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ローゼンメイデン百合スレまとめ@ウィキ
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ローゼンメイデン百合スレまとめ@ウィキ

普通の休日、普通のデート

最終更新:

rozen-yuri

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だれでも歓迎! 編集

のりめぐ長編「心に虹が掛かる時」の直接的な続編になります。


 九月も半ばを過ぎた、ある週末。
「ねぇねぇジュン君、この服おかしくない?」
「はいはい、よく似合ってますよっと」
 余所行きの服を着てジュンに感想を求めるが、ジュンはろくに見もしないでテレビの方へと目を戻した。
 その反応が面白くなく、のりは抗議の声を上げる。
「もう、ちゃんと見てよぉ。お姉ちゃん悲しいわ」
「一時間以上も付き合わされてるこっちに身にもなってみろ! 真紅達に聞けば良いだろ!」
「だってジュン君はこういうのセンスあるでしょう? だから聞いてるのよ」
「…大体何回もお見舞いに行ってたんだから今更服をどうこう言う必要無いだろ」
「それとこれは別よう。なんてったって明日はめぐちゃんと初デートなんだから! 分かってないわねジュン君は」
「分からなくて結構だよ」

 そう、明日は念願のめぐとの初デートの日。
 手術も終わって長年の入院生活にもピリオドを打ち、ようやくデートに行けるようになったのだ。
 それだけにのりの気合の入りっぷりは尋常じゃなかった。
 いくつも服を引っ張り出してはそれを試着し、ジュンに評価してもらっていたのだ。
 もっとも、すでにウンザリしているジュンの評価の仕方はいい加減を通り越しているレベルなのだが。

「そうだ、ジュン君の服も見せてくれない? 男物で決めるってのも良いかも」
「はぁ!? 冗談言うなよ! 何で僕の服を貸さなきゃいけないんだ!」
 いきなり出たのりの提案にジュンは更に口調を荒げる。
 それを聞いてのりはシュンとなり、さすがにジュンも言い過ぎたかと戸惑った。
「…そう、やっぱ良いわ…」
「…あの、ゴメン。ちょっと言い過」
「考えたらジュン君お洒落考えた事無いもんね」
 悪気がある訳ではないが、天然なのりの口から出たこの台詞に、疲れていたジュンの怒りはマックスに。
「うっせえクソアマァーーーー!!」

―※―※―※―※―

 結局あれから一人で考え、選んだのは淡いブラウンが主体のちょっと落ち着いた雰囲気のワンピース。
 その服を着て、のりは今まさに待ち合わせの駅前広場に向かっているところだ。
「…ちょっと早く来すぎちゃったかな…」
 少し眠い目を擦り、携帯の時計を見ると待ち合わせより三十分以上前の時刻を示していた。
 夕べは興奮してなかなか寝付けず、起きてからも落ち着かず予定より大分早く家を出てしまった。
 さすがにこの時間だと、まだ来ていないだろうなと思いつつその広場ヘ向かう。

 やがてその広場に着いた時、のりは一瞬目を疑った。
 他にも待ち合わせしている人がいる中、見間違えるはずもない長い黒髪の女の子の後ろ姿が見えた。
(うそ、もう来てた!?)
 広場の時計を見たが、やはりまだ待ち合わせまで三十分近くある。
 のりが慌ててその女の子に近付いて行くと、足音で気付いた彼女がのりの方を向いてきた。
 その女の子は間違い無くめぐで、のりの姿を見ると驚いたようにそして次には嬉しそうに目を輝かせた。
 だがのりは対照的に、少し申し訳無さそうな顔をする。
「ご、ごめん、待った?」
「ううん。私もついさっき来たところよ」
「そう…?」
「大体、まだ待ち合わせ時間より大分早いんだから。…早く来てくれて嬉しかったわ」
 めぐは優しく微笑み、のりも少し安心した気分になって少し微笑んだ。
 それで少し心の方も落ち着き、改めてめぐの姿を見つめる。
「どうしたの?」
「ううん、何だか私服のめぐちゃんって新鮮だなーって思って…」
「…そう言えば確かに私服で会うのって初めてだよね。私ずっとパジャマだったから」
 初めて見るめぐの私服に、のりは釘付けになっていた。
 もちろん新鮮というのもあるが、何より服がよく似合っている。
 めぐの服は白地に黒のストライプシャツに緩く黒のナチュラルタイが巻かれ、黒色のジャケットを羽織っている。
 そして下は黒めのデニムジーンズと、白と黒が基調のシックかつ全体的にボーイッシュな雰囲気だ。
 しばらくそう眺めていると、めぐが少し恥ずかしそうな表情で口を開いた。

