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ローゼンメイデン百合スレまとめ@ウィキ

雛銀燈シリーズその6

最終更新:

rozen-yuri

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だれでも歓迎! 編集


49.

雛「やー! ゴキブリー!!」
 キッチンで洗い物をしてた雛苺がそう叫んでリビングへと戻ってきて水銀燈に飛びついた。
銀「び、びっくりしたぁ。何事かと思うじゃなぁい」
雛「だ、だっていきなり…!」
銀「分かった分かった。私に任せなさぁい」
 水銀燈は雛苺を離し、新聞紙を取って丸めるとそれを武器にキッチンへと入っていった。
 その後ろから雛苺と雛銀燈も着いて来る。
雛銀「ねえ雛ママぁ。ゴキブリってなんなのぉ?」
雛「ゴキブリってのはね、全人類の敵とでも言う程の醜い悪魔なの」
銀「大袈裟ねぇ。どこにいたの?」
雛「さっき流し台の所にいたのよ…」
 そう言って流し台を指差すがどこにも見えない。
銀「いないじゃなぁい」
雛「ホントにいたのよ…って、いたのー!!」
雛苺が指差す方を見ると、壁にゴキブリが張り付いて触覚をウネウネと動かしていた。
 そのおぞましい動きにあろう事か雛銀燈にまですがり付いている。
雛銀「雛ママぁ、しっかりするのよぉ」
雛「ご、ごめんね…雛ママ、ゴキブリだけはどうしても…」
銀「じゃあさっさと片付けるわぁ。…死になさぁい、このジャンク以下がぁ!!」
 一気に加速し、ゴキブリへと新聞紙を叩きつける。
 急な加速にゴキブリはなす術もなく新聞紙の前に敗れ去った。
銀「やったわよぉ」
雛「ありがとなのー! 急に出てきたときは怖かったのよ…!」
銀「もう大丈夫だからぁ、落ち着きなさぁい」
 まだ少し涙目な雛苺の頭を撫でる水銀燈。
雛銀(…銀ママがいないときはわたしがゴキブリから守るのよぉ)
 その光景を見て、雛銀燈はそう心の中で誓った。

 次の日の朝。
雛「またゴキブリー!!」
 雛銀燈が幼稚園に行く準備をしているとまた雛苺の悲鳴がキッチンから聞こえて来た。
 慌てて雛銀燈がキッチンに行くと、雛苺が流し台に手を付いて体を支えていた。
雛銀「雛ママぁ、大丈夫なのぉ!?」
雛「こっち来ちゃダメなの! 雛銀燈、そっち行ったの!」
 慌てて雛苺が床を指差す。そこには確かにゴキブリがこっちに向かって来ていた。
 雛銀燈は驚いたが、昨日誓った事を思い出してゴキブリに立ち向かう。
雛銀「雛ママをいじめちゃダメなのぉー!」
 そう言ってイスに掛けてあった物を確認もせずに、それを手に取って思いっきりぶっ叩いた。
 面積の大きかったそれからは逃げ切れず、ゴキブリはあっけなく下敷きになった。
雛銀「やったのぉー!!」
雛「あ、ありがと雛銀燈…。って、それ…!」
 そこでやっとトイレに行ってた水銀燈が駆けつけてきた。
銀「大丈夫ぅ?」
雛銀「うん! わたしが雛ママ助けたのぉ!」
銀「へえ、偉いわねぇ! …って、それ私の通勤鞄じゃなぁい!!」
 ゴキブリをぶっ叩いたのは水銀燈の通勤鞄だった。その事を知って水銀燈は思わず足から力が抜けた。
銀「あ、あ…夏のボーナスで新しく買ったばっかだったのにぃ…」
雛「…あ、洗えば使えるかもなの…」
銀「こんなのもう使いたくないわよぉ! うわぁ~ん…!」
 雛苺のためにゴキブリを退治した雛銀燈を怒るに怒れず、水銀燈はただただ途方に暮れるしかなかった。


 50. (ちょっと長め)

