一つの殺し合いの終結と同時に、人類は影で争いを引き起こしていた古の巫女
スエボシの支配から解放された。
また浄化杜勃興の原因となったサイコの大暴虐事件の真犯人がスエボシであり、浄化杜もまたミルドレッドによって異能者への報復という大義名分を失っていた真実が生還者によって世界に公表された。
浄化杜構成員は異能者への憎しみは最初から仕組まれたものであったことや、浄化杜に自分たちの信ずる正義はなかったと知り驚嘆・失望し、組織を盲信していた者や支援者も次々と脱退。
勢力を急激に減らすことで実質的に組織として消滅することになる。
江洲衛府島を攻めていた浄化杜も、謎の攻撃によって艦隊の大半を沈められたこともあって撤退せざるおえなくなり、島には平和が戻ったのである。
浄化杜の撤退に伴い、義勇兵部隊ブレーメンズも解体し、隊員たちは必要のなくなった武器を手放し壊された江洲衛府島の復興に勤しんだ。
壊滅した江洲衛府島防衛軍も
夕露美維兎軍曹(後に昇進を予定)を筆頭に立て直しを急がれている。
江洲衛府島以外の世界情勢としては
アスティオ・クランベリーによって幅を利かせていたマフィアはボスがいなくなったことで穏健的な後継者が頭領となったことで落ち着いた。
アスティオが薦めていた吸血麻薬と恐れられた「VANP」の生産も新頭領の手で取りやめになり、VANPはこの世から消滅した。
一方、動画サイトを運営していた大手会社のビルが謎のテロ攻撃によって崩壊し、命と娯楽が消えたことを多くの者が嘆いた。
同日に下北沢にも同様のテロ行為が行われていたが、不可解なことに犠牲者は同性愛者(ゲイ)が中心であった。
さらに同日にはエジプトに人工衛星が落下したが、人工衛星が直撃したのはピラミッドやスフィンクスなどの遺跡であり、貴重な文化遺産と観光資源が消滅してしまった代わりに周辺の街には当たらず人的被害は奇跡的にゼロだった。
もっとも目撃者によると人口衛星は確実に街に落ちる軌道であったにも関わらず、奇怪なことに街に落下する直前で進路を急変更させて遺跡に向かったのだという。
江洲衛府島学園はスポンサーと学園長が死亡したことによって存続を危ぶまれたが、勅使峰財閥御曹司である勅使峰がスポンサーに、保健医の
ミーティアが臨時の学園長になることで廃校の危険は回避される。
また勅使峰財閥はリュシエール家の者と結託して資金を出し、紛争やスエボシによる殺し合いで命を落とした者たちの葬儀を江洲衛府高校の校舎で行った。
関係者であれば誰しもが死者の冥福を祈ったが、以前からパワハラとモラハラで生徒や教師から嫌われ、殺し合いにおいても人間としてあるまじき行為に走ったために教頭の金山光男だけは例外的に誰からも悲しまれなかった(むしろ喜ばれたとも)。
そして紛争が終わったことで生き残った生徒たちは学校に戻っていった。
学生たちは浄化杜襲来から始まった壮絶な殺しあいの果てに、ようやく学園での日常を取り戻したのであった……
勅使峰の章。
江洲衛府島の復興に一段落ついた後に
千太郎の故郷である河童の里へ向かった勅使峰。
道中で殺し合いによって負ってしまった全身に負った火傷がズキズキと痛む。
スエボシから受けた火傷は現代医学で治すには莫大な時間がかかり、対異能効果を持つ放射能を帯びていたために洸の時を操る力でも治せない。
それでも彼女は友のために自分の手足でどうしてもやることがあった。
里にたどり着き、遺族に千太郎の遺書を渡し、勅使峰は千太郎は最期まで立派に戦ったと伝えた。
遺族によって読まれた遺書には勅使峰を信頼していたことも書かれており、遺族だけでなく勅使峰の眼も潤ませた。
別れ際に遺族は千太郎の友達になってくれてありがとうと言い、秘薬である河童の軟膏を勅使峰に恩返しとして渡したのだった。
千太郎は後に世界のために死ぬ寸前まで戦い続けた英雄として河童世界で語り継がれたのだった。
勅使峰碧:江洲衛府島高校のスポンサーとなる。千太郎の遺族より託された河童の軟膏によって障害が残るレベルであった全身の火傷は治癒された。また、後年は人間社会で差別的扱いを受けていた河童の地位向上のために貢献したとも言われている。
真道、立華の章。
立華は真由の遺志を継ぐために探偵事務所を引き継ぐと言った。
そのために真道を助手としてスカウトし、事務所を再開する前に実家に会わせたい人々がいるのだという。
柄にもなく緊張した様子で真道が立華の実家に向かうと……
そこは極道の屋敷であった。