「…変、かな…? オシャレとかほとんどした事なかったから、完全に自分のセンスで選んだんだけど…」
「…ううん。すっごく似合ってる。可愛いし、カッコいいわよ」
 お世辞など無い嘘偽りの無い本音。それを聞いてめぐは照れ笑いを浮かべる。
「本当?」
「ええ。本当よ」
「…そう言ってもらえて嬉しいわ。のりも凄い綺麗…何だか前よりも大人っぽいわね」
 めぐものりの服装を見て、少し見惚れたようにそう言った。
 のりはそう言われて嬉しく、思わず心の中でガッツポーズを取ってしまった。
「ふふ、ありがとう。じゃあそろそろ行きましょうか」
 二人は頷き、そこから歩き出す。
 だがしばらく歩いてから、のりが「あ」と何かを思い出したように口を開いた。
「どうしたの?」
 めぐがそう尋ねると、のりは少し笑顔を浮かべてめぐの手を取った。
 不意に手を握られて、めぐは少し驚いたようにその手を見る。
「こうした方が恋人同士らしいわね」
「…そうね」
 最初は驚いたがそれをすぐに受け入れて、向こうからも力を込めて手を握り返してくれた。
 それから二人は話に花を咲かせながら街中へと繰り出して行った。
 暖かな陽射しが心地良い、そんな最高のデート日和だ。

「それで、最初はどこに行く? 何でも良いわよ」
「…あのね、私携帯買いに行きたい」
「携帯?」
「ええ。退院したからやっぱり携帯が欲しいなって。それに、いつでものりと連絡が取れるしね」
 照れ笑いを浮かべて可愛い事を言ってくれるめぐ。その様子に自然とのりの顔もほころんだ。
「ちゃんとパパから同意書とお金は貰ってきたから」
「それは良かったわね。じゃあデパートに行きましょう。そこなら何でも揃うわ」
「分かった、じゃあそこに行きましょう」
 行き先も決まり、その方へと歩いていく。
「そうそう。お父さんといえば、退院してからは仲良くしてる?」
 めぐの父親と言えば思いだすのが、病室で大喧嘩してた時の様子。
 本人も言っていたが、父親と折り合いが悪いのが気になっていた。
「ん…まあ仕事が忙しいのは変わらないけど、前よりはちゃんと話してるかな。もう喧嘩はしてないわよ」
「…良かった。心配してたのよ」
 それを聞いて心底安心し、のりは安堵の溜息を吐いた。
「…そうそう。パパって言えば、今度のりに合わせて欲しいって」
「私に?」
「ええ。何でも、入院中色々お世話になったみたいだから挨拶とお礼がしたいって」
「お礼って…私はただ、めぐちゃんが好きでやってただけだから。…でも、そういう事なら…ああでも…」
 何やら複雑な表情を浮かべ、人差し指を自分の唇に当ててうんうんと考え出した。
 一人何かを悩んでいるのりを不思議に感じ、めぐはその顔を覗きこんだ。
「どうしたの? うちに来るの…嫌?」
「…ううん。そういうわけじゃ無いけど…」
「けど?」