外人「確かこの辺のはずなんだけど…」
 金髪の外国人が地図が書かれたメモを手に住宅街を見渡す。
 だがなかなか場所が分からず、困ったように溜息を吐いた。
外「似たような家ばっかりでよく分からないわ…人に聞こうかな…。…あれ?」
 人がいないかともう一度辺りを見渡すと、ちっちゃい女の子を見つけた。
 その風貌に驚き、思わず駆け寄っていく。

雛銀「あれー、ネコさんどこ行ったのぉ…」
雛銀燈は水銀燈が目を放した隙に見つけたノラ猫を追っていた。
 しかしネコを見失ってしまい、寂しそうに小さく溜息を吐いた。
雛銀「ネコさん…」
外「雛苺?」
雛銀「へ?」
 不意に上から声を掛けられ、見上げると金髪の外国人が自分を見下ろしていた。
 いきなりで、しかも外人だった為雛銀燈は驚いた。
雛銀「外人さんなのぉ…え、えっと…。は、はろぉー」
 とりあえず知っている英語で挨拶をする。
外「…ううん…雛苺じゃない…よく考えたら私と同じ歳だから当たり前ね…」
雛銀「日本語だ…。あれ、ひないちご…雛ママの名前なのぉ」
外「雛ママ…という事はお嬢ちゃん、雛苺の子供?」
雛銀「そうなのよぉ」
外「驚いたわ…昔の雛苺そっくり…」
雛銀「…お姉ちゃん誰ぇ? 何で雛ママの事知ってるのぉ?」
 子供ながら怪しいと思い始めた雛銀燈はそう尋ねた。
 尋ねられた外国人は思い出したように口を開く。
オ「ごめんなさい、自己紹介してなかったわね。私はオディール。雛苺…あなたのママの古いお友達よ」
雛銀「雛ママのぉ?」

オ「ええ。…そうだ、お嬢ちゃんのお家まで案内してくれない? ジュース買ってあげるから」
雛銀「本当!? うんいいの…ハッ!」
 ジュースに釣られて思わず何も考えないで快諾しようと思ったが、そこで前に言われた事を思い出した。

銀『いい? 雛銀燈、知らない人に声を掛けられてもついて行ったり道案内したらダメよぉ』
雛銀『なんでぇ?』
銀『その人はねえ、悪い人かもしれないのよぉ。誘拐されちゃうかも知れないわよぉ』
雛銀『誘拐!?』
銀『ええ。絶対に甘い顔したりしちゃダメよぉ。絶対に、だから』
雛銀『う、うん…』

雛銀「……」
 青い顔になってオディールから少しずつ後退りする。
 その変わりぶりにオディールの頭にハテナマークが浮かぶ。
オ「どうしたの?」
雛銀「…ごめんなさい、家知らないの…」
オ「え? いや、何で自分の家が…」
雛銀「さよーならぁ!」
オ「え!? ちょっと!」
 踵を返すとオディールから猛ダッシュで逃げ出し、オディールは思わず唖然とする。
オ「…何事?」
雛銀(どうしよう、誘拐されちゃうのぉ! それに雛ママも知ってた…雛ママが危ないのぉ…!)
 逃げながら悪人と決め込んで勝手な妄想を頭の中で広げていく。
 必死に自分の家へ向かうが、その後ろから声を掛けられ走りながら後ろを向いた。
オ「ちょっとー! 待ってってばー!」
 向くとオディールが追っ駆けて来ているではないか。それを見てますますパニックになる。
雛銀「誰か助けてぇーーー!! 殺されるぅーーー!!」
オ「は、はぁ!? 何言い出すのあなた!?」
雛銀「銀ママぁーーー雛ママぁーー!! 助け…あうっ!!」
 ズシャアァァァ!!
 石に躓いて思いっきりスッ転んだ。あまりの痛さに立ち上がろうにも立ち上がれない。
雛銀「う、うぅ…! 痛い…!」
オ「だ、大丈夫? 派手に転んだけど…」
 転んだ隙に追いつかれ、見上げるとオディールが目の前に迫ってきていた。
 太陽で逆光になり、自分を見下ろしているオディールは、雛銀燈にはまさに悪の化身に見えた。
雛銀「たっ…助けてぇーーーー!!!」

