチャーの戦闘力はずば抜けており、北海道パワーも通じずに地面にめり込むことになる。
ブッチャーは負傷してろくに動けない真道やリエルに銃口を向けるが、ミーティアが二人の盾になろうと献身する。
だがブッチャーはなぜかいつになっても撃ってくることはなかった。

一方でミリアを発見したディスメラは彼女を追い詰めて照準を合わせる。
ジョージから「伴侶を奪われたのだから、おまえはクライヴにとって大切な物を根こそぎ奪う権利がある」と諭されたディスメラは引き金を引こうとするが、ここでも誰かの泣き声が聞こえて引き金を引くことを躊躇った。
しかしジョージの「殺せ」「ラップスのために復讐するんだろ?」という鶴の一声により、とうとうディスメラは引き金を引いてしまう。
ミリアは自分が死ぬことでこれまで助けてくれた仲間たちの努力が無駄になることと、愛する兄と義理の姉の名前を叫びながら、顔面を打ち抜かれて吹き飛ばされた。

復讐を終えてミリアを惨死体に変えたというのに興奮も楽しさも感じられず気の晴れないディスメラ。
そんな彼女の機体に沙織は大泣きしながら石を投げつけた。
どうしてミリアお姉ちゃんを殺したのかと嗚咽を漏らす沙織から、ミリアがディスメラが考えていたような下衆な人間ではなかったことを教えられる。
私怨で無実の人間を殺してしまった……その事実が重くのしかかり、ディスメラはショックを受ける。
耳の奥で聞こえていた泣き声の正体は死んだ恋人のもの――愛するラップスの姿を模した自身の良心であるとディスメラはようやく理解し、最後の良心が必死にディスメラをただの殺戮者にしないようにしていたのである。
それを振り切ってミリアを殺してしまったことにディスメラは多大な罪悪感を覚えることになった。
罪悪感を感じるのはディスメラはネクロフィリアだが本質的には善人だからである。
もう彼女には対主催に対しても引き金が引けなくなっていた……
401 モリアーティという男 魔人モリアーティ、真崎洸、夕露美維兎、ロボロン九条由奈時軸未色ヒューマンスレイヤー、雪風はるか、ジョン・ウェイン・ゲイシー、魔人ウロボロス、ブレイン、御神薙立華、勅使峰碧、千太郎、ファックマン
モリアーティの力は強大であったが孤立無援であり、対主催の熾烈な総攻撃を受けることになる。
洸の温度差攻撃、夕露の歯の妖精、ロボロンの砲撃、由奈の狙撃、未色の射撃、ヒュスレの痴漢技、はるかの魔法、ゲイシーのワープを使った戦術、ウロボロスの野球、ブレインの魔法(物理)、立華による防御術に流石のモリアーティも苦戦を余儀なくされる。(これだけの攻撃を喰らって苦戦で済むモリアーティも驚異的だが)
消耗やむなしで滝の近くにある戦闘禁止ハウスへ逃げ込もうとするモリアーティ。
あの内部では戦闘はできない……そこで少しでも休めば魔力が充填されて再び戦えると見越しての判断であったが、モリアーティが入ると同時にハウスは爆発した。

事前に脱出していた千太郎は以前ハウスを利用したモリアーティが再びここを使うだろうとヤマをかけ、勅使峰やファックマンと共に誰かが入ろうとすると爆発するようにハウスに細工を施したのだ。
今の千太郎たちには首輪がなく、内部で戦闘をすればハウスのルールによって爆破される心配はない。
ハウスの破壊は千太郎自身が家の呪縛から自身を解き放つためであり、今まで自分を守ってくれた家への供養でもあった。

目論見が外れたモリアーティに更にヤッタルマンの仇としてファックマンが機関銃のような精液攻撃を受ける。
いよいよ持って満身創痍となったモリアーティだったが、彼にブレインと立華が突撃してきた。
ブレインは真理を追求した肉体でモリアーティの攻撃から立華を守る盾となり、その隙に立華は護符の力で更に神聖さに純度が増したトロナの剣でモリアーティを刺した。

だがそれは決してモリアーティを殺すための剣ではなかった。
402 犯罪紳士の最後の挨拶 魔人モリアーティ、御神薙立華、真崎洸、夕露美維兎、ロボロン、九条由奈、時軸未色、ヒューマンスレイヤー、雪風はるか、ジョン・ウェイン・ゲイシー、魔人ウロボロス、ブレイン、勅使峰碧、千太郎、ファックマン
トロナの神聖魔法と願いが合わさった剣が貫いたのはモリアーティの命ではなく、彼の中にある魔人の力そのものであった。
魔力を浄化されたモリアーティからみるみる内に力が抜けてただの人間にしてしまった。

