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第五話『誰が誰かの所有物』

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rozen-yuri

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だれでも歓迎! 編集

「蒼星石はほんっとーーーにお馬鹿さんですぅ!」
「そ、そんなに怒んないでよ…」

夕食の席で、僕は遅れた理由を家族に話した
無論、嘘で固めた理由だ
ミーティングの日程を間違えて先生の元へ行ったが、ムダに話し込んでしまい遅くなって雨に合った…と
本当にありそうで単純な嘘
だけど、とても重い嘘

「ごちそうさま…すごく美味しかったよ」
「あったりめーです!」

胸を張りながらもちょっと嬉しそうな姉を見ながら、食器を流し台に運ぶ
明日の宿題でもしようか…と、部屋へ向かう僕を翠星石が呼び止めた

「どうしたの?」
「これ、雪華綺晶から預かってたです」
「ノート…渡しに来たの?」
「3時間ほど前です…礼を言ってたですよ」

雪華綺晶が渡しに来た…とすればバスケ部のミーティングがないことを、その時翠星石は知った?
さっき僕が吐いた嘘が、もしミーティングがあったという嘘だったら…

「どうかしたですか?」
「何でもないよ…ありがとう」

嘘を吐き続けることが、こんなに難しくて辛いなんて…考えたこともなかったよ


第五話『誰が誰かの所有物』


次の日は、何ら変わらない日常だった
当たり前だろう…変わったのは僕だけなんだ
朝礼でも授業でも、まともに先生の顔を見れない
そういう挙動不審な態度をしていると、不意に雪華綺晶が声を掛けてきた

「…蒼星石」
「えっ?あ、何?」
「昨日は間違えたみたいですね」
「ミーティングの日程の事?…翠星石から聞いたの?」
「えぇ…まぁ…」
「あはは…恥ずかしいな…それより昨日ノート持って来てくれたんでしょ?ありがとう」
「借りてたのは私ですから、お礼を言うのは私の方です」

澄ました笑顔で軽くお辞儀をする
相変わらず何を考えているのかわからない

「今日はちゃんとありますから、忘れないでくださいね」
「うん…」

先生とは会いたくないけど、泣き言ばかりも言ってられない
普段は長く感じる退屈な授業も、この日だけはやけに早く過ぎた

「皆揃ったわねぇ?」

放課後の会議室
部員が集まった事を確認すると先生はプリントを配布する
そこには夏休みの合宿について簡単に記されていた

「夏休み前にまたちゃんと説明するけど、とりあえず目を通しておいてねぇ」

3年の僕からすれば、このミーティングも3回目
適当に聞き流し、終わるのを待つ

「どんなとこかな?」
「旅館だし温泉もあるみたいだから楽しみ~」

何も知らない1年が楽しそうに話しているを見て、無知っていいな…なんて考える
実際に行けば楽しさよりも苦しさが遙かに大きく、慣れるまでは吐きまくる部員が続出
温泉や食事を楽しむ余裕もなく、慣れる頃には帰省というのが通例だ
まぁそんな事、ここでは敢えて言わないけど…
そうこうしてる間にミーティングは終わり、みんな席を立ち始める
僕もカバンを持ち外へ向かおうとして…案の定というべきか、肩を掴まれて止められた

「あなたは残りなさぁい」

ミーティングの時のような明るさはなく、握力からは殺気に似たような感情が伝わって来る
…さっさと出て行けばよかったな…
そんな後悔をしているとみんな出て行って会議室は二人きりになった

「…何ですか?」
「今日、ずっと私の事避けてたでしょう?」
「気のせいだと思いますよ」

冷たく、そう言い放つ
あんな事されて普通に接するなんてできるもんか

「そう?なら…」
「…あっ!」

引き寄せられ、後ろから抱き締められる形になる
ガッチリと回された腕は、逃亡を許してくれそうにない

「…やめてください」
「あらぁ、今更抱き締められたぐらいで嫌がるのぉ?」
「…生徒がいるかも知れないんですよ?」

まだ数分しか経っていない
忘れ物をした部員が戻ってくるのも、決して低くない確率で有り得る

「ふふ…Hまではしないから安心しなさぁい」

そう言うとポケットからピンク色の物体を取り出し、僕の目の前に持ってきた

「───!!」

それが何か理解すると同時に、嫌な予感に包まれる

「これが何かわかるみたいねぇ…最近の中学生ってお・ま・せ・さぁん」
「…」
「言ってみなさい。これが何か…」
「…ロー…ター…」
「正解よぉ。だったらどう使うのかもわかっているわよねぇ…?」

ゆっくりと頷いた

「素直で可愛いわぁ…これはプレゼントしてあげる」

そのままローターを僕のカバンに滑り込ませる
正直、いらない

「着けて来いって言ったら着けて来なさい…わかったわねぇ?」
「…が、学校に…ですか…?」
「当たり前よぉ」
「…」

断れる立場じゃないことはわかっている
だけど…これはあまりにも…

「返事は?」
「…わかり…ました…」

涙を呑んで、承諾した

「そういうとこ…大好きよぉ」
「…苦しいです」
「いい匂い…」

より強く抱き締められる
先生の顔が背中に密着しているのを感じた
───密着?

「やっ!離してください!!」
「!?」

腕を振り払い、急いで制服を脱ぎその部位を見る
すると、今度はシミというレベルじゃなく、ハッキリとしたキスマークが付けられていた

「どうしてくれるんですか!」

こんなの、さすがに着て帰れない
洗っても絶対落ちない気がする
動揺する僕とは相反し、先生は落ち着いて笑みを浮かべていた

「これ」
「え…?」

先生のカバンから、まだ袋に入った新品の制服が二着出される
それを僕に手渡した

「昨日の分と今日の分…これでいいでしょ?」

昨日の制服にも多少被害があったことを知っているのだろうか?
唖然とする僕に新品を押し付け、代わりに今キスマークが付けられた制服を奪った

「これはもらうわねぇ♪」

嬉しそうにカバンにしまう先生を見て、我に返る

「い、いきなり新品を渡されても…困ります。家族に…特に翠星石には怪しまれます」

双子でサイズが同じという事もあり、僕と翠星石の制服は区別をしていない
翠星石が新品を着れば、違和感に気付くだろう

「キスマークの付いた制服よりはマシじゃなぁい?」
「ですが…」
「もう…めんどくさい事になったわねぇ…」

めんどくさい事にしたのは誰なのか、怒鳴りたい気分だった

「仕方ないわねぇ───きらきー、入りなさい」
「…えっ!?」

会議室のドアが開き、雪華綺晶が姿を現す
下着姿の僕には目もくれず、彼女の視線は先生だけを見ていた

「雪華…綺晶…?」
「きらきー、制服を脱いでこっちに」
「はい」

スルスルと、ごく自然に制服を脱いで、先生に手渡す
その制服を僕に投げた

「新品じゃないなら…これで問題ないでしょう?」

僕の中では、新たな問題が浮上した


  つづく

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