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『神の手』


(キャラ) 東方仗助、円堂守、ゼオン・ベル




「──う、……ぐ、ゥ……ぁ…………」

 今、おれの腕の中でガキが苦しんでる。
 ガキの名前は円堂守。
 絶体絶命ってのはこのことだな、なーんて死を覚悟した瞬間、なんとかハンドだとか叫んであの“バケモン”の攻撃を防ぎやがった。
 こいつは、中坊のくせに命張ってまでおれを助けやがったんだ。

「ちょっと待ってろよ守……今治してやッからな!」

 そうだ、こいつは命を張った。
 おれはこの通り無傷なのに、守の右腕は根元から丸焦げになってやがる。
 今こうしてる間も信じられねーくらいの痛みが襲ってるはずだ。

 本当はすぐに治してやりたかったけどよ、あの“バケモン”から逃げるのに必死でそれどころじゃなかった。
 こうやって瓦礫の陰に隠れてる今も、いつ勘づかれるかって気が気じゃねえ。


「────クレイジー・ダイヤモンドッ!」


 おれの幽波紋(スタンド)、クレイジーダイヤモンド。
 こいつは手で触れた対象を即座に元の状態に“治す”。
 軽い切り傷から普通なら死んじまうような傷まで、ほんの一瞬で治しちまう。

 そのはずだったんだ。

「──クソ! 治りがおせえ……!」

 だが、今は違う。
 守がいま負ってるような大きな怪我は、治すのに数分かかっちまう。
 あの森口とかいうクソアマがなにかしたんだろう。おれの“治す”能力は殺し合いに不都合だったんだ。
 本来のクレイジー・ダイヤモンドだったら、こうやって隠れて治療する必要なんかなかったのに。

「────ぅ」
「気がついたみてえだな、守!」
「仗助、さん……無事、だったんですね」
「バカヤロー! おれより自分の心配しやがれ!」

 こいつは相当なおひとよしだ。
 そんで、メチャクチャなほどタフで頑固だ。
 早人といい守といい、おれの周りのガキはどんだけ覚悟決まってやがんだ。

「守、とりあえずここから逃げるぜ」
「……でも、さっきのやつを放っておいたら──!」

 ほらな、そう言うと思ったぜ。
 普通ならションベンちびってもおかしくねえ、それどころかこいつは実際一度死にかけてる。
 なのに、これ以上怪我人を出したくねーって顔だ。

「あのな、守──」

 守の頭を軽く撫でる。
 やっぱりこいつは、おれよりずっと小さいガキだ。

「人を守りてえって気持ちは立派だ、マジでスゲーよ。
 けどな、オメーが死んじまったら元も子もねえんだ」

 わかるだろ──そう強めに念押しする。
 守はなにか言いたそうだったが、さすがにそれどころじゃないって分かってくれたみたいだ。


「……すみません、仗助さん」
「や、謝ることじゃねえよ」

 こんなこと言っといて、理屈じゃねえってのはおれにもわかる。
 もし守と同じ力を持ってたら、おれだってそうしたぜ。
 だからこそ、そういう暴走を止めてくれる人間が傍にいなきゃダメなんだ。
 まさか、自分がそうなるなんて思わなかったけどな。

 あいつ、あのバケモン。
 あれと直接戦り合うのはまだ早い。
 承太郎さんじゃなくてもわかる。冷静な状況分析ってやつだ。

「いくぜ、守」
「はっ……はい!」

 守の手を引いて、この場を離れる。
 地図なんて見てる暇ないし、この薄っぺらいケータイの使い方もよくわからねえ。
 こんな都会だ、ビル群を抜けてりゃどっかに続くはずだ。


「────見つけたぞ、ゴミ共」


 底冷えするほどの悪寒が背中を走る。
 二度と聞きたくなかった冷たい声が、おれの耳に届いた。




 ゼオン・ベルは憤っていた。
 リオウというゴミを始末し終えて、ファウードの乗っ取りに成功した途端にこの『命の授業』。
 動揺は欠片もない。やることは結局、王を決める戦いと変わらないのだから。
 ゼオンが怒っているのは、さも自分は安全だと確信しているかのような態度で殺し合いを命じた森口に対してだ。

