「……あら、雨だわぁ…」
ポツポツと、空から水の雫が落ちてきた。
あっという間に辺り一面を濡らし、少女も気が付けばずぶ濡れになっていた。
長い銀髪や着ていた服が、水を吸って重くなる。
何故か、少女はそれほど気にならず、そのまま暫くぼんやりとしていた。
「水銀燈?何してるの?」
繰り返し聞こえてくる雨音以外に、一つの声がした。
水銀燈が振り替えると、青い傘を持った少女がいた。
「ずぶ濡れじゃないか…。風邪ひいちゃうよ?」
持っていた傘を水銀燈に傾け、心配そうに見つめる。
「…別に構わないわぁ」
「僕が嫌だよ」
少々怒り気味に、水銀燈の言葉を一刀両断する。
そんな少女が何故かおかしくて、水銀燈は小さく笑う。
「な、何笑ってるの?」
「別にぃ」
本当は大笑いしたい衝動を抑えて、水銀燈はいつものクールな表情に戻った。
「で、何してるのぉ?」
「それはこっちの台詞だよ…。雨降ってるのに傘も差さないで何してたの?」
「んー…そうねぇ……。何だか此所にいたら、蒼星石に会える様な気がしたのよぉ」
「……へ?」
水銀燈らしからぬ、何やらロマンチックな言葉に、蒼星石は一瞬固まった。
「ふふ、私らしく無いわねぇ。でも、何だかそんな気がしたわぁ」
「……はぁ…」
蒼星石はただただ、首を傾げるだけだった。
「…ん、なんか寒いわぁ……くしゅんっ」
「風邪ひいちゃうと大変だ……僕の家、すぐそこだから来る?」
「…そうねぇ、お言葉に甘えるわぁ」
愛しい人の家に上がり込む理由を手に入れた水銀燈は、どのようにして愛しい人を食べるか、作戦を考えるのであった。
蒼「ブルマをはいてくれないか水銀燈」
銀「や」
蒼「ヤクルトをつけようじゃないか」
銀「…やぁよぅ」
蒼「ヤクルトプレイしかしない」
銀「…ごくり…」
銀「…ねえ、蒼星石…」
蒼「どうしたの? 神妙な顔して」
銀「…今更こんな事聞くのも変だけど、昔の事、恨んでない? ローザミスティカを奪った事…」
蒼「…またその話かい?」
銀「…私は時々、怖くなるのよ。本当は私のこと恨んでるんじゃないかって…」
蒼「何度も言ってきたじゃないか。もうその事は忘れたよって…」
銀「…分かってるわぁ。…ただ、時々発作みたいに…」
蒼「水銀燈…」
銀「あんな酷い事をした私に、蒼星石が恋人でいてくれる…その事が幻みたいに思えて…」
蒼星石は俯きながら話す水銀燈の頬を持ち、こちらを向かせるとそのまま唇と唇を重ね合わせた。
いきなりの事で呆気に取られる水銀燈。
更にそのまま蒼星石は舌で口をこじ開けて舌を絡め取った。
銀「うんっ、ん…」
しばらくして蒼星石は口を離した。二人の口を銀色のアーチが結ぶ。
蒼「…水銀燈、愛してる。何よりも」
銀「蒼星石…」
蒼「正直言うと、ローザミスティカを奪われたときも少し嬉しかったんだ」
銀「えっ?」
蒼「これでずっと水銀燈といられる、水銀燈と一つになれる…そう思えたんだ」
銀「そうなの…?」
蒼「それぐらい僕は君を愛してる。だから、何も心配しないで」
銀「蒼星石…」
蒼「…僕の言う事、信用できない?」
銀「そんなわけ無いわぁ。…私も愛してるから」
蒼「…もう、発作は治まった?」
銀「ええ。おかげさまで」
蒼「良かった…今日は一緒に寝よう」
銀「うん…」
蒼「水銀燈の髪って綺麗だね」
銀「そう? でも私も気に入ってるからそう言ってくれると嬉しいわぁ」