真道「……はぁぁぁぁっ!?」
殺し合いにて立華を誘拐した犯人だと誤解したヤクザこと家族にケジメをつけられそうになったが、立華によって事なきを得る。
真道は知らなかったが、御神薙家とは魔術・陰陽術の名門であると同時にカタギには優しい極道一家なのだ。
立華の背中には呪紋と合わせた刺青が掘られており、ミーティアが彼女を治療した時に顔を青くした理由は一重にこれである。
そして極道の娘という立場上、真由のように神経の図太い者、良く言えば身分を気にしない者でなければ立華に友達はできなかったのである。
そんなこんなで家族に認めらた真道は立華の助手になった。
もっとも立華自身は真由が助手である自分にやったことぐらいしか助手の使い方がわからなかったので、しばらく真道はパシられる羽目になる。
真道はただの狂犬ではなくインテリ狂犬故に、反抗はせずにパシリになってしまうのであった。
……それでも狂犬として級友と一部教師以外から恐れられた不良と極道の娘は、互いに偏見を見せずに腹を割って話ができる仲であったために、関係は非常に良好であった。
そんな二人の事務所にやってきた今日の依頼者は「どこかで見たような」ノルマに追われる優男のセールスマンであった。
真道阿須賀、御神薙立華:
霊幻・H・真由の探偵事務所を引き継ぎ、二人で探偵業を再開する。
息がピッタリと合った二人は数々の難事件を解決に導き、いつしか「ホームズとワトソンの再来」と呼ばれる名探偵となる。
とあるヒーローの章。
ある休業していたヒーローが再びヒーロー活動を開始する。
理由はスエボシの起こした殺し合いにて多くのヒーローが活躍し、命こそ全員落としたものの、最終的に世界を救ったことを知ったからである。
雪小路いろりに心を折られたヒーローだったが、その者たちの熱き心に胸を打たれた彼は再びヒーローとして立ち上がり、人々を守るためにもう一度、悪と戦うことを決めたのだった。
そのヒーローの名前は――ブラスターギガン!
???の章。
またひとつ、先に消滅した動画サイト会社の地位に立つべく、勢力を伸ばそうとした動画の運営会社が破産した。
理由はホモビ関連の動画が一つでも上がると必ず発生する謎のコンピューターウィルスによるサーバーの破壊である。
特定の動画が上げられないと発動しないとはいえ、高度すぎるワクチンソフトも意味がなく、ウィルスに多くの動画運営会社は頭を悩ませ、企業は一定の成長は見込めない状態になり、娯楽としては緩やかな死を迎えていった。
この出処不明のウィルスは二つの運営本社に対して大虐殺を行ったと言われる男の名前からあやかって「TYMの呪い」と言われた。
もしかしたら妖狐の呪力を込めた爪によってバラバラに引き裂かれた魂の一部が電気信号となってネットに入り込み、怨念がウィルス化したのではないかと噂されている。
しかし推論としてはあまりにも弱く突拍子もないために、その説は極めてマイノリティとされた。
だが、セラフィムの能力なら怨念がネットに入り込んで電霊と化せるのも不可能とは言い切れまい。
もし推論が正しければ
彼は粛正と憎悪の力を振るい続けるのだろう。
これまでも、これからもずっと1人で…誰も隣に並び立つことないまま。
九曜の章。
九曜「やれやれ生き延びちゃったか」
生還した九曜は学園にいた。
舞菜による異星人の変身銃の研究成果とリエル(ミエル)の援助により、危惧されていた完全な獣化とそれによる人間性と記憶の喪失は避けられた。
とはいえ、妖狐の姿そのものは完全には取り除くことができず、特徴的な九つの尻尾などは永遠に残り続けると言われた。
しかし九曜に後悔はなく、後輩たちのために戦えた誇りとして以前は忌んでいた妖狐の肉体で生き続けることを決めたのである。
今日もまた、彼女は後輩たちから慕われ、尻尾を
モフモフとされた。
今はただ取り戻した日常をしっかりと噛み締めるのだった。
天城九曜:本来は卒業してもおかしくない時期が来ていたが、紛争による学業の遅延と獣化による知力低下を理由に江洲衛府島高校に一年留年する(本人はもう一年高校生でいられると喜んでいた)。
その後は同級生となった後輩たちに慕われつつ、無事に卒業を迎えた。
ウロボロスの章。
野球に目覚めたウロボロスは自分に野球という新たな道を示してくれた
キングに習ってグレイトカイアンツに選手として球団入りした。
ところが球界には強い者がゴロゴロいて、ウロボロスほどの魔人でも中堅レベルというほどであった。
しかしウロボロスはめげない。