 ──森口はいずれ殺す。
 けれどそれは、この殺し合いを勝ち抜いて“褒美”とやらを受け取ってからでも遅くはない。

 そう思っていた矢先、二人の参加者に出会った。
 試しにザケルガを数発撃ってみれば、それだけで圧倒的。
 子供の方はなにやら巨大な掌を出す不可思議な術で防いでみせたが、それ以降は逃げるので精一杯の様子だった。
 粉塵に紛れて一度は見失ったものの、大した時間を置かずこうして再度見合っている。

「ガキの方の腕が治っているな。貴様の能力か?」

 ゼオンの視線が円堂の右腕を、続いて仗助の顔を射抜く。
 たったそれだけで、二人は蛇に睨まれた蛙のように竦み上がった。

「まあいい。貴様らには死んでもらう」

 絶対的強者にしか許されない死刑宣告。
 それを滑稽と思わせない威圧感と実力を、ゼオンは持ち合わせている。
 彼の実力の片鱗を直に味わった仗助と円堂は、それを痛いほど理解していた。

「おれの腰にも届かねえチビが、一丁前な口利いてんじゃねーよ!」
「フン、そのチビから必死こいて逃げてた奴はどこのどいつだ?」
「あァ~~ッ!? 誰だそいつ、知らねえな!」

 バレバレの痩せ我慢。
 額に滲んだ汗が、彼の精神状態を如実に物語る。
 こうして話している間も、仗助は震えを隠すので精一杯だった。

「さっきは希望を持たせて悪かったな」

 ゼオンが右手を向ける。
 青白い稲妻が宿るのを見て、仗助は無意識に身体を強張らせた。

「仗助さん、下がってください!」
「おい、守──!」

 もちろん、円堂が気が付かないわけがない。
 制止しようと伸ばした手は、虚しく空を切る。
 超次元の身体能力を持った円堂は、もうすでに跳躍を終えていた。



「──ガンレイズ・ザケル!」
「──真イジゲン・ザ・ハンド!」


 そこからはまた、あの時の焼き直し。
 グローブを嵌めた拳が薄灰色のアスファルトに叩き付けられ、そこを中心にドーム状のバリアが生成される。

 燃え滾るような橙色の結界。
 立て続けに撃ち出される紫電の弾丸が、強固な皮膜を容赦なく抉り取る。

 三発、四発、五発。
 掻き消し、逸らし、どうにかやり過ごしているものの、破られるのは時間の問題。
 当然それは円堂自身も、傍で見ている仗助にも分かっている。
 猛烈に迫り来る死を、ほんの少し遠ざけるだけの延命措置に過ぎないのだ。

「やッべえ~~~~~……!」

 仗助は、この先の光景を知っている。
 予感なんて可愛らしいものじゃない。確実に起こると断言出来る、凄惨な未来。

 この技が破られてしまえば、今度こそ右腕だけで済むはずがない。
 極度の緊張と恐怖によって固まった思考回路を、仗助は無理やり駆動させる。

 あと十秒もすればこのバリアは破壊される。
 円堂が浮かべる苦悶の表情と、バリアの表面に走る亀裂から、容易にその結論を導き出せた。

 クレイジー・ダイヤモンドが制限されていなければ、仮に致命傷を喰らっても即座に治すことができたのに。
 目まぐるしく回る思考の中で、どうにもならないノイズが邪魔をする。


