賃貸借
- 賃貸借契約は当事者の合意のみによって成立する。
- 賃料は目的物の使用の対価であるから、賃貸借契約が有効に成立しても、賃貸人が目的物を引き渡さない間は賃料債務は発生しない。
- 賃貸人には、目的物を使用・収益できる状態にしておくという積極的な義務が課されている。
- 地上権との相違点
- 賃貸人には目的物の修繕義務がある。
- 賃貸物に隠れた瑕疵があり、その瑕疵のために賃貸借契約の目的が達成できないときは、貸借人は修繕を要求することなく、直ちに賃貸借契約を解除できる。
- 貸借人が有益費を支出した場合、賃貸人は、賃貸借終了時に、賃借人が支出した費用または増加額のいずれかを選択して、これを賃借人に返還しなければならない。
- 賃借人は、賃借物の保管に関して善良なる管理者の注意義務を負う。
- 賃借人は、賃貸借終了の際には、賃借物を原状に復してこれを返還しなければならない。
- 賃借人が失火によって目的物を焼失させたときは、賃借人に重過失がなくても、軽過失がある限り、賃貸人に対して債務不履行責任を負う。
- 不動産の賃借権は、登記をすればこれを第三者に対抗できる。
- 建物の所有を目的とする賃借権の場合は、借地権の登記がなくても、地上建物について所有権の登記がなされていれば、その所有権登記で借地権についても対抗力が認められる。
- 建物の賃貸借においては、賃借権の登記がなくても、建物の引渡しがあれば、借家人はその賃借権を第三者に対抗できる。
賃借権の譲渡・転貸
- 賃借人が賃借権を第三者に譲渡または転貸するには、賃貸人の承諾が必要。
- 承諾を得ずになされた賃借権の譲渡または転貸契約は無効ではないが、その効果を賃貸人に対抗できない。
- また、賃貸人は無断譲渡・転貸を理由に、賃借人との賃貸借契約を解除できる。
- 無断譲渡・転貸が行われても、背信行為に当たらないと認められる特段の事情がある場合には、賃貸人に契約の解除権は発生しない。
- 無断転貸を理由に、賃貸人が転借人に賃借物の返還を請求するには、賃貸借契約を解除しておく必要はない。
- 賃貸人の承諾を得ないで転貸借契約がなされた場合でも、賃貸人が賃貸借契約を解除できるのは転借人が目的物の使用を開始した場合に限られる。
- 借地人が借地上に建物を建築した後に、それを第三者に賃貸しても、土地の無断転貸にはあたらない。
- 賃貸人の承諾を得て転貸が行われた場合には、転借人は賃貸人に対して直接に義務を負う。そのため、賃貸人は転借人に賃料を請求できる。
- この場合、転借人は転貸人に転借料を前払いしていることを理由として、賃貸人からの賃料請求を拒絶することはできない。
- 賃貸人が転借人に直接に賃料を請求できる場合、その額は、賃貸人が賃借人に請求できる賃料の額と転借人が転貸人に支払うべき賃料の額の両者によって制限を受ける。
- 賃貸人の転借人に対する賃料請求は権利であって義務ではない。
- したがって、賃借人が賃料の支払いを怠る場合には、賃貸人は転借人に賃料を請求することなく、賃借人の債務不履行を理由に賃貸借契約を解除できる。
敷金
- 敷金返還請求権が発生するのは、賃借人が賃借物を明渡した後。
- 賃借物の明渡しと敷金返還は同時履行の関係には立たない。
- 賃借権の存続期間中に賃貸人が交代した場合には、原則として敷金関係は新賃貸人に継承される。
- 賃貸借終了後、目的物の明渡しまでの間にその目的物が譲渡されても賃貸人の交代は生じない。したがって敷金関係は新所有者に引き継がれない。
- 賃借権が適法に譲渡されて賃借人が交代した場合には、原則として敷金関係は承継されない。
- 旧賃借人が差し入れた敷金は、賃借人の交代の時点で延滞賃料等を差し引いて旧賃借人に返還される。
賃借権の存続期間・終了
- 賃借権の存続期間は、最長20年。
- 建物の所有を目的とする借地権の場合は、借地借家法により、普通借地権では原則30年、定期借地権では50年以上などとされている。
- 定期借地権は更新のない借地権。
- 期限の定めのない動産賃貸借において、賃貸人が解約を申し入れたときは、一定期間経過後に賃貸借は終了する。
- この場合、解約申入れに正当事由は必要でない。
- 他人の物の賃貸を目的とする賃貸借契約も当事者間では有効であるが、賃借人が所有者から目的物の返還を請求された場合には、その時点から賃貸人の貸す債務が履行不能となるので、その時点以降、賃借人は賃貸人からの賃料請求を拒絶できる。
