『選択』
(キャラ)エイリアン、五十鈴華、ドゥークー伯爵
五十鈴華は息を荒げて夜の渋谷の路地を駆けていた。
首に巻かれた冷たい金属の感触が彼女の恐怖を増幅させる。
戦車道の経験がある華にとって戦闘は未知の領域ではなかった。
しかしこれは違う。戦車もなく、仲間もおらず、ただ一人で得体の知れない命の授業に放り込まれた。
「きゃあっ!?」
背後から、粘つくような足音が迫る。
華は振り返らずに全力で走った。路地の角を曲がり、ゴミ箱を飛び越え、狭い隙間を抜ける。華道で鍛えた集中力と、戦車道で培った危機察知能力が、今の彼女を支えていた。
(あれは何……? 何の生き物……?)
追ってくる影は人間ではなかった。
全身を覆う艶やかな漆黒の外殻。細長く特徴的な頭部、後頭部から伸びる管のような器官。鋭い爪と鞭のように柔軟にしなる長い尾。口腔内には恐ろしい第二の口インナーマウスが覗いている。
エイリアン。別名ゼノモーフと呼称される地球外生命体だ。
華は咄嗟に狭い路地を選び逃げた。体格の割に柔軟な怪物でも完全に狭い隙間は苦手かもしれない。そんなわずかな計算が華の頭をよぎる。
彼女の座右の銘は一意専心。今この瞬間も、その言葉を胸に恐怖に抗いながら逃げ続けていた。
しかし追跡者の性能は圧倒的だった。
エイリアンは天井を這い、素早い動きで距離を詰めてくる。尾が一閃し、近くの自動販売機を叩き壊した。
「っ……!」
華は横の路地に飛び込んだ。心臓が激しく鳴り息が上がる。汗が額を伝い、清楚な黒髪が乱れる。
(沙織さん……みほさん……麻子さん……優花里さん)
友人たちの顔が脳裏をよぎる。だが今は、自分自身が生き残ることで精一杯だった。
華は必死に走り続けたが足がもつれた。転倒しかけたところで壁に手をつき、なんとか体勢を立て直す。しかしそこが袋小路だった。
「……!」
背後にエイリアンが現れる。ゆっくりと、しかし確実に距離を詰めてくる。尾が左右に揺れインナーマウスが不気味に開閉する。獲物を前にした残虐な喜びのような気配が漂う。
華は壁に背を預け後退できなくなった。息が震える。
(ここまで……? こんなところで……お母様)
彼女は目を閉じかけた。
その瞬間、落ち着いた威厳のある声が路地に響いた。
「ふむ……興味深い。見たことのない種族だな」
華が目を開けると、路地の入り口に一人の男が立っていた。
白髪を後ろに流した壮年の貴族。黒と深紅を基調とした高貴なマントを纏い、洗練された佇まい。手に持つのは湾曲した独特の柄のライトセーバー。
ドゥークー伯爵は悠然と二人の間に割って入り、華を背後に庇うような位置を取った。
「下がっていなさい、お嬢さん」
ライトセーバーが点灯する。鮮烈な赤い刃が暗い路地を照らし出した。
エイリアンが即座に反応した。素早く尾を振り回して攻撃を仕掛ける。
ドゥークーは軽やかな足捌きでそれを回避した。ジェダイ時代から磨き上げたマカシの極意。優雅でありながら攻撃的な剣士のフォームが老齢の体を軽やかに動かす。
「ほう……素早い」
ドゥークーは冷静にエイリアンを観察しながらライトセーバーを構える。ジェダイとして、そしてシスとして数多の強敵と対峙してきたがこの漆黒の生物は未知の脅威だった。
エイリアンが再び跳躍し爪と尾を同時に繰り出す。
ドゥークーは優雅に身を翻し刃を一閃させた。鮮やかな赤い光跡が夜を切り裂く。エイリアンの右腕が肘から先で切断された。
断面から強酸性の血液が大量に飛び散る。地面を溶かし近くの壁に穴を開ける。
「近接戦は悪手か」
ドゥークーは素早く後退し、フォースで血液の飛沫を逸らした。マントの端がわずかに溶け煙を上げる。
華は壁際にへたり込みながら、その戦いを呆然と見つめていた。
ドゥークーは左手を開き暗黒面の力を集中させる。青白い稲妻が奔流となってエイリアンを直撃した。
フォース・ライトニング。凄まじい電撃を受けてエイリアンは痙攣しながら倒れ込んだ。
「倒した、の?」
華が安堵の息を漏らした瞬間、倒れたはずのエイリアンが体を起こした。右腕を失い体液を滴らせながらも、その凶暴性と殺意は全く衰えていない。
「……なんと」
ドゥークーの眉がわずかに上がる。
エイリアンは低く唸り壁を這って急速に逃走した。暗闇の中にその漆黒の姿を溶け込ませ姿を消す。
「異常な生命力だ……追うべきか」
彼は一歩踏み出したが華の方へ視線を移した。震える少女は、まだ壁に寄りかかったままだ。少考してからドゥークーは追跡を断念した。
華の膝はまだ震えている。戦車道とは比べ物にならない純粋な死の気配。彼女の清楚な頰を冷や汗が伝う。
ドゥークー伯爵はライトセーバーを静かに収め振り返った。赤い刃の残光が彼の厳しくも気品ある顔立ちを照らす。
「大丈夫かね、お嬢さん」
その声は低く落ち着いていて威厳に満ちていた。まるで貴族の館で客人を迎えるような穏やかささえ感じさせる。