「…そういう時ってちゃんとした正装の方が良いのかな? でもまだそんな服持ってないし…ああ、お母さんのスーツがあるかな…」
「…え?」
「…挨拶はやっぱり“お嬢さんと健全なお付き合いをさせていただいている、桜田のりです”…とか…? むしろ結婚を前提に、のが…?」
「…ちょっと、のり」
 一人暴走しだしたのりを落ち着かせようと、めぐは肘でのりの脇腹を小突く。
 のりはハッと意識を戻し、めぐの方を見ると若干呆れたような笑みを浮かべていた。
「…私達の歳考えてよ。のりは高校生、私はまだ中学生よ。まだそんな歳じゃないわ」
「そ、そう?」
「そうよ。そう言うのを考えるのはまだ早すぎるわ。もっと気楽で良いのよ」
 めぐにそう諭されて少し気恥ずかしくなり、照れ隠しにハハハと笑って見せた。
「そういう挨拶は何年後かに取っておいて。…ね?」
「…うん。その時はまたよろしくね」
「こちらこそ」
 ある意味プロポーズとも取れるような会話をして二人とも顔を赤く染めて笑顔を浮かべる。
 二人きりだったらこの場でキスの一つでも出来た雰囲気だが、こんな人の往来の場でそんな事をするような二人ではない。

―※―※―※―※―

 そんな調子で話をしながら進んでいくと、目的地のデパートに着いた。
 中に入っていくと、めぐは興味津々と言った様子で店内を見渡し始める。
「凄い込んでるわね…それに広い…」
「あ、そうか。めぐちゃんデパート初めてだっけ?」
「え、うん…」
 その質問に、恥ずかしそうにめぐはゆっくり頷く。
 ずっと入院してためぐにはデパートすら未知の領域なのだろう、そんなめぐの手をしっかりと握る。
「はぐれない様にしっかりと握っててね。携帯が売ってるのは四階だから、エレベーター使って行きましょう」
 不安そうなめぐをエスコートして先に歩き出し、エレベーターに乗って四階まで上がって行った。

 携帯売り場はエレベーター前のスペースにあり、二人は真っ直ぐそこへと入って行った。
 スペースに入っためぐは落ち着かない様子で棚に掛けられた多くの携帯サンプルを見渡す。
「…凄い沢山…。どれが良いのか分からないわ」
「そうね…どういうのが良いの? 例えば、形とか」
「うーん…のりのはどこの機種?」
「私のはハードバンクよ。ほら、白い犬のコマーシャルのやつ」
「ああ、あそこ…折角ならのりと同じところのがいいな」
「それならこっちのスペースね」
 ポップ広告を頼りにしてそのメーカーのスペースまで行く。
「…値段もピンきりね…」
「機能にあまり拘らないなら安いので十分通じるわ。私のも一番安いやつだったから」
 それから二人で悩みながら色々見ていき、数十分悩んでからやっと決まった。
 一番安くて色は白という、シンプルな物だ。
「これにするね。形が気に入ったわ」
「じゃああそこで契約しよう」
 受付カウンターに行って二人は携帯の手続きをしていき、十数分後には契約を済ませて店を出た。
「えへへ、携帯買っちゃったわ」
「嬉しそうね。でもまだ使えるようになるには時間掛かるから、ちょっと早いけどお昼ごはんを食べに行こうか」
「そうね、ちょうどお腹も少し空いてきたし」
 めぐも頷き、一階上のフードコートに向かう。

 フードコート内の店内で頼んだ料理を話をしながら食べていると、出してあっためぐの携帯が不意に鳴った。
 それで携帯を取って広げて見ると手続き完了のメールが入っていて、めぐの表情が笑顔になった。
「これで使えるようになったって」
「じゃあちょっと貸して。私のアドレス入れてあげるわ」
「うん、じゃあお願いするわ」
 のりはめぐから携帯を受け取り、自分の携帯も取り出して指を進めて行く。
「これも赤外線が付いてるから…よし、これで出来たわね」
 数分も経たないうちに完了し、めぐに携帯を手渡す。
「ありがとう。じゃあ早速メール送ってみるわね。…どうやってやるの?」
「この封筒のマークがあるでしょ? それでね…」
 めぐに携帯の使い方をレクチャーしていき、それに応えるようにめぐも携帯を操作する。
 数分後には何とか絵文字や顔文字も使えるようになり、メールを拙い指使いで入力していく。
 真剣な表情でメールを打つ様子を、のりは微笑ましそうに眺めていた。
「よしっと…今送ったわよ」
 その言葉を言い切ると同時にのりの携帯が鳴り、それを広げるとメールが一通入っていて、それを開く。
――初めてのメールだけど、届いてる?――
 シンプルなメール、それを確認してのりからも返事を打つ。
――届いてるわよ。携帯購入、おめでとう――
 そう打ち込んで返信を送る。そのすぐ後にめぐの携帯が鳴り出し、そのメールを見てめぐは目を輝かせた。
「おめでとう、めぐちゃん」
「ありがとう、のり」

