『誤射』
(キャラ)西住まほ、秋山優花里
西住まほは突然の状況に眉をわずかに寄せていた。
「……命の授業だと」
声は低く抑揚を抑えたものだった。
いつもの彼女らしい泰然とした響きを保とうとする努力が感じられる。だが内心は困惑が渦巻いていた。
周囲を見回す。渋谷の街並みを無理やり貼り付けたような歪な景色。首には冷たい首輪。
まほはゆっくり立ち上がった。制服のスカートが夜風に揺れる。
デイパックを開けると支給品が確認できた。まず目についたのは防弾チョッキ。念の為それを制服の下に着込んだ。
次にスマホ。電源を入れると地図アプリが既にインストール済みだった。
まほは短く息を吐いた。戦車道の試合では、どのような状況でも冷静に判断を下してきた。
だが、これは戦車道ではない。人間同士が殺し合う悪趣味なゲーム。
(みほ……お前は無事か?)
妹の顔が脳裏に浮かんだ。大洗女子学園で戦車道を再開したみほ。
もしこのゲームにみほが巻き込まれていたら──考えるだけで胸が締め付けられる。
夜の街は不気味に静かだった。動物の気配すらない。
まほはビルの影に身を寄せ視線を広く取った。戦車道の指揮官として磨いた索敵能力が暗闇の中で冴え渡る。
足音を殺し、ゆっくりと移動する。心臓の鼓動がやや速くなっているのを感じながらも表情は一切崩さない。それが西住まほという人間だった。
「西住流そのもの」──自分自身をそう称した言葉が皮肉に響く。この状況で、西住流の教えがどこまで通用するのか。
物音がした。
物陰の奥に人の気配がする。まほの瞳が鋭く細まった。
「そこに誰かいるのか?」
次の瞬間、物陰から小さな悲鳴が上がった。
「ひっ……!?」
そして乾いた銃声。
強烈な衝撃がまほを襲った。体が後ろに吹き飛びアスファルトの地面に叩きつけられる。
「……ぐっ」
まほは歯を食いしばった。防弾チョッキにより銃弾の貫通は免れたが、至近距離から放たれた銃弾の勢いを完全に殺しきれず肋骨にまで衝撃が伝播した。一時的に呼吸ができなくなり指先が痺れる。
物陰から出てきた人物を見て、まほはわずかに目を細めた。
秋山優花里。
大洗の一年生でみほの友人。
今、その少女が、両手で拳銃を握りしめたまま顔面蒼白で凍りついていた。
「う、嘘……そんな」
優花里の声は震え、ほとんど言葉になっていない。彼女は自分が引き金を引いてしまった現実を理解したように目を見開いた。
拳銃を握ったまま後ずさり、転びそうになりながら踵を返した。そして全力で逃げ出した。息を荒げ夜の闇の中へ姿を消していく。
まほは地面に横たわったまま、苦しげに息を吐いた。意識は保っている。痛みで体が動かないが命に別状はない。
怒りはなかった。恐怖に駆られての反射的な行動だと、すぐに理解できた。突然こんな殺し合いに放り込まれて冷静でいられるはずがない。
まほは目を閉じ呼吸を整えた。肋骨が軋むが徐々に感覚が戻ってくる。
数分後、ゆっくりと上体を起こした。痛みを堪え立ち上がる。
優花里の逃げた方向に目を向けたが、すでに姿は見えなかった。
【西住まほ@ガールズ&パンツァー】
[状態]:腹部に打撲
[装備]:防弾チョッキ
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~2
[思考]:状況を把握し冷静に行動する。
1:みほの友人である秋山優花里を探す。
2:西住流の後継者として生き残りの道を探る。
優花里は必死に走っていた。涙が止まらない。
「どうして……どうして、こんなことに……!」
頭の中で繰り返されるのは先ほどの光景。
物音がして恐怖のあまりコルト・ガバメントを構えた。相手を確認する間もなく思わず引き金を引いてしまった。
撃った相手は西住まほ。銃弾は腹部に命中していた。あれでは助からない。
「ごめんなさい……ごめんなさい……!」
優花里は崩れ落ち、声を殺して泣いた。肩が激しく震え地面に拳を叩きつける。
人を撃ったという罪悪感だけはない。みほの姉を殺してしまった。みほがどれだけ姉を大切に思っているか優花里はよく知っていた。
「私が……西住殿のお姉さんを」
後悔が波のように押し寄せる。
途方に暮れた。優花里は膝を抱え震え続けた。母親譲りの癖毛が乱れ、いつもの明るい表情は完全に消え失せていた。
みほの笑顔が浮かぶ。戦車捜索の時に声をかけられ友達になってからの日々。みほの優しさを誰よりも知ってる自分がその姉を殺してしまった。
優花里の嗚咽が静かな夜の街に小さく響いた。
【秋山優花里@ガールズ&パンツァー】
[状態]:パニック、激しい後悔
[装備]:コルト・ガバメント
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~2
[思考]:私が西住殿のお姉さんを……殺した?
1:まほを誤射してしまったことを激しく後悔。
2:恐怖と罪悪感で何も考えられない。
最終更新:2026年08月09日 18:39