- 転借人の転借権が賃貸人に対抗できない場合において、賃貸人が転借人に目的物の返還を請求した場合には、その時点以降、転借人は転貸人からの賃料請求を拒絶できる。
その他の典型契約
請負
- 請負は、当事者の一方が他方から依頼された仕事を完成することを約束し、他方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束することによって成立する(有償双務契約)。
- 報酬の支払い時期は、その目的物が注文者に引き渡された時。
- 下請禁止特約が結ばれている場合でない限り、請負人は下請人に仕事をさせることができる。
- 目的物の所有権移転時期は、材料の全部または主要部分を、注文者が提供したときは、完成と同時に注文者に帰属し、請負者が提供したときは請負人に帰属する。
- 後者の場合は、所有権の移転は目的物の引渡によって行われる。
- なお、当事者間の合意で所有権移転時期を別途定めてもよい。
- 後者の場合は、所有権の移転は目的物の引渡によって行われる。
- 仕事の目的物に瑕疵があるときは、請負人は注文者に対して担保責任を負う。
- ここでの瑕疵は、目的物が注文どおりに完成されていない全てのことをいう。
- 担保責任の内容は、瑕疵補修、損害賠償、契約の解除など。
- 目的物が土地の工作物であるときは、契約の解除は認められていない。
- 担保責任を負わない旨の特約を有効であるが、その場合でも、請負人が瑕疵の存在を知っていながらこれを注文者に告げていなかった場合は、担保責任を負わなければならない。
- 担保責任を負う期間を当事者間の合意に基づいて短縮しても差し支えない。
- 請負人が仕事を完成しない場合は、注文者はいつでも請負人の損害を賠償して契約を解除できる。
- 注文者が破産宣告を受けた場合は、請負人は契約を解除できる。
委任
- 委任は原則として無償契約。
- 複委任は委任者の許諾またはやむをえない事由がなければ許されない。ただし、履行補助者を用いることは差し支えない。
- 委任は当事者双方の信頼関係を基礎に成立しているので、当事者双方はいつでも事由に委任契約を解除できる。
- ただし、相手方が不利な時期に解除するときは、やむをえない事由がある場合を除いて、相手方の損害を賠償しなければならない。
- 当事者の一方が破産すると、委任契約は終了する。
- 当事者の一方の死亡も、委任契約の終了原因である。
- 受任者が後見開始の審判を受けた場合も、契約は終了する。
- 受任者は善良なる管理人の義務をもって事務を処理しなければならない。
- 履行の途中で契約が終了した場合は、受任者は履行の割合に応じた報酬を委任者に請求できる。
- 委任事務に必要な費用は前払い。報酬は後払い。
- 受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物または収取した果実を委任者に引き渡さなければならない。
- これは報酬の支払いとは同時履行の関係に立たない。
組合
- 組合は、2人以上の当事者が、それぞれ出資を行って共同事業が営むことを約束することによって成立する。
- 組合契約は、すべての当事者が出資しなければならないが、その出資は金銭に限られず、財産的価値のあるものなら何でも良い。
- ある特定の組合員の出資義務が不可抗力により履行不能となった場合でも、他の組合員の出資義務は消滅しない。
- 組合の目的たる事業は当事者で事由に定めることができる。一時的な事業であってもよい。
- 組合の業務執行の意思決定は、組合員の過半数の同意によって決せられる。
- 組合員の脱退に際して持分の払戻しが行われるときは、払戻しは組合員の出資の種類いかんにかかわらず、これを金銭で行うことができる。
債権総合
契約総論
- 両当事者が互いに継続的に給付をなすべき契約において、当事者の一方は、相手方が前の時期における給付を履行しなかったことを理由に、後の時期における自己の給付を拒むことができる。
- 危険負担では、他方債務の存続・消滅は問題になるが、損害賠償は問題にならない。
- 第三者のためにする契約において、第三者は受益の意思表示をした場合でも契約当事者になるわけではない。
- したがって、契約当事者に認められた権利である取消権や解除権は行使できない。
解除の効果
