『白詰草』
「うーん……」
腕を組みながら、ただ歩く少女は、一つ溜め息を溢す。少女、金糸雀の中で、ぐるぐると思案が渦を巻いていた。
「明日のヒナの誕生日プレゼント……どうしよう……」
いつも賑やかで明るい金糸雀が、溜め息を溢す理由。親友であり、現在片想い中の雛苺への誕生日プレゼントの事であった。
雛苺は表裏が無い素直な性格なので、よっぽど彼女が嫌うもので無ければ、大抵のものは喜んでくれる。それに、およそ十年間も親友である金糸雀は、雛苺の好きなものを知らない訳が無い。
だが、その雛苺の好きなものをあげたとしても、金糸雀にとっては、満足のいくプレゼントとはならなかった。
こうして、彼女は必死に誕生日プレゼントを思案しているのである。
「う~………………………………あー…何にも出てこないかしら…」
どれだけ思案しても、金糸雀自身が納得出来るものは見付からない。だが、諦める訳にもいかなかった。
雛苺への想いは、そんな簡単なものではない。なんとか自分も納得出来るプレゼントを探さなければ。
「………!…あ、危なかったかしら…」
ふと視線に入った三つ葉のクローバー。危うく、自分自身の足で踏んでしまう所だった。避けたクローバーを暫く見つめ、何かを閃いた様に口を開いた。
「そうかしら!」
すると、金糸雀は急ぎ足で何処かへと向かった。
―――――
「「誕生日おめでとう!!」」
いつもの親しい面々が、祝福の言葉を口にする。
「ありがとうなの!」
本当に幸せそうな表情で、本日の主役の雛苺は笑った。
「はぁい、私からは不死屋の苺大福よぉ」
「ほれ、私達からは花束ですよ」
「僕達が育てたんだ」
「紅茶の葉のセットよ。どれも良いものなのよ?」
「……お父様に、手伝って頂いて…二人で、作った…」
「ワンピースですわ。気に入って頂けると良いのですが…」
「みんな…ありがとう!」
友達が一生懸命選んでくれたり、作ってくれたものを大事そうに抱えた。
「そういえば、金糸雀は?」
「まだ着いてないみたいですねぇ」
「全く…何をしているのかしら…」
朝から金糸雀の姿だけが見えなかった。先程家に連絡を入れたところ、従姉妹のお姉さん曰く、朝早く出掛けたまま、帰ってきてないらしい。
「うゆ……何かあったのかなぁ?」
雛苺の表情に、不安と心配の色が現れた。
その時…。
「お、おまたせかしら…!」
「か、カナ!!」
背後から、金糸雀の声が響いた。だが、彼女は何故かボロボロであり、いつもの元気ハツラツという状態では無かった。
雛苺は貰ったプレゼントを一旦置き、金糸雀に駆け寄った。
「一体どうしたの!?何があったの!?」
「ちょ、ちょっと転んだだけかしら……それより、これ……」
ふと、金糸雀は手に持っていたものを、雛苺に差し出した。
「これ……四ツ葉のクローバー?」
「朝から、ずっと探してて…やっと…見つけて………」
糸が切れた様に、金糸雀は意識を失った。慌てて雛苺が受け止めようとするが、雛苺には力が無いので、一緒に倒れてしまった。
「雛苺、金糸雀、大丈夫!?」
「ヒナは平気…でも、カナが……」
「すー……すー……」
心配する一同をよそに、金糸雀は規則正しい寝息を立て始めた。
「ほ…ほぇ?」
「…どうやら、疲れて寝ちゃったみたいねぇ」
「きっと、必死に探していたんですね…」
「…四ツ葉の…クローバー…」
雛苺はハッとした様に、眠る金糸雀を見つめた。
「ん……誕生日…おめでとう……ヒ…ナ……」
「……ありがとう、カナぁ……」
雛苺にとって、それは素敵な素敵な誕生日プレゼントだった。
end
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