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『♪Happy Tree Friends──』







【支給品説明】
【トゲのついた木の枝x4@WEAPONS/ウェポンズ】
──魔女・グラディスに支給された、人間を操るための呪具。
発動手順は以下の三つの通り。



【1】対象の指定。
枝に「操りたい相手の私物」を巻きつける。
これにより、その持ち主が支配対象として指定される。


「おばあさん、大丈夫!? わたしに緑のあの子も、それに灯織だっているからさ、無理しないで!」

『……ヒオリ? ああ、あの子ね。あなたは? なんていうお名前なの?』

「八宮めぐる! 肩に掴まって!」

『めぐるちゃんね。……まぁ、可愛いストラップ。これ、あなたの?』




【2】血の付着。
使用者自身の血を枝につける。
これで、術を発動する準備が整う。


『私ねぇ、今になって思うの。……アレックスも操っておけばよかったって』

「えっ? ……あ! おばあさん、指から血が出てるよ!」

『ほら。子供ってすぐ大人の真似するでしょう? あの子もそう。……私ったらいつも選択を間違えてしまうわ』

「……と、とにかくこっち来て! 手当しなきゃ……!」




【3】術の発動。
最後に、その枝を折る。
折った瞬間に対象は「自我」を失い、使用者の支配下に置かれる。


『たまにね。アレックスとお茶でも飲むところとか想像しちゃうの。おかしいでしょ?──』

『──……昔は、こんなこと考えもしなかったんだけどねぇ』

「……? アレックスくん……? ……あ、わたし、まだおばあさんの名前聞いてなかった!」

『あら、名前? ……そうねえ。──』



『────【魔女《Witch》】でいいわよ。……どうせ、もう覚えておく必要もないでしょうけど』



────パキッ。
以上で、支配完了となる。



【補足】
  • 攻撃指示:別の枝に「襲わせたい相手の髪」を巻きつけて折る。
  • 攻撃停止:折った枝を「水」に浸す。
  • 術者死亡:支配が中断され、対象はその場で停止する。




【注意事項】
  • 後遺症:支配解除後も『失われた心』はすぐには戻らず、しばらく自我を失ったままとなる。




………
……





 月は雲に喰われ、リビングには病的なまでに青白い光だけが残されていた。
古びたラジオが、砂を噛むような雑音を出し続けている。
『──一週間前の未明、ペンシルベニア州の小さな町で発生した児童十七人失踪事件について、警察は──』
十七人の子供を、一夜にして町から消した老女。魔女、グラディス。
その枯れ木のように痩せこけた指はいま、震えながら参加者名簿をなぞり、一言。
また一言。


「ドロテア……。フリーレン……。美樹さやか……。……ふふ。この子たち、なんだか匂うわねぇ。いい生気が取れそうだわぁ」


黄ばんだ爪が、一人の男の名で止まる。


「男手なら、この人がいいかしら。……ヴォルデモート」


グラディスは小さく咳払いをつくと、銀のスプーンを持ち上げた。
その向かいに座っているのは、八宮めぐる。
彼女の瞳に光はない。瞬きさえろくにない。
まるで精巧に作られた安価な蝋人形のように、ただ静かに椅子に腰掛けている。
グラディスは、そんな少女の口へ、はちみつを溶かした温かなミルクを、ひと匙ずつ飲ませていき──。

カランッ──。
めぐるの柔らかい唇で手元が狂い、スプーンが床に転がり落ちる。
銀色の表面に、歪んだ二人の顔が映り込んだ。


「ああ、もう! ほんっとうに手がかかるわね!!──」

「──アレックスはどこ!? なんで私がこんなことしなくちゃならないのよ! 私は──ごほっ!! ッ、ごほっ! ごほ……っ!」


喉を引き裂くような咳き込みとともに、老女は胸を押さえて丸まった。


「…………痛い、痛いわぁ……苦しい……。……生気が、足りないのよ……っ」


ラジオの雑音だけが、絶え間なく部屋を満たし続けている。



 ここで一度、グラディスという魔女の『終わりの始まり』を振り返る必要があるだろう。
己の命を繋ぐため、子供たちから生気を奪おうと町へやってきた老女。
下宿先の一家を呪術で支配し、唯一操らなかった少年・アレックスを利用して、『児童十七人失踪事件』を完成させたのだ。

だが、運命の歯車は一度狂うと、肉を削ぎ落とすように破滅へと加速する。
底抜けの馬鹿なヒッピー、嗅ぎまわる警察官、アレックスを哀れむ女性教師、そして消えた我が子を血眼で探す父親。
次から次へと羽虫のように邪魔が入ると、彼女の完璧だったはずの城郭は、あっけなく崩れ去っていく。