―※―※―※―※―

銀「困ったわねぇ。どこ行ったのかしらぁ…」
雛「水銀燈が自販機であんなに迷うからなのよ」
銀「仕方ないじゃなぁい。ビ○クルか特大ヤクルトにするか、どっちも魅力的だったんだからぁ」
雛「はぁ…もうそれはどうでも良いの。早く雛銀燈を探さないと…」
銀「そうねぇ…ん?」
 二人が雛銀燈を探していると、曲がり角から雛銀燈の声が聞こえた。
雛銀「助けてぇーーーー!!! 殺されるぅーーーー!!」
銀「雛銀燈!?」
雛「何があったの!?」
 悲鳴を聞いて思わず駆け出し角を曲がると、知らない外国人が転んだままの雛銀燈に迫っていた。
 その尋常じゃない光景に、水銀燈の怒りゲージは一気にマックスに!
銀「コォラアァァァ!! うちの子に何してんのよぉぉぉぉぉ!!」
オ「はい?」
 一気に駆け出し、鬼のような形相でオディールへ駆け出す。
 自体が把握出来ないオディールはどうする事も出来ずに立ち尽くすしかなかった。
雛銀「銀ママぁ! この人悪い人なのよぉ!」
オ「な!? 違…!」
銀「死になさぁぁぁい!!」
 その勢いのまま水銀燈のドロップキックがオディールに炸裂!
オ「ぐへぇっ!! な、なんで日本に来てこんな目に…!」
モロに喰らったオディールはぶっ倒れながら、雛苺が遠くに居た事に気が付いた。
オ「…ひ、雛苺…」
雛「お…オディール!?」
銀「…へ…し、知り合い?」
 水銀燈家、リビング。
銀「ほんっっっとに申し訳ありませんでした!! まさか雛苺の友達だ何て…!」
オ「い、いえ…急に話し掛けた自分が悪いんですよ…あは…あはは…」
 雛苺と復活したオディールから事情を聞いて水銀燈はひたすら謝り捲くった。
 それにオディールは乾いた笑みを浮かべながら許す。
雛「ごめんねなの…水銀燈が早合点したせいで…」
オ「いいって…これぐらいやんなきゃ誘拐から守れないから…」
雛「…でも一言電話くれれば迎えに行ったのに…」
オ「驚かそうと思ったんだけど、こっちが驚かされたわ…色々とね…」
 談笑(?)する三人の様子を、雛銀燈はキッチンからこっそり覗いていた。
雛銀(……あのお姉ちゃんに気をつけなくちゃなのぉ…)

 雛銀燈の誤解までは解けなかったようです。


 51.

 前回のあらすじ:オディールが雛苺に会いに来たけど雛銀燈と水銀燈に誤解されてボロボロにされました。

 無事…じゃないけど誤解も解けて三人はコーヒーを飲みながら談笑しあっていた。
雛「それにしても懐かしいのー。最後に会ったのは10年ぐらい前だったの」
オ「そうね。空港で分かれたのが最後ね」
銀「しかし、本当に日本語上手ねぇ。違和感が無いわぁ」
オ「昔は日本に住んでたから。その頃よく雛苺とよく遊んだものよ」
雛「そうなの。あの頃とあまり変わらないのよオディールは」
オ「雛苺は大分大人になったわね。子供の頃は私より子供っぽかったのに」
雛「…まあ親になったし、それもあるかもしれないの」
オ「もうママになってるなんてね…。…ところで雛苺。あの子…雛銀燈ちゃんだっけ…」
 そう言ってキッチンから唸って威嚇しながら覗き見ている雛銀燈を指差す。
雛銀「がるるるる…」
オ「…あの子すっかり私のこと悪人だと思い込んじゃったみたいで…何とかしてくれる?」
雛「まったく、しょうがないの…雛銀燈、おいで」
 チョイチョイ、と手招きして雛銀燈はオディールに警戒しながらリビングにやってきた。
雛「このお姉ちゃんはヒナのお友達のオディールなの」
雛銀「初めて会ったときもそんなウソ言ってたのよぉ」
雛「これは本当なの。だから何も心配する事無いの」
雛銀「他の国のスパイじゃないのぉ? 雛ママを狙う殺し屋さんじゃないのぉ?」
雛「……どこからそんな言葉を…」
銀「くんくん探偵で覚えたのねぇ…」 