モリアーティを捕まえることや殺すこと自体は相応の力があればできる。
だが魔人モリアーティは魔人の力で脱獄は容易であり、殺しても魔人の力があれば蘇生することもできるかもしれないし、例え本人がそれを望んでいなくても魔人の力を求める他者によって復活するだろう。
殺すこと=勝ったことにはならないのだ。
モリアーティに完全敗北をもたらすには魔人の力そのものを奪うしかなかったのだ。
そしてモリアーティは正解を……自分に完全な敗北をもたらせる者の到来をずっと待っていた。
すなわちトロナの感じていたモリアーティの救われたいという願いと死闘の果てに自身を完全に打ち負かす者の存在が欲しいということは一致していたのである。
ライヘンバッハゲームの答えが『最後の事件』ではなく『空き家の冒険』だったのも、その逸話の内容のようにシャーロック・ホームズのように自分に敗北をもたらすものの再来を願ったためであった。
さらの自分を負かした者たちの戦いがここで終わりではなく、以降の事件でも『希望』を持って『輝き』続けるように祈りが込められている。

人間に戻ったモリアーティを殺すのも捕まえるのも容易であったが、モリアーティはあえて最後まで対主催を喝采しつつ高笑いを挙げながら崖から身を投げた。
このまま生きていても自分に付き合って先に死んだ柊たちにすまないと思ったことと、自分を倒した対主催が自分を殺すにしろ捕まえるにしろ手を煩わせることになるので面倒をかけたくないとのモリアーティなりの敬意であった。

首謀者の死により、ライヘンバッハゲームはこれで幕となる。
戦いの後、立華がトロナの遺品とトロナが持ってた真由の手袋回収し、静かに勝利を告げた。
403 九回裏ツーアウトの舞台に舞い降りた絶望 セラフィム田山、天城九曜、織田信長、岬朔郎
サレオス「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい!待って!助けて!待って下さい!お願いします!」
田山「地面にさ!頭を!擦り付けて死ね!」
サレオス「アアアアアアアア!(断末魔)」

ライヘンバッハの滝から逃げ出し、さらに捕まえたサレオス本体を殺して魔力を吸収することで回復した田山。
多くの魔人の力を吸収した結果、単純な実力で田山に敵う対主催はいなくなり、モリアーティさえ死ねば自分のいる場所以外を太陽の業火で焼き払って参加者を皆殺しにすることさえも可能。あと少しの時間さえあれば優勝は確定だ。

だが、逃げ込んだ先で後輩を次々殺されたことを弔うために九曜が立ちふさがった。
九曜にはもはや躊躇いはなく、ただ死んだ後輩と生きている後輩たちのために九曜も自分の中に眠る妖狐…九つの尾を持った恐るべく古き魔獣へとその身を変える。
妖狐の魔力は上位の魔人レベルであり、田山もまた油断できないと全力で戦うために各地に仕掛けた十字架からエネルギーを集めようとした。
ところが、エネルギーは集められるどころか逆流して十字架の方に流れていき、今まで奪ったネメス・アアアア・サレオスの力を一辺に失ってしまう大幅なパワーダウンを招いた。
それもそのはず、遠くにいた信長と朔郎が多くの十字架に細工を施し、退魔術の要領でエネルギーが逆流するように仕向けたのである。

結果、九曜は弱っていたとはいえ田山相手に互角以上に渡り合うことができた。
今の九曜にはスフィアや野球による攻撃すら簡単には通らなかった。

田山「ど……どけえ! 俺は熾天使として全ての人類を粛清しなけりゃならないんだ!」
九曜「自分のことしか考えられない男が粛清だと!? 戯言を抜かすな!
   この姿になった以上、私は二度と人間には戻れない。
   三晩もすれば知能も獣レベルにまで下がる。
   その前におまえだけはここで殺す!
   それが助けられなかった後輩たちに私ができるせめてもの手向けだ!」

妖狐化は多大な呪力と引き換えに自身の心と記憶をも犠牲にする諸刃の剣。
田山を滅ぼした後には破壊の獣となる前に仲間に介錯してもらう覚悟で九曜はその身と心を犠牲にしたのだ。
野球に例えるなら九回裏ツーアウト満塁……どちらかが押し切ってアウトを奪うか逆転のサヨナラホームランを取るかで試合(死合)の結末は変わる。
404 熾天使、終焉のとき セラフィム田山、天城九曜レイ=ラグナウッド回縞ロックス
九曜に押される田山だが、セラフィムの力を引き出して更に有利に立とうとするも、突如に右腕を吹き飛ばされる。

レイ「さてと、もうひとつの仕事をやらなければならないですからね…魔人セラフィム…」

魔族であるレイが駆けつけ、田山に手傷を負わせてスフィア攻撃から九曜を守った。
ただでも強い九曜に加えて魔族の参戦は現状の弱って自分ではまずいと思い、田山は体制を立て直すべく逃走を選択する。