そして、最大の算段違い。
それこそが──アレックスという存在そのものだった。

支配下に置かなかった、たった一人の子供。
その幼き手が魔女の呪術を模倣し、グラディスの白髪を一本、枯れ枝へと巻きつけたのだ。
生き延びるために他人の命を奪ってきた老女・グラディス。
最期には、自分自身の呪術によって、あえなく惨死した。
結末はあまりにも残酷で、美しいほどに平等の報いだった。



「痛っ……! ……嫌だわ、意味もなく血が出てきたじゃないの」


 だが、老女は今確かに息をしている。
僅か三本しか残されていない、毒々しい棘の生えた枝。
うっかりその先を突いてしまえば、顔が歪むほどの鮮烈な痛みがある。

何故、死んだはずの自分が蘇ったのか。
この悍ましい殺し合いを統括する『森口』と名乗る者は、一体何者なのか。
あるいはあの女もまた、自分と同種の悪辣な『魔女』なのか。

知る術などない。
そして──考えるゆとりすら無かった。
老い、衰え、ただ生きているだけでも身体が悲鳴を上げるグラディスに、そんな大層な謎へ頭を悩ませる力など、とうに残ってはいなかった。

だが。
それでも。

この皺だらけの手には、まだあの『枝』が握られている。

他人の尊厳を奪い、自我を打ち砕き、意のままに操る。
この血塗られた催しを生き延びるには、十分すぎるほど強力な──あの『呪われし枝』が。
この恐るべき『木』だけは、確かに自分の手の中にあるのだから。


「……生きなきゃいけないのよ。……それが魔女なのだもの」


何があっても──この枝だけは誰にも奪われてはならなかった。
そう、誰にも。



 ゆえに老婆は、かつてアレックスにやらせていた『世話』を、今度は自らの手で繰り返していた。
支配したアレックスの両親へ、あの少年がそうしていたように。
手駒がいない今は、自分でやるしかない。

グラディスは床に転がった銀のスプーンを拾い上げる。
少女の虚ろな瞳とは、決して目を合わせようとはしない。

カップの暗がりへ匙を沈める。
白く濁ったミルクを掬い上げる。
そして、少女の唇へ。
また一口。


「ごほっ、ごほっ! ……あぁ……胸が、胸が痛いわ……っ」


めぐるに抵抗はない。
白い雫が、薄桃色の唇の端から零れ落ち、顎を伝って細い筋を描く。
それでもめぐるは拭おうともせず、ただ虚ろな瞳のまま、次の一匙を待っている。


「大丈夫……大丈夫………」


また一口。
今度は少しだけ溢れた。
めぐるの胸元──薄い生地の服へとポツポツと染みを作る。


また一口。
また、一口。


「私は魔女なのよ……。絶対にこの殺し合い、生き延びてみせるわ……」



一度『傀儡』へ堕ちた者が、失われた心を取り戻すことは難しい。
カップの縁を叩く音に混じるのは、今はまだ、ラジオの雑音だけだった。




『──以上。深夜のニュースをお伝えしました。続いての番組は────、』


………
……






──□ Hachimiya Meguru □──
──(八宮めぐるの場合)──





 ~♪Hare・Bare! ガ・ン・バ・レ!!
  ~♪キミならやれる!


   ~♪Hure・Hure! ガ・ン・バ・レ!!
    ~♪わたしは見ている!