- 直接効果説(判例、通説):解除の効果は遡及的に生じるものとするもので、契約はそもそも締結されなかったことになるとする。
- 間接効果説:解除の遡及効果を認めず、当事者間に原状回復のための債権債務関係が生じる。
- 給付の内容が可分であっても、全部の給付が無ければ目的を達せられないという場合は、債権者は債務者の履行の一部の遅滞を理由に契約全部を解除できる。
- 買主は解除による原状回復義務の内容として、引渡しを受けていた目的物の使用利益を不当利得として売主に返還しなければならない。
典型契約
瑕疵担保責任の法的性質
- 法定責任説:瑕疵担保責任は特定物のみに適用があり、不特定物には適用が無い。
- 債務不履行責任説:不特定物にも適用がある。
- 法定責任説は、売買の有償性に基づく当事者の公平をその理論的根拠とする。すなわち特定物売買においては、売主は瑕疵があってもそのままの状態で引き渡せば債務を履行したことになる。
- 瑕疵があった部分に対する代金を売主に返還させるなどの担保責任を負わせるのが瑕疵担保責任であるとする。
- 使用貸借において、当事者が返還の時期および使用・収益の目的を定めなかった場合には、貸主はいつでも返還の請求ができる。
- 消費貸借は要物契約であり、契約としての効力が生じるには目的物の交付が必要である。
- 金銭消費貸借においては、金銭の交付に限られず、小切手など金銭に代わる物の交付でもよい。
- 更新料の支払いが、更新後の賃貸借契約の重要な要素として組み込まれ、その賃貸借契約の当事者間の信頼関係を維持する基盤をなしていた場合には、その不払いは賃貸借契約の解除原因となる。
- 請負契約の目的物に瑕疵があるとき、注文者は、瑕疵の程度や各当事者の交渉態度などに鑑み、信義則に反すると認められるときを除き、請負人から瑕疵の修補に代わる損害の賠償を受けるまでは、報酬全額の支払いを拒むことができる。
- これについて履行遅滞の責任も負わない。
違約金
- 契約に際して、当事者間で債務不履行の場合の損害賠償の額が定められている場合、約定の損害額しか請求できない。
- 裁判所もその額を増減することはできない。
- 賠償金につき、実際の損害額に比べて著しく高額または低額の特約をしている場合、裁判所はその額を減額することはできないが、公序良俗に反して無効とすることはできる。
- 違約金の特約は、主に損害賠償額の算定を容易にする目的で締結される。
- このような特約がない場合でも、損害の発生とその額を証明すれば賠償請求は可能。
- 違約金の特約が結ばれていても、解除の要件を満たす限り、解除は可能である。
- 金銭を目的とする消費貸借契約に違約した場合の賠償金の特約については、利息制限法などの法律の制限を受ける。
事務管理・不当利得
事務管理
- 事務管理とは法律上の義務がないのに、他人のためにその事務を処理すること。
- 民法は、むやみに他人のことに干渉すべきでないとして、報酬請求を認めないなど、事務管理に関して消極的な立場を取っている。
- いったん事務管理を始めた場合には、管理者は本人または相続人、法定代理人が管理できるようになるまで、事務管理を継続しなければならない。
- 管理者には、原則として善管注意義務が課せられている。
- 管理者は本人に対して費用の償還は請求できるが、報酬の支払いは請求できない。
- また管理者が自己の過失なくして被った損害についても、管理者は本人に賠償の請求はできない。
- 管理者が本人のために有益な債務を負担した場合、管理者は本人に対して管理者に代わってその債務を弁済するよう請求できる。
- しかし、債権者は本人に直接支払いを請求することはできない。
不当利得
- 不当利得とは、法律上の原因なくして、他人の財産や労務によって利益を受け、これによって他人に損失を及ぼした場合に、そこで得た利得を返還させる制度。
- 時効による取得は法律上の原因に基づく取得であって、不当利得ではない。
- 「利益を受けた」とは、財産が積極的に増加した場合だけでなく、消極的に財産の減少を免れた場合も含まれる。
- 「損失を及ぼした」とは、財産が減少した場合だけでなく、本来得られたはずの財産が得られなかった場合も含まれる。
- 婚姻が成立しなかった場合、結納金を交付した者はその返還を請求できる。
- 受益と損失の間には直接の因果関係が必要である。