中堅レベルということはまだ上を目指せるということであり、壁が高いほど盛り上がる男であるからだ。
ただの殺し合いよりも楽しませてくれる新たな闘争の世界を教えてくれたキングにウロボロスは感謝した。
なお、とある試合では、いつの日か見逃した姉妹が観戦にきていた。
少なくとも彼女らが先にウロボロスに高潔な戦士としての考え方を生み出させなければ、キングはウロボロスに野球を教えず、彼がこうしてマウンドに立つこともなかったであろう。
まるでボールをリレーするようなものである。
ウロボロスは彼女らが試合を見に来ていたことに気づいていないが、姉妹は今のウロボロスの姿に喜んでグレイトカイアンツを応援していた。
‘魔人’ウロボロス:グレイトカイアンツに球団入りを果たす。
最初は中堅程度の実力しかないと期待されていなかったが、後にメキメキと実力を伸ばしてチームのエースとなり、後に更に過酷な戦いが待つメジャーリーグ入りにも推薦されるに至る。
由奈の章。
由奈はダンの狙撃銃を形見として譲り受け、生還後も大事そうに家に保管している。
狙撃銃は最終決戦の折に大破して銃としての機能を失っていた。
彼女の心が暗殺者のままであったなら無用の長物として捨てているところだが、「人間」である彼女はダンから託されたこの銃を捨てる気にはならなかった。
大切なのは銃の殺すための機能ではなく、銃に込められた思い出であるのだから。
そして暗殺者ならぬただの学生である由奈は学校に出かける。
ダンによって支えられた人としての命と自由を一分一秒でも噛み締めるために。
九条由奈:ただの一人の人間として江洲衛府島に住む。
以後の人生で彼女が人を殺すことは一度もなかった。
ファックマン、はるかの章。
ファックマンは見事に一目惚れしていたはるかの心を射止めて、彼女の卒業を待たずして結婚するに至る。
そして彼女の級友に祝福され見送られながら、ゴールインを迎えた二人は異世界へ旅立った。終わり。
……ところがこの
エピローグ、はるかがファックマンを一度も「どう見えたが」一切書かれておらず、何か闇の深さを臭わせている。
そもそも亡き仲間たちによって洗脳から解放されたことはあったが、彼女の洗脳耐性自体は相変わらずゼロのままである。
ひょっとしたら殺し合いが終わった後から結婚するまでの間に悪意ある何者かに洗脳されている可能性すらある。
ヒューマンスレイヤーを始めとした仲間亡き後に、はるかの洗脳をかけられているとしたら、その時はファックマンの愛が試される時であろう。
ファックマン、雪風はるか:二人は結婚をし、ファックマンの異世界へ旅立つ。
その後の二人の消息は不明……
朔朗の章。
何度か葬式に出た後、他の者たちとは違って特に代わり映えのない日常に戻っていく朔朗。
自分が真実の眼という特異体質だと知った。
マキシムに殺されかけたが、なんだかんだで助かった。
得るものと言えば殺し合いとマキシムとの多少の問答を経て少し意識が上向いたぐらいだろう。
それで良いのだ。
世の中には自分が不変の体質であることを知らず、仲間に助けてもらえない者、生きたくとも生きられない者もいたのだ。
その者たちと比べれば自分など恵まれてる方である。
少しだけ意識を上に向ける……それは簡単なようで難しいことなのだ。
ある魔王からもらったお守りのぬいぐるみを鞄につけて、少年は偉大で貴重な、普通の日常へと戻っていった。
岬朔朗:平凡な学生として平凡な日常を過ごす。
これまで周囲に争いを生んだ彼の魔眼は稀に役に立つ場合があり、必要な時には眼鏡を外したという。
E11 |
心の傷となったあなたへ |
ミエル・リュシエール |
ミエル……もしくはリエルの章。
ミエルは追田の墓石に線香代わりにタバコを添えていた。
クライヴではできなかった遺言を実行したのである。
それは真実を追い続ける姿を見せることで図らずも真実に立ち向かう意志を教えてくれた探偵への恩返しである。
次にミエルは双子の姉のリエルの墓前の前に立ち、花を添える。
そして一時的とはいえリエルと再会し気持ちの整理がついたミエルは、彼女の墓の前で宣言する。
――これからも、自分はリエルとして生きると。あなたという半身を忘れないために。
これまで彼女は姉を失った辛い現実から逃げるためにリエルを名乗ってきたが、今度は違う。
姉を失った真実と向き合うために、愛した姉がいたことを忘れないために彼女はリエルを名乗るのである。
