嘲律者 ◆iDqvc5TpTI
ついてない。
まったくもってついてないとオイラは思う。
目の前には狂った男。
オイラの名は■■■。
種族で言うならタケシー。
霊界サブレスの住人にして――非常に癪だが召喚獣だ。
▽
愛憎渦巻き血風吹きすさぶこの地で、人は花を見て何を思う?
居並ぶ可憐な花びらに心奪われ、花畑に飛び込み遊ぶことで癒されるのだろうか。
いや、触れれば散り、引き抜けば枯れ果てるその儚さに、無力な我が身を重ねて嘆くかもしれない。
逆に、踏まれても踏まれても立ち上がり、陽の光を求めて気高く咲き誇る様に勇気付けられる者もあろう。
はたまた見たところで生き抜くには何の役にも立たないと、興味を示さず素通りする人とている。
そして、血に汚れることもなくのうのうと咲いている花々に怒りを覚える人間もまたしかり。
もっとも、その男は日頃から花も人も動物も全ての命が気に食わなかったのだが。
「キィーーーーッ! 人の気も知らずにお高く咲きやがってえええええ!」
色とりどりの花の中、風情を台無しにする奇声を上げる魔導士が一人。
ケフカ・パラッツォだ。
アシュレーの悪評を広めるにもまずは人と会う事が先決だと思い花園へとやってきたのである。
仮にも地図に名ありで記された施設。
それも何故か人間の多くはひ弱で仕方がない植物どもを愛でる癖がある。
ならば、何人か人が集まっていても不思議ではない。
そう思い、嘘の内容や、その効果が発揮され裏切られるアシュレーの醜態を考えつつ意気揚々とケフカはここまで歩いてきたのだ。
「クワァー! なのにどうして誰にも会わないー!」
見回せども見回せども人っ子一人いない。
思い通りにいかなかったという事実がケフカの心を苛立たせる。
「くっそー!! 腹が立つー! ちっくしょ、ちくしょう、ちくしょう、
ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、
ちく、ちく、ちく、ちく、ちく、ちく、ちく、ちく、ちく、ちく、ちっっっっくしょーーーー!!」
いっそこのむかつく小奇麗な花畑を燃やしてやろうかと本気で考える。
三闘神の力を手に入れ大陸一つさえ引き裂ける今のケフカにとっては容易いことだ。
炎に蹂躙される花々。涙を流すこと叶わず、塵と化し消え逝く生命。
想像しただけでぞくぞくっとなる。堪らない。
その上火災に伴う煙を見た誰かが寄ってくるかもしれない。
一石二鳥とはまさにこのことだ。
ケフカは大仰な動作で両の腕を広げ、ファイガを唱えようとして――
やめた。
「ふんっ! おもしろくない!」
そんな方法で人を集めたところで、放火魔の言うことなんて信じる人間がいるはずもない。
あたり前すぎることにぎりぎりで気付いたからだ。
ばれない様にやれば問題ないが、さっきはそれで危うく流れ弾で飛んできた剣に射されて死ぬとこだった。
その恐怖がケフカの衝動を引き止める。
ならば茎を折り、根を安息の地から引き抜き、文字通り千切っては投げるか?
