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『電子文通』

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rozen-yuri

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『電子文通』


「ふんふんふふん~」

 ベッドにうつ伏せになり、足をゆらゆらさせながら、翠星石は携帯をいじっていた。二十歳にも満たない女性達には、よくある光景である。
 暫くすると、うつ伏せから仰向けになり、携帯を抱き締める様な形になると、ふ、と瞼を閉じた。

「返事が楽しみですぅ…」

 その楽しみは、早くも訪れた。
 抱き締めていた携帯から、メロディが流れた。

「あ、来たです!」

 すぐに携帯のメール欄を開き、送り主を確認する。送り主の欄には「蒼星石」と表示された。画面を見つめる翠星石の表情が、恋する乙女の表情へと変わった。

「……へぇ、今日の夕飯は洋食だったんですかぁ~…。こっちの夕飯は和食でしたよ…っと」

 嬉しそうにメールを打つ翠星石。
 蒼星石とは、半年前に東京の大学へ行った双子の妹であり、恋人。
 東京へ行く際に、メール交換を約束したのだ。

「送信完了。…あいつも頑張ってるんですね…」

 東京へ行く事を当時は猛反対した翠星石だが、今では蒼星石を応援していた。
 だが、翠星石の表情は暗い。

「……はぁ……」

 蒼星石を応援しているのは事実なのだが、その反面本当は寂しかった。いくらメールでやり取りしているとはいえ、ただの文字に過ぎない。ちゃんと顔を見て、声を聞いて、抱き締めて欲しかった。

「……そんな我儘、言っちゃ駄目です…。今年の終わりには一回帰って来てくれるんですし…」

 ふとカレンダーを見る。
 今は六月の終わりだから、逢えるのは後六ヶ月――。

「………はぁ……」

 再び溜め息を吐いた。
 元気の無い足取りで、お風呂へ向かった。

―――――

 学校から帰って、いつもの様に携帯を開いてメールを確認する。

「あれ?まだ来てないですか…」

 いつもならメールが届いている筈なのだが、今日はまだ届いていなかった。
 問い合わせてみたが、やはり来ていない。

「忙しいのかもしれませんね。ま、その内来るでしょう…」

 そんな軽い気持ちで、翠星石は考えていた。
 だが、夜になってもメールは来ず、翌日になっても来なかった。

「蒼星石……」

 いつもどんなに忙しくても、一日に一回は必ずメールを送ってくれた。だが、来ないとなると、さすがに心配になった。

「こっちから送ってみるです。……ひょっとして忙しいですか?…っと」

 再びメールを送った。
 だが、暫く待っても返事は返って来なかった。

「…まさか…何かあったんじゃ……」

 悪い想像が、翠星石の頭をよぎった。
 その時、突然インターホンが鳴った。

「こんな時に…!」

 居留守にしても仕方ないので、渋々玄関へ向かった。

「誰です…か……」

 勢いよく玄関の扉を開いた。扉の向こうには、予想外の人物が立っていた。

「久しぶり、翠星石」
「蒼…星…石……」

 半年振りの、再会だった。

「そ…蒼星石ぃ…!!」

 翠星石は思い切り抱きついた。今までの我慢していた寂しさが、一気に爆発してしまった。

「じ、事故とかに会ってないですか!?宇宙人に拐われたりしてないですか!?」
「う、宇宙人?何言って……」
「だって…メールの返事来ないから……」

 視界がうるむ中、くすり、と笑う声がした。

「わ、笑うなですぅ!」
「ごめんごめん。携帯壊れちゃって、返事が返せなかったんだよ」

 す、と取り出したのは、画面が真っ暗の携帯。

「だから、事故にも会ってないし、宇宙人に拐われたりしてないよ」
「…………どうして帰って来たんです?」

 さりげなく話題を変える翠星石。どうやら恥じているらしい。

「……半年間、翠星石と離れて…寂しくなっちゃって……」
「え…?」
「大学、止めちゃった」
「……なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 想像すらしていなかった事態に、翠星石はただ驚く事しか出来なかった。
 一方蒼星石は、とくに後悔している様子は無かった。

「迷惑だったかな?」
「そ、そんな事…!……翠星石も…寂しかったです……」

 顔を真っ赤にして、再び抱き締める翠星石。
 そんな翠星石を、蒼星石は無言で抱き締めた。

「おかえりなさい、ですぅ」
「ただいま」



end 
 
 

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