己の心の傷から逃げようとせずに生涯戦い続けることを彼女は誓ったのであった。
永遠に失ったものを埋める方法などない。
だが失ったものすら力に変えていけるのが人間であり、その最たる者こそ皆無性能力者であるのだから。
ミエル・リュシエール
改め
リエル・リュシエール:正式にリエルに改名し、後にリュシエール家の当主となる。
同時に心の傷を持つ皆無性使いに力の使い方と人生の生き方を間違えさせないようにアドバイザーとしても働いた。
信長の章。
織田信長は最終決戦の折に世界に向けて自分のネームバリューを使ったことが原因で、生きていた信長として一躍時の人となった。
テレビ局からインタビューを受けたり、所属していた退魔師組織からも次期頭領になってくれと言われるほどである。
だが、信長はインタビューも次期頭領の件も辞退する。
儂は本来は本能寺で光秀に討たれているべき敗戦の将なのだ。
この時代に生きている仲間たちはまだしも、死人である自分が出しゃばるべきではないのである。
何よりいつまたタイムスリップが起きて本能寺に戻ったり別の時代に飛ばされるかもわからないのだ。
ハゲネズミ(秀吉)も夢のように儚く消える我が身であり、人生も夢のまた夢だと言っていた。
自分もまた本能寺で討たれる前の夢を見ているのだろう。
……しかし、だ。
この夢の世界で必死に生きる者たちを見ていると、この夢の中で生きていたいと願うようになる。
いつか醒める夢だったら、夢が醒めた時に大人しく光秀に討たれよう。そこは変わらん。
だが夢が醒めるその時までは、儂もまた必死に夢(この時代)を生きよう。
光秀よ、ハゲネズミよ、家康よ、もう一人の儂よ、未練がましいと思わば笑え。
この時代では切腹した方が仲間に失礼なのだ。
必死に生きた者のためにできるのは死ぬことではなく、生きること。
それがこの時代の流儀なのだから。
織田信長:腕利きの退魔師としてこの時代を生きる。
後にタイムスリップで元の時代に戻れたかどうかはここでは伏せておく。
夕露の章。
夕露と義勇兵部隊ブレーメンズとネオ・ブレーメンズの面子は江洲衛府島の政府から報奨と勲章が授与された。
特に夕露は壊滅した正規軍から義勇兵、そして殺し合いではネオ・ブレーメンズを指揮し、世界的危機と浄化杜の事実上の壊滅を果たした者として名誉勲章が授与され昇進も約束された。
ピカピカのメダルオブオナーに佐官以上の階級を約束された出世コース。
だが夕露はそんな者よりもっと大事にしたい名誉があった。
授与式が終わった後に夕露は最近完成予定の慰霊碑へと向かう。
そこには紛争で亡くなった者の名前と殺し合いで亡くなった者の名前が刻まれていた。
尊敬する羅天や部下の雅と
ロボロン、恩師で母とも言えたアイリスフィアの名前もそこには刻まれている。
夕露は関係者の許可を貰って、歯の妖精で慰霊碑の大理石を一部削った後にそこに自らに授与された名誉勲章をはめ込んだ。
そして「勝利と平和を掴みとれたのはみんなのおかげだ、ありがとう」と敬礼する。
彼女にとっての最高の名誉は仲間と共に戦えたことであり、最高の勲章は最高の戦友たちに捧げたのだった。
一度壊滅させられた防衛軍は未だに立て直しの段階にあり、彼女の休む日はしばらくなさそうだ。
今日もまた自分で歯も磨けないようなヒヨっ子どもに喝を入れるために鬼軍曹と呼ばれた女傑は新兵を糞虫呼ばわりして殴る。
いつかは糞虫たちが成虫となって強く気高くなり、未来の江洲衛府島を守れるように。
夕露美維兎:紛争集結後に階級特進。江洲衛府島防衛軍の立て直しに尽力する。
その後も様々な作戦に従事し、優秀な指揮官として数々の武勲を上げた。
未色の章。
殺し合いが終わって初めて未色の復帰ライブが始まった。
会場は未色ちゃんはまだかまだかとファンでごった返している。
そして満を持して登場した未色のライブ入り方法に観客はど肝を抜かれる。
未色が武装を撤廃した飛行型ロボディに自ら操縦して現れたのだ。
この派手な登場にライブ会場は大盛り上がりとなり、復帰ライブは始まった。
生還した未色は髪型をゆるふわ茶髪に変えていた。
腕に持っているマイクの正体は舞菜によって加工されたマルチウェポンである。
飛行型ロボディはあの殺し合いの時からずっと乗っているものだ。
これは死んでしまったカリン、司空、水本の意志を引き継ごうという意思であり、記憶障害を抱えてる未色の忘れたくないという想いの現れでもあった。
ファンが久々に見た未色の姿はキラキラ輝いていて、歌が光を放ってるような錯覚を覚えるほどの感動ものであった。