田山「くそ……こうなりゃ俺の盗塁術」
ズドンッ!(足に砲弾が命中し、はじけ飛ぶ)
田山「あ、足があああああ!!」
ロックス「アンタへの借りを返しに来たぜ」

逃げる寸前で九曜とは別のもうひとりの復讐者、田山と深い因縁を持つロックスの狙撃によって阻まれた。
右手と両足を失った田山は三者に一方的に攻められる。
最後に九曜は妖狐の力を使い、今まで田山が殺した者の怨念を世界中からかき集めた。
田山はあまりにも身勝手な理由で人を殺しすぎたために彼を恨む者を増やしすぎたのだ。
多くの参加者だけでなく、粛清と称して全く関係のない動画サイトの社員や町の住人、浄化杜のテロリストと、一万人単位で虐殺したために大量の怨念が九曜の爪に集まったのだ。
ホモビ男優として馬鹿にされる人生は確かに苦であったのかもしれないが、田山はそれを理由に人間にとってタブーである殺戮を……しかも己の腹いせと恥を消すためだけに行ったために、人類にとっていてはならない天使(あくま)になった。
誰からも怨まれなければ呪力はここまでたまらなかったが、人間としてやってはいけないことをしてしまった挙句に笑い者にされるどころか命を奪われた者が大在いるのだから、これだけ怨まれても無理はない話だった。
かつて蔑んだヒーローに言ったように、「自分の都合は押し付けても他人の事情を考えないクソガキ」に田山は知らず知らずになっていたのである。
そうして溜まりに溜まった呪力はセラフィムと化した田山でも震え上がるレベルであり、なんとしても逃走を試みる。

悪足掻きとしてスフィアの一つ、ザフキエル・ビナーを使った時間停滞能力を発動する。
左腕だけで三人は殺せないが、羽はまだあるので逃げることはできるかもしれない。
そんな浅はかな希望はロックスによって文字通り撃ち砕かれた。
逃げようとしたところをロックスの砲撃で田山は撃墜され羽とスフィアを失った。
時間停滞能力は九曜とレイには確かに効いたが異能殺しの障壁を持つロボディ・バーゲストには無意味だったのだ。
そしてありったけの呪力が詰まった爪が芋虫のようになった田山に迫る。
田山内部のセラフィムは最後の手段として精神体となり、田山を乗り捨てて別の誰かに移ろうとしたが、セラフィムの悪巧みを察したレイの魔術によって失敗し、田山の体内に釘付けにされた。
もはや田山もセラフィムにも運命から逃れる術はない。

田山「この俺が…熾天使である俺が…こんな魔族なんかに」
レイ「こうみえて私、過去に多くの天使を倒してきましてねえ…
   流石に熾天使となりますときついですが、今の貴方ならこうすれば」
田山「ギャアアアアアア!」
レイ「さて、トドメは貴方に譲りますよ」
九曜「あんた…まあいい!後輩たちの敵だぁぁぁぁぁ!!」

目に焼きつく憎悪、耳にこびりつく叫喚。妖狐、天城九曜が叫ぶ。復讐するは、我にあり。

田山「死にたくねぇ! 死にたくねぇぇぇぇぇ! やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!」

肉体はおろか魂すら四散させるほどの呪いの一撃。
傲慢なる黙示録の熾天使は地獄へと落ちた。
二度と人の道は歩めない妖狐の体に成り果てた代償よりも、仇敵を討ち取れたことに感極まり「みんな…敵はとったよ」と涙を流す九曜。

一方、バーゲストのコクピットの内部。
最後に田山の頭が妖狐の爪で弾け飛ぶのを見て生体反応のロストを確認し、それをモニターで見届けた後に涙を流しながら香織だったものに静かにキスをするロックス。

「香織、わかっている。
まだ終わっちゃいないんだよな……俺は最後まで逃げずに戦うよ」
405 裏切りの戦場 葬られた誓い ディスメラ・スイート、ジョージ・ラングセン、ブッチャー、ミーティア、郷里沙織、ヒグマーマン、真道阿須賀、大海ミリア、リエル・リュシエール
自分の良心の呵責に気づき、人を殺せなくなったディスメラ。
突然、殺戮の手を止めてしまったディスメラをジョージは監督として発破をかけようとするが、死体は見てもその人間自体は撮影道具としかみなしていないジョージのおぞましさを再確認し、これまで自責の念と快楽に葛藤していた彼女は今までの殺し合いのなかでジョージが映していた映像の全てが詰まったフィルム・カメラ・パソコン全てを破壊した。
高校の黙示録、セラフィム決戦、ライヘンバッハゲームの惨劇を映し出した映像は永遠に失われた。
苦労して撮影した宝を一瞬で水の泡にされたことにジョージは発狂寸前になるほど怒りだし、ブッチャーに裏切り者のディスメラを真っ二つにして殺すように命令を下す。
ディスメラは自分が殺されるのは承知の上でジョージの宝を破壊したのであり、ディスメラはラップスを失ったことに始まった不運から既に生きる気力を失っていた。
死ねばラップスのところへ行けるのか、それとも自分は地獄に落ちるから会えないのか……あの世の行き先だけが気がかりだった。