- 契約に基づく給付が相手方だけでなく、第三者にも利益を与えた場合に、給付者が第三者に対しても利得の返還を請求できるという権利を転用物訴権という。
- 善意の受益者は、現存利益の範囲で返還義務を負う。
- これに対して、悪意の受益者は、利得の全部に利息を付して返還しなければならない。損害があれば、それについても賠償責任を負う。
- 銀行との間の無効な債務引受契約により弁済した者は、銀行が善意であった期間の運用利益の返還を請求することができる。
- 債務が存在しないことを知っていながら任意に弁済した者は、不当利得の返還請求権は認められない。
- 錯誤や強迫に基づく弁済など、任意になされたものでない場合は請求権が認められる。
- 債務者が弁済期前であることを知って任意に弁済した場合には、給付物や期限までの利息の返還請求はできない。
- これに対し、錯誤によって期限前の弁済をした場合は、給付物は返還請求できないが、期限までの利息などの利得は返還請求できる。
- 不法の原因に基づいて給付をなした者は、その給付物の返還を請求できない。
- 返還請求が認められない結果、給付によって反射的に所有権が受益者に移転する。
- 不法原因給付にいう不法とは、単に強行法規に違反することだけでは足りず、倫理的に非難されるものであることが必要。
- 不法の原因に基づく給付があったといえるためには、不動産の場合、未登記建物は引渡しでよいが、既登記建物の場合には登記の移転まで済ませることが必要。
- 不法の原因に基づく給付がなされた場合でも、給付を行った者の不法性より給付を受けた者の不法性が大きい場合には、返還請求が認められる。
- 不法原因給付がなされた後、新たに受益者がその受益を任意に返還する特約をした場合、その特約は有効である。
不法行為等
一般的不法行為
- 不法行為制度の目的は、加害者の制裁ではなく、損害の公平な分担と言う点にある。
一般的不法行為の成立要件
- 加害者に故意または過失があること
- 他人の権利もしくは利益を違法に侵害したこと
- それによって損害が発生したこと
- 加害行為と損害との間に因果関係があること
- 行為者に責任能力があること
- 故意または過失によって自ら一時の心神喪失を招いた時は、行為当時に責任能力を失っていても、不法行為責任を負う。
- 過失の存否の判断は、民事責任と刑事責任で異なる場合がある。
- 加害者に過失がある限り、被害者に過失があっても不法行為が成立する。
- 不法行為の成立要件については、原則として被害者側に立証責任がある。
- 失火責任については、失火が軽過失による場合には不法行為責任は成立しない。
- ただし、これは失火者の責任に限定したもの。責任無能力者の監督義務者や使用者に軽過失しか存在しない場合でも、これらの者は、過失がある以上、監督責任や、使用者責任を免れない。
- 示談書で、「被害者は加害者に対する今後の請求権を一切放棄する」と定められた場合、そこで放棄された請求権は、示談当時予想していた範囲の損害に限られる。
- したがって、示談成立当時予想できなかった損害については、被害者はなお追加的に賠償の請求ができる。
特殊的不法行為
責任無能力者の監督者の責任
- 行為者自身は責任を負わず、監督義務者または代理監督者が不法行為責任を負う(714条)
- ただし、未成年者も、責任能力を有する場合は自ら不法行為責任を負う。この場合、監督義務者の義務の懈怠と損害の発生との間に因果関係が認められれば、監督義務者も不法行為責任を負う(709条)
- 責任無能力者の監督義務者は、その義務を怠らなかったことを立証すれば、714条の監督義務者の責任を免れる。
- 代理監督者に使用者があり、その者が使用者責任を負う場合でも、代理監督者は自らの不法行為責任を免れない。
使用者責任
- 使用者は、被用者の選任・監督に相当の注意をしたこと、または相当の注意をしても損害が発生したであろうことを証明した場合には、責任を免れる。
- 使用者責任が成立するには、被用者に不法行為の要件が備わっていなければならない。
- 使用者責任は、被用者に賠償能力が無い場合に補充的に負う責任ではなく、使用者が被用者とともに第一次的に負うべき責任である。
- 事業の執行については外形理論が認められる。
- 使用者が損害を賠償した場合、使用者は信義則上相当と認められる限度において、被用者に求償することができる。
不法行為の効果