 ──どうにかしなければ。
 ──けれど、どうすればいい。


 いや、あるじゃないか。
 たった一つ、シンプルな“答え”が。

「守」

 結局、仗助はこんな答えしか出せない。

「オメー、サッカー部のキャプテンなんだってな」

 学ランの裾が、彼の歩幅に合わせてなびく。
 霞む視界の中で円堂が捉えたのは、仗助の大きな背中。

「仗助、さ──」

 嫌な汗が止まらない。
 破裂しそうなほど鼓動が早まる。

 この人は、なぜ前に出た。
 危ない、とその一言を発せたのかさえわからない。

「『キャプテン』ってのはよ、常に選択を強いられる。
 オメーは間違えるんじゃねえぞ、守」

 雷撃とバリアが衝突する騒音の中、その言葉だけがやけにはっきりと聞こえた。


「────う、おおおおおおォォーーーーッ!!!」


 バリアが砕け散る。
 反動で吹き飛び、無防備を晒す円堂。
 彼を射抜くはずだった数多の電撃は、その尽くが仗助の身体によって防がれる。

 肉を焦がす音、不快な匂い。
 円堂は、目の前の光景を受け入れることができなかった。

 雷撃の一つが仗助の右脇腹を消し飛ばす。
 散る血飛沫は電熱によって蒸発し、塵一つとて残すことも許さない。


「──は、────」

 誰がどう見ても致命傷。
 明確な人の死などフィクションでしか見たことがない男子中学生が、いざそれを目の当たりにしたとなれば、こうやって硬直することしかできない。

 円堂を差し置いて、いち早く動いたのはゼオン。

 全身に死を纏う風のように仗助の元へ肉薄。
 もはや死に体である仗助には、術を撃つまでもないと判断し近接戦を選んだ。

「──クレイジー・ダイヤモンド!」

 仗助の後方から現れたスタンドが迎え撃つ。
 しかし放たれた拳は虚しくもゼオンの足元を穿ち、彼の肌には傷一つつけられない。
 意識を保つので精一杯なのだ。狙いなどろくに定められるはずもなかった。

「なに!?」

 いいや、違う。
 仗助は、最初から“これ”を狙っていた。

 クレイジー・ダイヤモンドが殴ったのは瓦礫の破片。
 元々ビルの一部であったそれは、再生の命令を与えられたことによって元に戻ろうとする。
 周辺の瓦礫を掻き集め、巨大な建築物を形成してゆく様は、さながら四方から迫る飛礫のよう。

「チィ……!」

 迫る瓦礫を避け、形成途中のビルを右フックで破壊。
 そうして再び仗助の眼前に迫ったかと思えば、クレイジー・ダイヤモンドの剛腕が襲いかかった。


「ドラララララララララララ────」


 ──殴る、殴る、殴る。
 不規則で素人丸出しでありながら、ひたすらに速く重い拳の雨霰。
 不意をつかれたこともあり、それを捌くのにゼオンは両腕を使わされている。
 蹂躙が塞き止められ、思わぬ反撃を食らいながらも、ゼオンには微塵の焦りもなかった。

「ドラララララララララララ────」

 仗助は放っておいてもじきに死ぬ。
 今こうして殴っている最中だって、消し飛ばした脇腹からはとめどなく血が溢れている。
 焦ることはない、今に拳の勢いは落ち始めるだろう。
 その時にゆっくりトドメを刺してやればいい。

「ドラララララララララララ────」

 いや、待て。
 おかしい、どういうことだ。
 なんだ。なぜ、こいつは。

「ドラララララララララララ────」


 ──勢いが、落ちない。


 両腕が封じられている今、術を撃つこともできない。
 もしもこれがガッシュであれば、口から電撃の呪文を撃って対処できただろう。
 あの落ちこぼれと一瞬でも比較してしまった事実に、ゼオンは確かな屈辱を覚えた。

「ドラララララララララララ────」

 防御が崩される。
 無理やりこじ開けられた土手っ腹に、クレイジー・ダイヤモンドの拳が突き刺さった。
 それを皮切りに、立て続けにゼオンの身体をラッシュが撃ち抜いてゆく。
 ここにきて、初めて雷帝の顔が歪み始めた。



「ドォ────ラァッ!!」


 小柄な身体の中心を捉える右ストレート。
 一際重いフィニッシュを受けたゼオンは、数メートル吹き飛ばされて瓦礫の中へ埋もれる。
 その結果を見届ける前に、仗助の身体は力なく崩れ落ちた。

「──仗助さん!」

 我に返った円堂が駆け寄る。
 仰向けに倒れ伏す仗助は、ゆっくりと目線を円堂へと向ける。
 自身を見つめる彼の顔はあまりにも苦しそうで、泣きそうで、悲しそうで。

「そんな、顔……すんな……」

 思わず、そんなありきたりな言葉を掛けたくなった。




「仗──ん! ────めん、──が──!」

 耳が、聞こえねえ。
 息を吸うだけで、意識が遠のく。
 視界の隅が白く弾けて、守の顔が見辛い。

 おれはもう、死ぬみたいだ。
 こんなところで死にたくねえ、ってのはあるし、トーゼン怖くもある。
 けど、後悔はこれっぽっちもなかった。
 あの時おれがああしてなかったら、守は間違いなく死んでたから。
 おれのおかげでこいつが助かったって考えりゃ、無駄なんかじゃねえって思えるからな。