ライブのラスト一曲には、未色が自作した歌詞による歌が歌われた。
それは完成した殺し合いで散っていった「素晴らしき人々」の歌である。
時軸未色:若干のイメチェンの後にアイドルとして歌い続ける。
未色が自作したという歌は空前の大ヒットを叩き出し、世に永遠に残り続ける結果となった。
洸、ミーティアの章。
ミーティアは紛争と殺し合いで教師陣の大半が死亡したことと教師・生徒からの信頼から臨時の学園長として、男子生徒にセクハラしつつ江洲衛府島高校を支えていた。
それも明日には
アークのオーストラリアの知り合いであるエアーズロックのテツヲが次の学園長になることが決まったので、解任されて保健医に戻る予定である。
一方、
真崎洸こと真魔人は彼女と学園の前から姿を消すことに決める。
ウロボロスとは違い、自分は一歩間違えれば第二のセラフィムにもなれる危険な能力を持っており、完全な魔人になった以上、人としての生は歩めないだろうと皆の元から去ろうとする。
それを級友たちに気づかれて止められるが、洸の気持ちは変わらなかった。
ミーティア先生の気持ちはどうなるんだと責められもしたが、洸にとってはミーティアを思いやっているからこそ考え抜いた結果であり、別れこそが最良だと言い張った。
級友に足止めをくらったために騒ぎに気づいたミーティアに追いつかれてしまったが、彼女がなんと言おうとも洸はみんなの前から姿を消すつもりだった。
……次の台詞を聞くまでは。
ミーティア「……出来ちゃった?」
ミーティアの自分宛の妊娠報告を聞いた瞬間、思わず開いた口が塞がらなくなる洸の表情。
(最近手淫しかやってくれなかったのはそういうことか)と主に男性陣に思われつつ、洸を白い目&汚物を見る目&哀れみの目で見る全生徒と教師陣。
ちなみにロックス、真道、朔郎の三人は祝福と同時に腹を抱えて笑っていた。
ミーティアは過去に肉体を改造されて普通の男性の精子では受精できない体になっていたが、『普通ではない』洸の魔人の性を受けた結果、受精に成功し生涯できないハズだった妊娠を成し得たのである。
まさに今は亡きF相手に試合に勝って勝負に負けた感じを覚える洸。
結果的に最終決戦でマキシムのミーティア達に放った攻撃を香織の時と違ってちゃんと食い止めた上跳ね返す事ができたのだが、完全な魔人になって強くなったからこそ出来た最大の皮肉。
もしかしたらFが自分を焚きつけてミーティアを抱かせたのも、遺伝子を残すまいとしていた洸に対して、懐胎できると予測した上でミーティアを懐胎させて魔人の子孫を残すことで最期まで抵抗した洸への報復できるように仕向けて魔人の血と切っても切れない関係にするなど、全部計算づくだったのかもしれない。
ただただFにしてやられたと洸は思った。
そして、震えるような声で洸はミーティアに「…責任取ります」と言い、結局彼女の伴侶として江洲衛府島と学園に残ることになった。
もっとも、ミーティアは妊娠の件をとても喜んでおり、洸もまた彼女の傍にいてもいい「言い訳」ができたのだった。
若気の至りで洸の魔人としての将来すら狂ったととるか、愛が彼をギリギリ人間として繋ぎ止めたととるかは貴方次第です。
真魔人(真崎洸):ミーティアとできちゃった学生結婚をする。
魔神を超えた真魔人としてウロボロス共々他の魔人から恐れられるも、その正体は妻と子供を守るために尽力する非常に人間臭い男であった。
ミーティア:洸と結婚して性を「真崎」に改めて、無事に洸との子供を出産する。
なお、新学園長になる予定であったエアーズロックのテツヲさんは学園よりでかすぎて入れない致命的すぎる欠陥が発覚し、彼のオーストラリアからの通信による指導の元、臨時の学園長を解任された後にも彼女が実働として学校を運営することになった。
舞菜、ディスメラの章。
舞菜はある日、殺し合い以来会っていなかったディスメラと再開した。
もう一度会うことがあれば、殺さない程度に師匠譲りの技で痛めつけて許してやるつもりであったが……ディスメラの腹は妊娠したミーティア同様に膨らんでいた。
あの中にはおそらく級友のラップスの子供がいるだろうに、これでは復讐などしたくともできないであろう、と舞菜はムカッ腹が立った。
しかしディスメラはジョージに唆されたとはいえクライヴ、ミリアを殺してしまった責任を取るために学園と島の復興支援をすることで償いをしていた。
