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ローゼンメイデン百合スレまとめ@ウィキ

雛銀燈シリーズその4

最終更新:

rozen-yuri

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だれでも歓迎! 編集


 34.

 朝。
 いつもと同じように水銀燈はなかなか起きようとしない。
雛「水銀燈、もうご飯出来てるのよー!」
銀「ううん…もうちょっと布団を堪能させてぇ…」
雛「いつもそう言って起きてこないんだから…。早く起きるのよ!」
銀「…あと五分…」
 そう言って寝返りをうって布団を被りなおす。
雛苺は呆れて溜息を吐いた。
雛「ああもう…仕方ないの…」
銀(…諦めたかしらぁ…)

雛(…こうなったら)
雛苺の中で一つの考えが浮かんだ。
雛「おきるのよー!!」
 勢いよく水銀燈に向かってジャンプ。
銀「んー…げっ!」


 水銀燈の職場。
紅「あれ、水銀燈は?」
金「何だか腰を痛めたから2,3日休むみたいかしら」
紅「腰をね…ぎっくり腰かしら。歳は取りたくないものね」
金「まったくかしら」

雛「水銀燈、本当にごめんなさいなの!」
銀「ちょっとは考えなさいよぉ…あいったたた…」
雛銀「銀ママ、おばあちゃんみたいなのぉ」
銀「おばあちゃんって言うんじゃなぁい! あいっつ…腰に響くわぁ…」


 35.

雛銀「うわぁー、すごいご馳走なのぉ」
雛「今日はね、水銀燈との結婚記念日なのよ」
雛銀「銀ママと雛ママの? おめでとうなのぉ!」
雛「ありがと、雛銀燈。もうすぐ水銀燈が帰ってくると思うけど…」
 ちょうどその時水銀燈が帰ってきた。
銀「ただいまぁー。わぁ、すごいご馳走ねぇ」
雛銀「銀ママおかりなさぁーい」
雛「おかえりなの、水銀燈」
銀「ただいま二人とも。今日は結婚記念日だから良いワイン買ってきたわよぉ」
雛「あー…お酒はちょっと…」
銀「今日ぐらい良いじゃない。少しは飲みなさいよぉ」
雛「うーん…じゃあ、ちょっとだけなの」
銀「そう来なくっちゃぁ。じゃあご飯まで冷蔵庫に入れとくわねぇ」
雛「分かったなの」

 そして夕食開始。
銀「ほら雛苺、ワインよぉ」
 雛苺のワイングラスに水銀燈がワインを注ぐ。
雛「どうもなの。はい、水銀燈」
銀「ありがとう。じゃあ、私達の結婚記念日に…」
雛&銀「乾杯」
雛銀「二人ともおめでとうなのよぉ!」
銀「ふふ、ありがとう」
 乾杯してから二人同時にワインに口を付けた。
銀「ふぅん、やっぱそれなりにしただけあって美味しいわねぇ。どう? 雛苺」
雛「ん…。結構美味しいの」
銀「ね? たまにはお酒も良いでしょぉ?」
雛銀「わたしも飲むのぉー」
銀「雛銀燈はぶどうジュースで我慢しなさぁい。お酒はあと15年以上待ってからよぉ」
雛銀「えー、けちぃー」
雛「むくれないの。ほら、ぶどうジュースあげるのよ」
雛銀「…はぁーい」

 そうして和やかに食事も進み、ワインも少なくなってきたが…。
雛「水銀燈、もっとワインちょうだいなの…」
銀「ちょっとぉ、雛苺大分酔ってない? 何だか私より飲んでる気が…」
雛銀「…何だか目が怖いのよぉ…」
雛「そんな事無いのよ、まだまだ飲み足りないのよ」
 そう言ってワインのボトルを取って中身を全部自分のグラスに注いでしまった。
 そしてそれをそのまま一気に飲み干す雛苺。
雛「ふぅ…」
銀「あぁー! 全部飲んじゃったぁ…私まだあんまり飲んでなかったのにぃ…」
雛銀「…雛ママ怖いの…」
銀「雛苺大丈夫ぅ? …酒乱のケでもあったのかしらぁ…」
雛「何言ってるのよ、大丈夫なのよぉ…」
銀「顔が真っ赤…ちょっとソファに横になった方が良いわよぉ」
 雛苺を支えてリビングに向かう水銀燈。
雛「まだ寝ないのー!」
銀「良いからほら、そこに横に…」
雛「じゃあ水銀燈が寝ればいいのよー!」
 そういうと同時に水銀燈がソファに押し倒された。

銀「なっ!? ちょっと雛苺!」
雛「食後のデザートに水銀燈を頂くのよー」
銀「や、止めなさぁい! 大体雛銀燈が…!」
雛「雛銀燈?」
 雛銀燈の方を見る雛苺。
雛「雛銀燈、良い子はもう寝る時間なのよ」
雛銀「寝る時間って、まだ8時…」
雛「…寝る時間なのよ」
雛銀「は、はい分かりましたぁ! おやすみなさぁい!!」
 幼いながら本能で危険を察知した雛銀燈は寝室へと逃げていった。
銀「ひ、雛銀燈助けてぇ! 薄情者ー!」
雛「雛銀燈も寝たし、これから大人の時間なのよー」
銀「ひゃああぁぁ…!」

 このあと水銀燈は美味しく頂かれました。


 36.