「──! ──助、────!」

 守が必死に呼び掛けてくる。
 傷口を塞ごうと、手を汚している。
 こいつだってもう、おれが助からねえなんてことは分かってるはずだ。
 さっさと逃げりゃいいのに、とんだお人よしだぜ。

「守、わりーな……あんなこと、言ったのに……」

 もし、悔いがあるとしたら。
 守にこの先、一生消えねえ傷を残しちまったことだ。

 死んだら終わりだなんだって、偉そうなこと言っといて、いざ自分の番が来たらこうやって犠牲になる道しか選べない。
 歳上として目指すべき背中を見せなきゃいけねえのに、失格もいいとこだ。

「────!」

 守は首を振って、おれを抱きかかえる。
 耳元でなにかを言ってるみたいだが、まるで聞き取れない。
 ごめんなさいだとか、そんなつまらねえ謝罪の言葉だったら嫌だな。
 おれは謝ってもらいたくて助けたんじゃねえんだからよ。

「言うなら……“ありがとう”だぜ、……守……」

 なんとか格好つけはしたが、それまでだ。
 痛みもないし、感覚もない。
 いよいよヤバいらしい。

 まだ、だ。
 クレイジー・ダイヤモンドを出して、ろくに力の入らねえ左腕を持ち上げた。

 おれの手は、既に壊れたものを治すことしかできない。
 けど守の手は、誰かを守れる力を持ってる。
 殺させない、壊させない、傷つけさせない。
 それって、めちゃくちゃスゲーことじゃねえか。


「こいつが、……おれの……最期、の…………」


 ────クレイジー・ダイヤモンド。


 守の左腕に手を伸ばす。
 触ったのは、ボロボロになったキャプテンマーク。
 オレンジ色の布切れが集まって、無事に元の形に戻ったみたいだ。
 それを見届けた瞬間、おれの身体は糸が切れたみたいに沈み込む。


 ──ちょっと、格好つけすぎたかもな。









【東方仗助@ジョジョの奇妙な冒険 Part4 ダイヤモンドは砕けない 死亡確認】






「やってくれたな、カスめ」

 瓦礫を押し退けて、ゼオンが立ち上がる。
 全身についた埃を払いながら、悠々と狩場へと舞い戻る。
 仗助が撒き散らした夥しいほどの血溜まりを、平然と踏み荒らして。

「安心しろ、人間のガキ。お前もすぐにそいつの元に送ってやる」

 それは、聞こえているのかもわからない。
 元より聞かせるつもりなどない勝利宣言。
 ゼオンの挑発へなんの反応も示さず、ただ仗助を抱きかかえる円堂へ、静かに掌を向けた。

「やめろ」

 それは、誰が発した言葉か。
 死にゆく少年が出すにはあまりに低く、力強い声色に、ゼオンは一瞬気が付くのが遅れた。

「それ以上、近づくな」

 まさか、このガキか。
 俯いて涙を流すことしか出来なかった人間が、この雷帝に指図をしているのか。

「仗助さんを、傷つけるな──!」

 顔が上がる。
 想像していたモノとはまるで違う、闘志に満ちた焔の如き双眸。
 心なしか、円堂の身体が黄金に輝いて見えたのは、果たして幻覚だろうか。

「くだらん」

 ゼオンは鼻で笑う。
 いくら強がっても所詮は雑魚。
 脅威にならないどころか、己に傷一つつけることすらできない存在でしかないのだから、ゼオンの興味は湧かない。

 少なくとも。
 この瞬間までは、そうだった。

「……なに?」

 仗助の体を優しく降ろし、円堂が立ち上がる。
 左腕のキャプテンマークを締め直し、右手を腰だめに深く構える。
 すると途端、神々しいまでの黄金の輝きが彼の右手に宿り、それを覆うように稲妻が集い始めた。

