民法2
債務不履行
弁済の時期
- 確定期限付債務:期限の到来によって履行遅滞となる。
- 不確定期限付債務:債務者が期限の到来を知った時から履行遅滞となる。
- 消滅時効については、債務者が期限の到来を知ると否とにかかわらず、期限が到来した時点から進行を開始する。
- 当事者が履行期を定めなかった場合:債権者から弁済を催告された時点で直ちに履行遅滞。
- 期限の定めのない金銭消費貸借:相当期間を定めて履行を催告しなければならないので、相当期間が経過した時点で履行遅滞。
弁済の場所
- 特定物債権:債権発生当時その物が存在した場所
- それ以外の債権は、債権者の現住所
弁済の提供
- 債務者が債務不履行責任を免れるには弁済の提供が必要。
- 債務の本旨に従ったものでなければならない。
- 債権者が受領しようと思えば直ちに履行できる程度になされるのが原則(現実の提供)
- 債権者があらかじめ受領を拒んだときは、弁済の準備ができたことを債権者に通知して受領を催告すればよい(口頭の提供)
- 債権者が弁済を受領しない意思が明確な場合には、口頭の提供も不要。
債務不履行
- 履行遅滞では債権者は履行が遅れたことによって生じた損害の賠償を請求できる。
- 履行遅滞において、履行が遅れたことで履行が無意味になった場合、債権者は履行の催告をして契約を解除しなくても、履行に代わる損害の賠償(填補賠償)を請求できる。
- 不動産の二重譲渡の場合、第一の買主に対する売主の債務が履行不能になるのは、第二の買主に登記が移転された時点。
- 履行不能後に目的物の価格が騰貴した時、その騰貴した時点の価格を基準に賠償請求するには、債務者が履行不能とした際にその特別の事情を知っていたか、または知ることができたことが必要である。
- 債務不履行には債務者の故意・過失またはこれと同視すべき事由の存在が必要。
- 金銭債務については、不可抗力についても債務不履行責任を負う。
履行補助者の故意・過失
- 履行補助者の故意・過失について、債務者は常に責任を負う。
- 積極的に履行代行者の使用が許されている場合には、債務者は、履行代行者の選任・監督について過失があった場合にのみ責任を負う。
- 履行代行者を使用しても差し支えない場合に履行代行者を用いたときは、債務者は履行代行者の故意・過失について常に責任を負う。
- 法定代理人は履行代行者ではなく、履行補助者と同視される。
- 借家人は同居人が目的物を丁寧に使用・保管するように配慮すべき信義則上の義務を負っており、同居人の故意・過失によって生じた損害については、借主が債務不履行責任を負う。
受領遅滞
- 法定責任説:債権者には受領の義務はなく、受領しなかったことで債権者に責任が生じるととはない。(通説)
- 受領遅滞とは、弁済提供の効果を単に言い換えたものにすぎない。
- 法定責任説は受領遅滞独自の効果を認めない。
- 受領遅滞とは、弁済提供の効果を単に言い換えたものにすぎない。
- 債務不履行説:債権者には一般的に受領義務がある。
- 債権者が受領しなかった場合、債権者に債務不履行責任が発生する。
- 債権者の故意、過失を要件として、損害賠償や契約解除などの受領遅滞の独自の効果を認める。
(不可抗力で受領できなかった場合は免責される)
- 債権者の故意、過失を要件として、損害賠償や契約解除などの受領遅滞の独自の効果を認める。
- 債権者が受領しなかった場合、債権者に債務不履行責任が発生する。
債権者代位権
- 債権者代位権:債権者が、債務者が責任財産の保全を怠っている場合には、債務者に代わって債務者の権利を行使できる権利
- 金銭債権以外の債権についてもこれを行使できる
要件
- 債務者が自ら権利を行使しないことが必要。
- 債権者は、債務者に対して第三債務者への権利行使を催告することなく。代位権を行使できる。
- 債権は原則として弁済期が到来していなければならない。
例外として、保存行為と裁判上の代位による場合には弁済期前でも代位権を行使できる。保存行為の例としれは、時効の中断や保存登記などがある。