雛銀「雨なのぉ…昨日も雨だったのよぉ」
銀「そうねぇ。今梅雨時だからねぇ」
雛銀「これじゃ明日ピクニックいけないのよぉ!」
銀「私に言ってもしょうがないじゃなぁい。私は神様じゃないんだからぁ」
雛銀「ぶぅー…」
 頬を膨らませて拗ねてみせる雛銀燈。
銀「そんな顔してもメッメ、よぉ」
 そう言って手元の雑誌に目を落とす。
雛銀「つまんないのぉー」
雛「そうだ、雛銀燈。テルテル坊主作るのよ」
雛銀「テルテル坊主?」
雛「作ってそこに吊るしておくのよ。そしたら晴れるかもしれないの」
雛銀「本当? 作る作るー!」
 雛苺の話に乗り気になり雛苺に駆け寄る雛銀燈。
銀「それはいい考えねぇ。頑張りなさぁい」
雛銀「うん! 銀ママも一緒にやるのぉ!」
銀「私は遠慮しとくわぁ。ちょっと昼寝するからぁ…」
 そう言って水銀燈はソファに横になって目を閉じた。
 それを見て雛銀燈が文句を言う。
雛銀「えー、銀ママも一緒にやろうよぉ!」
雛「雛銀燈、水銀燈はお仕事で疲れてるのよ。ゆっくりさせてあげといてなの」
雛銀「はぁーい」
 雛銀燈のちょっと不貞腐れたような声が聞こえてきた。
 それから少しずつ、水銀燈も夢の世界へ落ちていった。

三十分ぐらい後。
雛銀「出来たのぉ!」
 一際大きい声が聞こえてきて水銀燈は目を覚ました。
 あくびをしながら霞む目をこすって、雛銀燈がいる方を見る。
銀「出来たぁ? 良かったわねぇ…って、ずい分おっきいわねぇ…」
 雛銀燈が完成させたテルテル坊主を見て思わず驚く。
 それは雛銀燈と同じくらいの大きさをしていた。
雛「普通のじゃつまらないからシーツで作ってみたの」
銀「そぉ…。良いけど」
雛銀「銀ママ、これそこに吊るしてー」
銀「はいはい、貸しなさぁい」
 雛銀燈がビニルテープとテルテル坊主を持ってきてそれを受け取り、カーテンレールに吊るす。
雛銀「すっごい大きいのぉー!」
雛「これならきっと効き目もあるのよ」
銀「でもこれだけ大きいと…テルテル坊主というより首吊r」
雛「しっ!」
 縁起でもない事を言い出した水銀燈を黙らせる。
雛銀「明日天気にしてください、お願いしまぁす!」
 パンパン、と手を合わせて拝む雛銀燈。
銀「それはちょっと違うわよぉ…」

 次の日。
雛銀「晴れたのぉー!」
 空は一つの雲も無い快晴。昨日までの雨が嘘のようだ。
銀「本当いい天気ねぇ。こんなに晴れたのも久々だわぁ」
雛「良かったね、きっとテルテル坊主が天気にしてくれたのよ」
雛銀「うん! ありがとねぇ!」
 喜色満面でテルテル坊主に抱きつく雛銀燈。
 今日は良いピクニック日和になりそうだと、水銀燈は思った。 


 37.

 お正月。ということでみんな遊びに来た。
蒼「明けましておめでとう、雛銀燈ちゃん」
翠「あけおめですぅ」
金「今年もよろしくかしらー」
薔「…よろしくね…」
雪「今年も可愛いですわね、雛銀燈ちゃん」
雛銀「みんな明けましておめでとうなのー!」
雛「おめでとうなの。今年もよろしくお願いなのよ」
銀「お願いねぇ」