一般的効果
- 不法行為が成立すると、その効果として損害賠償請求権が発生する。
原状回復は、法律の定めまたは特約がある場合でない限り認められない。
- 被害者が死亡した場合には、父母・配偶者・子に財産的損害のみならず精神的損害についても固有の賠償請求権が認められる。
- また被害者受傷の場合は、「死亡にも比肩しうべき精神的苦痛を受けた」と認められれば、同様に精神的損害の賠償請求権が認められる。
- 被害者自身の慰謝料請求権は一身専属権ではなく、相続の対象である。
過失相殺
- 被害者に過失がある場合には、損害の公平な分担という観点から、その過失分を斟酌して賠償額を減額することが認められている。
- 不法行為の場合、過失を斟酌して賠償額を減額するかは裁判所の裁量にゆだねられる。すなわち、不法行為における過失相殺は義務的なものではない。
- 過失相殺を行う場合には、被害者に責任能力まで備わっている必要はないが、事理弁識能力は備わっていなければならない。
- 被害者の過失には、被害者本人だけではなく、「被害者側の過失」も含まれる。
- 保育園の保育士はこれに含まれない。
- 加害者の不法行為が無過失で成立する場合であっても、また重過失がなければ成立しない場合であっても、裁判所は被害者の過失を斟酌して賠償額を減額できる。
- 被害者の心因的素因や、被害者の罹患していた疾患等の身体的素因は、ともに賠償額算定の際の減額の要素として考慮できる。
- しかし、被害者が本来的に有していた身体的特徴によって発生・拡大した損害については、特段の事情がない限り、被害者の素因を理由に賠償額を減額することはできない。
婚姻
婚姻の無効原因
- 当事者に婚姻意思が無い
- 届出が無い
- 婚姻意思は届出の時点で存在することが必要(離婚の場合も同様)
- 婚姻の届出がなされれば、たとえ戸籍簿に記載されなくても婚姻は有効に成立する。
婚姻障害 これらを満たさないものについては取消しが認められている
- 婚姻適齢に達している
- 重婚でないこと
- 再婚禁止期間を経過していること
(再婚禁止期間は前婚の解消または取消しの日から6ヶ月) - 近親婚でないこと
- 未成年者については父母の同意があること
(法定代理人と父母が異なる場合でも法定代理人ではなく父母の同意が必要)
- 未成年者の婚姻に際して父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる
- 成年被後見人が婚姻をするには意思能力があれば足り、成年後見人の同意は必要ではない。
- 婚姻の取消しは、裁判所への請求によって行うものとされている。
- 婚姻の取消しの効果は遡及しない。
- したがって、婚姻が取消された場合でも婚姻中に出生した子は嫡出子としての身分を失わない。
- 夫婦間で契約をした場合、婚姻中いつでも夫婦の一方からこれを取り消すことができる。
- 婚姻が事実上破綻している場合には適用されず、その場合に取消しは認められない。
- 夫婦は日常家事に関して生じた債務について、連帯責任を負う。また夫婦は日常家事に関する法律につき、相互に代理権が認められる。
- ただし第三者に対し責任を負わない旨を予告していた場合には、連帯責任を負わなくてよい。
婚姻の解消
| 死亡解消(死別) | 離婚 | |
| 復氏 | 復氏しない ただし、任意の復氏届によっていつでも 婚姻前の氏に復することができる |
原則として復氏する ただし離婚の日から3ヶ月以内の届出 によって復氏しないこともできる |
| 子の監護者 親権者 |
生存配偶者 | 離婚の際に決定しなければ ならない |
| 姻族関係 | 消滅しない ただし、生存配偶者が姻族関係終了の 意思表示をした場合には終了する (要届出) |
当然に消滅する 特段の意思表示は必要ではない |
| 財産関係 | 相続が開始する | 財産分与請求権などを通して夫婦財産関係の 清算が行われる |
- 未成年の離婚に、父母の同意は必要ではない。
- 有責配偶者からの離婚請求は原則として認められない。
- しかし、子を養育上不利な立場に立たせることもなく、また夫の収入に生計を依存している妻の生活を危うくすることもないなど、離婚を認めないことによって得られる客観的な利益が存在しない場合には、例外的に認められることがある。
- 婚姻の取消しの場合と異なり、離婚の取消しの効果は遡及する。