- 第三債務者の債務も弁済期が到来していなければならない。
- 金銭債権を被保全債権とする場合、債務者の無資力が必要である。
- 金銭債権以外の債権を被保全債権とする場合には、債務者の無資力は必要ではない。
- 第三債務者が抗弁を有していても、代位権の行使は可能。
代位行為の対象となる権利
- 行使上の一身専属権などの一部の例外を除いて対象となる。
- 代位行使が認められない行使上の一身専属権には、人格侵害による慰謝料請求権や扶養請求権などがある。
- 人格権侵害に伴う慰謝料請求権や離婚に伴う財産分与請求権などの行使上の一身専属権も、それが行使されて金額が確定した場合には、それ以降は履行の問題を残すだけであるから代位権の対象となる。
行使方法
- 代位権は債権者が自己の名で行使するものであり、債務者の代理人として行使するものではない。
- 代位権の行使として第三債務者に対して物の引渡しを求める場合には、債権者は直接自己へ引き渡すよう請求することができる。
- 賃借人が賃貸人の有する妨害請求権を代位行使する場合、賃借人は不法占拠者に対して目的物を直接自己へ引き渡すよう請求することができる。
- 第三債務者は、債務者に対して主張できるすべての抗弁を代位債権者に対しても主張できる。
- 代位債権者が第三債務者に対してなんらかの主張事由を有していても、それを代位権の行使に際して主張することは認められない。
行使の範囲
- 行使の範囲は、債務者の債務額全額ではなく、そのうちの債権者の債務額を限度とするに限られる。
- 金銭債権以外の債権の保全を目的とする場合、その債権の保全に必要な範囲で代位権を行使しうる。
効果
- 代位権行使の効果は、すべて債務者に帰属する。
すなわち第三債務者の債務は消滅し、弁済として債権者が受領した物は債務者に帰属する。 - 債権者は、第三債務者から受領した物を自己の弁済に充てることはできない。しかし、これを自己の債権と相殺して、事実上弁済を受けたのと同様の結果を生じさせることはできる。
- 代位のために要した費用については先取特権の成立が認められ、その費用について、代位債権者は他の債権者に先立って優先弁済を受けることができる。
- 債権者が代位権の行使を債務者に通知した場合には、債務者はこれを妨げるような行為を行うことができなくなる。
詐害行為取消権
客観的要件
- 財産減少行為によって、債務者が無資力に陥ることが必要。
- 行使途中で債務者の資力が回復した場合には、取消権の行使は許されない。
- 被保全債権は、弁済期が到来している必要は無い。
- 身分行為は取消権の対象とならない。
- 離婚による財産分与は、原則として取消しの対象とならないが、それが不相当に過大で、財産分与に名を借りた財産処分とみられる場合には取消しの対象となる。
- 不動産の二重譲渡の場合も、詐害行為の要件を満たす場合には、第二の売買を取消すことは可能となる。
ただし、直接自己への移転登記請求は認められない。 - 被保全債権は原則として、詐害行為の前に成立していなければならない。
- 登記移転行為は詐害行為にならない。
- 不動産を売却して消費しやすい金銭に換えることは、原則として詐害行為となる。しかし、売却代金を有用の資に充てた場合には詐害行為は成立しない。
- 一部債権者への弁済はそれだけでは詐害行為とならないが、債務者が特定の債権者と通謀して、その債務者だけに優先的な満足を得させる目的で弁済した場合には、他の債権者との関係で詐害行為が成立する。
主観的要件
- 取消しが認められるには、債権者を害する行為を行った当事者双方に詐害の意思が存在することが必要。
- 詐害の意思は、その行為により支払いのための資力に不足を生じるであろうというにんしきで足り、積極的に債権者を害する意図を有することまでは必要ない。
行使方法
- 債権者取消権は、必ず裁判上でこれを行使する必要がある。
- 債権者取消権は、受益者のみを被告として訴えを提起すれば足り、債務者までも被告とする必要は無い。
- 取消しの効果は総債権者のために生じる。
