戦友へ ◆jtfCe9.SeY
焼けはてた平野で。
断層が広がる大地で。
紅く染まる空の下で。
満足そうな顔で。
手には大切なコインを握って。
仲間らしい男達と共に。
身体が真っ二つになりながらも。
マッシュの瞳をシャドウはただ見つめていただけ。
仲間だった男が斃されていたのを見る事しかなかった。
思う事はあるが、それを口にする事など絶対にしない。
当然だ。
シャドウは仲間を切り捨てて、生き延びる事を選択したのだから。
友の誓いを裏切らない為にも、まだ生きなければならないのだから。
己が生の渇望に応え、降りかかる死を拒絶した。
今、マッシュを見つけられたのもほんの偶然でしかない。
焼け果てた大地が気になり、向かったまで。
そして、辿り着いた先にマッシュの死体があった。
ただ、それだけの事。
故に感傷を持つ事などしない。しなくていい。
全てを黒衣に隠して、進まなければいけないのだから。
暗殺者はもう一度、死んだ友を見据え、頷き。
全ては、生き残る為に、戦うのみ。
だからこそ、振り向かない。
そして、影へと消えた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
焼けはてた平野で。
断層が広がる大地で。
紅く染まる空の下で。
――――マッシュ・レネ・フィガロは変わらずに死んでいた。
満足そうな顔で。
手には大切なコインを握って。
仲間らしい男達と共に。
身体が真っ二つになりながらも。
――――その優しい瞳を佇むシャドウに変わらずに向けていた。
気がつけば、またこの地に足を運んでいた。
思う事は、心に封じ込めていたはずなのに。
この場所を再び尋ねていた。
マッシュから一度離れ、向かった先の港町は荒廃していた。
火が街を蹂躙した後に溢れ、煙が空高く昇っていた。
原型を保っている家など殆どなく、人の気配すらない。
探索する価値すら無い。
シャドウはそう判断し、暫しの休憩をした後、港町を離れた。
次は人の居そうな場所に。
そう考えていたはずなのだが、此処に着ていた。
眠ったように動かないマッシュをシャドウは見据えて。
シャドウは港町で得た、唯一の収穫を取り出す。
右手に甘い洋酒、左手には三つのグラスを持っていた。
グラスを二つ、焼け焦げた大地に置く。
一つは目の前で死んでいるマッシュに。
もう一つは先に逝った、マッシュの大切な兄へ。
シャドウは天を仰ぎ、そして空いたグラスに酒を注ぐ。
琥珀色の液体がグラスに満たされていく。
全てのグラスに注ぎ終えると、またマッシュの顔を見つめる。
一口、グラスに満たされた酒を飲む。
甘ったるいモノが口に広がっていく。
シャドウはこの類の酒は好まない。
出来る事ならば、飲まないとさえ思っている。
だが、この酒をマッシュは愛していた。
パブで共に飲んだ時は、いつも彼はこの酒を選んでいた。
それは偶然にも、彼の兄と一緒で。
全く正反対の兄弟だったが、偶然にも酒の好みだけは一緒だった。
あの兄弟は、この酒を向こうで飲んでいるのだろうか。
語り足りなかったモノを同じ酒を飲んで、語っているのだろうか。
そんな事はシャドウが知る由もない。
だが、そう思わずには居られなかった。
マッシュは、兄の死をどう受け入れたのだろうか。
マッシュは、この殺し合いの中でどう生きたのだろうか。
シャドウは、その答えを自然に理解できた。
何故ならば、彼の表情は死んでいるのに、とてもやすらかに見えたから。
故に、もう、充分であった。
共に世界中を旅をした。
もしかしたら、仲間の中で最も一緒に旅をしたかもしれない。
共に倒すべき敵と戦った。
もしかしたら、最も背中を預けた仲間かもしれない。
だが、それは、もう過ぎ去った事で。
今は、もう終わった事だった。
故に、最後に彼が好んだ酒を贈り。
暗殺者はもう一度、死んだ友を見据え、頷き。
シャドウは再び、歩きだす。
全ては、生き残る為に、戦うのみ。
だからこそ、もう、振り向かない。
「さらばだ、戦友よ」
最後に、友に別れを告げ。
そして、影へと消えた。
【E-2 中央 一日目 夕方】
【シャドウ@
ファイナルファンタジーVI】
[状態]:全身に斬り傷、軽い火傷。
[装備]:アサッシンズ@サモンナイト3、竜騎士の靴@FINAL FANTASY6
[道具]:蒼流凶星@幻想水滸伝Ⅱ、基本支給品一式*2 洋酒、グラス
[思考]
基本:戦友(エドガー)に誓ったように、殺し合いに乗って優勝する。
1:参加者を見つけ次第殺す。ただし深追いはしない。
2:知り合いに対して……?
[備考]:
※名簿確認済み。
※マッシュの遺体の前に洋酒の入ったグラスが二つおいてあります。
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最終更新:2010年07月02日 22:56