「仗助さんは、命を懸けてオレに教えてくれた──!」

 認識を改めなければならない。

「諦めないことの大切さを!
 どんな敵にも立ち向かう強さを、教えてくれたんだ!」

 こいつは、こいつらは。
 ただのカスではない。

「オレは、絶対に諦めない──!」

 雷帝と畏れられたゼオンでさえ、目を細めるほどの眩い光。
 極大の力の前兆を前にして、感じたことのない感情が全身を駆け巡る。



「オメガ・ザ────」


 ゼオンは動かない。
 吹けば飛ぶゴミ程度としか思っていなかった円堂に、今はじめて興味が湧いたから。
 細められた紫色の瞳には、天高く掌を突き上げるキャプテンの姿が反射した。


「────ハンドォッ!!」


 それは、絶対なる盾。
 或いは、神をも凌ぐ手。
 時空を越えて、世界線を越えて、円堂守が習得するはずだった最終奥義。
 ゴッドハンドよりも数段大きく、隔絶された力を秘めた黄金の右手は、間違いなく過去最高の強度を持つ。

 円堂守を、そして東方仗助の遺体を。
 これ以上傷つけることなど許されないと、ゼオンへ忠告するかのような所業。

「ザケルガ」

 雷撃は、まるで静電気のように掻き消える。

「テオザケル」

 雷の槍は、掌に触れた瞬間弾け飛ぶ。

「ジャウロ・ザケルガ!」

 光輪から放たれた稲妻は、そのどれもが意味を成さない。

「ソルド・ザケルガ──!」

 巨人のそれを思わせる雷剣は、刀身の根元から折れて消失する。

「──レード・ディラス・ザケルガ!!」

 高速回転する電撃の刃を纏うヨーヨーは、あらぬ方向へと逸らされビルの一部を打ち壊す。


 ゼオンは、笑っていた。
 焦燥と驚嘆が汗を流しても、心根にあったのはまるで別の感情。
 経験したことのない術を前に、自分の力を試さずにはいられない。

 分かっている。
 後のことを考えれば、最初から消耗するのは避けた方がいい。
 回り込んで円堂を始末するのは、赤子の手をひねるよりも簡単だ。

 けれど、それは“逃げ”だ。
 円堂守の挑戦から、背を向けて破棄することになる。
 この術を打ち破らなければ、勝ったことにならないのだ。


「ジガディラス・ウル────」


 跳躍し、右手を翳す。
 それこそが、ゼオン・ベルの生涯において研鑽を重ねた最高到達地点。



「────ザケルガッ!!」



 雷神が君臨する。
 紫電の雷帝が呼び出すに相応しい、紫色の砲身のような体躯を持つ最終兵器。
 砲身の周りに浮かぶ5つの紋章が、順を追って輝き始める。

 ──そして、炸裂。
 この世の電撃を全て集結させたかのような、巨大なビームが神の手と衝突する。
 神話の再臨を思わせる莫大なエネルギー同士の拮抗は、その余波だけで辺り一面を焦土へと変えてゆく。

 互いの咆哮は、衝突音で掻き消される。
 夜空を埋め尽くすほどの白光が彼方へと伸びて、二人の身体を覆い隠した。





 夢であってほしかった。
 けれど、背中にのしかかる重みが現実だと訴えてくる。
 自分の身体よりも一回り以上大きな遺体を背負い込んで、円堂は一歩、また一歩と地面を踏みしめる。

「……ありがとうございます、仗助さん」

 その声は、届いただろうか。
 きっと届いているだろうと思って、円堂は続ける。

「オレ、あなたに助けてもらったこと……絶対に無駄にしません」

 円堂の命はもう、一人だけのものじゃない。
 仗助の死を経て、円堂守はようやくこの殺し合いという現実を理解した。
 円堂が想像できる人の死というものは、おおよそが事故によるものだった。
 吉良ヒロトも、冬花の両親も、影山零治も、人伝に聞いた死者はみんな交通事故による死因だった。

 けれど、ここは違う。
 殺意を持って誰かを殺そうとする人間がいる。
 現にこうやって、仗助という尊い命が目の前で奪われてしまった。
 もし自分がもっと早く殺し合いの本質を理解できていれば、こうはなっていなかったかもしれないのに。