連帯債務
各人が全額について共同の責任を負う。
- 連帯債務は、連帯債務者の数に応じた数個の独立した債務。
- 連帯債務者の一人について無効や取消しの原因があった場合でも、他の連帯債務者はこれによって影響を受けない。
- 連帯債務者の一人についてのみ、保証債務を成立させることができる。
- 債権者が連帯債務者の一人に請求した場合、全員に対して請求の効力が生じる。
- したがって、全員の債務の消滅時効が中断し、あるいは全員が履行遅滞に陥る。
- 債務者の一人が連帯の免除がなされた場合、その者の責任は負担部分に限定される。しかし、それ以外の連帯債務者の責任は従来のまま。
- 連帯債務の時効が完成した場合、時効の利益を受けるかどうかは、連帯債務者各自が独自に判断する。
求償
- 連帯債務者の一人がその債務の一部を弁済した場合、弁済額がその者の負担部分を超えていない場合でも、その者は他の連帯債務者に対して、各自の負担部分に応じて求償することができる。
- 連帯債務者は、債権者に弁済する場合には、事前または事後に弁済する旨を他の連帯債務者に通知しなければならず、これを怠っている間に他の連帯債務者が通知したうえで弁済した時は、その者の弁済が有効な弁済として扱われる。
- 連帯債務者の一人が債務を全額返済した旨を他の債務者に通知しなかったところ、他の債務者の一人が通知をしないまま二重に弁済した場合には、第一の弁済が有効なものとみなされる。
保証債務
- 保証債務:主たる債務と同一の内容の給付を目的とする従たる債務。
- 主たる債務の一部のみを保証することはできるが、主たる債務の内容より重い内容の債務を定めることはできない。
- 保証契約は、保証人と債権者の合意に基づいて有効に成立する。
- 保証債務は、主たる債務とは別個独立の債務。
- 将来発生する債務を保証するために、現在の時点での保証契約を有効に成立させることができる。
- 金銭債務以外の債務について保証人となった者は、主たる債務者の不履行に基づく損害賠償債務についても保証の責任を負う。
- 主たる債務が無効または取消しによって成立しないときは、保証債務もまた成立しない。
- 主たる債務が消滅すると、保証債務もまた消滅する。
- ただし、主たる債務が制限能力を理由に取消された場合には、取消しの原因を知って保証人となった者は同一内容の独立の債務を負担したものと推定される。
- 主たる債務者について生じた事由は保証債務にも効力を及ぼす。
- 保障人は主たる債務者が有する抗弁権を援用することができる。
- 主たる債務について時効が完成したときは、主たる債務者が時効の利益を放棄したときであっても、保証人はこれを援用して債務を免れることができる。
- 債権者が債権を第三者に譲渡した場合には、主たる債務者に通知すればよく、保証人に対して通知する必要は無い。
- 保証人は、催告・検索の両抗弁権を有する。
- 催告の抗弁権:債権者が先に保証人に請求してきた場合に、主たる債務者に先に請求するように主張できる権利。
- 検索の抗弁権:主たる債務者に弁済の資力があることを証明して、この財産に対して先に執行するように主張できる権利。
求償
- 委託を受けずに保証人となった者にも、求償権が認められる。
- 保証人が保証債務を履行した場合、主たる債務について債権者が有していた権利は保証人に移転する。
- したがって主たる債務につき抵当権が設定されている場合には、保証人がこれを実行できる。
- 保証人が保証債務の履行によって抵当権を取得する場合には、弁済後、抵当不動産につき第三取得者が出現する前に、代位の付記登記を済ませておかなければならない。
連帯保証
- 連帯保証人は、催告・検索の両抗弁権を有しない。
- 連帯保証人に対してなした請求の効力は、主たる債務者にも及ぶ。
- 連帯保証人には、分別の利益はない。
債権譲渡
- 債権はこれを自由に譲渡できる
譲渡性の制限
- 債権が譲渡性になじまないものである場合
- 社会保障見地から法律によって譲渡性が制限されている場合
