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代表的愛情欠落症候群

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rozen-yuri

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だれでも歓迎! 編集

 
 例えば、寝る前にお休みのキスをねだったり。
 例えば、ちょっと外出する時に用もないのに着いていったり。
 例えば、食事中の仕草をじっと見つめたり。
 例えば、離れていく貴女の服の裾を掴んだり。
 例えば、少しだけ触れた手の体温が離しがたかったり。
 そんな症状。


 ──代表的愛情欠落症候群
 
 
 ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ……となんとも古めかしい数え方と共に指を折り数える亜麻色の長い髪の少女は、その数が指の二週目を折り返そうとしたとこでため息をついた。
 覚悟していたことではあるのだが、数字という確固とした事実を目の前にするとなんともやるせない。
 数えていたのは日数。それも、恋人である妹とまともに会話していない日数。
 センター試験を終えた妹はこれから控える国公立の二次試験の為にもう勉強中である。
 内部推薦で上の大学に進学できる翠星石には外部受験の辛さが分からないが、妹見ているとそれがどれだけ辛いのか分かる。
 だから、今の自分にできることと言えば、何もせず彼女の支えになることぐらい。
「とは思うんですがね、」
 と、誰もいない空間に翠星石の声が響いた。独り言が多くなっている気がする。
「辛いですねぇ」
 寮の部屋に虚しく響く呟き。妹であり恋人である蒼星石との相部屋だが、蒼星石は自習室で勉強中。
 翠星石に悪いから、と寮の部屋では勉強しない。半分本音、半分建前であろう。
 時計をチラと見ると午後七時を指そうとしている。そろそろ夕食の時間だ。
「さて、呼びに行くですかね」
 ほっておけば夕食も食べずに勉強する妹を呼びに腰を上げた。
 食事時、入浴直前直後、寝る直前、一日の中で数少ない蒼星石と話せる時間は大切にしなければ。

 自習室の扉をそっと開けると一番奥の席で珍しく突っ伏している妹の姿。
 余程、疲れているのだろう。同じく自習中の水銀燈に軽く手を上げて、蒼星石の体を揺する。
「こんなところで寝たら風邪引きますよ。ご飯食べに行くですよ」
 できるだけ声を低くして耳元で呟くと、ゆっくりと蒼星石は体を起こした。
 ん、とまだ眠そうながらに短く返事をして蒼星石はノート類を片付け始めた。
「体調悪いですか?」
「大丈夫だよ」
 額に手を当て熱を計るが、特に熱くもなく、寝起きゆえの暖かさのみだった。
「ご飯食べに行くですよ」
「うん、ありがとう」
 起こしてくれて、と蒼星石は付け加えた。その声はまだ眠そうだったが、はっきりしている。

「今日はもう早く寝た方がいいですよ」
 本日の夕食、ホワイトシチューを掬いながら翠星石は蒼星石に言う。
「ん、そうするよ」
 いつもこう言うと、大丈夫、と言っていた蒼星石が素直にこう言ったので、やはり疲れているらしい。
 頑張ることも大事だが、それで体が壊れてしまっては元も子もない。
 食器を指定の返却口に返し、久しぶりに二人で自室に帰った。

 いつもなら蒼星石はこのまま自習室にまた戻るからだ。
「お風呂どうしますか?」
 帰ってくるなり自分のベッドに倒れ込んだ蒼星石に問いかけるとだるそうに、後でいい、と呟いた。
「本当に大丈夫ですか?」
「んー……」
 再度、額に手を当てるが、やはり熱はない。ただの睡眠不足なら良いが。
「翠星石の手、気持ちいい」
 額に置いた翠星石の手に蒼星石は自分の手を重ね、譫言のように呟いた。
「ふふ、そうですか?」
「うん、暖かくて安心するよ」
「それは良かったです」
 眠いからなのか、いつもなら考えにくいほど蒼星石が甘えてくれている。
 彼女も寂しかったのだろうか、そうだったならいいのに。
「今日はこのまま寝たらどうですか?」
 冬なので汗も全然かかないでしょうから、と蒼星石の前髪をすきながら翠星石が訊ねる。
 うーん、としばしごねっていた蒼星石だが翠星石の手首を掴んだ。
「君は?」
「はい?」
「翠星石は?寝ないの?」
 枕に半分顔を埋めた状態の蒼星石の表情は読み取れなかったが、翠星石は一つ笑みを溢すと、いいですよ、と言った。

 二人で寝るには少し狭いベッドが今だけは嬉しい。お互いの身を寄せ合って、くっついて寝転ぶ。
「少し狭いですかね?」
「いや、ちょうどいいよ」
 そう言いながら蒼星石は翠星石をきつく抱き締めた。すぐ近くで相手の声を聞けるのが何だかくすぐったい。
 翠星石は少しだけ身動ぎ、いつもの定位置の蒼星石の腕に収まった。
「あまり、無理しないでくださいね」
「うん、ありがとう」
 そう言ったって何事にも生真面目で全力投球な妹はまた頑張ってしまうのだろう。
 本当ならば、一緒の大学に入って楽しみたいのだが、彼女の夢にケチをつける気はない。
 ただ、傍らで彼女を支えることしかできない自分が不甲斐ない。
 そう思うと、あまりにも情けない自分にじわりと涙が浮かんできた。
 悟られないように下を向き、ぎゅっと蒼星石のパジャマを掴んだ。
「いざ寝ようとするとなかなか寝れないもんだね」
 そんな翠星石を悟ったのか、背中に手を回し、更にきつく抱き寄せる。
 翠星石の旋毛にキスを落とし、赤子をあやすように背中をポンポンと軽くたたく。
「ごめん、……なさ、いっ」