腹部の痛みは流石に大分退いたとはいえ面倒だ、手間がかかり過ぎる。
「つまらん!! 大量の毒でもあればまとめて枯らせれるのにー!」
役立たず以下と切捨てはしたが皇帝の権力と財力は実に使い勝手が良かった。
帝国の為といえばすぐに欲しいものが手に入るまさに魔法のおもちゃ箱だった。
この殺人遊戯の支給品とてそれ位の融通は利いて欲しいものだとケフカは心中毒づく。
島の真ん中を通っているらしい川に毒を流し込めばどれだけの人間を殺しきれることやら。
とはいえ、ケフカは己が引き当てた支給品に満更でもなかった。
「しかしこの道具の仕組みを考えた奴は中々におもちろい奴でちゅねー」
取り出したおもちゃを前に子どもさながらにころっと気分を変える。
おもちゃとは先刻実験したばかりのサモナイト石。
威力こそ低いが使い道はあると踏んだそれを。
これでも一流の大魔導士であるケフカは暇つぶしとばかりに行きがかりに調べたことで新たな魅力を発見したのだ。
即ち、その使役の方法。
「脅迫、ですか。実に、じつうううに分かってます」
リィンバウムと呼ばれる世界で確立した技術、召喚術(サモーニング)。
近接する異世界より対象を呼び出し使役する力。
その要となるのは、契約で縛られた召喚獣は主の意思によってしか元の世界に帰ることができないということである。
どれだけ強大な召喚獣であろうとも主人に忠実なのは主にこれに起因するのだ。
地位や名誉や友や家族。別世界に放り出されるとはそれら全てを剥奪されるに等しい。
望まぬ殺傷や気に食わない命令に従ってでも元の世界に帰りたいと願うのは無理もない。
「ああ、そうだよ! 愛? 友情? 信頼? 忠誠? シンジラレナーイ!
そんな下らないものを後生大事に抱えていたレオは殺した!
アシュレー、お前も俺に騙され、遊ばれて死ね!
ティナ、あなたには真の召喚術の使い方を教えてあげましょう!」
取り込めるだけ取り込み三闘神の力も得た以上、幻獣は用済みだとしていたが、まだまだ絞れる方法はあったのだ。
幻獣界。幻獣達が引きこもっているかの特殊空間。
そこからこのサモナイト石による使役と同様の仕組みで幻獣達を引きずり出せば!
「さて、じゃあ次は近場の神殿にでも向かうんだじょー! 水で打撲痕も冷やせるのだ!!」
護衛獣、誓約者、原初の召喚術。
両者の合意と信頼、絆の上で成り立つそれら召喚術の高みを知らず、知ろうともしない道化師は上機嫌で進路を決める。
再び心に湧き上がるのは、出会った人間にどう接すれば一番愉快なことになるかという打算の数々。
それらが成就し、命も、夢も、希望も、全てが壊れていく光景に心が躍る。
「……フォッフォッ」
止まらない、止まらない。
笑え声が止まらない。
「フォッフォッフォフォッフォッフォフォォフォ!!」
花園に新たに加わった花一輪。
過剰なまでにカラフルなそれは、お約束に違わずどこまでも毒々しいものであった。
【E-9 花園 一日目 早朝】
【ケフカ・パラッツォ@ファイナルファンタジーⅥ】
[状態]:上機嫌。顔、腹部に痛み(退いてはいる)
[装備]:無し
[道具]:タケシー@サモンナイト3ランダム支給品0~2個(確認済み)、基本支給品一式
[思考]
基本:全参加者を抹殺し優勝。最終的にはオディオも殺す。
1:積極的には殺しにかからず、他の参加者を利用しながら生き延びる。
2:
アシュレー・ウィンチェスターの悪評をばらまく。
3:2の為に神殿へと向かう
※参戦時期は世界崩壊後~本編終了後。具体的な参戦時期はその都度設定して下さい。
三闘神の力を吸収していますが、制限の為全ては出せないと思われます。
※サモナイ石を用いた召喚術の仕組みのいくらかを理解しました。
▽
呼び出された時、こりゃ駄目だと思ったね。
前の俺の主、
ビジュもちょっとキテる奴だったけど、あっちのほうが全然上さ。
どっちも小悪党ではあんだけどスケールが違うっつうか、倫理を踏み越えたどころか置き去りにしちまってるというか。
やれやれ、つくづく主に恵まれない。
うっかりオイラを呼び出す前に石を壊されねえかな~。
死ぬのや帰ってこれなくなるのはごめんだぜー。
――霊界サプレスにて あるタケシーのぼやきより――
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最終更新:2010年06月29日 21:43