- 扶養請求権、恩給受給権、災害補償請求権など
- 譲渡禁止特約による譲渡制限
- 特約の存在につき善意・無過失の譲受人には制限の効力を対抗できない。
- 悪意であっても差し押えて転付命令によって移転できる。
- 特約の存在につき善意・無過失の譲受人には制限の効力を対抗できない。
債権譲渡の対抗要件
- 債権譲渡を債務者に主張するには、債権者である譲渡人から債務者に通知が行われるか、または債務者がその譲渡を承諾するかのいずれかが必要。
- 通知や承諾に確定日付を付す必要は無い。
- 通知は必ず債権者から行われることが必要。代位は不可。
- 譲渡前に行われた債権譲渡の通知は、通知としての効力を生じないが、譲渡前に行われた債権譲渡の承諾は、承諾としての効力を有する。
- 債務者は、譲渡の通知を受けるまでに債権者に対して生じた事由をすべて、譲受人に対しても主張できる。
- 譲渡通知前に弁済していた場合は、譲受人に債務の消滅を主張できる。
- 債権譲渡がなされる前にすでに相殺適状に達している反対債権を債務者が有していた場合には、債務者は債権譲渡の通知を受けたあとでも、反対債権で相殺して債務を免れることができる。
- 債務者が異議をとどめない承諾をした場合には、債権者に対して抗弁事由を有していても、その抗弁を譲受人に対抗できない。
第三者に対する対抗要件
- 債権譲渡を第三者に主張するには、債権者である譲渡人から債務者に対して確定日付のある通知が行われるか、または債務者がその譲渡を確定日付のある証書で承諾するかのいずれかが必要。
- 債権が二重に譲渡された場合に、複数の譲受人のいずれが優先するかは確定日付ある通知が債務者に到達した日時の先後を基準に判断される。
- 先後が不明なときは、同時に通達したものとして扱われる。
- 同時に通達したときは、複数の譲受人間間に優劣の差はなく、各譲受人はそれぞれ全額を債務者に請求することができる。
- 債務者はいずれかの者に弁済すれば債務を免れるが、全員に対して履行を拒むことはできない。
- 債権が二重に譲渡され、債権者を特定できないときは、債務者は債務額を供託して債務を免れることができる。この場合、各譲受人は按分額を請求できるにとどまる。
債務引受
債務が同一性を保ったまま第三者に移転すること
- 免責的債務引受:債務者が債務を免れる
- 重畳的(併存的)債務引受:第三者が債務者とともに同一内容の債務を負担する
- 債務引受は債務のみの引き受けであり、取消権や解除権は当然には引受人に移転しない。
- 免責的債務引受は、債務者の意思に反してこれを行うことができない。
- 免責的債務引受が行われたとき、その債務に付された保証債務は原則として消滅するが、保証人が同意した場合には存続する。
- 併存的債務引受が行われた場合、両債務者は連帯債務と同様の関係に立つ。
- 履行の引受とは、履行のみを引受けて行うことであり、引受人は債務者に対して債務を負うわけではないから、債権者は引受人に対して履行を請求することはできない。
債権の消滅原因
弁済
- 弁済には、債務を弁済するという意思は必要ではなく、単に債務の内容どおりの履行行為がなされればそれで債務は消滅する。
- 弁済は、原則として、債務の本旨にしたがって現実になされなければならない(現実の提供)
- 金銭債務において、銀行が自己宛小切手または銀行が支払いを保証した小切手の提供は現実の提供となる。
- 実際に現金を持参し、債権者の前でそれを支払う旨を述べた場合には、現実の提供があったとされる。
- 債権者があらかじめ受領を拒んだときは、弁済の準備ができたことを債権者に通知して受領を催告すればよい(口頭の提供)
- 債権者が弁済を受領しない意思が明確な場合には、口頭の提供も不要。
- 債権が特定物の引渡しを目的とするときは、弁済者は引渡しをなすべき時の現状でその物を引き渡せば足りる。
- 弁済の費用は、当事者間に特段の合意がない限り債務者の負担となる。
- 弁済者は、弁済に際して債権者が弁済を受け取ったことを証明する受領証書の交付を債権者に請求できる。