 一通り挨拶が終わると蒼星石がハンドバッグからお年玉袋を雛銀燈に差し出した。
蒼「そうそう、忘れないうちに。お年玉だよ」
雛銀「ありがとう蒼お姉ちゃん!」
翠「私もあげるですぅ。ありがたく頂くですよぉ」
 それからみんなが差し出し、雛銀燈はありがたそうに受け取っていった。
雛銀「みんなありがとうなのぉ!」
銀「みんなごめんねぇ、ありがとう」
蒼「いいんだよ。ほんの気持ちだから」
雪「その分おせちをたくさん頂きますわ」
雛「…おせち足りないかも知れないの…」
金「人生ゲーム持ってきたからみんなで遊ぶかしら」
雛銀「うん!」
翠「よぉし、負けないですよぉ」
蒼「翠星石、雛銀燈ちゃん相手にムキにならないでね…」
金「じゃあ始めるかしらー」

 それからみんなでゲームをしていると不意にリビングのドアが開いた。
紅「ふあ…おはよう…。あら、なんでみんながいるの?」
蒼「何でって、新年の挨拶に来たんだけど…」
翠「というか、何で真紅が水銀燈の家にいるですか」
銀「ああ…昨日遅くに来て泊めてくれってぇ…」
紅「冬コミに行って、それから遅くまでネット友達と飲んでて、それで家まで体力持たなくなってここに来たのだわ」
薔「…相変わらずだね…」
金「聞いて呆れるかしら」
 みんながやれやれと言った様子で呆れていると、雛銀燈が真紅に近付いていった。
雛銀「お年玉ぁー」
紅「えっ…」
銀「なっ! こら、雛銀燈! 図々しいわよぉ!」
雛「ダメでしょ、そんな事言ったら」
 図々しい雛銀燈の台詞にお説教をする二人。
雛銀「うぇ…」
紅「いいのよ。全然気にしてないのだわ」
雛「でもこういうのは言っておかないと…」
紅「いいわよ、許してあげて」
銀「…真紅がそう言うなら…。雛銀燈、今度は気をつけるのよぉ」
雛銀「はい…」
紅「…そうね、私も雛銀燈ちゃんにお年玉あげるわ。こっちにあるからいらっしゃい」
雛銀「はーい」
 真紅はリビングを出て行き、その後を雛銀燈が追う。
銀「…真紅ってお金あるのかしらぁ…」
雛「昨日使い切っちゃったとか言ってたような気がするの…」
金「行ってみるかしら」
 みんなして真紅の後を追う。

 真紅が泊まった部屋。
紅「はい、雛銀燈ちゃん。手を出して」
雛銀「こう?」
 言われたとおり手を差し出す雛銀燈。その手に真紅はピンポン玉を落とした。
雛銀「なにこれ?」
紅「これは特別なお年玉よ」
雛銀「特別?」
紅「そう。これを受け取った子は今年一年幸せになれるわ」
雛銀「本当!?」
紅「ええ。お金じゃ買えないような幸せが沢山来るの。素敵でしょう?」
雛銀「ありがとう紅お姉ちゃん! わーい!」
 嬉しそうにそれを持って部屋を出て行く雛銀燈。
 真紅はその様子を見てほうと溜息を吐く。
紅「ふぅ…お年玉の事すっかり忘れてたのだわ。でも何とか誤魔化せたみた…い…」
 ふと扉の外を見るとみんなが哀れむような目で真紅を見ていた。
 見つかったみんなはゾロゾロと部屋の中に入ってくる。
紅「…みんな見てたの…」
銀「…これ、剥き出しで悪いけどお年玉…」
蒼「僕もあげるよ…」
翠「…しょうがないから恵んでやるですぅ…」
金「はい…。ここまで来ると悲しくなってくるかしら…」
雪「私も差し上げますわ…」
薔「…これに懲りたらもう少し自重しなきゃダメだよ…」
雛「ヒナもなの…。あと、タッパーにおせち詰めてあげるから持って帰るといいの…」
紅「……みんなありがと…」
 最悪な新年の幕開けとなった真紅だった。


 38.

 都内某所。
銀「本当にいいのぉ? 雛銀燈の子守頼んじゃって…」
紅「大丈夫よ。雛銀燈ちゃんのことは私に任せて、たまには夫婦水入らずで遊んできなさい。雛銀燈ちゃんも大丈夫よね?」
雛銀「うん! 紅お姉ちゃんと一緒なら大丈夫なのぉ!」
雛「…じゃあお願いするの。ありがとうなのよ」
銀「お願いねえ。雛銀燈、真紅に迷惑掛けちゃダメよぉ」
雛銀「分ってるのよぉ」
紅「任せておきなさい。ほら雛銀燈ちゃん、銀ママと雛ママに行ってらっしゃいって」
雛銀「行ってらっしゃぁい!」
雛「じゃあ行ってくるのよ」
銀「良い子にしてるのよぉ」