- 離婚の取消前に相手が再婚していた場合には重婚状態を生じることになる。
- 離婚による財産分与がなされても、しれが損害賠償を含めた趣旨を解せられないか、そうでないとしてもその額および方法において請求者の精神的苦痛を慰謝するには足りないと認められるときは、別に慰謝料を請求することができる。
内縁
- 相続権などは、内縁配偶者には認められない。
- 内縁配偶者には内縁期間の長短に関わらず相続権は認められないが、ほかに相続人がいない場合には、特別縁故者として相続財産の全部または一部を分与されることはありうる。
- 配偶者の同居・協力・扶助義務や、婚姻費用の分担、離婚に伴う財産分与などは内縁関係にも準用される。
- 結婚に関する合意の履行を裁判上請求することはできない。
- 内縁の不当破棄は不法行為を構成し、相手方に損害賠償義務を発生させる。
親子
親子
嫡出子
- 婚姻関係にある男女間に懐胎・出生した子を嫡出子という。
- 婚姻成立の日から200日後または婚姻の解消・取消しの日から300日以内に生まれた子は嫡出子とされる。
- 内縁中に内縁の妻が内縁の夫によって懐胎し、その後適法に婚姻した後に出生した子は、たとえ婚姻の届出と出生との間に嫡出推定を受けるために必要な法所定の200日間という期間が経過していなくても、出生と同時に当然に嫡出子としての身分を有する。
- 認知された子の父母が婚姻した場合には、その子は当該婚姻によって嫡出子たる身分を取得する(婚姻準正)。
- また父が母と婚姻後に母の子を認知したときにも、婚姻の時に遡って嫡出子たる身分を取得する(認知準正)
- 嫡出推定を受ける子は、嫡出否認の訴えまたは審判によらなければ、嫡出子としての身分は奪われない。なお、この訴えを提起できるのは原則として夫のみである。
- 嫡出否認の訴えの相手方は、子または親権を行う母であるが、親権を行う母がいないときは、後見人がいる場合でも、家庭裁判所によって特別代理人が選任される。
- 嫡出否認の訴えは、妻が子を産んだことを知った時から1年以内に提起しなければならない。この期間が経過した場合には、もはや父子関係の存否を争うことはできない。
- 夫が子の出生後において、その嫡出であることを承認したときは、夫は自分の子であるか否かにかかわらず否認権を失う。ただし、夫が嫡出子としての出生届を提出しても、そのことは嫡出性の承認には当たらず、否認権は失われない。
- 胎児も生きて生まれれば、出生前に死亡した父を相続できるし、遺贈を受けることもできる。
認知
- 認知は、嫡出でない子は、その父または母が認知することができると規定する。
- しかし、母の場合は出産の事実によって親子関係が明らかなので、認知を待たずに親子関係が発生するとされる。そのため、認知が必要なのは父と子の間となる。なお、認知は遺言によってすることができる。
- 認知がなされると、親子関係が発生し、子は親を相続できるようになる。ただし、父が認知しても、親権者や氏を変更するには別途手続が必要である。
- いったん認知がなされた場合には、その後に親子関係にないことが判明した場合でも、認知の無効を主張することはできない。
- 子が胎児の場合でも、認知は可能である。ただし、父が胎児を認知するには、母の承諾を得なければならない。
- 子がすでに死亡している場合には、その子に直系卑属がいなければ子を認知することはできない。
- 父または母が制限能力者であるときでも、認知には法定代理人の同意は不要である。
- 子は、父が死亡した場合でも、3年以内であれば認知の訴えを提起できる。子が成年に達していた場合も同様である。また、子の法定代理人は子に代わって認知の訴えを提起できる。
- 嫡出でない子について、父から嫡出でない子としての出生届がされた場合、この出生届は認知届としての効力を有する。また、妻以外の女性との間に出生した子について、父が妻との間の嫡出子として出生届をし、これが受理された場合は、同様に認知届としての効力を有する。
- 認知者の意思によらず認知者以外の者が認知者の氏名を冒用して認知届を出した場合、その認知届は無効である。
- たとえ、十分な金銭的対価を得ていても、認知請求権を放棄することは認められない。
養子
- 養子は、縁組の日から養親の嫡出子たる身分を取得する。
- 養子を養子としてではなく、実子として取り扱う制度を特別養子縁組という。この縁組は必ず家庭裁判所の審判によらなければならない。