- 弁済と受領証書の交付とは同時履行の関係に立つ。
第三者の弁済
- 第三者も債務者に代わって弁済することができる。ただし、利害関係を有しない第三者は債務者の意思に反して弁済することができない。
- 借地上の建物の賃借人は、敷地の地代の弁済について法律上の利害関係を有する第三者である。したがって債務者の意思に反しても、債務者の代わりに地代を払うことができる。
債権の準占有者に対する弁済
- 取引通念に照らして、真実債権を有するとの外観を備える者を債権の準占有者といい、その者に対する弁済は、弁済者が善意・無過失である限り有効な弁済となる。
- 預金通帳ないし貯金通帳と届出印を持参して払戻しを請求する者に対して、銀行ないし郵便局が支払いをなした場合は、銀行・郵便局が善意、無過失である限り、債権の準占有者に対する弁済として有効な弁済となる。
- 銀行が発行した真正なキャッシュカードと暗証番号を使って銀行の自動預払機から預金が引き出された場合、その支払いは有効な支払いとなる。
- 代理人と詐称して弁済を受ける者も、取引通念に照らして弁済受領の権原を有するような外観を備えていれば、債権の準占有者に当たる。
代物弁済
- 債権者の承諾のもとに、本来の給付に代えて他の物を給付することを代物弁済という。代物弁済がなされた場合、本来の債務は消滅する。
- 代物弁済が有効となるには、単に当事者の合意だけでは足りず、現実に代わりの物を引き渡して、その物について所有権移転手続などがすべて完了することが必要。
- 代物弁済の給付物に瑕疵があっても、債権者は本来の給付や瑕疵のない物の給付を請求することはできない。
相殺
- 互いに対立する2つの債権が相殺できる状態になるためには、両債権が目的を有すること、相殺する側の債権(自動債権)が弁済期に達していること、債務の性質が相殺を許さないものではないことなどの要件が必要。
不法行為に基づく損害賠償債権と相殺の可否
| 自動債権 | 受動債権 | 相殺の可否 |
| 不法行為に基づく損害賠償債権 | 一般の債権 | ○ |
| 一般の債権 | 不法行為に基づく損害賠償債権 | × |
| 不法行為に基づく損害賠償債権 | 不法行為に基づく損害賠償債権 | × |
- 当事者の合意によって相殺を禁止する特約を締結することもできる。ただしその特約は、善意の第三者には対抗できない。
- 相殺は相手方に対する一方的意思表示によってこれを行う。
- 時効によって債権が消滅した場合でも、その債権が消滅前に既に相殺できる状態になっていれば、債権者は時効消滅した債権を用いて相手方に対する自己の債務と相殺することができる。
- 相殺の意思表示がなされると、両債権は相殺の要件を満たした最初の時点(相殺適状時)にさかのぼってその効力を生じる。
相殺の担保機能
- 同種の債権が対立している場合、当事者は互いに相殺による債権債務の簡易決済の期待を有しており、この期待は法的保護に値するものとされる。これを相殺の担保機能という。
- 相殺による簡易決済の期待は、両債権の弁済期の先後に関係なく保護される。
その他の債権の消滅原因
- 債権は、債権の一般的消滅原因の他に、権利の一般的消滅原因によっても消滅する。給付不能、消滅時効の完成、権利の存続期間の到来など。
さらに、債権が法律行為に基づいて成立している場合には、取消しや解除、解除条件の成就によっても消滅する。
- 債権者側の事情によって弁済ができない場合は、債務者は目的物を供託して債務を免れることができる。
- 供託原因は、債権者の受領拒絶、債権者の受領不能、弁済者が過失なくして債権者が誰であるかを知ることができないときの3つ。
- 供託者は、供託者以外の者の利益に影響を及ぼさない範囲で、供託物の取戻しが認められている。
ただし、この取戻権は以下の場合消滅する。- 債権者が供託を受諾したとき
- 供託を有効とした判決が確定したとき
- 供託によって質権または抵当権が消滅したとき
- 取戻権の消滅時効が完成したとき