ところが、ブッチャーが真っ二つにしたのはディスメラではなく、マスターであるハズのジョージの方だった。
突然の仲間割れに驚くディスメラとミーティアたち。
よく見るとブッチャーのカメラには涙のような機械油が溢れており、そして通信でディスメラ機に話す。


戦いは残酷で淋しいと・・・・・・


ブッチャーはジョージに殺戮者件俳優の役割を持って生み出されたが、親であるジョージと違い、ブッチャーが殺戮の中で見てきたものは戦いの虚しさだった。
誰かを殺し誰かを殺される度に惨劇を楽しむジョージの道具であることと、彼の快楽を満たすだけの戦いに価値を見いだせなくなり、同じ映画を見ながら人それぞれの感性が違うように、ジョージのあずかり知らぬ内に思考を違えるようになったのだ。
そしてディスメラに「ある興味」があったために殺すことを躊躇い、彼女を守るためにマスターには絶対服従というプロトコルを、進化する「Q」の力で書き換えて反抗したのだ。

ジョージ「がはっ・・・・・・貴様だって、正義の名目に何人も人間を血祭りにあげて楽しいんできただろ!
クソッ、せっかく俺の惨殺死体ができあがるシーンだって言うのにカメラがない。
全部トンだ裏切者のせいで・・・・・ぐふっ・・・・・・」

真っ二つになったジョージは死に際に裏切り者たちに恨みの言葉を呟いて逝く。
自分が死ぬことを恨むのではなく、自分の死を撮ってくれるものがいない現状の方を最期まで呪っていた。
まさに同じ人とは思えぬ狂気じみた情熱の持ち主だったが、その人間離れした情熱こそがブッチャーの叛意を招く命取りに繋がり、辛うじて人間性を取り戻したネクロフィリアとの相違点でもあった。
406 殺人鬼ディスメラの涙 大海舞菜ディスメラ・スイート、ブッチャー、ミーティア、郷里沙織、ヒグマーマン、真道阿須賀、リエル・リュシエール
首輪解除方法を見つけ出し、これでミリアと仲間を殺し合いから解放できると心膨らませる舞菜。
しかし、希望を持って非戦闘員組を迎えに行った舞菜に待っていたのは、妹のミリアの死という残酷な現実であった。
怒り狂った舞菜はマハトマを駆り、下手人のディスメラを殺すために攻撃を仕掛ける。
一方で生きる気力を失ったディスメラは避けようとせず、私怨で殺してしまったミリアへの償いのために死ぬつもりであった。
ところがブッチャーが舞菜の攻撃からディスメラを守る。

なぜ私を庇う。疲れているんだ。死なせてくれというディスメラの言葉に対してブッチャーは返答した。
おまえが死んでしまえば、『おまえの中にある命』も同時に消えるがそれでも良いのかと。