雛「とにかく、本当にヒナの友達だから大丈夫なのよ! 分かった!?」
雛銀「う…うゆぅ…」
 イライラしてきた雛苺にそう言われ、雛銀燈もやっと諦めた。
雛「分かったなら、ごめんなさいするの。雛銀燈のせいで水銀燈に蹴っ飛ばされたんだから…」
銀「うぐ…」
 それを聞いて水銀燈の心にグサッと何かが刺さった。
雛銀「…ごめんなさぁいなのぉ…」
オ「いいわよ。私こそ怖い思いさせてごめんなさい」
 お辞儀をしてから優しい笑顔を見せ、それで雛銀燈もやっと警戒を解いて笑顔を見せてくれた。
雛銀「…えへへ、オディールお姉ちゃん。よろしくねなのぉ」
オ「こちらこそよろしくね。雛銀燈ちゃん」
銀「まったく…人騒がせなんだからぁ…」
雛「でも誤解が解けてよかったのよ」
 誤解が解けて、二人ともほっと胸を撫で下ろした。

―※―※―※―

雛「そういえばいつまで日本にいるの? どこに泊まるの?」
オ「明々後日。まあホテルにでも泊まろうかなって…」
雛「それならうちに泊まったら良いのよ。積もる話もあるんだから」
銀「そうしなさいよぉ。酷い思いさせたお詫びもしたいしぃ…」
オ「え…でもそれじゃ悪いわ…」
雛「大丈夫なの。部屋は空いてるし、賑やかな方が楽しいのよ。ね、雛銀燈?」
雛銀「うん! オディールお姉ちゃん一緒に遊ぶのぉ!」
オ「…じゃあ、お言葉に甘えようかな」
銀「そうそう、それで良いのよぉ。他には何かお願いしたい事は無い? ちょっとした案内なら出来るわよぉ」
オ「他にですか…? …実は、日本に帰ってきたら行きたい所があって…」
銀「どこどこぉ?」

 翌日、オディールが行きたいと言っていた場所に来た。
雛&銀「……」
オ「OH!! ここがジャパニメーションの聖地アキハバラ…!!」
 駅の前でオディールが一人感動にふけっていると、真紅とのりが現れた。
紅「あなたが雛苺の言ってたオディールさんね? 私は案内役を頼まれた真紅よ」
の「そして私はその彼女ののりよぉ」
オ「あなた達が雛苺のお友達の…よろしくお願いします!」
紅「こちらこそよろしくね。海外のオタ友が出来るなんて嬉しいわ」
の「本当。まさにMOE is border less(萌えに国境は無い)ね!」
紅「そうね。じゃあどこに行きたいの? 遠慮なく言いなさい」
オ「それじゃあ、まずはメイド喫茶に行きたいわ」
紅「分かったわ。私達行きつけの所があるから行きましょう」
の「GoGo!」

銀「…オディールって、昔からああだったのぉ…?」
雛「…そう言えばアニメとか結構見てた気がするの…」
銀「…先に帰らなぁい?」
雛「…そうなの…」
雛銀「あ、メイドさんがティッシュ配ってるのぉ。くださ…」
雛「ダメ!」
 この上なく生き生きしてる真紅達を残して三人は駅へ消えていった。


 52.