- 更改がなされると、旧債務に付されていた担保権や保証債務は別段の合意がなされない限り消滅する。
契約総論
契約の成立
- 申込みに承諾期間が定められていない場合でも、申込者は、承諾の通知を受けるのに相当の期間は申込みを撤回できない。
- 申込みに承諾期間が定められている場合、承諾の通知はその期間内に相手方に到達しなければならない。
その期間を経過すると申込みは当然に失効する。 - 申込みに承諾期間が定められていなかった場合でも、取引通念に照らして相当な期間を経過した後は、もはや承諾はできない。
- 承諾の内容は、申込みの内容と一致していなければならない。
- 売買価格を変更してなされた応諾は、申込みの拒絶とともに新たな申込みとなる。
同時履行の抗弁権
- 同時履行の抗弁権
- 代金の支払いと同時でなければ商品を引き渡さない、あるいは商品と引き換えでなければ代金を支払わないと主張できる権利。
- 同時履行の抗弁権を主張できるのは、双務契約の当事者間だけに限られる。
- この権利は第三者対しては主張できない。誰に対してもその主張が認められる留置権とは異なる。
- 相手方が債務の一部について履行の提供をした場合、その部分については同時履行の抗弁権が主張できない。
- 債務の支払いを担保するために担保物権が設定されている場合、債務の支払いと担保物の返還は同時履行の関係に立たない。
- 建物賃貸借契約終了に際しての、賃借人の建物引渡債務と賃貸人の敷金返還義務は同時履行の関係に立たない。
- 建物買取請求権が行使された場合、土地の賃借人は土地の賃貸人から買取代金の提供があるまでは、土地の明渡しを拒絶できる。
危険負担
- 危険負担
- 契約の両当事者が相互に対価の関係に立つ債務を負担している場合に(双務契約)、契約の成立から履行までの間に一方の債務が債務者の責任にない状態で履行不能になった場合、他方の債務も消滅するかという問題。
- 契約成立以前に履行不能になった場合、そのことについて当事者が知っているか否かにかかわらず、契約は成立しない。
- 危険負担の問題は生じない。
- 履行不能となったことについて、債務者側に責任がある場合、債権者は契約を解除して、自己の債務(代金支払債務)を消滅させたうえで、債務者に損害の賠償を請求すべきことになる。
- 危険負担の問題は生じない。
- 危険負担では、反対債務の消滅が問題になるだけで、契約の解除権は認められない。
- 債務が履行された後に目的物が消失しても、危険負担の問題にはならない。
契約の解除
- 債務者が契約を履行しない場合、債権者は相当の期間を定めて履行を催促することができ、その期間内に履行がない場合は契約を解除できる。
- 法律の規定によって認められたこのような解除権を法定解除権という。
- 当事者の合意で解除権をあらかじめ留保することも認められる。これを約定解除という。
- 契約の拘束を続けることが信義則に照らして妥当でないと判断できるような事情の変更があった場合には、契約の解除が認められる。
- 催告に期間が定められていなかった場合にも、履行を完了するのに必要な期間が経過すれば、債権者は解除することが可能である。
- 自己の債務について履行期日に履行の提供を行わなかった者は、相手方も履行の提供を行わなかったとしても、解除権行使の前提としての催告を行うことは認められない。
- 履行不能を理由とする解除において、履行が不能か否かを判断する基準時は履行期であるが、履行期の履行不能が履行期前に明らかになれば、その時点で解除できる。
- 契約当事者の一方が数人いる場合は、解除の意思表示はその全員からまたはその全員に対して行われなければならない。
- これを解除権不可分の原則、または解除権の不可分性という。
- 遺産分割協議を解除することは認められない。
- 建物の建築請負契約で、請負人が建物を途中まで建築したが工事の続行をしなくなった場合、注文者が既施工部分につき利益を有するときは、その部分についての契約の解除は認められない。