ブッチャーは以前からディスメラ一人に生体反応が二つあったことに疑問と興味を抱いていたのだという。
つまりディスメラはラップスとの子供を身ごもっていたのだ。
すっかり生きる気力を失っていたディスメラだが、胎内に子供がいると聞けば死ぬわけにはいかなくなった。
子供はラップスとの愛の結晶であり、自分はどんなに汚れていたとしても産まれてくる子供には罪はない。
子供が産まれるまではどうしても死ぬわけにはいかなくなったのだ。
怒りを燃やす舞菜がいるので投降しても殺される可能性が濃厚と見て、ディスメラはブッチャーと共に舞菜機を振り払い、その場から逃走した。
追おうとする舞菜だったが、魔力切れでマハトマが止まってしまい追撃は断念するしかなかった。
復讐もできぬまま、首から上がなくなってしまったミリアに対し「痛かったでしょうに……」と嘆くしかなかった……
407 懇願と願望 天城九曜回縞ロックスレイ=ラグナウッド
田山を打倒し、ネオ・ブレーメンズ本体へ合流しようとするロックスとレイだったが、途中で九曜が二人に介錯を頼み込む。
妖狐化したために九曜の精神は早くも獣化が始まっており、いつ暴走して仲間に襲いかかるかわからないのだという。
実際、古の魔獣の本能からすぐにでも二人を喰らいたいという衝動が湧き、襲いかかってしまう。
九曜としては人間としての自分が喪失しきる前に綺麗な思い出を持ったままこの世から消えたいと思っていた。
だがロックスは九曜の意に反し、ロボディのマニュピレーターで捕まえるだけで殺すことはしなかった。
ロックスは「ふざけんな、もう仲間が死ぬのはごめんなんだよ」と言い、レイは「あなたが守ろうとした人たちを信用してあげたらどうですか?」と希望を持たせた。
ブレーメンズの誰かが九曜を元の人間に戻す術を知っているかもしれない。
そんな希望を抱いて本能で暴れる九曜を抑え付けながら仲間たちの元へ急ぐ。
408 集うサバイバーズ 夕露美維兎、ロボロン九条由奈時軸未色ヒューマンスレイヤー、雪風はるか、ジョン・ウェイン・ゲイシー、魔人ウロボロス、ブレイン、御神薙立華、真崎洸、勅使峰碧、千太郎、ファックマン、ミーティア、郷里沙織、ヒグマーマン、真道阿須賀、リエル・リュシエール、天城九曜、回縞ロックス、レイ=ラグナウッド、織田信長、岬朔郎
ミーティアら非戦闘員組に合流する夕露たち。
ネオ・ブレーメンズは多大な犠牲を払ったが、モリアーティ一派の討伐には成功した。
首輪解除の方法も見つけ、殺し合いからの脱出も可能になった。
一方で対主催と思われたディスメラが(仲間割れなど複雑な事情はありそうだが)モリアーティ一派の仲間であり、ブッチャーという無人ロボディを連れて逃走中だと言う。
未だに怒りがおさまらない舞菜は討伐を進言するが、舞菜が冷静さを失っていることと全員が消耗している上での深追いは危険すぎることで却下された。
舞菜自身も師匠のブレインに諭されて、これ以上の犠牲を避けたいなら自制するしかなかった。
あとは田山が気がかりだった一行だったが、そこへ妖狐化した九曜を抑え付けているロックスとレイが現れ、田山は既に死んだことを教えると同時に早く九曜救ってくれと頼む。
まさか妖狐の姿になった九曜を見て江洲衛府島学園の後輩たちが絶句したが、それでも信頼している九曜先輩に変わりなく、急いでヒーラー担当のミーティアに治療を頼み込む。
そしてミーティアが暴走しそうな九曜に適切な薬品を可能な限り使ったことで暴走は止まった。
その薬品材料に何故か媚薬までぶち込んでたので九曜がアヘりかけたが、結果として魔獣の本能が引っ込んだので大正解であった。
この直後に信長と朔郎も合流し、生き残った対主催が総集合した。
409 Rage! Rage! Rege! ミルドレッド・イズベルス
主催本拠地……その研究室でクライヴの首もとい脳が、何かの培養槽に浮かんでいた。
目の上のたんこぶを取り除き、良質の素材を手に入れたことに嘲笑を浮かべるミルドレッドはクライヴの脳に対して映像を流す。
それは妹のミリアが惨殺される瞬間の映像であった。
ミルドレッドの最悪すぎる嫌がらせにクライヴは人間としては既に死んでいるにも関わらず、脳波が乱れた。
まさか自分がテロリストであったことによる因果が自分だけでなく、ミリアに降り注ぐことまでは予期していなかっただろう。
今の彼はとてつもない絶望感に包まれているに違いない。
そしてクライヴの脳はミルドレッドの手によって加工され……何かのパーツになった。
高笑いをあげるミルドレッドの後ろには「Q」搭載型ロボディを中心に、たくさんのロボディが佇んでいた。
410 それでも、生きていこう 郷里沙織ヒグマーマンミーティア、真崎洸、魔人ウロボロス、天城九曜
戦いでなくなった者たちの墓を作り弔うブレーメンズ。
沙織とヒグマーマンは二人で桜の墓を作り、北海道特産品セットをお供え物として添える。
パパとヒグマーマンと一緒に桜お姉ちゃんを連れて北海道に旅行に行ってみたかったな、と泣く沙織。
泣いてばかりもいられない……自分にはこれからどれだけの不幸が待っていてもくじけずに生き延びなければ、守ってくれた桜の犠牲が無駄になってしまうのだから。

沙織とヒグマーマンが一行の下に戻ると、
怪我人の治療につきっきりのミーティアがいた。
たまに気に入った男子を遊んでやろうと企んで他の人に止められていたが。
ちょっと嫉妬っぽい反応を(魔人形態で)する洸。
それをからかうウロボロス。
ほう…やるな…と意外な反応のF。
なんだこいつら…と(妖狐形態で)呆れる九曜。
そしてにミーティアにツッコミを入れる沙織。
この子が明るい表情がどんどん増えていったのも桜ちゃんのおかげなんだろう……ヒグマーマンはそう思った。
411 来世でまた会いましょう ロボロン御神薙立華真道阿須賀
勇者ザコット勇者トロナを弔ったのはロボロンと立華、真道であった。
十字を切り、アーメンと祈りを捧ぐロボロン
立華は自分の弱さのせいでトロナを守ることができなかったことを悔いていたが、横にいた真道は死んでしまった奴らの分もこれから頑張れば良い。そんでもって来世でまたダチになればいいさ、と立華を諭した。
横から真道の輪廻転生の話を聞いていたロボロンもまた、来世でトロナと良きフレンドになれるように更なる祈りを捧げた。

