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第八話『白紙の選択肢』前編

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rozen-yuri

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だれでも歓迎! 編集

消えてくれない下腹部の異物感
処女喪失の余韻が僕の中に留まり続けていた

「まだ痛むぅ?」

横でハンドルを握り、視線は前に向けたまま問い掛けてくる
車で送ると言われ、気は進まなかったが断る理由もなく、乗せてもらうことしたんだ

「はい…」
「そう…でも少しの辛抱よぉ。明日か明後日には治るからぁ」

そしてまた沈黙が車内を漂う
とても話したい気分にならない
彼女に従う事で得られるモノより、失うモノの方が遥かに大きいと気付かされた
内申とは勉学に勤しみ得られるモノだと言うのなら、
僕の苦しみはそれに匹敵する努力と言えるだろうか
…こんな関係もうやめたい…
でも、逃げる事は赦されない

「…この辺りでいいです…ありがとうございました」

ようやく見慣れた風景の場所まで戻って来た
家まで多少の距離はあるが、車内にいるよりはマシだろう

「待ちなさい…蒼星石」

降りようとした矢先、彼女の手が僕を捉えた


第八話『白紙の選択肢』前編


「何ですか?」
「これ、渡しとくわぁ」

そう言いながら押し付けてきたのは、くんくん探偵のキーホルダーに付いた二つの鍵

「これは…?」
「私の家の合鍵よぉ」
「えっ…」
「一つは予備だけど、無くさない前提で扱いなさい」

先生の合鍵って…

「こんなモノ、受け取れませんよ」
「どうして?」
「だって僕達は…」
「アナタ、まだ教師と生徒の関係でいるつもりぃ?」
「つもりって…」

事実には変わりない
成績で脅されている時点で、教師としての権力が働いている
それ以外の関係が、あるのだろうか

「私たち、もう恋人でしょう?」
「え──」

僕の反応に先生は一瞬だけ寂しそうな顔をして、すぐにいつもの凜とした表情に戻った

「Hは本来、お互いの愛を確かめる行為…今日の貴女が苦痛しか感じなかったのなら強姦と変わらない」
「いきなり…何を…」
「私に抱かれる事を苦痛に感じない努力をして」

無理だろう
恥ずかしながら一度快楽を味わってしまったが、
好きな人に抱かれてる幸せな気分とやらにはなれなかった
それこそ被害者のように、すごく惨めな気持ちになる

「それでも恋人と思ってもらえないのなら」
「…うぁっ!」

リクライニングを倒され、シートベルトで体を貼り付けられた

「いっその事、堕としてあげる」
「ちょっ…先生っ!!」

首筋に這う先生の舌
唇とは違う滑り気と暖かさが、鎖骨の上から耳にかけてなぞられる

「アナタはもう私のモノよぉ」

耳朶を甘噛みし、小さな声で囁く

「やめっ…」

ここじゃ誰かに見られる

「ねぇ…アナタは私の事、好きぃ?」

そんな事、答えるまでもないじゃないか

「身を捧げるのなら心もちょうだぁい」

これ以上、何が欲しいんだ

「アナタが私を欲するように、たっぷり調教してあげる…」

主旨が変わっている

「アナタは逃げられない」

わかっている

「壊してあげる」

壊す──
雪華綺晶も言っていた…違う意味か…?

「これからの生活はアナタ次第よぉ」
「…」
「苦境に立たされたなら、それを楽しむぐらいに生きなさい」

今はここまでにしてあげる…
そう付け加えて僕から離れ、運転席に座り直した

「いつでもいらっしゃい…留守でも勝手に入ってていいわぁ」

合鍵の話か
冗談じゃない…自分から飛び込むなんて有り得ない

「し、失礼します!」

解放された僕は、無意識の内に走り出していた
一刻も早く、車から離れる事を体が望んでいたんだろう
…もうどうしたらいいのかわからない
日に日に酷くなっている気がする

──堕としてあげる

その言葉が何度も繰り返される
堕ちてしまえば、楽なのか
走り続け、気が付けば家に付いていた

「遅かったですね、蒼星石。お帰りなさいですぅ」

出迎えてくれる翠星石
そんな事はどうでもよかった
僕は何をしたらいいの?
誰か…教えてよ…

「走って帰って来たですか?汗だくで息も切らせて…」

…教えてよ…

「教えてよ…翠星石…」
「…蒼星石?」

―†―†―†―†―†―

恐らく今はパニックに陥っているだろう
けど、何ら問題はない
蒼星石は必ず私の元へ来る
難しい事ではない
選択肢を減らしてやれば必然だし、一つしか与えなければ最早選ぶ余地すらなくなるのだから

「いろいろ開発してあげなくちゃねぇ」

悶え苦しむ蒼星石の画像を見ながら、独り言を呟く
奇妙とは感じながらも、嬉しすぎて何か言わずにはいられない
例え家族でも、彼女の裸体をこれほど間近で見た事はないだろう

「まさしく私だけの──ん?」

着信音が鳴り、画面に雪華綺晶の文字が現れた
ったく…せっかくいい所だったのに

「…もしもしぃ?きらきー?」
「先生っ!」
「どうしたのぉ?」
「さっき先生のお車を見ました!近くまで来てるのですか!?」
「えぇ…まぁねぇ」
「あの…お忙しくなければ会って頂けませんか?」
「…用事もなしに来ると思う?」
「…そうですよね…申し訳ありません…」

と、邪魔をされた仕返しはこの辺にしといてやろう
用事はもう終わってるんだし

「なぁんてねぇ…今は暇だから、会ってあげなくもないわよぉ?」
「ほ、本当ですか!?」

そんなに私に会える事が嬉しいのか…
蒼星石もこれぐらいになってくれたら…
実に惜しい

──雪華綺晶が蒼星石だったら──

「じゃあ…あの公園で待ち合わせねぇ」
「はいっ!」

蒼星石と恋人になりたいと言いながら雪華綺晶に手を出す事は実質浮気か?
いや、今はまだどちらも私の玩具
愛でるも壊すも私の自由
だったら、好きにさせてもらっても、罰は当たるまい

「なんて都合良すぎるけどねぇ…」

そう呟いて、私は車を走らせた


  つづく

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