 二人は真紅と別れて駅に向かう。
銀「私達二人きりなんて久しぶりねぇ。真紅もなかなか粋な計らいしてくれるじゃなぁい」
雛「本当なの。どこに行くの?」
銀「そうねぇ。最初は映画でも見に行きましょうかぁ。ちょうど見たいのがあったのよぉ」
雛「うん、そうするの」

 電車内にて。
銀「何だか今日はやけに人が多いわねぇ…」
雛「お盆休みだからなのよ多分…あれ?」
 雛苺が中吊り広告に気が付いた。
銀「なになに…? 2008年コミケ開催…って…」
雛「…これって確か真紅が出るって言ってたの…」
銀「……。…嫌な予感がしたのは気のせい?」
雛「…やっぱ夫婦なの。ヒナもそう思ったのよ」

 その会場、あるスペースにて。
雛銀「これでいいのぉ?」
 某アニメキャラのコスプレをした雛銀燈を見て真紅は感嘆の溜息を吐いた。
紅「うん、やっぱりよく似合ってるわ。可愛いわよ、雛銀燈ちゃん」
 なでなで
雛銀「えへへー」
紅「じゃあこのプラカード持ってそこに立ってて頂戴。人が来たら『いらっしゃーい」って手を振って呼んであげてね」
雛銀「分かりましたなのぉ」
紅「頑張ったらご褒美に美味しいご飯食べさせてあげるからね」
雛銀「はーい!」
 言われた雛銀燈は素直にプラカードを持って言われた位置に立った。
雛銀「いらっしゃーい、いらっしゃーいなのー!」
客1「あ、何あの子、可愛いー!」
客2「ホントだ! 萌えるわー!」
 雛銀燈の呼び込みに気が付いて多くの客が足を止めていった。
紅「やっぱ効果は抜群ね。これなら完売できそうだわ」
雛銀「あ! 銀ママに雛ママ!」
紅「えっ!?」
 二人に気が付いて雛銀燈は手を振った。
雛銀「銀ママぁ、雛ママぁ、いらっしゃーい!」
紅「ちょ、ちょっと! あの二人は呼んじゃダメ!」
雛銀「何でー?」
紅「何ででもなのだわ!」
 でも時既に遅し、二人は既にそのスペースに来ていた。

銀「なになに…『薔薇乙女堂 新刊発売中』……へぇ」
雛「わぁ、雛銀燈可愛い服着てるねなの」
雛銀「うん!」
紅「で、でしょう? よく似合うでしょ? そ、そうだ、お土産に一冊いかが…?」
銀「興味ないからいらないわぁ。…それより、これはどういうことぉ…?」
雛「…どうして雛銀燈がこんな事してるの…?」
 二人して真紅に迫る。
紅「いや、これはね、その…」
銀「…説明してくれるぅ?」
紅「…その、売り子が急に予定つかなくなって、それで代わりに雛銀燈ちゃんにやってもらおうと思って…」
雛「…どうしてうちの子なの?」
紅「だ、だってすごく愛らしいから、これなら集客効果も抜群かなって…」
銀「…うちの子を褒めてくれてありがとぉ。でもねぇ…」
 氷の笑顔を浮かび上がらせながら真紅のツインテールの片方を掴む。その反対を雛苺も掴んだ。
紅「あ、あの、何を…」
銀「うちの子を…」
雛「売り子なんかに使うんじゃ…」
雛&銀「ないわよぉ!!」
 そう言ってお互いに真紅のツインテールを思いっきり引っ張りあった。
紅「ああああ痛い痛い痛い!! 髪が、髪が抜けるー!」

 コミケ終了後。
雛「じゃあ大トロ握ってなの」
銀「私はヒラメよぉ」
雛銀「わたしはイクラなのぉ!」
紅「うう…お金が…お金が…」
 真紅は罰として回ってない寿司を奢らされる羽目になった。


 39.

雛銀「雛お母さん、銀お母さん。今日の事覚えてるぅ?」
 元気一杯だった子供の頃の面影は影を潜め、もうすっかり大人の女性になった雛銀燈は二人に尋ねた。
 昔は雛苺そっくりだったその雰囲気は、今では水銀燈にそっくりだ。
銀「ええ、覚えてるわぁ」
雛「雛銀燈が結婚したい人を連れてくる日なのよね?」
 そう、今日は雛銀燈が結婚を約束している運命の人を二人に紹介する日。
 二人、特に水銀燈の方は複雑な心境である。
銀「…あの雛銀燈がもうそんな歳だなんてねぇ…目を閉じると子供の頃の姿が浮かぶわぁ…」
雛「うん…。嬉しいような、寂しいような…」
雛銀「もう、またそれぇ?」
銀「だって、ねぇ…」
雛銀「私が決めた人なんだから文句は言わないって約束でしょお?」
銀「…ええ、分かってるわぁ。あなたが決めたんだからぁ」
雛「どんな人でも迎え入れるのよ」
 浮かぶ涙をハンカチで拭い笑顔を見せてみる二人。
雛銀「…よかった。じゃあ、入ってきてぇ」
 そうリビングの扉の向こう側にいるであろう結婚相手を呼ぶ。
 それから数秒経ってから扉が開き、その相手が現れた。