特に私怨で罪のないミリアを撃ってしまったことに関してはキチンと義理の姉である舞菜に謝罪すべきだと、ずっと探していたのである。
ディスメラ「君が大海舞菜。大海ミリアの義理の姉か……探したぞ。最近留守にすることが多いそうじゃないか」
舞菜「何の用? あなたの顔なんて見たくもないしそんな暇も無いんだけど?」
ディスメラ「私は君に謝りに来たんだ。私のしたことが到底許されることでは無いことは分かっている。
だが謝らせてくれ。ミリアには申し訳ない事をした、私に出来ることなら何だってする……! この通りだ……!」
土下座をするディスメラ。
舞菜に何をしてでも償いたい、その気持ちに嘘偽りはない……しかし。
舞菜「へえ……じゃあ、あなたの子供を殺せって言ったら従うの?」
ディスメラ「!! それは……それだけは、出来ない……この子が産まれてからなら私を殺したっていい!! だからそれだけは、止めてくれ……」
自分の中に宿った新たなる命を奪え……これだけはできなかった。
他は自分の命を含めて何でも差し出すつもりであるが、恋人との最後の繋がりだけは失いたくなかった。
舞菜「本当に、ずるい人。ネクロフィリアだかなんだか知らないけれど、人の迷惑なんてレベルを遥かに越えたことをしておいて、
自分の番になったら子供を盾にするなんて、反吐が出るほど卑怯だわ……やるわけ無いでしょ。
私怨で人を殺すなんて真似して、あなたみたいなクズになりたくないし……なによりその子の家族を奪いたくないしね。
何でもするって言うのなら、罪を償って、その子に寂しい思いをさせないで頂戴……
それと、もしまたあなたが道を誤ったら何処へ逃げようとどんな手を使ってでも私があなたを殺すわ。理解った?」
ディスメラ「ああ……理解った! 有難う……済まなかった……」
舞菜「やめて頂戴、あなたが何を言おうとあなたを今は許すことなんて無いんだから」
舞菜はミリアを殺したディスメラの罪を許すつもりはない。
だからこそディスメラと同じように憎しみで誰かを殺す気にはなれなかった。
涙でグシャグシャになった顔を拭って去っていくディスメラの背中を見ながら、舞菜はふと思う。
舞菜(“今”は……か……ミリアが私の立場だったら、どうしてたのかな……)
思い浮かぶは最愛の妹の顔。
なんとなくであるが、ミリアは復讐心に負けずにロックスとの約束を守った自分に微笑んでくれているような気がした。
舞菜と別れたディスメラは宿した命を心血を注いで守り続け、寂しい思いをさせないことを誓う。
それが親となる自分の勤めであり、罪の償い方であるのだから。
舞菜は今はディスメラを許すことは出来ない様子であったが、いつかは和解し友になれる希望を匂わせていた。
大海舞菜:持てる知識をフル活用し、江洲衛府島の復興に大きく貢献した。
いつかはブレインを超える大魔導師として期待されているが、美魔女の正しい意味を最後まで理解することはなかった。
ディスメラ・スイート:紛争で死亡したラップスの子供を出産し、母子家庭ではあるが平和に暮らしたそうである。
苦しめられた自身の異常性癖についてはミリアを殺害した時の罪悪感を心の蓋にすることでほぼ払拭されたらしい。
沙織の章。
殺し合いから戻った後、父親と再開できた沙織は笑顔を取り戻していた。
それだけでなく殺し合いで出会った人々との縁によって様々な幸福があった。
真実の眼を持つ能力者によって自分と父親以外の家族を殺した強盗と、その強盗を心神喪失状態だと診断した精神科医がグルであったと発覚し、隠していた証拠も自分から吐いたことによってグルになった精神科医は無期懲役、強盗は死刑を求刑された。
さらに沙織を散々いじめたクラスメイトと教師の前に、訓練中に「偶然」道を間違えたフル武装ロボディが通りがかったり、御神薙一家のヤクザが「偶然」通りがかることが多くなった。
また二人の探偵の調査により沙織をいじめから助けなかった教師は解任に追い込まれ、親戚一家は児童虐待で逮捕された挙句、息子については何者かに顔と名前と所業をネットで曝され、同情の余地もない悪質な行為からどこぞのホモビ男優の如くネットの人権フリー素材となって社会的に死亡した。
沙織としてはいじめた者たちへの報復自体はどうでも良かったが、誰からも虐げられることなく父親と人生の再スタートを切れるのは嬉しかった。
しかしスエボシの殺し合いを生き抜いた彼女に興味を持った複製魔王の集団が突如として現れ、帰宅途中の彼女を襲撃する。