 それからもめぐは説明書を見ながら携帯を弄くっていき、のりはそんな様子のめぐを見守っていた。
 見ているだけでも可愛い、そんな様子だ。
 しばらくそうしていると、めぐは不意にのりに携帯を向けてきた。
「のり、こっち向いて」
「え?」
 それと同時に携帯から電子音が鳴り響き、その画面を見てめぐは可笑しそうに笑った。
 さっきの音で写真を撮られた事を理解し、のりはめぐから携帯を受け取りその写真を見る。
 そこには急に携帯を向けられて呆気に取られているのりが映っていて、のりは思わず笑ってしまった。
「やだ、私ったら変な顔」
「写真第一号ね。この写真待ち受けにしようっと」
「えー、どうせならもっといい写真にしてよ」
「嫌よ。だって記念の一枚目だもん」
「もう、恥ずかしいじゃない」
 そう言うものの本気で嫌がっているわけじゃなく、むしろどちらかと言えば嬉しい。
 ならば、とのりも携帯をいきなりめぐに向けて写真を撮ってやった。
 その写真もめぐが驚いたような表情を浮かべていて、それを見ためぐは恥ずかしそうに笑った。
「やだ、撮るなら撮るって言ってよ。変な顔になっちゃったじゃない」
「ふふ、これでおあいこよめぐちゃん。私もこれ待ち受けにしようっと」
「もう、のりの意地悪」
 ワザと唇を尖らせる様子が可笑しくて、二人とも思わず吹き出した。
 そんな様子で、楽しいお昼の時間は過ぎていった。



 お昼を食べてからは映画を観て、ウィンドウショッピングをしたりブラブラしたりしてデートを進めていった。
 何事もめぐには新鮮で、本当に楽しそうだ。
 やがてゲームセンターでプリクラを撮り、それを携帯に貼っていると、その時計機能でもう既に日が沈む時間なのに気が付いた。
「あれ、もうこんな時間…。楽しいと時間が過ぎるの早いって本当ね」
「本当だ、早いわね。…めぐちゃんの所、門限とか大丈夫? お父さん、心配しない?」
「パパ、今日休日出勤だから家にいないのよ。帰りも遅くなるって…」
「え、そうだったの?」
 世間一般は休みの日だからめぐの家も同じかと思っていたが、それを聞いて少し面食らう。
 めぐはフッと少し笑うと肩を竦めた。
「まあ忙しいから、パパは。その事は入院してた頃から分かってたから、今更どうこう言うつもりは無いわ」
「じゃあ晩ご飯は? 退院してからはいつもどうしてるの?」
「パパがいない時は適当にコンビニで買ったりとか、インスタントで済ましたりとか…それ位ね」
「そんな食生活送ってるの!?」
 あまりにも不健康なめぐの食生活にのりは驚き、同時に憐れみと悲しさが胸を埋める。
 そんな食生活を送ってたらまたいつか倒れて入院してしまうのではないか。
 少し大袈裟かも知れないが、そんな事を思ってしまった。
 のりは少し思案した後、うんと頷いて口を開いた。
「めぐちゃん、晩ご飯うちで食べていったら?」
「え…でも、そっちは大丈夫?」
「一人ぐらい増えたって大丈夫だし、めぐちゃんならみんな大歓迎してくれると思うわ」
「本当に、良いの?」
「もちろんよぅ!」

 最初はその案に少し呆気に取られていた様子のめぐだったが、のりに笑顔で言われると顔が一気に明るくなっていった。
「やったぁ! のりの料理がまた食べられるなんて、すっごく嬉しい!」
「そうこないとね。じゃあ今日は腕によりをかけたご馳走を作らなきゃ。何が食べたい?」
 嬉しさを隠す事ないめぐの様子に満足した様子でのりがそう問いかける。
 それから少しめぐは考え、それが決まると口を開いた。
「ハンバーグ。ほら、のりが最初に作ってくれたお弁当に入ってた、あの目玉焼きが乗った…」
「はなまるハンバーグね。分かった、じゃあここの食料品売り場で材料買って行きましょう」
 夕飯のメニューも決まり、二人は地下の食料品売り場へ向かって行った。