紅「こんにちわ、水銀燈、雛苺」
 ブーッ! 思わず二人は飲んでいた紅茶をテーブルに噴き出した。
 現れたのはあろう事かあの真紅だったのだ。
雛「な、な、な…!」
銀「ちょ、ちょっと雛銀燈! 結婚相手ってまさか…!」
雛銀「改めて紹介するわぁ。結婚を前提にお付き合いしてる真紅さんよぉ」
紅「…えーと…ここは定番らしく…。水銀燈お母様、雛苺お母様! 娘さんを私に」
銀「誰が水銀燈お母様よぉ! 誰があんたみたいなのにうちの娘をやると思ってるのぉ!?」
雛「大体歳の差考えた事あるの!? 20以上も違うのよ!」
紅「あら、愛の前に歳の差なんて些細な問題だわ」
銀「限度ってものがあるでしょ限度がぁ! とにかく帰りなさい!!」
雛銀「そんなぁ! 約束が違うわぁ!」
銀「雛銀燈、もう一度考え直すのよぉ。 真紅だけは絶対ダメ!」
雛銀「酷い、酷いわぁ! …それに、わたしのお腹には…」
銀「…え?」
 その台詞を聞いて嫌な予感が走る。あれか、自分が雛苺と結婚したときと同じか。
雛銀「…私と真紅さんの子供がいるのよぉ…」
雛「なっ…!」
銀「……」
 予想通りの言葉を聞き絶句する二人。水銀燈に至っては口から魂が抜け出ている。
紅「…そういうわけなのよ…って言っても、これじゃ殺されかけないわね。仕方が無いわね、一緒に逃げましょう」
雛銀「ええ、そうするのよぉ。雛お母さん、銀お母さん、親不孝な娘でごめんなさぁい…」
銀「はっ!? だだ、ダメに決まってるじゃないそんなのぉ! こら、待ちなさい!」
 復活した水銀燈が駆け出した二人を呼ぶが、それに耳を貸さずにどんどん遠ざかっていく。
紅「幸せな家庭を作るわよ、雛銀燈」
雛銀「うん…!」
銀「こら戻ってきなさぁい! こんな結婚絶対認めないわよぉー!」

 ガンッ!
銀「あいったぁ!」
 後頭部に走った鈍い痛みと衝撃で水銀燈は目を覚ました。
雛銀「銀ママぁ、どうしたのぉ?」
雛「大分うなされてたのよ…大丈夫?」
銀「…あれ…夢?」
 辺りを見ると逆さまの光景の中で、雛苺と幼い雛銀燈が自分を変な目で見ているのに気が付いた。
 どうやらソファでうたた寝をして落ちたらしい。今までのが夢だと分かり安堵の溜息を吐いた。
銀「…よかったぁ…あー変な夢見た…」
雛「どんな夢なの?」
銀「…真紅と雛銀燈ができちゃった結婚する夢…」
雛「…それは悪夢なのよ…」
銀「でしょう…?」
 もう一度溜息を吐いて雛銀燈の方を見る。
銀「…ねぇ、雛銀燈。結婚したい人っている?」
雛銀「え?」
 そう聞かれて雛銀燈は少し考えてから口を開いた。
雛銀「いるのよぉ」
雛「えっ?」
銀「だ、誰ぇ!? ま…まさか真紅じゃ…」
雛銀「銀ママなのぉ」
銀「…へ?」
雛銀「あと雛ママとも結婚したいのよぉ」
 満面の笑みでそう言われて、たまらない嬉しさがこみ上げてきた。
 そして二人とも思わず雛銀燈を抱きしめる。
雛「ああもう本当にいい子なのー!」
銀「大好きよ雛銀燈ぉ! 絶対に嫁には出さないわぁー!」
雛銀「ふ、二人とも苦しいのよぉ」
 今日も平和です。


 40.

