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【鳥籠のトり】

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rozen-yuri

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だれでも歓迎! 編集

 
「それじゃあ、またね」
「うん。次は、いつ会える?」
「まだ判らないわ。でも、すぐにでも」
雨が止まない五月の空。
僕と真紅は、ひっそりとしたデートを終え、それぞれ帰路に着こうとしているところだ。
窮屈な僕ら。鳥籠の中に囚われた、鳥のように。

【鳥籠のトり】

帰宅後、僕は双子の姉妹であり、「彼女」でもある翠星石と、食事を取っていた。
「あの、蒼星石…」
「ん?何、翠星石…」
――少しだけ、胸にちくりと刺さるものがあった。
真紅と、会った後だったから。
「その、最近、ちょっと遅いですけど…何かあったですか?」
気付かれては、いないかな…
「何も無いよ。たまたま、用事が重なってるだけだよ」
「用事って」
翠星石の声が、やけに響いた。強く、僕の呼吸を止めた。
「用事って…何です?」
どうして今日は、こうもしつこいのだろう。それに、笑顔も見えない。
「別に、どうでもいい事だよ。翠星石には」
「…には…るですか…」
一瞬、彼女の瞳が、光を映さなくなったかのように見えた。
小さい声。ぼそ、と、呟くように発された言葉。
「何て言ったの…?よく聞こえなかったんだけど…」
「あ、え、何でもないです!独り言です!!気に…するなです…」
――何だったのだろう。まあ、いつも通りの姉さんみたいだし…

気にすることも、無いか。

「んはっ…あっ、ん…そ、せぇ…!!ふ…」
乱れる金髪。揺れる肢体。聞こえる水音が、切なく届く。
「真紅、真紅…っあぁ!!」
真紅の小さいながらも綺麗な胸に手を這わせ、お互いの蜜を求め合う。
こんなに淫らな声も、汗も、全てが美しい。蒼く澄んだ瞳は潤み、ただ快楽を貪る。
その姿は扇情的で、なおかつ、とても愛しかった。
「はぁ、はぁ…っ」
「お疲れ、さま…」
息を切らして、僕の肩に頭を預けてくる。途切れ途切れに深呼吸しながら、素直な笑みを見せてくる。
その笑顔にも僕は欲情してしまう。恥ずかしい、なんてことは、全てを見せた後に言うことではないのだろうけど。
「真紅…」
何かしら、と聞く彼女の唇を塞いで、問いかける。
「もう一回…いい?」
彼女は笑って、「しょうがない子ね」と言った。

雨は、今日も降っている。
今日は特別疲れた。ただでさえ、見つかるかもしれない自室で。結局、あの後2回も…
顔が赤くなっていくのが判る。シてるときの僕って、なんか、こう…ああもう!
もやもや、ぐるぐると回る頭を落ち着けて、携帯で時刻を確認する。
「もう何度も、してるの…」
に、とは発せなかった。手から滑り落ちる携帯の、床に落ちる音だけが聞こえた。

不在着信 51件

51。翠星石、という名前が、ディスプレイに映っている。
5秒ごと、20秒の沈黙。そして、留守番電話に、1件のみ。

『やっぱり、ですね。…しょうがない子…』 

あの時、真紅が言った言葉。僕の部屋で。
5時から8時。翠星石は、バイトに行っている筈だった。
――待て。
何も、翠星石が聞いていた、と結論付けるにはまだ早い。彼女にとっては、いたって普通に出た言葉なのかもしれない。
そうだ。きっと、そうだよ。

コン、コン…
ふいに、ノックの音がした。翠星石、だろう。帰ってきたんだ…
「翠星石?待ってね、今開けるから」
シーツの確認と、部屋全体の匂いなどをチェックしてから、鍵を開ける。
「帰ってきたんだね、おかえり…」
俯いていて、顔が見えない。翠星石が、なんだか小さく見える。
「ただいま、です…」
か細い声で返事をしてからも、俯いた顔は上がらない。
「どうしたの?元気、ないね…」
こんな翠星石を見るのは、初めてだ。心配する気持ちと、バレてしまっていないかという不安が、渦巻いている。
「だめ、ですねぇ、蒼星石は…」
「え…?」
――いきなり、何を…問いかける前に、翠星石の顔が見えた。
光を映さない、暗い瞳。端が少し持ち上がっているだけの、表面だけの笑顔。
「すい…せ…?」
膝が、ガクガクと震える。肩が上下する。今にも皮膚を突き破って出てこようとするかのような、激しく鼓動する、心臓。
「そんなに聞こえない程、盛り上がってたんですね…真紅と」

低く響き渡る、彼女の声。

「…え…?」
絞り出した、声にならない声。駄目だ、駄目だ駄目だ駄目
「あんなに乱れた二人を見るのは、初めてです」
もう。
「蒼星石は誰にでも優しいですからねぇ、カンチガイするのも、判るです」
もう、やめてよ。
「ですが、さすがにあれは…いけ好かんですぅ。私の、蒼星石に」
やめてよ。やめて。
「人のモノを取るなんて、とんだ泥棒猫ですぅ。私の、蒼星石ですのにぃ~」
笑わないで。ねえ。
「もう貴方を操れないように、翠星石が釘を刺しておくです。蒼星石も、あんなこと、もうさせられずに済むですよ♪」
笑うな。笑うな、笑うな。笑うな。笑うな。笑うな。笑うな。笑うな。笑う
「実際、もう刺してるんですけどね、身体中に♪」
ああああああああああああああああああああ

「蒼星石は、翠星石が守ってあげるです。ずーっとずぅっと、一緒ですよ…ふふ、ふふふ。はは、あは、あははははははははははははははははははははははは」
鎖の巻かれた鳥籠に、迷い込んだ青い鳥。
鍵をされたら最後。幸せの象徴だった羽は、堕ちて行くのみ。

FIN

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