なお、真道はミーティアが苦手なために立華に治療をしてもらっていたが、傍から見たら完全に恋人同士である。
412 戦士はヴァルハラに還るのか? 夕露美維兎、織田信長
首輪も解除し、生き残った者はいつでも脱出できるようになった。
だがおそらく、スエボシたちの妨害は入るだろう。
そのために戦いの準備が必要と見て、集団の指揮ができる夕露と信長は計画を練る。
一方で夕露はブレーメンズにとってクライヴが志半ばで倒れたことが気がかりだった。
奴とは敵同士であり、宇宙を救うためという目的があったとはいえ異能者狩りをやめる気はなかったので殺し合いが終われば再び殺し合う仲であっただろう。
軍人的にはテロリストの幹部は死んだ方が江洲衛府島のためになるのは頭ではわかっているが、できればブレーメンズの手で決着をつけたかったと夕露は信長に語る。
信長はクライヴほどの男がこれで終わるとは思えないがな、と答えた。

既に死んだのにか――?
否、器の大きい男ほど死後であっても何かを成すものだ。
戦国時代における数多の武将のように。
お主が羅天という男からブレーメンズを引き継いだように。
413 LOVELY×CAUTION 雪風はるかヒューマンスレイヤージョン・ウェイン・ゲイシーファックマン
死者の埋葬の手伝いを終えたヒュスレ一行。
はるかはヒュスレとゲイシーに今後、もし戦いで自分が洗脳されるハメになったら躊躇なく殺して欲しいと頼む。
自分は洗脳に対する耐性が皆無であり、容易に操られてしまう。
この後も激しい戦いが起こらないとも限らず、仲間を傷つけないためにも介錯して欲しいと頼んだ。
だがヒュスレとゲイシーは断った。仲間は愛すもので殺すものではない、と。
洗脳されたら、再び痴漢技で救ってあげるから気にするなと二人ははるかに伝えた。

その裏ではヤッタルマンを埋葬していたファックマンがはるかを見ていた。
実はこのファックマン、はるかに一目惚れしており、洗脳体質に悩む彼女の力になれないかとずっと考えていた。
ヤッタルマンに貸していた最後のバイアグラを回収し、彼女がいざという時には使うつもりである。
414 緑と碧、ちょっと赤色 千太郎勅使峰碧
千太郎はロボディの操縦訓練を行っていた。
千太郎は自分に殻に引きこもる以外の道を示してくれた勅使峰のために働きたいと願っており、一機だけロボディが余ってると聞き、パイロットに志願した。
体験ゲームで鍛えただけなので、戦力的には壁と砲台代わりぐらいにしかならないのはわかっているが、それでもかっぱ巻きを作れるだけの男よりはマシだと思い、死ぬ気で技術を叩き込む。
そしていざという時のために信頼できる勅使峰に家族宛の遺書を渡した。
勅使峰は遺族にこんなものを渡すより生きて私の財閥で働いてくれた方が良いと言った。
それは単に千太郎を労働力とみなしているわけではなく、今までが冴えなかっただけでモリアーティ戦で見せたように本当は「やればできる男」「不可能を可能にする男」であるからである。
初めて人間に、それも美女に褒められたことに千太郎の緑色の頬が赤く染まった。
415 歌の力 時軸未色、岬朔郎、九条由奈
未色は今までのことを振り返り、歌詞という形で思い出を残そうとしていた。
司空、水本、そしてカリン……殺し合いは悲惨であったが、彼らの事は決して忘れたくない存在であった。
彼らのことを歌という形で誰かに伝え、世界に永遠に残して起きたいと思っていた。
朔郎も由奈もそれを手伝い、世界一優しい魔王や最高のスナイパーの話もつけ加えられていた。
本当に喪うには惜しい素晴らしい人がこの殺し合いではたくさんいたんだと実感する。
他の人からもっと話を聞きたいと思う未色だったが、時間がなかったことや未だに悲しみを抱えた人がいたために、今は中断する。
続きを聞いて歌詞を完成させるには生き延びる必要がある……だからこそ死ねないし、仲間に死んで欲しくせるわけないと思っていた。
416 ようやく握り会えた手 回縞ロックス、ブレイン、大海舞菜、リエル・リュシエール天城九曜
ロックスはとうとう限界を迎えた愛機バーゲストに別れを告げていた。
紛争の時からの付き合いで愛着とラップス、羅天、雅との思い出がつまった機体だけに失うには非常に惜しかった。
そこへブレインが大量のパーツと亡きクライヴの乗っていたシルキーを抱えて持ってきた。
愛機はもうだめだが、自分が仲間を守るためにはロボディの力が必要だったのでブレインに使えそうなパーツ探しを頼んだのである。
幸い、シルキーは破損した足以外は使える様子だったので、そこに無事だったバーゲストの脚部などの使えるパーツを組み込むことで継ぎ接ぎのロボディ『シルキー・リペア』として再生させることにする。
その途中で舞菜が現れた。
舞菜は殺し合いの序盤の方で弟を失ったばかりのロックスを振り払うような真似をしたことをずっと気にしており、特に自分も妹を失ってからはその気持ちはより一層強まり、同じ心の傷を抱えた者としてすぐにでも謝らなければならないと思ったのだという。
ロックスは気にするなと言い、弟の死が原因で闇落ちした者として心を強く持って欲しいと言った。
そしてディスメラのことを許して欲しいとも言った……向こうも恋人だった俺の弟を失っていて、俺が裏切ったばかりに暴走したに違いないと語り、責任は自分にあると言った。
舞菜はディスメラは許せないし、再び目の前に現れたらボコボコにし、自分たちに牙を向けてきたら容赦なく殺すが、友達のロックスに免じて、そしてあの女のように私怨で人を殺すクズにならないために自重はすると宣言した。
とはいえ、大切だった弟と妹を思い出すとロックスと舞菜は悲しみで涙が止まらなくなる。
そんな二人を慰めたのは事故で妹を失っているリエルであった。
田山から自分を助けてくれた恩返しとして涙で手が止まっているロックスの代わりに修理を手伝い、舞菜もまた悲しみを振り払うように修理を手伝った。