 ある平日の昼時、雪華綺晶が水銀燈家にやってきた。
雪「こんにちわ、苺お姉さまいらっしゃいますか?」
雛「あれきらきー、いらっしゃ…どうしたのその顔?」
 雪華綺晶の顔を見て雛苺は驚いた。
 右頬は赤く腫れて左頬には大きな絆創膏が貼られていた。
雪「ああ…今朝ばらしーちゃんとちょっと喧嘩しちゃいまして、それで…」
雛「そう…大人しそうに見えて怒ると過激なのね…」
雪「痛かったですわ…。それで、食事をここで召し上がってもよろしいでしょうか?」
雛「え、ここで? もうお昼ご飯食べちゃって何にも無いのよ」
雪「結構です、私の分はありますので」
 そう言って手に持っているコンビニの袋を掲げて見せた。
雛「ばらしー、お弁当作ってくれなかったの?」
雪「ええ…怒って作ってくれませんでした。それで今日はカップ麺に…」
雛「…上がるのよ。大変そうなの…」
雪「ありがとうございます」
 雪華綺晶をあげ、リビングに案内する。
 それからカップ麺(バケツサイズ)にポットのお湯を注いで後は待つだけ。
雪「ちょっと時間長めにしてデロデロになったのが好きですわ。これは忍耐力との勝負です」
雛「聞いてないのよ。それだけじゃ可哀想だからウィンナーでも焼いてくるのよ」
雪「悪いですわね、ありがとうございます」
 そう言って雛苺はキッチンに向かう。
 それと同時にリビングのドアが開いて雛銀燈が現れた。

雛銀「雛ママぁー、クレヨンどこ…き、きらきーお姉ちゃん…」
雪「あら、雛銀燈ちゃん。ごきげんよう」
雛銀「ご、ごきげんよう…。何してるの?」
雪「お昼ご飯を召し上がるところですわ。雛銀燈ちゃん、幼稚園は?」
雛「昨日熱出したから念のため休んだの」
 キッチンでウィンナーを焼きながら雛苺が答える。
雪「それは大変でしたね。もう大丈夫?」
雛銀「う、うん…。…お怪我してるのぉ?」
 雛銀燈が雪華綺晶の怪我に気がついた。
雪「ええ、ちょっとね…」
雛「ばらしーと喧嘩したのよ」
雛銀「ばらしーお姉ちゃんと?」
 焼いたウィンナーを雪華綺晶に差し出しながら答えた。
 暴露された雪華綺晶は少し恥ずかしそうに非難の目を向ける。
雪「もう、教えないでください。恥ずかしいですわ…」
雛「別に良いじゃないの。そろそろ時間じゃないの?」
雪「あ、そうですね」
 携帯のタイマーを見てフタを取り、雪華綺晶はラーメンを食べ始めた。

雪「…雛銀燈ちゃん、苺お姉さまと銀お姉さまは喧嘩しますか?」
 質素な昼食を食べ終わり、お茶を飲みながら雪華綺晶は雛銀燈に尋ねた。
 雛銀燈はお絵かきの手を止め少し考える。
雛銀「…しないのよぉ」
雪「本当?」
雛「き、きらきーも何聞いてるのよ」
雪「…本当ですか?」
 いたずら心で更に追求してみる雪華綺晶に雛銀燈は少し怯えてしまう。
雛銀「本当なのよぉ…」
雪「本当…ですか?」
雛銀「…だってすぐに銀ママが雛ママに土下座して」
雛「な、何言い出すのよ!!」
雪「へぇ…銀お姉さまが…」
 意外、といった様子で雪華綺晶はクスクス笑う。
雛銀「昨日だって銀ママが怒られてて」
雛「雛銀燈!!」
雪「あ、そろそろ時間ですわ。ご馳走様でした」
雛「きらきー! これは嘘なのよ嘘! デタラメなの!」
雛銀「嘘じゃないも」
雛「しっ!」
 場を引っ掻き回すだけ引っ掻き回して雪華綺晶は家を出て行った。

 職場の自販機コーナーにて。
銀「あ、お帰りきらきー」
雪「ただいま戻りました。…ねえ銀お姉さま」
銀「なぁに?」
雪「昨日苺お姉さまに土下座したんですよね?」
 ブーッ!←ヤクルト吹いた


 41.

 水銀燈が一週間の出張から帰ってきた。
銀「ただいまぁー」
雛銀「銀ママぁー! おかえりぃー!!」
 玄関に入ると同時に雛銀燈が大喜びで飛び掛ってきてそれをしっかりと受け止めた。
雛銀「銀ママが帰ってきたのぉー!」
銀「一週間ぶりねぇ。ただいま雛銀燈」
雛「お帰りなさいなの。一週間お疲れ様だったのよ」
銀「ただいま雛苺。何にも無かったぁ?」
雛「うん。無事に何も無かったのよ」
銀「良かったぁ。お土産色々買ってきたから、開けましょう」
雛「ありがとう、楽しみにしてたのよ。ほら、雛銀燈も水銀燈から降りるのよ」
雛銀「やだぁー!」
銀「良いわよぉ、このまま行くわぁ」
 水銀燈は雛銀燈を抱っこしたままリビングへ向かった。
 その後を水銀燈が玄関に置いたお土産を持って雛苺が追う。