 ある日の夕食時。
雛銀「ねえねえ銀ママぁ。ちょっと教えてもらいたい事があるのぉ」
銀「なぁにぃ? 何でも言いなさぁい」
雛銀「銀ママって“どえむ”なのぉ?」
 ブフゥッ!!
 いきなり雛銀燈の口から飛び出したとんでもない単語を聞いて、水銀燈は思わず飲んでいた麦茶を吹き出した。
 それが向かい側で食事を食べていた雛苺に掛かった。
雛「やだ、きったなぁい! 何するのよ!!」
銀「ゲホッ…ご、ゴメン…。雛銀燈!! どこでそんな言葉覚えたのぉ!?」
雛銀「紅お姉ちゃんが教えてくれたのぉ。銀ママは“どえむ”だってぇ」
銀「真紅ぅ…!! またろくでもないこと教えてあの大バカぁ…!!」
割れんほどにコップを握る手に力を入れて怒りを堪える水銀燈。
雛「…もう、変なことばかり覚えるんだから…」
雛銀「…そう言えば“どえむ”ってどういう意味なのぉ?」
銀「それは大人だけが知る言葉だから知らなくて良いのよぉ」
雛「その意味を雛銀燈が知るのはまだ十年以上早いのよ…」
雛銀「えー! 教えて教えてなのぉ!」
銀「駄々こねてもダメなものはダメ! ほら、さっさとご飯食べてお風呂入るわよぉ!」
雛銀「ぶーぅ…」
水銀燈に怒られて、雛銀燈は拗ねたまま食べ終えた。

 その日の夜、雛銀燈を寝かしつけた雛苺がリビングに戻ってきた。
銀「寝たぁ?」
雛「うん。あの事をしつこく聞かれたけどなんとか…」
銀「まったく…真紅にも困った物ねぇ…将来真紅みたいになったらどうしよう」
雛「…多分大丈夫なのよ」

紅「へっくし!」
の「どうしたの?」
紅「誰か噂してるわね…」

銀「…大体、私はドMなんかじゃないわよぉ…」
 小声でそう言うと、隣に座った雛苺の手を握りそのまま肩を抱き寄せた。
 それに一瞬驚いたものの、雛苺は抵抗はしない。
銀「…久々に雛苺の可愛い鳴き声聞きたくなっちゃったわぁ…。明日は休みだしぃ…」
雛「…雛銀燈が起きて来たらどうするのよ…」
銀「そこは声を抑えるしかないんじゃなぁい? どこまで抑えられるか分からないけどぉ…♥」
雛「…お手柔らかにして欲しいのよ…」
銀「さぁねぇ、久々だからセーブ出来るか分からないわぁ」
雛「もう…水銀燈のえっち…♥」

 ドMではなくドSのようです。ここから先はご想像で。


 53. (51.の続き)

 オディール編・前回のあらすじ:オディールが腐女子だと言う事が判明しました。

 オディールがフランスに帰る前日の晩。
オ「お風呂ありがとうございました。あれ、雛苺は…」
 お風呂から出たオディールがリビングに戻ってくると、水銀燈がテレビを見ながらワインで晩酌をしているところだった。
銀「雛銀燈を寝かしつけてるわぁ。…そうだ、一緒に一杯やらなぁい? 日本のワインは口に合うか分からないけどぉ…」
 ワイングラスを掲げて見せて、微笑んで誘う。
 その誘いにオディールも微笑み首を縦に振った。
オ「…じゃあ、頂きます」
銀「分かったわぁ。そこに座って待っててぇ」
 そう言ってオディールを向かい側のソファに座らせ、間のガラステーブルにキッチンから持ってきたグラスを置いて差し出した。
 それにワインを注ぎ、二人ともグラスを持ってチン、と軽く乾杯し一口飲む。
オ「…美味しい」
銀「そう。口に合ってよかったわぁ。…それにしても、明日で帰っちゃうのねぇ。寂しくなるわぁ」
オ「色々お世話になってしまって…ありがとうございました」
銀「どういたしまして。雛銀燈の相手してくれてありがとねぇ」
オ「いえ、こっちも楽しかったです。良い思い出が出来ました。アキハバラにも行けましたし…」
銀「…私はああいうのはちょっとよく分からないけど、楽しんでもらえたなら良かったわぁ」
オ「真紅やのりにもありがとうって伝えてください」
銀「わかったわぁ」
 それからお酒も進んで話も弾み、色々な話をしていった。