そこへ治療を終えた九曜も修理を手伝おうとするが、手が獣になっているために物を掴むことができず、後輩と同じことができないことに消沈するが、そんな彼女に舞菜が言った。

舞菜「……天城先輩、知ってます? 撃たれた人を宇宙人の姿に変異させる銃が存在してるんですよ
   でも、私は元に戻す魔法を見つけたんです。まあ、変異方法が異なる先輩に当てはめることは出来ませんけど、
   先輩も人間に戻す方法を必ず見つけ出してみせますから。この天才美魔女に任せてください!」

慰めなのか空元気で言ってるだけなのか分からないが、九曜は舞菜のおかげで少なくとも前向きになれた。
それを傍から見ていたブレインは、舞菜に師匠である自分はもう必要ないと悟る。
なぜなら舞菜は誰も守れなかった真理よりも大切なものを見つけたのだから。
417 魔人の助言 真崎洸
突然、Fが語りかけてきた。
好きな女性がいるなら今のうちに口説き、抱いて、精を注いでおけ、と。
何を言ってるんだおまえはと赤面する洸だったが、これにはFなりの考えがあった。
対主催が主催を殲滅するのか脱出に留めるのかは不明だが、いずれにせよ主催が見逃すとは考えられず確実に戦いになる。
その場合は魔神マキシムとも交戦するだろうが、洸の実力ははっきりいって同じ魔人であるウロボロスよりも劣り、かち合えば時間稼ぎ程度が限界でいとも容易く殺されるだろう。
ならばFに体と魂を明け渡せばワンチャンスあるかもしれないが、Fは体を乗っ取った瞬間裏切ってマキシムのみならず対主催にも攻撃を加えるだろう。
どうせ死ぬならば好きな女を犯して未練を無くして方が良い。
運がよければ女が生き残って子種も残り、おまえと俺の遺伝子くらいは受け継がれるとFは諭す。

それに関しては一理あると思った洸。
死にたくはないがFに体を譲るなどもってのほかだし、かといって仲間を置いて逃げる気はない。
ならば必死に抗って死に仲間を守れた方が危険なFも消えるのでマシに覚えた。
死ぬとわかっているなら子種を残すとまでは行かずとも、自分がいたことだけは覚えて欲しいと思った。

死ぬ覚悟と愛するものを心ゆくまで抱きたいと思った洸は行動に出る。
洸が愛を向けた女とは――?
418 選択 ミーティア真崎洸
一頻り対主催の治療が終わり、とある民家で休息を取るミーティアに洸が現れる。
さっそくミーティアは疼き出したので洸を誘っていつぞやの時のように遊ぼうとし、さっそく行為を始めるが今回はいつもと毛色が違い、途中から洸の方が攻めに転じて、いつも以上に情熱的に抱かれたのだった。