―※―※―※―※―

 二人で材料を買って、のりの家に着いた頃には空は大分暗くなっていた。
「ここがのりの家…」
 のりが先に玄関に入って後からめぐが連れられて上がり、、のりが「ただいま~」と言うと奥から雛苺と翠星石が出迎えてくれた。
 初めて見る水銀燈以外のローゼンメイデンに、めぐは一瞬面食らう。
「おかえりなの~。…あれ?」
「おかえりですぅ。ん…その女はもしかして…」
「ただいま、この子がめぐちゃんよう。えっと、こっちの緑の服着てる方が翠星石ちゃん、ちっちゃい方がヒナちゃんよ」
「えっと…とりあえず初めまして、と言うべきかな」
 とりあえずそう挨拶をするめぐに、二人は納得したようにうんうん頷いた。
「ほぉ~、この女が話に聞いてた水銀燈のミーディアムですか…」
 それから翠星石はめぐをじっくりと上から下まで眺め始める。
 じっと見つめられ、めぐは少し狼狽してしまった。

「…えっと、どうしたの?」
「…ちょっと痩せ過ぎな気もするけど、なかなかいい女ですね。のりも結構やるですねぇ」
「なっ…こら、翠星石ちゃん!」
 ニヤニヤと笑みを浮かべてからかわれ、二人とも頬を赤く染めてのりが少し怒る。
 それが可笑しかったのか翠星石はますます笑みを深くしていった。
 だがそんな中、ぐぅ~と間抜けな音が響き渡り、音の発生源である雛苺へと視線が集まる。
「のり、お腹空いたの~…」
「ああ、すぐに準備するわね。ほら、めぐちゃんもあがってあがって」
「う、うん。じゃあお邪魔します」
 のりに促されてめぐも上がり、翠星石達も一緒にリビングへ案内される。
 リビングでは真紅がソファーに座ってくんくん探偵のビデオを見ていたところで、めぐ達が来たのに気が付いてこっちを向いてきた。
「あら、あなた…」
「真紅、のりが恋人を連れてきたですよぉ~」
「す、翠星石ちゃん…」
 確かに恋人同士であることは自覚しているのだが、こう堂々と第三者から言われると少し恥ずかしい。
 真紅は先の翠星石達と同じように納得したように少し頷いた。
「そう、私は真紅よ。水銀燈から話は聞いてるかしら?」
「真紅…ああ、水銀燈と付き合ってるドールってあなたの事ね」
 水銀燈からそんな事を聞いていたのを思い出した。
 真紅はそれを聞いて頬を少し赤く染めて微笑んだ。
「…そう言う訳だから。よろしくね」
「こちらこそよろしく」

 お互い見詰め合ってそう頷くと、のりはめぐの肩を軽く叩いて開いているソファーの方へと目配せした。
「荷物とかそこ置いといて良いわよ。私ちょっと着替えてくるから、待っててね」
 めぐが頷くと、のりは軽く手を振ってリビングを出て行き、言われたとおり荷物と脱いだジャケットをそこに置く。
 それからしばらくすると、室内着に着替えたのりがリビングに戻ってきた。
「それじゃあ今からご飯の準備するから。みんなちょっと待っててね」
「あ、じゃあ私も手伝うわよ」
 めぐは巻いていたナチュラルタイを解き、さっきの荷物と同じ場所に置いてキッチンに向かうのりに着いて行く。
 だがのりはそれに少し驚いたようにめぐの方を振り向いた。
「え、大丈夫よ。めぐちゃんはリビングでゆっくりしてて」
「でも全部やってもらったら悪いし。それに、私はのりと一緒に料理がしたいのよ。…ダメ?」
 ほんのり上目遣いでめぐに見上げられ、のりの胸が少し高鳴る。
 こう言われては断れない。のりはそれを受け入れて二人ともキッチンに立つ事になった。
「じゃあめぐちゃんはサラダ用のレタスを千切っていって。私はハンバーグの方をやるから」
「分かった」
 キッチンに立った二人はそれぞれ分担して作業を行っていった。
 めぐは言われたとおりレタスを千切っていき、のりはハンバーグを作っていく。
 しばらくそうしてレタスを千切っていたが、のりの手馴れた様子にしばし見惚れてしまう。
「…やっぱり上手ね。凄いわ」
「そう? 自分じゃそうは思わないけど…」
「私からしたら凄いわよ。…今度、料理教えてくれない?」
「ええ良いわよ。いつでも教えてあげる」
「約束よ。…それにしてもさ、思わない?」
「何が?」
「こうして二人でキッチンに立ってたら、何だか…新婚夫婦みたいって」
 頬を染めた笑顔でめぐにそう言われ、のりも照れ臭くなってきた。
 やがて「そうね」とだけ呟くと、うっかり手を火傷しないようフライパンの方へと視線を戻した。