銀「はい雛銀燈。福岡限定くんくん探偵ぬいぐるみ(パイプの代わりに辛子明太子を咥えてる)よぉ」
雛銀「ありがとう!」
銀「これは辛子明太子よぉ。はい、雛苺」
雛「美味しそうなの。ありがとなのよ」
 そんな調子でお土産を出していく。
銀「最後に、福岡定番のひよこ饅頭よぉ」
雛「あれ、東京土産じゃなかったの?」
銀「福岡が元じゃなかったっけぇ? まあいいじゃなぁい」
雛銀「ヒヨコさんの絵なのぉ」
雛「じゃあ早速食べるの。お茶淹れてくるのよ」
銀「ありがとねぇ」
 それから雛苺がお茶を淹れてきて饅頭の箱を開けた。
 雛苺がその一つを取って包み紙を取り雛銀燈に見せる。
雛「ほら、雛銀燈。ヒヨコさんなのよ」
雛銀「わぁ、かわいいのぉ!」
銀「雛銀燈は初めてでしょう? どう、気に入ったぁ?」
雛銀「うん!」
銀「よかったぁ。それじゃ早速一つ頂くわぁ」
雛銀「え!?」
 水銀燈が一つとった。それを雛銀燈は信じられないといった様子で見た。

銀「どうしたのぉ?」
雛銀「た、食べちゃうのぉ?」
銀「え…だって饅頭だし」
 そう言いながら包み紙をとって食べようとする。
 が、あと少しで口に入るというところで雛銀燈にバッと奪われた。
銀「ちょっと何するのよぉ」
雛銀「食べちゃだめぇ! ヒヨコさんが可哀想なのぉ!」
銀「いや、それお菓子だから…」
雛「そうなの。美味しいのよ」
 今度は雛苺が食べようとするがそれも同じように奪い取った。
雛銀「二人ともひどぉい! オニー! アクマー!」
 そう言うと箱ごと饅頭を持ってリビングから出て行ってしまった。
雛「あっ、こら待つのよ!」
雛銀「うわぁ~ん…!」
銀「…これは失敗だったわねぇ…」
雛「どうするの?」
銀「…しょうがないわねぇ…」

 次の日の職場にて。
紅「あれ? これって貴方の家に買ったやつじゃないの?」
銀「そのつもりだったんだけどぉ、雛銀燈が『食べたら可哀想』って暴れて…」
紅「なるほど…光景が浮かぶわね…」
銀「それで、開けちゃったので悪いけど良かったら食べてぇ。家じゃ食べれないわぁ」
紅「いいの? ありがとう! 今月もうお金が無くって…これで一週間は食いつなげるのだわ…」
銀(一週間ずっとお饅頭…) 


 42.

 三人はフランス料理特集のテレビを見ていた。
雛銀「あの人デンデンムシ食べてるのぉ…」
銀「あれはエスカルゴって言う料理よぉ」
雛銀「エスカルゴ? 美味しいのぉ?」
銀「さぁ。食べた事無いからわかんないわぁ」
雛「ちょっと食べて見たい気もするのよ」
銀「でも高いしねぇ…そうそう食べにいけるような物じゃないわぁ」
雛「仕方が無いのよね…」
 すこし羨ましそうな様子でテレビを見る雛苺と水銀燈。
 その二人を雛銀燈が見ていた。
雛銀「……」

 次の日、雛銀燈は雨の中、庭で遊んでいた。
雛「何してるのー?」
雛銀「秘密なのぉー」
 そう言って虫かごを持って植木の中で何かを探し回る。
雛「風邪引かないように気をつけるのよー」
雛銀「はーい!」
雛「…さて、晩ご飯の準備でもするの」

 それから数十分後。
雛銀「ただいまぁー!」
雛「お帰り。あらら、こんなに濡れて…お風呂沸いてるからもう入っちゃうのよ」
雛銀「うん! 雛ママぁ、これ見てー!」
 そう言って雛銀燈は虫かごを雛苺に見せる。中にはカタツムリが5匹程いた。
雛「わぁ、たくさん捕まえたのね」
雛銀「これ焼いてぇー」
雛「はっ!?」 