蒼「手触りも凄く良いしくせっ毛が全然無くて、色も素敵だし…」
感嘆したように溜息を吐き、水銀燈の髪を手ですいていく蒼星石。
それに気持ち良さそうにして目を細める水銀燈。
蒼「…ちょっと、羨ましいかな」
銀「あら? 私はあなたの髪も素敵だと思うわぁ」
蒼「お父さまが決めてくれた髪形だからね。僕も気に入ってるよ。ただ僕も長髪になってみたい、って思うことはあるよ」
銀「でも髪が長いと結構手入れとか大変よぉ」
蒼「うん、それは分かってるつもりだけどね…」
はは、と少し寂しそうに笑う蒼星石。
そんな蒼星石の髪を、今度は水銀燈が顔を近付けて梳き始める。
銀「私は蒼星石の髪が好きよぉ」
蒼「僕の髪が?」
銀「ええ。撫でているとすごく安心するわぁ。それにいい匂いだし…」
蒼「水銀燈だって同じシャンプー使ってるじゃないか」
銀「でも、私は蒼星石の髪の匂いが好きよぉ。優しい感じがして…」
蒼「そうかな?」
銀「そうよぉ。私は蒼星石の髪が好きだし、あなたは私の髪が好きなんでしょう?」
蒼「うん…」
銀「お互い好きなら、良いんじゃない? あなたはこの髪でいいのよ」
そう言って蒼星石の髪に自分の頬を乗せる水銀燈。
銀「…こうしてるとやっぱり落ち着くわぁ」
蒼「水銀燈…」
銀「大好きよぉ、蒼星石」
蒼「僕だって負けないくらい好きだよ。水銀燈の全部が」
お互いの良い匂いに包まれて、二人はそのままゆっくりと時を過ごした。
蒼「ねぇ、水銀燈…」
蒼「他の女の子と話さないで、他の女の子と電話しないで、他の女の子とメールしないで、他の女の子の相談に乗らないで、他の女の子に優しくしないで、他の女の子の胸で泣かないで、他の女の子に隣を許さないで」
蒼「僕以外の、女の子は、受け付けないで?」
蒼「水銀燈は、僕だけを見てればいいんだもんね!水銀燈の彼女は…僕なんだもんね!!!」
蒼「あははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!」
銀「乳酸菌摂ってるぅ?」
蒼「そう言えば最近取ってないなぁ」
銀「ダメよぉ、ちゃんと摂らなきゃ」
蒼「水銀燈が口移ししてくれたら毎日飲むけどね」
銀「な、何言ってるのよぉおばかさぁん///」
めぐの病室
銀「ちょ、ちょっと蒼星石…!」
蒼「なに?」
銀「や、止めてぇ…こんな所で…」
蒼「やだ。僕が我慢できない」
銀「蒼星石ぃ、冗談も程ほどにしないと…!」
蒼「あんまり声出すとめぐさん起きちゃうよ?」
銀「……!」
め「すぅ…」
蒼「寝てるみたいだね」
銀「んぅっ…!」
いきなりディープキスをされ、水銀燈が拒む間も無く口の中に下が入り込んでくる。
蒼「んむ…ちゅっ…」
銀「んっ、ぷぁ…」
蒼「はぁ…なんだかんだ言ってノリノリじゃないの?」
銀「そ、そんなことぉ…!」
蒼「…でも、こっちは随分と濡れてるみたいだよ?」
銀「あぁっ…!!」
蒼「めぐさんにばれるかも、って思って興奮しちゃった?」
銀「や、止め…」
蒼「でもこっちはそんなこと言ってないみたいだよ?」
銀「やぁ…! あぁ…!」
蒼「さてと、そろそろ本格的に頂こうかな」
銀「いやあぁ……!!」
次の日の朝。
め「水銀燈、昨日夢見ちゃった」
銀「どんな夢?」
め「あなたが泣いてる夢見たの。でもどこか嬉しそうで…変な夢よね」
銀「な、なななな…」