「……なんて考えてたら、怒られるかもな」

 後悔はいくらでもできる。
 今大切なのは、前に進むことだ。
 東方仗助がそうしたように、理不尽な死を振り翳されている人間を守りたい。
 自分には、その力があるのだから。

「見ててください、仗助さん。
 オレのこの手で、必ず守ってみせます」

 守るのは、ゴールじゃない。
 点とは違って失ったら取り返しのつかないもの。
 キャプテンとして、円堂守という一人の人間として。
 目の前の命を守ってみせると、固く誓う。

「はは、なんか…………重いな」

 仗助を背負っているから、涙を拭うこともできない。
 普段のタイヤ引き特訓と比べたら苦じゃないはずなのに、どうしてこんなに重いのだろう。

 この日初めて円堂は、本当の意味で命の重みを知った。




【円堂守@イナズマイレブン】
[状態]:疲労(大)、仗助の遺体を背負っている
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]
基本方針:キャプテンとして相応しい行動をする。
1:仗助の遺体を安全なところへ運ぶ。

※FFI優勝後からの参戦です。






「…………、……」

 ゼオン・ベルは立っていた。
 爆心地を思わせる大地にて、全身に僅かな火傷を残してマントを靡かせている。
 あの雷帝が、“傷ついている”のだ。
 それがどれほどの異常事態であるのか、知るものはここにいない。

 自身の右手に視線を落とす。
 一際強く灼かれた掌からは、しゅうしゅうと煙が上がっていた。

「あの人間、このオレの最大呪文(ジガディラス)を受け止めるとはな」

 奥義と奥義の衝突は、決着がつかなかった。
 ゼオンの最大呪文がオメガ・ザ・ハンドを食い破らんとした刹那、長時間に渡る膨大なエネルギー同士の反発によって爆発が起きたのだ。
 電撃と爆風をモロに浴び、吹き飛ばされたゼオンが気がついた頃には、既に円堂たちの姿はなかった。

 あのまま撃ち合いを続けていれば、確かにオメガ・ザ・ハンドを破れたかもしれない。
 けれどどんなに言い訳をしても、円堂を取り逃したという結果は覆らないのだ。

 それはすなわち、敗北──

「ふざけるな……」

 いいや、違う。
 自分の力はこの程度ではない。
 バオウを担うに相応しい存在になるべく、血反吐を吐いてまで強さを求めたのだ。
 この遊戯を通して、己の力を証明しなければならない。

「オレが負ける? ……ありえん」

 ゼオンの人生に負けは許されない。
 勝ち残るしか、ない。
 そうでなければ、雷帝として生きてきた道をまるごと否定することになってしまうのだから。

 ジガディラスが競り負けたのならば、より出力を上げるまで。
 その為には、やはり今よりも強さを得るべきなのだろう。
 爆心地から少し先、東方仗助のデイパックの中身を拾い上げながら、この“命の授業”の進め方を考える。

「利用出来るものは、使うべきか」

 ゼオンの言う利用出来るものとは、なにも支給品だけに限らない。
 東方仗助のような不思議な力を持つ参加者は、手綱を握っておくのも悪くないだろう。
 魔物の王を決める戦いと違い、参加者の数や質といった全貌が見えない現状、手駒は増やしておくべきだ。

「貴様の顔は覚えたぞ、円堂守」

 ゼオンは歩き出す。
 雷帝の記憶に混じる橙色の不純物。
 それはきっと、完全な勝利を掴むまで消えはしない。

 痺れを取るように、ぶんと振り抜いた右手。
 そこから滴り落ちた一滴の赤い雫が、灰色のアスファルトを彩った。





【ゼオン・ベル@金色のガッシュ!!】
[状態]:全身にダメージ(小)、疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(東方仗助)×1~2、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]
基本方針:優勝する。
1:参加者を殺して回る。
2:手駒を増やすのも視野に入れる。

※ファウードを乗っ取った直後からの参戦です。
※瞬間移動能力に制限が掛かっています。具体的にどのような制限かは後の書き手さんにお任せします。








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採用No.28『バルド・ゴリーニ:イフ 採用No.30『つよつよ最強エクササイズ(ハードコア)
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最終更新:2026年08月09日 18:45