 いきなりとんでもない事を言い出した雛銀燈に思わず目が点になる。
雛銀「銀ママも雛ママも昨日食べたいって言ってたのよぉー」
雛「…えっと、あれは違うデンデンムシで…」
銀「ただいまぁー」
 ちょうど水銀燈が仕事から帰ってきて、雛銀燈が水銀燈に駆け寄る。
雛銀「おかえりぃー!」
銀「ただいま。どうしたの?」
雛銀「これ見てぇー」
銀「ん? …たくさん捕まえたわねぇ」
雛銀「今から雛ママが焼いてくれるのぉー」
銀「はぁ!?」
雛「いや、昨日のテレビでエスカルゴが出てたから、それで…」
銀「なるほどねぇ…」
雛銀「二人に食べさせてあげようと、がんばったのよぉ」
銀「ありがとう。…でも、それはちょっと…」
雛銀「えー。食べてくれないのぉー!?」
銀「(えーと…そうだ)そうそう、真紅が食べたいって言ってたわぁ」
雛銀「紅お姉ちゃんが?」
銀「ええ。真紅お金なくて食べ物に困ってるから、それあげても良い?」
雛銀「…かわいそう…あげてなのぉ」
銀「分かったわぁ。ちゃんと渡しとくわねぇ」
雛(真紅…ゴメンねなの…)
 そう言って雛銀燈からカタツムリが入った虫かごを受け取り、深夜にこっそり逃がしておいた。

 後日、真紅が遊びに来た時。
雛銀「ねえねえ、紅お姉ちゃん」
紅「どうしたのかしら?」
雛銀「デンデンムシ美味しかったぁー?」
紅「は…で、デンデンムシ?」
 返答に困った真紅だった。


 43.

銀「今日も仕事が終わったわぁ。帰って雛銀燈と一緒にお風呂入ろうっとぉ」
 無事に仕事を終えて、帰る前にお手洗いに立ち寄る。
 そこで真紅が洗面台の前で化粧直しをしていた。
銀「化粧直して、これからどこかに行くのぉ? ゲー○ーズとか言う所?」
 冗談めかして言った水銀燈に真紅は少しムッとした様子で睨む。
紅「失礼なこと言わないで。これからデートに行くのだわ」
銀「へぇ、デートに行くのねぇ。…デートぉ!?」
 恋人のいないはずの真紅の発言に思わず驚いて仰け反ってしまう。
紅「な、何よそんな大袈裟に」
銀「い、いや…あなた、恋人なんていたのぉ?」
紅「ふふ、つい最近出来たのだわ。それじゃあね」
銀「うん…いってらっしゃあい…」

 帰宅して夕食時にそのことを話した。
銀「…という事があったのよぉ」
雛「へぇ…やっと真紅にも恋人が出来たのね」
銀「みんな結婚して行く中で一人行き遅れてたけど…やっと真紅も落ち着いたわねぇ」
雛銀「紅お姉ちゃん結婚するのぉ?」
銀「それはまだまだ先よぉ」
雛「…でも、どんな人なの…?」
銀「あの真紅に付き合える人…気になるわねぇ」

 数日後、雛銀燈の幼稚園のお迎えに来た雛苺。
雛銀「あ、雛ママ!」
雛「ちょっと遅くなってごめんねなの。さ、帰ろうなの。のり先生にバイバイするの」
雛銀「バイバイ、のりせんせぇ!」
の「バイバイ。また明日ね~」
雛銀「うん! …あれ? 紅お姉ちゃんなのぉ!」
雛「真紅? 何でこんな所に…」
 雛銀燈が指差した方を見ると、確かに真紅が運動広場の向こうからこちらに向かって来ていた。
の「あら、真紅ちゃん!」
 のりが真紅を見つけると、まるで子供のように喜んで手を振った。
 それに真紅は手を振って返す。
の「真紅ちゃん、仕事は?」
紅「今日は早く終わったから、のりを迎えに来たのだわ」
の「ありがとう真紅ちゃん。あと少しで上がりだから待っててね」
雛「真紅…ひょっとして、水銀燈から聞いた恋人って…」
 二人の間に割り込み尋ねてみる。それで真紅は雛苺に気が付いたようだった。
紅「あら雛苺、水銀燈に聞いたのね。…そう、私の恋人ののりよ」
の「きゃー、恋人だなんて恥ずかしいわ~!」
紅「あら、だって本当のことじゃない」
 二人の世界に入り込み、ピンクの空気を放ち始めた。
雛銀「のりせんせぇ…何だかいつもと違うの…」
雛「…どうやらお邪魔みたいなの。さ、邪魔したら悪いから帰るのよ」
 雛銀燈の手を引いて帰ろうとしたとき、二人の話が耳に入ってきた。

紅「そう言えば今度のイベントのコスプレ衣装、何が良いか決まった?」
の「うん、狂乱○族日記の凶○様の衣装が良いなって思ったんだけど」
雛(い、イベント? コスプレ衣装?)
紅「なるほど、良いチョイスね。のりにも似合いそう」
の「真紅ちゃんにも似合いそうよ。ペアのコスプレで一緒に出ようね」
紅「ええ。楽しみね」
の「うん!」

雛(なるほど、類は友を呼ぶという奴なのね…)
 そう一人納得した雛苺だった。

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