- 形式上は複数の契約とされているものであっても、それらの目的とするところが相互に密接に関連づけられていて、いずれか一方の履行だけでは契約を締結した目的が達成されない場合には、債務者は一方の契約上の不履行を理由に、他方の契約もあわせて解除できる。
- 相手方の債務不履行を理由に契約を解除した者は、相手方に対して損害賠償を請求できる。
- 売買契約が解除された場合に、契約は遡及的に失効し、当事者間に原状回復義務が生じる。
- 双方の原状回復義務は同時履行の関係に立つ。
- 債務不履行により解除された当事者も、相手方の原状回復義務と同時に履行すべきことを主張できる。
- 他人のものを売買の目的とした場合において、売主がその物の所有権を買主に移転できないために売買契約が解除された場合でも、買主はその物の使用利益を売主に返還しなければならない。
- 不動産売買契約が解除された場合において、解除前に買主から不動産を取得した第三者は、登記を備えていなければ、解除者に対して自己の所有権取得を主張できない。
- 土地の賃貸人と賃借人が賃貸借契約を合意解除しても、土地の賃貸人は解除の効果を建物の賃借人に主張できない。
贈与・売買
贈与
- 相手側の受諾がなければ贈与契約は成立しない。
- 書面によらない贈与は、履行が終わっていない部分についてはこれを取消すことができる。
- ここでいう取消しは撤回の意味である。取消権と異なり、時効によっては消滅しない。
- また、詐欺・強迫などの取消事由があった場合には、それらを理由として法律行為を取り消すことができる。
- 贈与目的物に瑕疵があっても、贈与者は原則として担保責任を負わない。
- しかし、瑕疵があることを知っていながら、これを受贈者に告げなかった場合には担保責任(損害賠償責任)を負う。
- 贈与を受ける者が贈与者に対して、一定の給付を負担する贈与を負担付贈与という。
- 負担は贈与の対価ではないので、負担付贈与は無償契約である。
- 負担付贈与における負担は、実質的には「負担が行われるので贈与を行う」という対価的性質を有しているため、公平を図る見地から、当事者は負担と贈与の同時履行を主張できる。
売買
売買の予約
- 民法の定める売買の予約は、当事者の一方のみが予約完結の意思表示を行う権利を有するものである。これを売買の一方の予約という。
- 売買の一方の予約において、予約完結権を有する一方当事者が予約完結の意思表示をすると、相手方の承諾を必要とすることなく、売買契約が成立する。
手付
- 手付
- 契約の成立に際して当事者の一方から他方へ交付される金銭その他の有価物。
- 手付は金銭に限られない。
手付の種類
- 証約手付:契約成立の証拠としての意味を有する。
- 解約手付:手付金額を失うことを条件に契約成立後において契約の任意解除を求める。
- 違約手付:債務不履行があった場合には没収するという趣旨で交付される。
- 成約手付:手付の交付が契約成立の要件となる。
- 成約手付は、売買契約が当事者の合意だけで成立する性質に反することから、手付をこの趣旨で解釈することは許されない。
解約手付の例
- 買主Aが100万円の解約手付を売主Bに交付したとすると、買主Aは100万円を放棄して、また売主Bは倍額の200万円を償還して契約を解除できる。
- 売主Aが解約手付によって解除するには、買主Bに対して手付の倍額を現実に提供することを要する。
- 手付は原則として解約手付と推定される。
- 解約手付による解除ができるのは、当事者の一方が履行に着手するまでで、それ以後は認められない。
- 解約手付による解除が制限される履行の着手とは、客観的に外部から認識できるような形での履行行為の一部を行い、または履行の提供のために不可欠な行為を行うことを言う。
- その時期は、履行の前であると後であるとを問わない。
- 「当事者の一方が履行に着手する」とは、相手方が履行に着手する場合のことをいう。
- 相手方が履行に着手していない間は、解除は可能。
売主の担保責任
- 他人の所有物を売買の目的とした契約も有効であり、売主は所有者から物の所有権を取得して、これを買主に移転する義務を負う。