 蒼星石に迷惑かけまいようにしていたのに、心配をさせてしまって思わず謝罪の言葉が漏れた。
「謝らなくていいよ、僕は君のおかげで頑張れてるんだから」
 触り心地の良い長い髪に指を通しながら蒼星石はくすりと笑った。
「ありがとう。僕の為に邪魔しないようにしてくれてたんでしょ?」
 感謝しなきゃね、と蒼星石未だに俯いたままの翠星石の顔を上げさせた。
「寂しい思いさせちゃったね、ごめんね?」
 違う。そんなことを言わせたいんじゃなくて、謝らせたいわけじゃなくて。
 伝えたい思いはたくさんあるのに、うまく言葉にできなくて口だけがガタガタと震える。
 心配しなくていい、私なんか気にしないで、勉強頑張って。
 そう言いたいのに喉がひりひり焼けついて、気持ちだけが焦ってしまい、更に涙が溢れた。
「ありがとう」
 そう言われてきつく抱き締められてしまってはそれ以上何もできず、ただ蒼星石の背中に手を回す。
 ちゅ、と額にキスを落とされて、思わず体が強張った。
 やがて蒼星石は翠星石に乗り掛かり、顔中にキスの雨を降らせた。
「こんな雰囲気でごめんなんだけど、……いい?」
 艶っぽい声でそう問いかけられては否定もできず、またする気もなかったので、コクりと小さく頷いた。

「っあ、ん……」
 久しぶりに重ねる体はいつもより敏感になっているのだろうか、とっても熱くて。
 何週間振りかも分からないのに、相手の体温を覚えている自分が恥ずかしい。
「や、っだめ……そこは、ひぁぁっ」
 唇を下半身に滑らせていく蒼星石に制止の声をかける。すると、蒼星石は熱っぽい目でこちらを見てくる。
「何でダメ?気持ちよくなりたくない?」
 そんな目で見られては逆らうこともできないのを知っているくせに。体の芯が更にじんと熱くなる。
「だ、て……お風呂」
 入っていないから、と言うことを聞かない体でやっと伝えるとくすりと貴女は笑った。
「きれいだよ、全部」
 ビクンと体がその言葉に反応してしまう。褒められると、どうしても熱くなってしまうのだ。
「美味しいし、きれいだよ……全部見せて?」
「ひぁ、……やぁぁっ」
 暖かく湿った蒼星石の舌が翠星石の一番敏感な場所に滑り込む。
 蒼星石の頭を押さえて首をイヤイヤと振るが、蒼星石はやめようとしない。
 それどころか太ももを押さえられ蒼星石のさらさらの髪が太ももをくすぐる。
「や、だめ……も、やぁぁっ」
 中に指を入れられもう知られている一番敏感なところをぐりぐりと指で擦られる。
 突起は舌でつつかれ、時折音を立てながら吸われてしまえば、体はひくひくと反応してしまって。
 びくびくと体が痙攣し始めたのが分かる。上り詰める直前なのだ。
「や、も……イ、くっ……あああっ」
 その言葉に蒼星石は更に中の質量を増やし、擦るスピードを速める。
「あぁっ、も……い、ああ、……アアア──っ」
 びくびくと体がこれまでになく跳ね、頭の中が真っ白になった。

「結局いつもくらいですね」
 時計を見つめて、翠星石は少し枯れた声で蒼星石に言った。
 結局あの後、立て続けに何度も挑まれ、啼かされ続けて、喉が少し痛むほどだった。
「まぁ、いいじゃない。たまには」
 そう言って満足気に微笑まれては反論もできず、受験で頑張っているご褒美だと翠星石は自分を納得させた。
 蒼星石は翠星石を引き寄せ、ぎゅと強く抱き締めた。
「寂しい思いさせてごめんね。でも後少しだから」
 そう、受験が終わってお互い大学生になれば行動範囲も広がるし、もっと楽しみが増える。
 二人でやりたいこと、行きたいとこは言い切れないほどあるのだ。
「頑張って、でも無理だけはしないでくださいね」
 蒼星石の背中に手を回し柔らかく抱き返す。
「合格したら、ご褒美頂戴ね」
 聞き流してしまいそうなほど自然に呟かれた言葉に、ワンテンポ遅れて言い返そうと顔を上げたが、時すでに遅し。
 すでに心地よさげに寝ている表情に反論する気も失せた。
 諦めて自分も蒼星石の胸に顔を埋めて目を閉じた。
 三ヶ月後、見事有名国公立大学に合格した蒼星石にご褒美をたっぷりあげる羽目になったのはまた別のお話。


終わり
 

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