軍隊のロボディや御神薙一家のヤクザでも勝てる相手ではない絶対的な力の持ち主たちは沙織が何の力も持たぬ子供に過ぎないことに気づく。
何の力も持たない少女にある魔王は失望し、ある魔王は失笑する。
このまま犯すか殺すか喰うかで揉める絶対的で恐ろしい魔王の前に幸せを掴んだ少女は絶望する
――ことはなかった。
幼い彼女は確かに何の力も持っていない。
桜のような異能や
ヒグマーマンのような力は持っていない。
だが殺し合いで学んだことはあるのだ。
それは最後まで希望を捨てないことである。
そして絶望的な展開を打ち破る者たちが少女のピンチの時に現れた。
それはヒグマーマンの意思を継いだ勇者熊軍団である。
救いのヒーローは必ず現れる……ヒグマーマンの沙織を守りたいという意思はちゃんと仲間に引き継がれたのだった。
クマヒーローたちの圧倒的な力と結束の前に百体の複製魔王たちは阿鼻叫喚の悲鳴を上げる。
ビターンビターンされたり、「死ねぇ」されたりして程なく駆逐された。
なお大事な役職についてた魔王がごっそりいなくなったので魔界が大混乱を起こしたのは内緒である。
少女が学んで得たことは絶望した時こそ希望を持ち続けることを忘れないことであった。
それは異能や力を持つこと以上に尊いことであった。
ピンチの時こそ希望を信じる……それが戦うということにつながるのだった。
沙織は自分を助けてくれたクマヒーローたちに一頭ずつなでなでしてもらった後にお家に招待した。
ちなみに娘と一緒に大量に現れたクマにパパがギョッとしたのは言うまでもない。
これは冬の優しい雪が溶けて桜が咲く頃の出来事である。
郷里沙織:父親と無事再開し、これまでの不幸を吹き飛ばす幸せな日々を送る。
最大の幸福はあの日出会った友達と、クマさんのヒーローに会えたことだと本人は語る。
回縞ロックスの章。
ある国のある街、そこはテロリストに襲われていた。
このテロリストには少なくとも浄化杜のような大義名分などない、ただの破壊集団であった。
テロリストはロボディで武装しており異能攻撃が効かず、しかも浄化杜から流出したと思われる高性能機・闇鴉を12機も保有していたために街の自警隊では歯が立たず、街は略奪と破壊による恐怖に包まれる。
一人の少女がテロリストのロボディから逃げ惑っていたが、追い詰められて殺されそうになるが……
そんな彼女を守ったのはロボディ・メルカバーであった。
ロックスは江洲衛府島の復興が済み、卒業した後に世界がかつての江洲衛府島と同じく紛争やテロで苦しんでいる事を知る。
以前の自分ならいざ知らず、理不尽な仕打ちに苦しんでいる人々を放っておけなくなったロックスは殺し合いで殺めてしまった者への償いと助けられなかった者への報いも兼ねて、修復したメルカバーに乗って旅に出る。
そして紛争で苦しむ者を救うためにメルカバーで世界を駆け巡る傭兵となったのだ。
メルカバーはスエボシとの戦いでスフィアと魔力の大半を喪失し、修復不可能な部品もあったためにデチューンされたが、それでも2~3世代先のロボディの性能を誇っていた。
だが性能こそが戦力の決定的差ではない。
なので12機の闇鴉を三分立たずに全滅させたのはメルカバーの性能だけでなく、エースパイロットとして成長したロックスの腕によるものであろう。
機体を撃破されたテロリストは皆、黙示録の天使を見たような顔をして死亡または再起不能になった。
街からテロリストを撲滅することに人々から感謝されるロックスであったが、そこで奇妙なことに気づく。
先ほど助けた少女は恋人であった香織によく似ていた。
???「夢の中で会った……ような……?」
ロックスは彼女のことをよく知る人物に話を伺うと、この地ではかつて、とある集団が世界の秩序を守るために人造の魔人を作っていたらしい。
ただ、いつの日かくるであろう暴走を懸念してその集団でもっとも幼く無垢な子供にいざという時に人造魔人を制御するために魔術的な力でリンクさせた。
それが「彼女」であった。
全ては人と、人が生きるのに必要な秩序を守るためである。
しかしここで誤算が生じる。
「彼女」の住んでいた街が紛争によって壊滅し、魔人を生み出した集団と家族を全滅させたのだ。
これに精神的ショックを受けた彼女は謎の昏睡状態に陥った後に、少女が操っていたハズの人造魔人も何処へ飛んで行ってしまった。
だがそれも数年前のある日――ちょうど殺し合いが開かれていた時期に彼女は昏睡状態から醒めた。
その際に悲しみと喜びが入り混じった不思議な夢を見たと言っていた。