- 特別養子縁組は、養親となる者は配偶者のある者でなければならず、また養子となる者の年齢は原則6歳未満とされている。
- 特別養子縁組においては、原則として離縁は認められないが、養親による虐待等があり、かつ実父母が相当の監護をすることができるなど、一定の厳格な要件のもとに例外的に離縁が認められる場合がある。
親権
- 親権は共同行使が原則であるが、親権の剥奪などによって父母の一方が親権を行使できない場合には、例外的に他の一方が単独で親権を行使する。
- 子の出生前に父母が離婚したときは、子の親権は母が有する。
- 未成年の間に離婚によって婚姻が解消しても、その未成年者の親の親権は復活しない。
- 成年被後見人は親権を行使できない。
- やむをえない事由がある場合には、子の福祉の観点から親権を辞することが認められている。
- 第三者が未成年者に無償で財産を与えるにつき、当該財産を親権者に管理させない旨の意思表示をしたときは、親権者はその財産に関する管理権を行使できない。
- 親は子の法定代理人として代理権や同意権を有するが、親と子の利害が対立する場合(利益相反行為)には、子の利益を保護する見地から、親は代理権や同意権を行使できず、家庭裁判所へ特別代理人の選任の請求をしなければならない。
- 利益相反行為については、特別代理人が子を代理し、または同意を行うことになる。
- 利益相反行為があるか否かは外形的に判断される。
- 父母のうち父(または母)とだけ利益相反行為にある場合には、父(または母)に関する関係で特別代理人の選任を請求し、特別代理人と母(または父)とが共同で子を代理し、または同意を行うことになる。
- 利益相反行為につき、親権者が民法の規定に違反して子を代理して行った行為は無権代理行為となる。したがって、子が成年に達した後にこれを追認しなければ、当該行為の効果は子に影響しない。
相続
相続
- 胎児も生きて生まれることを条件に、相続人となることができる。
- 被相続人が死亡する以前に、推定相続人である子・兄弟姉妹が死亡し、または廃除・相続欠格によって相続権を失った場合には、その者の直系卑属がその者の相続分を相続する。これを代襲相続という。
- 代襲原因は、相続開始以前の死亡、廃除、相続欠格の3つに限られる。
- 相続の放棄は代襲原因とはならない。
- また相続人自身が相続欠格者である者は代襲相続人にはなれない。(子の場合は、さらにその相続人が代襲相続する)
- 直系卑属には、再代襲相続(再々代襲相続も)が認められているが、兄弟姉妹については、再代襲相続は認められていない。
- 養子縁組前に生まれた養子の子は、養親と血縁関係にないので、養親を相続することはできない。
- これに対して、養子縁組後に生まれた養子の子は、養親の直系卑属になるので、養親を相続することができる。
法定相続分
| 配偶者と子 | 配偶者 (1/2) |
子(全員で1/2) |
| 配偶者と直系卑属 | 配偶者 (2/3) |
直系卑属 (全員で1/3) |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者 (3/4) |
兄弟姉妹 (全員で1/4) |
相続欠格事由
- 被相続人または先順位もしくは同順位の相続人を故意に殺害し、または殺害しようとして刑に処せられたもの。
(既遂・未遂は問わないが、過失犯は含まない)
(刑に処せられたことが必要) - 被相続人が殺害されたことを知っていながら告訴・告発しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がない場合、または殺害者が自己の配偶者もしくは直系卑属であったときは除外される。
- 詐欺・強迫によって被相続人の遺言の作成・取消し・変更を妨げた者
- 詐欺・強迫によって被相続人に相続に関する遺言をさせ、またはその取消し・変更をさせたもの。
- 相続に関する被相続人の遺言状を偽造・変造・破棄・隠匿した者
- 廃除は、被相続人に対する虐待または重大な侮辱と、その他の著しい非行を理由に、被相続人の請求に基づいて、家庭裁判所の審判・調停によって推定相続人の相続権を奪う制度。
- 占有も相続によって承継される。相続人がその物の存在を認識していなくても、相続人は相続開始と同時にその物を取得する。