- 他人の物の売買契約において、契約当時、所有者がこれを他に譲渡する意思を有しないことが明らかであっても、契約自体は有効に成立し、あとは担保責任規定によって法律関係が処理される。
- 他人のものを売買契約において、売主が所有者から目的物の所有権を取得してこれを買主に移転できないときは、買主が目的物の所有権が売主以外の第三者にあることを売買契約の当時知っていた(悪意)としても、買主は契約を解除できる。
- また売主は、目的物の所有権が自分にあると誤信して(善意)売買契約を締結した場合であれば、契約を解除できる。
- 売買の目的とした権利の一部が他人に属し、売主がその権利の全部を第三者に移転できないときは、買主はその善意・悪意にかかわらず、代金の減額を請求することができる。
- また、履行部分だけであれば買主は買い受けなかったであろうというときは、善意の買主に限って契約の解除ができる。
- 数量を指示して売買した場合において、数量が不足していたときは、買主が数量不足の事実を知らずに契約を締結した場合に限り、買主は契約を解除できる。
- 土地の売買契約において、実際の坪数が登記簿上の坪数よりも不足していたとしても、それだけで直ちに数量指示売買になるわけではないので、買主はそのことだけで代金減額を請求することはできない。
- 売買の目的物に地上権や質権などの第三者の利用権が設定されていて、買主が目的物を利用できない場合には、買主がそのことを知らず(善意)、かつ第三者の利用のために売買契約の目的を達成できない場合に限り、買主は契約を解除できる。
- それ以外の場合は、損害賠償のみを請求できる。しかし、代金減額請求は認められていない。
- 売買の目的物に抵当権が設定されている場合、買主は履行期に債務者が債務を弁済することによって抵当権が消滅することを期待してよいので、買主が売買の目的物に抵当権が設定されていることを知っているか否かにかかわらず、買主は、抵当権が実行されて目的物の所有権を失った場合には、売買契約を解除できる。
- 売買の目的物に瑕疵があった場合、善意の買主は、その瑕疵のために契約を締結した目的を達成できないときは契約を解除でき、それ以外の場合には、損害賠償のみを請求できる。
- 住宅用の土地が都市計画道路の予定区域内にあるために契約の目的が達成できないなど、売買の目的に法律上の瑕疵が存在する場合には、売主は瑕疵担保責任の規定によって買主に担保責任を負うとするのが判例。
- 売買の目的物に権利または物の瑕疵がある場合において、買主の側に売買契約の締結に際して錯誤があるときは、買主は錯誤無効を主張することができるとするのが判例。
- 担保責任に関する規定は任意規定であり、これと異なる特約を当事者間で締結することは何ら差し支えない。
- その場合、特約には契約としての効力が認められ、その不履行については、債務不履行責任が生じる。
- 売主が担保責任を一切負わない旨の特約も有効である。
- しかしながら、売主が売買の目的物に瑕疵があることを知りながら、これを買主につげなかったときは、担保責任を負わなければならない。
- 担保責任規定によって善意の買主に契約の解除権が認められている場合、善意の買主は、原因となった事実を「知った時から1年以内」に契約を解除しなければならない。
売買の効力、その他
- 代金の支払いと売買の目的物の引渡の双方がいまだ履行されていない段階では、売買の目的物から生じた果実は、売主の側がこれを収穫・取得する権利を有する。
- 売買契約において、買主は売主に目的物の交付と代金支払の同時履行を主張する場合のほか、売買の目的について権利を主張する者があって、買主が買い受けない権利の全部または一部を失うおそれがあるとき、ならびに買い受けた不動産につき、先取特権、質権、または抵当権の登記があるときにおいても、代金の支払いを拒絶できる。
- 買戻の特約は、売買契約と同時にしなければ、買戻としての効力を生じない。
- また、売買契約と同時に買戻の登記をしなければ、その効力を第三者に対抗できない。