目覚めた少女は今はこの街で平穏に暮らしている。
話を聞いたロックスは件の少女が香織のモデルになった人物にしか思えなかった。
しかし自分が愛した香織はあの日に死んでいる……リンクしていたとはいえ、香織本人であるとは言い切れないだろうし、少女には少女の人生もある以上、自分から好意を押し付けるべきではないと、ロックスは任務を終えた街からメルカバーに乗ってすぐに出ようとする。
だがコクピットに乗る前に先ほど助けた少女が街を去るロックスを見送るために現れた。
そして「また会えますか?」と彼女は言った。
ロックスは笑顔で「いつかまた来る」と答え、少女もまた笑顔になった。
神の戦車・メルカバーは飛び立つが、その時の姿は恐ろしい黙示録の天使ではなく、人と秩序を守る守護天使のように少女には見えた。
――俺は今日、もう一人の君に会えたよ。
君によく似た笑顔を見れただけで、俺はもっとこの世界が好きになって、これまで以上に守ってやりたいと思えるんだ。
回縞ロックス:傭兵ロボディ乗りとなり紛争やテロで苦しむ人々を助け、襲う側が理不尽であれば大国とも戦った。
後年にエース級のパイロットに成長した彼は『ロックンロール・セラフ』という二つ名を与えられ、伝説の傭兵として名を轟かせる。
最終章。
舞台は15年後の江洲衛府島、そして江洲衛府島高校。
海に囲まれた楽園、復興により紛争の傷が消えた街に多くの生徒が一つの高校へ向かう。
この日は入学式なのだ。
これから入学を迎える生徒の中には洸とミーティアの子供、ディスメラとラップスの子供がいた。
学校に入る前に互いに親交を持つ二人はロボディ部と野球部どちらの部活に入るかを話し合っていた。
ロボディ部は伝説の英雄であるロックンロール・セラフを生み出した名門であるし、野球はウロボロスがメジャーリーグ入りしたために昔以上に熱狂している人気スポーツだ。
あれこれ悩んでいる内に、二人は校門にたどり着いた。
校門にはマハトマが銅像のように鎮座しており、生徒たちを温かく見守っている。
体育館に入ると多くの生徒や教師の中にモニターごしで新入生に挨拶しているテツヲ学園長と、ある一人にとっては母親である真崎ミーティア教頭兼保険医、そして江洲衛府島防衛軍の司令官である夕露美維兎准将もいた。
学園長と教頭はともかく、准将は大切な任務がない限りはスペシャルゲストとして入学式に必ず出席するのだという。
ちなみにこの准将も二人にとっては顔なじみであった。
学園長の長ったらしい演説も終わり、校舎に向かった生徒たちは玄関に大事そうに飾られた一枚の絵を目にする。
それは殺し合いで生き残った学生達が撮った集合写真であった。
後から入ってきた教頭と准将はその写真について子供たちにこう語った。
これは明日を掴むために戦った戦士たちの記念写真であると。
人生では辛いことは沢山あるが、それでもくじけずに戦い続けて欲しい。
友達を沢山作り、助けあって本当の友情を作り上げて欲しい。
有名な童話のブレーメンの音楽隊の動物たちは飼い主から虐待を受けた悲惨な身で、しかもロバ、犬、猫、鶏と種族も違った。
だが彼らは諦めずに結束し、自分よりも強大な力を持っていたであろう泥棒を追い返したのだ。
真の勇気と友情を持っていれば、あらゆる恐怖と不幸に立ち向かえるようになるのだ。
だからこそ写真の中の彼らに負けないくらいのブレーメンの音楽隊になってほしいと彼女たちは言った。
校門の前では成人した写真の中の子供たちがいた。
そして彼らに遅れるように飛行型ロボディとメルカバーと言われたロボディが校門の前に降り立った。
都合がつかなかった者もいるため、あの殺し合いを生き抜いた全員は流石に揃わなかったが、皆が同窓会のように立派に年を取れた姿を喜び、中には子供がいる者もいた。
メルカバーに乗ってきた傭兵ロックンロール・セラフは甥の入学式と聞いてすっ飛んできたらしく、盛大に祝うために今日のディナーは全部俺の奢りだといった。
そこに熊の集団を引き連れた女性もやってきた。
今日の夕方は新入生となった二人の子供を中心に盛大な祝いの宴が開かれるのだろう。
桜もまた、綺麗に咲き誇ることで学園に戻ってきた子供たちと新しく入っていた子供たちを祝福していた。
江洲衛府島高校入学式当日……この日は浄化杜による紛争が終結した終戦記念日でもあり、島の住民には最高の祝日であった。
妄想オリジナルキャラ・バトルロワイアル6 完
最終更新:2017年12月20日 18:52