- 生活保護受給権は相続の対象にならない。
- 死亡退職金の受給権者について民法の相続順位決定原則と異なる定め方がされている場合、死亡退職の受給金は相続財産に属さず、受給権者たる遺族が自己の権利として取得する。
相続の承認・放棄
相続の方法:単純承認、限定承認、相続の放棄
- 限定承認と相続の放棄は、家庭裁判所への申述の方法で行う。
- 相続の承認・放棄は、相続人が「自己のために相続があることを知った時」から3ヶ月以内にしなければならない。
- 相続開始後に相続人が承認も放棄もしないで死亡した場合には、その者の相続人が承認・放棄の権利を承継する(再転相続)。
- 再転相続人が自己のために相続があることを知った時から3ヶ月が承認・放棄の熟慮期間。
- 相続によって得た資産額の限度でのみ負債を負担するという相続方法を限定承認という。限定承認は、共同相続人の全員の共同でなければこれを行うことができない。
- 3ヶ月の熟慮期間中に相続人が相続財産の全部または一部を処分したときや、限定承認・相続の放棄をしないまま3ヶ月が経過したとき、または限定承認もしくは相続の放棄を行った者が相続財産の全部または一部を隠匿し、ひそかに消費し、悪意で財産目録に記載しなかったときは、単純承認したものと見なされる。これを法定単純承認という。
- ただし、被相続人の葬式費用を相続財産から拠出しても法定単純承認とはならない。
- 相続開始以前に相続を放棄しても、その放棄は無効である。
- 相続の承認・放棄は被相続人の財産上の地位の承継に関する行為であるから、相続人がこれを行うには行為能力が必要である。
- したがって、未成年者が法定代理人の同意を得ないで行った相続の放棄・承認は、制限能力を理由に取り消すことができる。
- 詐欺を理由とする相続の承認・放棄の取消しは、家庭裁判所の申述の方法によらなければならない。
遺産分割
- 遺産分割の効果は相続開始時に遡る。
- 遺産分割は、被相続人の遺言、共同相続人の協議、家庭裁判所の審判によって一定期間禁止できる。
- 一部の相続人を除外してなされた遺産分割協議は無効である。
- 遺産分割前の譲渡も、譲渡契約としては有効に成立する。
- 被相続人が特定の財産を支持して特定の相続人に相続させる遺言をした場合、指示された相続財産を特定の相続人が取得するためには、遺産分割の手続きを経る必要はない。
- 遺産分割は現物分割が原則。
- 遺産分割後に認知された者については、現物による返還請求は認められず、価額の返還請求の方法のみが認められている。
遺言・遺留分
遺言
- 秘密証書遺言の方式に欠ける遺言は、秘密証書遺言としては無効であるが、自筆証書遺言の方式を満たす場合には、自筆証書遺言として有効な遺言となる。
- 満15歳に達したものは単独で有効な遺言ができる。
- 成年被後見人も事理弁識能力を回復している際に、医師2人以上の立会いのもとに有効な遺言ができる。
- 遺言では日付の特定が要求されている。
- 「吉日」と書いた場合、無効。
- 遺言では署名と押印が要求されているが、この押印は捺印でもよい。
- 遺言はいつでも自由に撤回できる。撤回権を放棄することもできない。
- 他人の添え手による補助を受けて作成された遺言でも、それが単に作成の補助にすぎず、添え手をした者の意思が遺言の内容に介入していないことが判定できれば、その遺言は有効な遺言となる。
- 共同遺言は禁止されている。
遺留分
- 遺留分とは、被相続人が贈与や遺贈で処分した財産に生活を依存していた者に、被相続人が処分した財産の一定割合について、取戻しを認める制度。
- その目的は、残された家族の生活保障に当たる。
- 遺留分権利者は、兄弟姉妹を除く法定相続人である。
相対的遺留分率
- 直系卑属:3分の1
- それ以外:2分の1
- 遺留分額の算定に当たっては、「相続できたはずの財産」が算定の基礎となる。
- 積極財産や贈与額のみならず負債も加えられる。
- 相続開始前の1年間になされた贈与は無条件に全額が加算される。
- 遺留分は、家庭裁判所の許可を受けた時に限り、相続開始前に放棄することが認められている。
- 遺留分権利者の一人がこれを行使しない場合でも、他の遺留分権利者の遺留分は増加しない。
- 遺贈が2つ以上あるときは、遺言に別段の意思表示がない限り、それぞれの遺贈は遺贈の目的の価額に応じて減殺される。