『みんなーー!! こんばんわ~~~~!』

『……あれ? こんばんは、で合ってるよね? こんにちは? おはよう? えっと……あっ! プロデューサー、これ生放送だっけ!?』

『……コホンッ。えへへ、間違えちゃった~! ごめんねっ!』


『それじゃあ改めまして! イルミネラジオ、今夜のパーソナリティはわたし──八宮めぐるですっ!』

『さっそく、お便り読んでいくね! え~っと、なになに~~?』


『“めぐるちゃんにとって、一番大切な時間はなんですか?”』

『…………う~~~ん。時間かぁ~~~』


『難しいなぁ。大切な“もの”だったらね? 「お金じゃ買えないもの、ぜーんぶ!」って、キメ顔で言えちゃうんだけど~~! ……えへへっ』

『時間、時間ね~……。楽しい時間も大切だし、頑張ってる時間も大切だし……。誰かと一緒にいる時間も、ひとりで考える時間も大切……』

『う~~~ん……』


『…………あっ!』

『じゃあじゃあ、こんな答えはどうかな!』



『この前ね、灯織の誕生日だったの! 実質イルミネ☆バースデイ!』

『それで、真乃と一緒にプレゼントを作ったんだ~。三人で見た景色の写真を、いーっぱい貼ったアルバム!』

『海とか、夕焼けとか、ライブの帰り道とか!』


『……ナイショ話だよ? 灯織、綺麗な景色見るのがすっごく好きなわけ! えへへへ~~!』

『真乃もさ~、最初は喜んでくれるか不安だったと思うんだけど、灯織の笑顔見たらほっとしたみたいで!』

『「ほらね~!」ってさ。私も真乃の顔チラってしちゃった! はいごめ~~ん真乃~~! 私ドヤっちゃったみたいになって~~~~!!』


『でもさ、それから灯織。すぐ気づいたんだよ?』

『最後のページ開いた時、「めぐる、ここ……何もないけど」って! 灯織らしいよね~~』

『……うん。わざとなの!』

『最後の一ページだけ、わざと何にも貼らなかったわけ』

『だからわたし、言ったんだ!』


『──「そこは、これから三人で見つける分!」って!』



『そしたら灯織、最初は「もう……」って呆れた顔してたんだけど……最後にはすっごく笑ってくれて!』

『真乃も笑って、わたしはケーキの味見こっそりして……』

『三人で写真撮ってさ~~!』



『だからね! うん!』

『一番胸がウォォォって、ピカって光ってて。どんなにお金を積んだって枚数じゃ負けてる、あの一枚を撮った瞬間がさ~~』

『わたしにとって、一番大切な時間!』


『……大切な時間で、それで──』



………
……





「……ハッピーな、………………ともだちだから」





 話すはずのない傀儡人形から零れた、不意の声。
グラディスの肩が、びくりと跳ねた。


「……ッ!」


 喉の奥で、カラスのような悲鳴がひび割れて潰れた。
だが、それを叫びとして吐き出すことだけは、魔女としての卑屈なプライドが拒絶した。
老女は酸臭い息を殺し、あらためて眼前の少女を見つめ直す。

力なく垂れた両手。
深く俯いた顔。
頬へとかかる金色の髪も、今は萎れた花弁のように生気を失っている。
次いで、グラディスは傍らに横たわる毒々しい枝へと視線を落とした。
黒ずんだ棘。乾きかけた己の血。そして、巻きつけられた小さなストラップ。
何ひとつ、狂いはない。


「…………空耳ね」


 そうに決まっている。
この呪術は絶対だ。
どれほど強靱な心を持つ者であろうと、一度その肉体から引き剥がされた自我が、自ら戻ってくることなどありえない。
そうでなくては、困るのだから。



グラディスはいつの間にか傾いていた歪んだウィッグを、震える両手で整えた。
そして、自らを鼓舞するように忌々しく鼻を鳴らす。


「まったく……くだらないニュース番組だこと」



ぷつん。
ラジオの電源が落ちる。






【D-4/民家/1日目/深夜】
【グラディス@WEAPONS/ウェポンズ】
[状態]:手に傷、疲労(激)、焦り(大)
[装備]:木の枝x3@WEAPONS/ウェポンズ
[道具]:基本支給品一式×2、不明支給品×1~5
[思考]:死にたくない。何があっても生き延びる。
1:まずは私の代わりに動いてくれる人を増やす。
2:邪魔する人、気に入らない人は手駒に始末させる。私が戦うなんて絶対に嫌。
3:めぐるは大事な手駒。代わりが見つかるまでは、ちゃんと食事もさせて壊さないようにする。
4:あの緑の生き物も、ヒオリも全員始末する。
5:何があっても『枝』だけは奪われないようにする。
6:アレックスのことを思い出したのは、別に会いたいからではない。
7:ミルクは嫌い。牛は神聖な生き物なのだから吐き気がする。
8:ラジオは嫌い。くだらないことばかり喋るし、全部消えてしまえばいい。

【八宮めぐる@アイドルマスター シャイニーカラーズ】
[状態]:自我喪失状態(?)、グラディスの支配下
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:──。
1:────。
2:────、────。

3:────────れない、────に。



『木の枝@WEAPONS/ウェポンズ』
……術者が死亡すると支配も解除されるが、長時間支配された者はすぐに自我が戻らない『場合』がある。
手順さえ把握していれば、グラディス以外でも使用可能。
リレー上の制限として、攻撃対象の追跡はマップ2マス分・最長30分間とする。
範囲外へ出た場合、または30分経過した場合は追跡を中断する。






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021『残夜幻想 023『[[]]』
採用No.33『STAR & WEAPONS グラディス
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最終更新:2026年08月30日 20:13