洸が選んだ女性はミーティアだった。
改造の結果、子供を産めない体なので、危険な魔人の遺伝子が残ることもないのでいくら精を注いでも大丈夫であろう。
それだけでなく最初こそ痴女な保険医としか思っていなかったが、その実は生徒たちを自分の子供のように愛す慈悲深い人であった。
生徒を守るためなら取引の材料として自分の体を犠牲にし、時には盾になろうともし、一人でも生徒を失えば涙を流す。
ここまで最良の女はなく、いつしか洸は体だけでなく心まで彼女の虜になった。
ミーティアも洸の真っ直ぐな気持ちと情熱的過ぎる攻めに心の性感帯まで刺激され、今までにはなかった快感を覚えた。
洸はミーティアにとって愛すべき生徒の中でも、最も愛すべき生徒――恋人になれたのである。
そして二人は硬い恋人つなぎをしながら絶頂し、一つのベットの上で果てた。
「必ず生きて学園に戻って、もっと熱く抱き合って平和に暮らしましょう」とミーティアは願い、それは約束できないと洸は思いつつ、彼女を安心させるために「うん」と答えた。
人間と魔人という垣根など関係なく、洸と共に生きていけることをミーティアは感激し、静かにキスをした。


洸の中で魔人Fは「ククク……それでいい」となぜか笑っていた。
419 密会 レイ=ラグナウッド、魔神マキシム
対主催とは離れた位置で休息を取っていたレイの前に主催者の一人であるマキシムが現れ、コンタクトを取ってくる。

レイ「まさかと思いましたが、貴方でしたか…魔神マキシム」
マキシム「君かレイ、君はどうするんだい?」
レイ「まあここで裏切るのもある意味魔族ですが、一応今の世界を気に入っていましてね
   それに対主催に義理もありますから」
マキシム「ふふふ、では君の好きにすればいい」

マキシムは対主催がこれから何をするにしろ、主催には相応の用意があることを伝えるが、レイはそれを聞いても魔族でありながら、対主催ひいては人間の味方をすることをマキシムに宣言する。
続けてマキシムはモリアーティの時以上の人の輝きを対主催たちは発揮できるのかという問いに対し、レイは静かに頷き肯定する。
最後にマキシムはおまえたちも中々であるが主催……特に首領格のスエボシは人類の母を自称できるほどの力を持っている旨を伝える。
レイはそれを旧支配者や目の前のマキシムすら抗えない異能無力化能力のせいだと思ったが、スエボシが危険な点はそこではないとマキシムは否定する。
スエボシの真に恐るべき点は能力ではなく、人類を思いやりすぎてるぐらいの酔狂さにあり、それが時に実力以上の力を発揮させるのだという。
スエボシを上回るには対主催サイドが奴を超える輝きが必要であり、それは人類全体を思いやれる狂気じみた愛を超えなくてはならないとだけ言って、マキシムは去っていった。
421 処刑人が守護者になる時 ディスメラ・スイート、ブッチャー
ブッチャーに搭載された望遠カメラにより、ロックスが正気を取り戻し対主催と共に歩んで行けていることを知り、安堵するディスメラ。
人に手をかけた以上、今更ネオ・ブレーメンズと合流はできないと思った彼女は、彼らとは別の道から脱出をしようとする。
罪は償うつもりではるのだが、腹に宿した命を守るためにはどうしても脱出して生き延びる必要があり、子供が産まれるその日までは裁かれるわけにはいかなかった。
幸い、ライヘンバッハゲームの過程で首輪は既に解除されており、会場からの脱出はできるようになっている。
一方、ディスメラについてきたブッチャーは脱出後どうするか迷っていたが、少なくともジョージの望んでいたような殺人機械になることは御免であった。
そこでディスメラは自分についてきて会場の外の世界に出て殺し以外のことをしないかと言った。
ネットワークや映画では見れないものも外の世界にあると教えられ、ブッチャーはそれに乗り、殺人マシーンとして生まれた自分が最初にできる殺人以外の仕事としてディスメラとその子供を護衛することをミッションとして選んだ。
こうして一人と一機は脱出の準備に取り掛かった。
422 最終放送 須原毅スエボシ
最終放送で呼ばれた参加者は
桜井カリン、大海ミリア/ミリア・クランベリー、‘魔人'ジェームズ・モリアーティ、田山秀雄、ジョージ・ラングセン
以上5名。残り27名。

死亡者を読み上げたあと、マイクが須原からスエボシに代わり、スエボシはこれまで生き残った参加者を賞賛する。
数多の苦難を乗り越え、全ての障害を駆逐し、よく首輪を解除できたものだと……

「……だが試練はこれで終わりではない。
最後の試練としてはわらわの首級を上げてみよ。
もしわらわから逃げたり負けたりするようなことがあれば、基地にある弾道ミサイルを全て発射させてもらう。
おまえたちよりもっと強い子らを生み出すためにも世界には痛みの伴う愛のムチを受けてもらう。
それが嫌ならここまで来てわらわを殺めるのだな」

最後の放送が切れると同時に、会場のとある場所から巨大な基地が現れた。
その基地の奥でスエボシは微笑む。
ネオ・ブレーメンズ(あらゆる力が結集した者たち)は逃げることは決してしないだろう。
愛しき子らは必ずここにくると。






オリロワ6 次章……完結。

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最終更新:2017年12月20日 18:42