華は慌てて姿勢を正して深く頭を下げた。
「は、はい……ありがとうございます。五十鈴華と申します。突然のことで……何が起こっているのかもよく分からず……本当に命を救っていただき感謝申し上げます」
丁寧で上品な口調。恐怖の中でも華道の家元令嬢としての礼儀を崩さない彼女の姿にドゥークーは感心した。
(ふむ。育ちの良い娘だな)
ドゥークー伯爵は惑星セレノー出身の貴族であり元ジェダイ・マスター。後にシスの暗黒卿となりダース・ティラナスの名を授かった。
共和国の腐敗を憎み独立星系連合を率いてクローン戦争を引き起こしたが、最終的に自身のマスターであるシディアスに利用され、アナキン・スカイウォーカーに両腕を切断された後、首を刎ねられて死亡した。
死の直前、彼は裏切りを知った。シディアスにとって自分は、若いアナキンを弟子に迎えるまでの繋ぎに過ぎなかったのだ。
そして今、主催者により蘇生されてこの場所に連れてこられる形で、首輪を付けられ命の授業に参加させられている。
48時間以内に優勝しなければ全員が爆死する残酷なルール。シスの教義に則るなら他の参加者を皆殺しにして願いを叶える。それが最も合理的で暗黒面の教えに沿った道。
「あの、よろしければ、お名前を教えていただけますか」
「……ドゥークーだ」
ならば何故自分は見知らぬ娘を助けるようなことをしたのか。
確かにドゥークー伯爵は腐敗した共和国とそれに追随するジェダイ・オーダーに憤り新たな秩序を求めた。
だが大義を成すためには必要な犠牲というものがある。
自らが無事に帰還するためなら、この娘に限らず他の参加者の鏖殺も致し方なし。
それが暗黒卿としても独立星系連合のトップとしても正しい選択。
しかし、その選択が最善だとわかっていても、五十鈴華をライトセイバーで惨殺する気にはなれなかった。
まさか今更になってライトサイドに戻ろうとでも?
あるいは一度死を経験したことで、ジェダイ時代に抱いていた正義が微かに蘇ったとでも言うのか。
結局、自己問答を重ねてもその答えは出なかった。
「あの生物は、まだ生きているのでしょうか?」
華が小さな声で尋ねた。
「恐らくはな。あの生命力、酸性の血液、そして学習能力……単なる獣ではない」
一流のジェダイやシスなら対処は可能。だが一般人があの怪物に遭遇すれば高確率で死は免れないだろう。
「……ここは危険だ。一人では生き残れまい。私と共に来るといい」
華は深く頭を下げた。
「はい……同行させていただきます。どうか、よろしくお願いいたします、ドゥークーさん」
気品のあるこの人物が、何かに迷っていることに華は気づいていた。良家で育った彼女の勘は時に鋭い。
だがどのような葛藤があるにせよ彼がいたから華は救われた。
師に見限られた暗黒卿の選択により砲手の少女の命は繋がれた。
それだけは紛れもない事実だった。
【ドゥークー伯爵@スター・ウォーズ】
[状態]:健康、戸惑い
[装備]:湾曲型ライトセーバー
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~2
[思考]:シスとしては鏖殺が最善だが、それをする気になれない。
1:五十鈴華と行動を共にする。
2:他の参加者の存在をフォースで察知し、交渉または排除の判断を下す。
3:首輪を解除する手段を探す。
4:エイリアンに再度遭遇した場合、近接戦を避けて討伐する。
【五十鈴華@ガールズ&パンツァー】
[状態]:疲労
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:華道の精神で心を整える。
1:ドゥークー伯爵と共に行動する。
2:友人たちが巻き込まれていないか心配。
3:ドゥークー伯爵の迷いに気づき助けになれないかと思っている。
4:戦車道の経験を活かして冷静に状況を分析する。
右腕を失ったエイリアンは暗い通路を這い進んでいた。
肉体の損傷は激しい。切断された右腕の断面からは今も酸性の体液が滴り、地面を溶かしている。フォース・ライトニングによる電撃のダメージで外殻の一部が焦げ内部組織も損傷している。
それでも凶暴性は微塵も衰えていない。
エイリアンは壁や天井を移動しながら、次の獲物の気配を探る。特殊な感覚器官が周囲の生物の存在を捉えようとしていた。
獲物はまだ多い。この街は豊富な狩場だ。
エイリアンは次の奇襲に備えて狭いダクトに体を滑り込ませ気配を完全に殺した。
【エイリアン@エイリアン】
[状態]:右腕欠損、中程度損傷
[装備]:
[道具]:
[思考]:損傷を回復しつつ、次の奇襲の機会を伺う。
1:人間を狙って狩りを行う。
2:ダクトを移動経路として活用する。
※エイリアンに支給されたデイバッグは会場の何処かに放置されています。
最終更新:2026年08月13日 16:18