オ「…それにしても、あの雛苺がもう結婚して、子供を産んでるなんてね…時が過ぎるのは早いわ…」
 ほろ酔いになったオディールが、感慨深そうにそう呟いた。
銀「…私達は早く結婚したからねぇ…。雛銀燈が産まれた時は雛苺もまだ二十になってなかったわぁ…」
 水銀燈も懐かしそうに言った。
銀「でも、良くやってくれてるわぁ。大変だろうけど、いつも笑顔で…私も大分救われてるわねぇ」
オ「それはきっと雛苺が心の底から幸せだと感じてるから…そうに決まってます。あの笑顔を見れば分かります」
銀「そう? 私は雛苺じゃないから本心までは分からないけど…そう言ってもらえてよかったわぁ」
オ「凄く幸せそうで…私も安心しました」
 オディールはワインを一口飲んで、ほうと一息ついて目を閉じて昔を思い出しながら口を開いた。
オ「…実は、私も雛苺の事好きだったんです」
 オディールの台詞を聞いて、水銀燈の手が一瞬止まる。
オ「子供の頃…フランスに引っ越す前はいつも一緒で…雛苺の事が大好きだった」
銀「そう…」
オ「だからフランスに引っ越す時は凄く悲しかった…私の初恋は終わったって思って」
 オディールは続ける。
オ「十年ぐらい経って、雛苺から結婚したって手紙が来た時はショックだったけど…日本に来て雛苺の様子を見たら安心しました」
 そこで目を開け、水銀燈を見るとフッと微笑んだ。
オ「さすが雛苺が選んだ人ね…あなたになら安心して雛苺を任せられるわ」
銀「そう言ってくれてありがとう」
オ「…雛苺をよろしくね」
銀「こちらこそ」
 二人とも微笑み合い、グラスのワインを同時に飲み干した。
 翌日、空港までオディールを送りに来た。
オ「ありがとう、送ってもらって…。最後の最後まで面倒になっちゃったわね」
雛「良いのよ。またいつでも来てなの」
銀「待ってるわぁ」
オ「うん。…雛銀燈ちゃんも、元気でね」
 屈んで雛銀燈と同じ目線になって雛銀燈の頭を撫でる。
雛銀「また来てねぇ! 一緒に遊ぼう!」
オ「ええ。…そろそろ行かないと」
雛「そう…それじゃあ、またねなの」
銀「こういう時はさよならは言わない物よぉ。またねぇ」
雛銀「早く来てなのぉ」
オ「…うん。また会いましょう」
 そうしてオディールは飛行機に乗り込み、フランスへと帰って行った。
 その飛行機を、空港のデッキから見送る。
雛「行っちゃったの…」
銀「そうねぇ。…雛銀燈、泣いてないでちゃんと見送りなさぁい」
 水銀燈が雛銀燈を見下ろすと、大粒の涙を幾つも流して泣いていた。
雛銀「えぐっ…オディールお姉ちゃん…!」
銀「…ここまで良く堪えたわねぇ。立派よぉ」
雛「雛銀燈、言ってたでしょ? また会いましょうって。すぐ会えるのよ」
雛銀「ひっく…!」
銀「ほら、笑顔で手を振ってあげなさぁい」
雛銀「うん…! ばいばーい、ばいばーい!!」
 涙を拭い満面の笑みで飛行機に手を振る雛銀燈。また会えることを信じて。
 それから数日後。
銀「雛銀燈、雛苺。オディールから手紙が来てるわよぉ」
雛銀「本当!?」
 オディールから手紙が届き、それをみんなの前で封を開けて中身を取り出して読み始めた。
銀「……へえ、元気でやってるって」
雛「そう。よかったなの」
雛銀「わたしにも見せるのぉ」
銀「慌てないでぇ。ほら」

 それからみんなで手紙を読んでいき、最後の行が水銀燈の目に留まった。
銀「雛銀燈、今度冬にまた来るってぇ」
雛銀「本当!?」
銀「ええ。良かったわねぇ」
雛銀「わーい! また遊んでもらえるのぉー!」
 大喜びで飛び跳ねる雛銀燈を見て、二人とも微笑んだ。
 さらに読み進めていると、PSと書かれているのが目に入った。

 ――PS.今度は冬コミに行きたいので、真紅とのりにも案内よろしくと言っておいてください――

銀「…まったく、しょうがないわねぇ」
雛「…ま、あの二人もきっと喜んで引き受けてくれると思うのよ」
 やれやれと肩を竦め、二人とも笑い合った。

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