―※―※―※―※―

 それから数十分後、テーブルの上には料理が並べられ、ジュン含む全員がテーブルに着いていた。
 ジュンとめぐが軽くはじめましての挨拶をしてからのりがみんなを見渡す。
「それじゃ、みんな良いわね? それじゃ、いただきます」
 のりのそれが合図となってめぐを交えた夕食が始まった。
 めぐもフォークとナイフを持ってハンバーグを一口大に切り、それを口に運ぶ。
 ゆっくり味わって咀嚼すると、それを飲み込み満面の笑みで隣ののりを見た。
「やっぱり美味しい、のりのハンバーグ」
「ありがとう、そう言ってくれて」
「のりのはなまるハンバーグは最高なのよー」
 めぐと雛苺からそう言ってもらえてのりも嬉しく、笑顔で応える。

 そんな和やかな雰囲気の中食事は進んで行き、みんな食べ終わると二人で食器の後片付けをし始めた。
「悪いわね、後片付けまで手伝ってもらっちゃって」
「ううん、これぐらいどうって事無いわ」
「ありがとう、助かっちゃった」
 のりがお皿を洗い、その洗った皿をめぐが布巾で拭いて片付けていく。
 そんな中、のりがゆっくりと口を開いた。
「…ねえめぐちゃん」
「なに?」
「…これからお父さんが遅くなる時は、うちで晩ご飯食べない?」
 その提案を聞いて、めぐは少し驚いたような表情で手を止めてのりの方を向いた。
「私がめぐちゃんの学校まで迎えに行くからさ。部活の時はまた連絡取るし…迷惑じゃなかったら、どう?」
「そんな、迷惑な訳無いじゃない。でも…嬉しいけど、そこまでお世話になったら悪いんじゃ…」
「全然悪くないわよ。…それじゃあさ、私がめぐちゃんと一緒に晩ご飯食べたいから、てのはダメ?」

 優しい、そして嘘偽りの無い自然な笑顔。
 めぐは少し考えた後、同じように笑顔で頷いた。
「…じゃあ甘えちゃおうかな。ありがとう、のり」
「どういたしまして」
 これから毎日のりの手料理が食べれる、そう思うと表情が緩んで行くのが止められなかった。

―※―※―※―※―

 片付けはそれからすぐに終わり、二人はのりの部屋でベッドに並ぶように座ってゆっくりとした時間を過ごしていた。
「はぁ…もう一日終わっちゃったわね…」
「本当ね。どうだった? 今日一日楽しんでくれた?」
「ええ、こんな楽しい日初めてよ」
 幸せ満面、そんな表情でのりの手を握る。
 のりもその手を握り返し、めぐの横顔を覗き見た。
「こうやって街に行って買い物したりする…普通の事かもしれないけど、凄く新鮮だった」
 めぐはゆっくりと目を閉じ、のりにもたれかかってきて首をのりの肩に乗せる。
「…本当に、今日は楽しかった…凄く幸せな気分。…これも、のりが病気を治してくれたからよ」
「治したって…私は何にも出来てないわ。お医者さんでも何でもないし…」
「ううん。のりは病気を治してくれたわ。…私の心の病気を」
「心の…?」
「そう。塞ぎこんで曲がってた心をのりが治してくれたのよ」
 ゆっくりと、だけど確かな口調で、めぐは続けていく。
「…のりと会わなかったら手術しなかったかも知れないし、したとしてもこんな幸せになれなかったと思う」
「めぐちゃん…」
「…私、何万回ありがとうって言っても言い足りない位のりには感謝してるし、何万回大好きって言っても言い足りない位…のりの事が大好き」
 真っ直ぐと見つめられてそう言われ、のりはめぐが心底愛しく感じて胸の中に抱きしめた。
 めぐも自分の体をのりに預け、胸元に顔を埋めて自分からも抱きしめる。
「…私も、めぐちゃんと会えて本当に幸せよ…。こちらこそありがとうね、私と出会ってくれて…」
「大好きよ…のり」

