DARKER THAN BLACK ◆iDqvc5TpTI
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バニシングバスターの光条に触れ、クレッセントファングが溶解されていく。
いかな夜空の支配者といえど灼熱の太陽が相手では敵わない。
このまま光が到達すれば
シャドウもまた同様の末路を辿るのは目に見えていた。
「ああ、ようやくか……」
迫り来る白き闇を前に思う。
これで俺の悪夢は終るのだと。
ビリーの元へ行けるのだと。
今ならティナやエドガーも待っていてくれるだろう。
……エドガー?
――本当に俺はこのまま死んでもいいのか?
そうだ、エドガーは宣言した。
命を落とそうとも、全てを失おうとも、若きものを導くと。
だったらエドガーが死んだところであいつの誓いは続いていく。
あいつの意思に導かれた誰かが、あいつが残した何かが殺し合いを打破すればエドガーは誓いを果たしたことになる。
それに比べて俺はどうだ?
身一つしかない俺はここで死んだらどうなる?
……終わりだ。
俺が死ねばそこで俺の誓いは果たせなくなる。
戦友に応えることができなくなる。
ダメだ、俺はそのような結末を望まない。
友を裏切るのは二度と御免だ。
「俺は――」
ならば、足掻け。
「俺は、まだ」
死を受け入れるな。死に逃げるな。
「死ねない!!」
最後まで足掻いて見せろ!
殺した女から奪った最後の支給品を取り出す。
俺の命を脅かす光に負けずとも劣らない輝きを放つその石は太陽石。
紙に書かれていたその名前以外、用法も効果も一切示されていなかったアイテムだ。
未知数だからこそ状況を打開しうる希望だった。
その希望を……
――シャドウは投げた。
望みを捨てたとか、やはり諦めたという意味ではない。
太陽石を俺を射殺さんとする粒子の槍の穂先へと全力で投擲したのだ。
確証があったわけではない。
むしろはたから見れば余りにも馬鹿げた行いだっただろう。
だがシャドウには磨き続けたこの投擲技術以上に命を預けられるものはなかった。
「シャアアアアッ!!」
太陽石がバニシングバスターと激突する。
それは文字通り激突だった。
バニシングバスターの光線と衝突した瞬間、太陽石からその名に違わぬ太陽のエネルギーが開放されたのだ。
暗黒石に約六千五百万二千三百年もの時をかけて蓄積されたパワーが一気にだ!
星一つを焼き払う魔神の業火といえどそれだけの時の積み重なりを一蹴することはできなかった。
いずれも計測すら困難な程のエネルギーを持つ熱量が、その全てをぶつけ合い、反発し、瞬間的に放出される。
これがアシュレー達が見た爆発の正体だった。
彼らがシャドウの抗いに気づけなかったのも無理はない。
屋外で生じていたなら二エリア先にさえ軽く届くほど光は強いものだったのだ。
シャドウはこの機に乗じて目くらまし代わりの光に紛れて一度退こうと身を翻す。
その目がふと人影を捉えた。
――ゴゴにでも動きを読まれ先回りされたか?
真っ先に浮かんだ可能性に目を細めるが、よくよく見ればそれはあの奇特な衣装を来た仲間のものではなかった。
人間ですらなかった。
文字通り人間の、俺の影だった。
強烈な閃光のせいで城の壁の表面に遮蔽物である俺の影がくっきりと焼きついていたのだ。
その影が蠢きビリーの声で囁いてくる。
どうした、死なないのかと。
また俺を見捨てていくのかと。
――ああ、その通りだ。
過去は戻らない。クライドがビリーを見捨てた悔いは一生残り続けるだろう。
ならせめて俺は、シャドウはこの俺自身も友も裏切ることなく生き抜こう。
「だからお前はそこで眠っていろ、“死神”」
光が消えいく中、すんでのところで竜騎士の靴によっていつしか地上へと戻っていた城の外へと一気に跳び出す。
罪を背負い、逃げることを捨て、新たに芽生えた生きる意思を抱えて。
俺の背に死神はもういない。
【G-3 砂漠 一日目 昼】
【シャドウ@
ファイナルファンタジーVI】
[状態]:疲労(大)、全身に斬り傷、腹部にダメージ(小)、軽い火傷。
[装備]:アサッシンズ@サモンナイト3、竜騎士の靴@FINAL FANTASY6
[道具]:蒼流凶星@幻想水滸伝Ⅱ、基本支給品一式*2
[思考]
基本:戦友(エドガー)に誓ったように、殺し合いに乗って優勝する。
1:どこかで傷を癒す。
2:参加者を見つけ次第殺す。ただし深追いはしない。
3:知り合いに対して……?
[備考]:
※名簿確認済み。
▽
『おぉぉぉのおおおれえええええええッ!!』
ロードブレイザーは激昂していた。
あらん限りの声で叫んでいた。
だがその声は今となってはアシュレーには届かない。
焔の魔神の意思は幽閉されてしまったのだから。
アシュレー・ウィンチェスターの内的宇宙に突き刺さる蒼き魔剣の中へと。
碧の賢帝(シャルトス)、紅の暴君(キルスレス)、果てしなき蒼(ウィスタリアス)。
これら3本の剣の本質は手にした者に莫大な力を与える宝剣、というわけではない。
世界を支える超存在――エルゴから流れ込む力をを人為的に制御することで世界の全てを支配できる人間「核識」。
魔剣はその核識や核識たりえる人物の意思を封じることでその膨大な力を振るえるようになったに過ぎない。
つまりだ。
剣自体の本領はその他者の意思を封印する能力の方にこそあるのだ。
果てしなき蒼に込められたアティの意識はその機能を利用した。
アクセスにより活性化されアシュレーを取り込もうと目論んだロードブレイザーを魔剣へと誘導。
取り込めるギリギリの範囲までを剣に閉じ込め封印することに成功したのである。
魔剣がロードブレイザーを封印する器足りえることは皮肉にもロードブレイザーを導いたオディオ自身が証明していた。
加えて他の二本とは違い果てしなき蒼に込められているのは怨念とは程遠い希望と優しさに満ちた強い意志。
絶望を力とするロードブレイザーにとっては糧にならないどころかマイナスにしかならない。
『行かせません』
今もアティの精神体はロードブレイザーが魔剣の戒めを破ろうとするのを防がんと両手を広げて立ち塞がっていた。
憎らしい。
これでは何のために魔剣のことをちらつかせアシュレーの後悔の念をかきたてたというのだッ!
思わぬ邪魔と自らの煽りが裏目に出てしまったことがロードブレイザーを更に苛立たせていた。
無論これで全てが丸く収まったわけではない。
力を取り戻しつつあるロードブレイザーを封印しきるのは魔剣一本では不可能だった。
未だにアシュレーとロードブレイザーは繋がったままなのだ。
またアティの精神体もいつまでも存在し続けることはできない。
力を増していくロードブレイザーに適格者と引き離され内包する意思の補充が叶わない果てしなき蒼の精神体は徐々に力を削がれていく。
現に碧の賢帝を破壊した時に散った核識の残留思念を取り込んだことでロードブレイザーは既に果てしなき蒼を圧迫しだしている。
このまま何もせず手をこまねいていれば自ずと焔の災厄は魔剣を乗っ取り我が物とするだろう。
そうでなくとも心のバランスが崩れオーバーナイトブレイザーになろうものなら。
マリナのいないこの島では今度こそアシュレーは暴走を抑えられないかもしれない。
忘れる事なかれ。
災厄は未だ去らず。
恐怖せよ。
果てしなき蒼が果てるその時を。
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最終更新:2010年07月02日 22:07