―※―※―※―※―

 それからめぐが帰る頃には、既に時刻は九時近くまでになっていた。
 のりは今、めぐを見送りに玄関まで来ているところだ。
「結構遅くまでお邪魔しちゃって…ごめんなさいね」
「ううん。こっちも引き止めちゃったみたいだから。…そうだ。家まで送ってくわよ」
「大丈夫よ。バス停まで行けばすぐだし…」
 さすがにそこまでお世話になるのは気が引ける、そう思ってその提案は辞退しようと思ったがのりはそれを聞かない。
「ダメよ、こんな遅くに一人で出歩いてちゃ危ないわよ。送ってくから」
「それを言うならのりも同じよ。帰りが危ないわ」
 そんな押し問答をしばらく続けていると、不意に第三者の声が聞こえて来た。
「それなら私が送っていくわぁ。それなら文句無いでしょう?」
 声がした方を見ると、水銀燈がいつの間にか立っていて二人を眺めていた。
「ビックリした…いつの間に…」
「水銀燈、どうしてここに?」
「どうしてって、遅いからあなたを迎えに来てあげたのよぉ。nのフィールドなら安心して帰れるわよぉ」
「…ああ、なるほど」
 水銀燈のその意見に二人とも納得して頷き、めぐは物置の大きな鏡から帰ることになった。
 そのまま物置まで行き、水銀燈が鏡でnのフィールドへの扉を開けると鏡が輝きだした。
「それじゃ、先に行って待ってるからぁ。早くしなさいよぉ」
 そう言って水銀燈が先に鏡に消え、残された二人は一旦向かい合う。
「今日はありがとう。本当に楽しかったわ」
「私も凄く楽しかったわ。また行きましょうね」
「ええ。それじゃあ、家に着いたらメールするね」
「うん。待ってるわよ」

 めぐが手を振り、そのまま鏡に向かおうとする。
 だがそこでのりは思い出したように声を上げた。
「あ、そうだ。めぐちゃん待って」
「? どうしたの?」
「…あのさ、結局あの日出来なかったから…」
 頬を薄ら染めてめぐに近付き両肩に手を添えると、めぐも頬を染めてこれからの事を理解し目を閉じる。
 そしてのりも目を閉じ、そのままゆっくりと唇と唇を重ね合わせた。
 やわらかく、温かい感触をしっかり数十秒味わって、二人は唇を離すとはにかんで見つめ合う。
「…ファーストキス、よ」
「…私もよ」
 二人とも照れ臭そうにしていると、鏡から「早くしなさぁい」と水銀燈の声が聞こえて来てめぐは慌てて鏡に駆け寄っていく。
「じゃあね。おやすみ」
「おやすみ、めぐちゃん」
 そうしてめぐも鏡に消えて行き、後にはのりだけが残された。

―※―※―※―※―

 めぐが帰ってから数十分後、のりがお風呂から上がってゆっくりしていると携帯の着信が鳴り響いた。
 この音はメールの着信音、のりは聞きとした様子で携帯を開く。
――件名:遅れてごめんね

  本文:今日は本当に楽しかった、ありがとう。また一緒に遊びに行こうね。約束よ――
 差出人はもちろんめぐ。短めのその文がのりには愛しく感じ、頬が緩む。
 のりは返信ボタンを押して返事を打ち始める。
 大好きなめぐの事を想って。

終わり

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